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キャリアアップ助成金

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キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の正社員化や待遇改善に取り組む事業主に対して支給される厚生労働省の助成金制度です。

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善に取り組んだ事業主に対して支給される助成金です。厚生労働省が所管し、各都道府県の労働局・ハローワークが窓口となっています。中小企業の人材確保・定着策として広く活用されている制度です。

主なコースと支給要件

キャリアアップ助成金には複数のコースが設けられています。中でも利用件数が多いのが「正社員化コース」です。

正社員化コースは、有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換または直接雇用した場合に助成金が支給されるものです。支給額は、有期雇用から正規雇用への転換で中小企業の場合1人当たり80万円(2期に分けて支給)が基本です。無期雇用から正規雇用への転換は1人当たり40万円です。なお、支給額や要件は毎年度改正される可能性があるため、申請前に最新の支給申請要領を確認することが必要です。

正社員化コースの主な要件として、転換前に6か月以上雇用されていること、転換後に6か月以上継続雇用し転換前6か月と比較して3%以上賃金が増加していること、就業規則等に転換制度を規定していることなどがあります。雇用保険法施行規則に基づく支給要件を満たす必要があり、要件は年度ごとに改正されることがあるため、最新の要領を確認することが重要です。

その他のコース

賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定した場合に支給される助成金です。1人当たりの助成額は改定後の賃金水準や時間数によって異なります。

賃金規定等共通化コースは、正規雇用と共通の職務等に応じた賃金規定を新たに作成・適用した場合に支給されるものです。同一労働同一賃金の取り組みを後押しする制度的な位置づけがあります。

社会保険適用時処遇改善コースは、短時間労働者への社会保険適用と併せて手取り収入が減少しないよう取り組んだ場合に支給されます。社会保険の適用拡大に伴う従業員の手取り減少を防ぐ措置(基本給の増額、新たな手当の支給など)を行った事業主が対象です。

申請手続きと事前準備

キャリアアップ助成金を申請するには、事前に「キャリアアップ計画」を作成し、管轄の労働局に提出・認定を受ける必要があります。この計画は、対象労働者のキャリアアップに向けた取り組み内容と期間を記載するもので、取り組み実施前に提出しなければなりません。計画提出前に実施した取り組みは助成対象外となるため、スケジュール管理が大切です。

正社員化コースの場合、就業規則または労働協約に正社員転換制度を規定し、労働基準監督署に届け出ることが前提条件です(常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合、労働基準法第89条に基づく届出義務)。10人未満の事業場であっても、就業規則の作成と転換制度の明文化が求められます。

就業規則に転換制度を定める際には、転換の対象となる労働者の要件(雇用期間、職種等)、転換後の労働条件(職種・賃金・労働時間等)、転換の手続きを明確に記載する必要があります。曖昧な記載では要件を満たさないと判断されるリスクがあります。

支給申請のタイミングと注意事項

支給申請は、転換後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に行います。申請期限を過ぎると受給できないため、期限管理は厳重に行う必要があります。

不正受給防止の観点から、実地調査が行われることもあります。賃金台帳、出勤簿、雇用契約書、就業規則など、関係書類は整理して保管しておくことが求められます。

過去に不正受給を行った事業主は一定期間(原則5年間)助成金を受給できなくなるため、要件を正確に理解したうえで申請することが重要です。「とりあえず申請してみる」という姿勢ではなく、要件を充足しているかどうかを事前に確認することが大切です。

活用上の現実的な視点

キャリアアップ助成金は活用のメリットが大きい反面、手続きの複雑さや書類管理の負担も少なくありません。助成金の受給を目的として転換制度を整備するのではなく、本来の人材育成・処遇改善の取り組みとして制度を活用するという姿勢が、長期的には安定した人材確保につながります。

社会保険労務士や認定支援機関のサポートを活用することで、手続きの負担を軽減しながら確実に助成金を受給することができます。特に初めて申請する場合は、専門家に相談しながら進めることが重要です。

助成金の受給は、人件費の実質的な削減効果をもたらします。正社員化1人当たり80万円の助成は、採用・育成コストの一部として考えると、人材投資の回収期間を短縮する効果があります。

まとめ

キャリアアップ助成金は、非正規から正規への転換や処遇改善に取り組む中小企業が活用できる助成金制度です。正社員化コースを中心に、賃金改善・社会保険適用対応など多様なコースが設けられています。申請前のキャリアアップ計画の提出と就業規則の整備、申請期限の厳守が受給の要件となるため、事前の準備と計画的な手続き管理が不可欠です。

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