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原価計算

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原価計算

原価計算とは、製品やサービスの製造・提供にかかるコストを体系的に集計・分析する手法です。個別原価計算・総合原価計算の違い、中小企業での活用方法を解説します。

原価計算とは、製品やサービスの製造・提供にかかるコスト(原価)を体系的に集計し、製品単位あたりのコストを算定する手法です。企業会計審議会が公表した「原価計算基準」が実務の基本的な枠組みを提供しており、製造業を中心に幅広い業種で適用されています。

原価計算の目的

原価計算の目的は、大きく5つに整理できます。財務諸表の作成(売上原価・棚卸資産の算定)、価格決定の基礎資料、原価管理(コストダウンの検討)、予算管理(予算編成と予実分析)、経営意思決定(製造か外注かの判断など)です。

中小企業においては、特に価格設定の根拠と原価管理(どこにムダがあるか)を目的として原価計算を導入するケースが多く見られます。「受注した案件が利益を出しているかどうかわからない」「価格交渉でどこまで値引きできるか根拠がない」という課題を抱えている企業にとって、原価計算の導入は経営判断の精度を上げる有効な手段です。

原価の3要素

原価は材料費、労務費、経費の3つに分類されます。

材料費は、製品の製造に直接使用される原材料や部品の費用です。製品の製造に直接充当される主要材料費と、補助的に使用される補助材料費に区分されます。

労務費は、製造に従事する作業員の賃金、給料、賞与、法定福利費などです。製品の製造に直接関わる直接労務費と、工場管理者の人件費などの間接労務費に分かれます。

経費は、材料費・労務費以外の原価要素であり、工場の賃借料、減価償却費、水道光熱費、外注加工費などが含まれます。

これらの3要素はさらに、製品との対応関係から「直接費」と「間接費」に区分されます。直接費は特定の製品に直接紐付けられる費用、間接費は複数の製品に共通して発生する費用です。間接費の製品への配賦方法は原価計算の中でも難しいテーマの一つです。

個別原価計算と総合原価計算

原価計算の方法は、製品の生産形態によって大きく2つに分かれます。

個別原価計算は、受注生産型の製品やプロジェクトに適用される方法です。個々の製造指図書(ジョブオーダー)ごとに原価を集計します。建設業、印刷業、システム開発業など、個別の受注に基づいて製造・提供する業種に適しています。案件ごとの採算管理に直結するため、見積精度の向上や不採算案件の特定に活用できます。

総合原価計算は、大量生産型の製品に適用される方法です。一定期間に生産された製品全体に原価を配分し、平均的な製品単位原価を算出します。食品製造業、化学製品製造業など、連続的に同種製品を生産する業種に適しています。

標準原価計算と実際原価計算

原価計算には、事前に設定した標準(目標)と実際の発生額を比較する「標準原価計算」と、実際に発生した原価を集計する「実際原価計算」があります。

実際原価計算は事実の記録という意味では正確ですが、原価が確定するのが期末になるため、経営判断への活用が遅れます。標準原価計算は、あらかじめ材料の標準消費量・標準単価、労働時間の標準などを設定し、実際の発生額との差異(原価差異)を分析することで、どの工程でコスト超過が発生したかを特定できます。

中小企業では精緻な標準原価計算の仕組みを構築するのは難しい場合もありますが、主要な材料費と労務費だけでも標準を設定して実績と比較するだけで、原価管理の精度が向上します。

中小企業における原価計算の導入

中小企業では、精緻な原価計算の仕組みを構築する余裕がないケースも多いのが実態です。しかし、簡易的な方法であっても原価計算を導入することで、利益の出る製品と出ない製品を識別し、価格交渉や製品構成の見直しに活用できます。

直接材料費と直接労務費だけでも把握できれば、限界利益(売上高から変動費を差し引いた利益)の計算が可能になり、採算判断の精度が向上します。限界利益がプラスであれば、固定費の回収に貢献している製品・サービスとして継続する意義があります。限界利益がマイナスの場合は、製造するほど損失が拡大しているため、抜本的な見直しが必要です。

財務改善・収益構造の改善方法と原価計算を組み合わせることで、コスト構造の可視化から財務改善への道筋を描きやすくなります。

原価計算と税務上の取り扱い

製造業や建設業では、期末の棚卸資産(仕掛品・製品)の評価に原価計算の結果を用います。法人税法上、棚卸資産の評価方法は原価法(最終仕入原価法・総平均法・先入先出法等)または低価法のいずれかを選択して届け出ます(法人税法第29条)。

製造原価の算定が適切でないと、棚卸資産の評価額が誤り、売上原価の計算に影響します。その結果、法人税の課税所得にも誤りが生じるため、製造業における原価計算の正確性は税務上も重要です。

まとめ

原価計算は製品やサービスのコストを体系的に把握する手法であり、価格設定、原価管理、経営判断の基礎となります。個別原価計算と総合原価計算は生産形態に応じて使い分け、自社の業態に適した方法を選択することが重要です。中小企業では精緻な仕組みの構築が難しい場合でも、直接材料費と直接労務費の把握から始めることで採算管理の精度を高めることができます。限界利益の視点を持つことが、製品・サービスの採算判断と価格交渉力の向上につながります。

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