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公益通報 -- 組織内の不正行為を通報する制度

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公益通報 -- 組織内の不正行為を通報する制度

公益通報とは、事業者内部の法令違反行為について、労働者が所定の通報先に通報する行為です。公益通報者保護法に基づく保護制度と企業の対応義務を解説します。

公益通報とは、労働者等が、事業者内部で発生している法令違反行為(犯罪行為、行政処分の対象となる行為など)について、事業者内部、行政機関、または報道機関等の外部に通報する行為です。公益通報者保護法(平成16年法律第122号)がその法的基盤を提供しています。

公益通報者保護法の概要

公益通報者保護法は、公益通報を行った労働者に対する解雇や不利益取扱いを禁止することで、事業者内部の法令違反の早期発見と是正を促進する制度です。2022年6月施行の改正法により、従業員300人を超える事業者には内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備が義務付けられました。従業員300人以下の事業者は努力義務ですが、実務上の意義は変わりません。

通報の対象となる法令違反(通報対象事実)は、刑法、食品衛生法、金融商品取引法、個人情報保護法など約500本の法律に定める犯罪行為や行政処分の対象行為です。単なる社内ルール違反や道義的な問題は対象外であり、法令違反に該当する事実かどうかの判断が重要になります。

通報先の3類型と保護要件

公益通報者保護法は、通報先に応じて3つの類型を定めており、それぞれ保護の要件が異なります。

第1号通報(事業者内部への通報)は、通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると思料する場合に保護されます。内部通報窓口や上司への報告がこれに当たります。保護要件が最も緩やかで、通報者が通報対象事実の発生を信じるに足りれば保護の対象となります。

第2号通報(行政機関への通報)は、通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合に保護されます。証拠の存在や具体的な根拠が求められる点で、第1号より要件が厳しくなっています。

第3号通報(報道機関等への外部への通報)は、さらに厳格な要件が求められます。内部通報や行政機関への通報では証拠隠滅のおそれがある場合、または通報先が通報者を特定させる情報を漏らすおそれがある場合などに限り保護されます。

2022年の改正法では、退職者(退職後1年以内)や役員も保護対象に追加されました。また、事業者に対して「公益通報対応業務従事者」の指定が義務付けられ、従事者には通報者を特定させる情報について刑事罰付きの守秘義務が課されています(同法第12条、第21条)。

中小企業への影響と実務対応

従業員300人以下の中小企業においては、内部通報体制の整備は法律上の努力義務です。しかし、コンプライアンス体制の構築やガバナンスの強化、不正の早期発見による損害の防止という観点から、中小企業にも通報制度の導入が推奨されています。

消費者庁が公表する「公益通報者保護法に基づく指針」では、内部通報体制の具体的な整備方法が示されており、中小企業向けのガイドラインも策定されています。中小企業が導入する場合の最低限の体制としては、通報窓口の設置(外部弁護士や第三者機関の活用も有効)、通報者の秘密保護のルール、不利益取扱いの禁止規定の整備が考えられます。

内部通報制度を整備することで、問題が表面化する前の段階で経営者が把握し、早期に対処できるようになります。問題が外部に漏れてから発覚するよりも、企業へのダメージを最小限に抑えられる点で、制度導入の経営上のメリットは大きいといえます。

不利益取扱いの禁止と違反時の対応

事業者は、公益通報をしたことを理由として労働者に対して解雇その他の不利益取扱いをしてはなりません(同法第3条、第4条、第5条)。禁止される不利益取扱いには、解雇のほか、降格、減給、退職勧奨、訓告、不当な配転なども含まれます。

不利益取扱いが認められた場合、解雇は無効となり(同法第3条)、損害賠償請求の対象にもなりえます。2022年改正法では、これらの規定が強化されており、企業側が通報を理由とした不利益取扱いを行ったことが発覚した場合の法的リスクは高まっています。

従業員が公益通報を行った場合、使用者側が「通報を理由とした不利益取扱いではない」と主張するためには、通報と不利益取扱いの間に相当の時間的間隔があること、業務上の正当な理由が存在することなどを立証する必要があります。実務上は、通報があった事実を記録し、その後の人事上の処遇に関して合理的な説明ができる状態を維持しておくことが重要です。

よくある誤解と注意点

「不正を通報すれば必ず保護される」という誤解があります。保護要件は通報の種類と通報先によって異なり、要件を満たさない通報は保護されない場合があります。また、通報対象事実が存在しない虚偽の通報(いわゆる「嫌がらせ目的の通報」)は保護の対象外です。

企業側の注意点として、内部通報を受け付けたにもかかわらず適切に調査・対応しなかった場合、通報者が行政機関や外部に通報するエスカレーションが発生するリスクがあります。内部での対応窓口が機能していれば、外部への漏洩リスクを低減できるため、通報を受けた際の調査・対応プロセスをあらかじめ整備しておくことが企業防衛の観点からも重要です。

財務上の不正(架空経費の計上、横領など)は、公益通報の対象となる法令違反に該当する場合があります。経営改善の専門家への相談も含め、不正の早期発見と対処が財務改善の土台となります。

まとめ

公益通報は、組織内の法令違反を早期に発見・是正するための重要な制度です。公益通報者保護法により通報者は保護されており、企業側は通報を理由とする不利益取扱いが禁止されています。2022年改正で保護対象の拡大と企業の体制整備義務が強化されたことを踏まえ、中小企業においても内部通報制度の整備を検討し、コンプライアンス体制の強化につなげることが望ましいといえます。

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