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清算価値

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清算価値

清算価値とは、企業が事業を停止して資産をすべて処分した場合に得られる回収見込額のことです。民事再生手続きにおける清算価値保障原則との関係を解説します。

清算価値(Liquidation Value)とは、企業が事業活動を停止し、保有するすべての資産を個別に売却・処分した場合に得られると見込まれる金額の合計から、負債を差し引いた残額のことです。企業を継続的に運営する前提で評価する「継続企業価値(ゴーイング・コンサーン・バリュー)」と対比される概念であり、事業再生や倒産処理の場面で重要な意味を持ちます。

清算価値の算定方法

清算価値の算定にあたっては、企業の資産をすべて時価で評価し直します。帳簿価額と清算時の処分価額は大きく異なることが一般的です。

不動産については、通常の市場取引価格よりも低い金額(早期売却を前提とした価格)で評価されることが多いです。「早期処分価値」などとも呼ばれ、正常な市場での取引価格の60〜80%程度になることがあります。機械設備や在庫品も、中古市場の相場や処分費用を考慮して評価します。

売掛金や貸付金については、回収可能性を個別に査定します。不良債権化している売掛金は額面の数パーセント程度の評価にとどまることもあります。のれん(営業権)やブランド価値などの無形資産は、清算時にはほとんど評価されません。

算定した資産の処分見込額から、未払いの負債(金融機関借入金、買掛金、未払賃金、租税公課等)や清算にかかる費用(弁護士費用、不動産仲介手数料、退職金など)を差し引いた残額が清算価値となります。中小企業の清算価値の算定は複雑であり、公認会計士や財務専門家への依頼が通常です。

清算価値と継続企業価値の違い

継続企業価値とは、企業が将来にわたって事業を継続することを前提として、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いた価値のことです。一般的に、継続企業価値は清算価値を上回ります。これは、事業を継続することで将来の収益が期待でき、個別資産の単純な売却価値よりも高い価値が生まれるためです。

ただし、業績が悪化して将来の収益が見込めない場合には、清算価値が継続企業価値を上回ることもあります。このような場合、事業を継続させるよりも清算・解散した方が債権者全体への弁済額が大きくなるため、清算の選択が合理的と判断されることがあります。

清算価値保障原則

民事再生法第174条第2項第4号には、再生計画における弁済額が清算価値を下回る場合には、裁判所が再生計画の認可をしてはならないという規定があります。これを「清算価値保障原則」といいます。

清算価値保障原則の趣旨は、債権者の保護にあります。企業が民事再生手続きを通じて事業を継続する場合の弁済額が、仮に破産して清算した場合の配当額を下回るのであれば、債権者にとっては破産の方が有利であり、再生手続きを認める合理性がないためです。

会社更生法第168条第3項にも同様の趣旨の規定があり、清算価値保障原則は日本の倒産法制における基本的な原則として位置づけられています。実務上、民事再生計画の策定にあたっては、まず清算価値を算定し、再生計画における債権者への弁済総額がその清算価値を上回るかどうかの確認が不可欠です。

中小企業における実務的な意義

中小企業が財務危機に陥った際、清算するか事業を継続(または再生)するかを判断するうえで、清算価値の算定は重要なステップです。清算価値が小さければ、清算しても債権者への配当はほとんどなく、事業を継続して少しずつ弁済した方が全体の回収額が大きくなる可能性があります。

逆に、事業の将来性がなく継続企業価値が清算価値を大きく下回るケースでは、早期に清算・解散の判断をした方が、関係者への影響を最小限に抑えられる場合があります。こうした判断を誤ると、経営者個人の責任問題(善管注意義務違反等)にも発展しかねません。

事業再生を検討している経営者は、弁護士や公認会計士と連携して清算価値と継続企業価値の両面から現状を把握し、最善の選択肢を検討することが大切です。

まとめ

清算価値は企業の資産を個別に処分した場合の回収見込額であり、継続企業価値とは異なる概念です。民事再生法および会社更生法における清算価値保障原則により、再生計画の弁済額は清算価値を上回る必要があります。事業再生の判断においては、清算価値と継続企業価値の比較が、事業を存続させるか清算するかの重要な判断材料となります。

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