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特別償却

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特別償却

特別償却とは、租税特別措置法に基づき、通常の減価償却に加えて一定額を上乗せして償却できる税制優遇措置です。対象設備の要件と適用方法を解説します。

特別償却とは、租税特別措置法に基づき、一定の要件を満たす設備投資を行った場合に、通常の減価償却費に加えて一定額を上乗せして償却することが認められる税制優遇措置です。設備投資の初年度に多額の償却費を計上できるため、投資年度の課税所得を圧縮する効果があります。

通常の減価償却との違い

通常の減価償却は、法人税法に基づき、資産の耐用年数に応じて毎期均等(定額法)または逓減(定率法)で償却費を計上します。一方、特別償却は租税特別措置法に基づく政策的な優遇措置であり、通常の償却に上乗せして追加の償却が認められるものです。

特別償却の上乗せ額は、取得価額の一定割合(例えば30%)として計算されます。取得価額1,000万円・耐用年数10年(定額法)の機械装置を例にすると、通常の初年度償却費は100万円ですが、30%の特別償却を適用すると300万円が上乗せされ、初年度に合計400万円の償却費を計上できます。

ただし、資産の取得価額全体は変わらないため、耐用年数全体を通じた償却費の総額は同じであり、課税の繰延べという性質を持ちます。2年目以降の償却費は特別償却の分だけ少なくなるため、税負担の軽減ではなく税負担の前倒し(繰延べ)であることを理解しておくことが重要です。

主な特別償却制度

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制(租税特別措置法第42条の6)は、中小企業者が機械装置(1台160万円以上)や工具器具備品(1台120万円以上)などを取得して事業の用に供した場合に、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除(資本金3,000万円以下の法人)の選択適用が認められる制度です。

対象となる設備は機械装置に限らず、特定のソフトウエアや貨物自動車、内航船舶なども含まれます。ただし、中古品は対象外となる場合があり、新品の設備取得が要件となります。適用を受けるためには確定申告書に必要な書類を添付する必要があります。

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制(租税特別措置法第42条の12の4)は、経営力向上計画の認定を受けた中小企業者が、計画に記載された設備を取得した場合に、即時償却(取得価額の全額を初年度に償却)または10%の税額控除(資本金3,000万円以下)もしくは7%の税額控除の選択適用が認められる制度です。

即時償却は、投資年度の課税所得をゼロに近づける強力な節税手段ですが、翌年度以降の損益にも影響します。設備投資計画と中長期の損益シミュレーションを合わせて検討することが重要です。

なお、経営力向上計画の認定には事業分野別指針に沿った計画の策定と、主務大臣への申請が必要です。認定支援機関の支援を受けながら計画を策定することが一般的です。

特別償却と税額控除の選択

多くの特別償却制度では、特別償却と税額控除の選択適用が認められています。特別償却は課税の繰延べであるのに対し、税額控除は税額そのものが減少するため、長期的な税負担の軽減効果は税額控除のほうが大きいとされています。

たとえば、取得価額1,000万円の設備に対して30%の特別償却(300万円の初年度追加償却)と7%の税額控除(70万円の税額減少)を比較すると、法人税率30%を仮定した場合、特別償却による税負担の軽減額は300万円 × 30% = 90万円ですが、これは繰延べであって最終的には解消されます。一方、税額控除70万円は永続的な節税効果です。

ただし、赤字の年度や繰越欠損金が多い場合は税額控除のメリットが活かせないため、特別償却を選択したほうが有利なケースもあります。また、税額控除の適用を受けるには課税所得が発生していることが前提です。どちらが有利かは個々の企業の財務状況によって異なるため、税理士に相談のうえ判断してください。

適用を受けるための手続き

特別償却の適用を受けるには、確定申告書に「特別償却の付表」を添付する必要があります。申告書の提出を失念した場合、更正の請求によって後から適用を受けることは原則としてできないため、決算期前に顧問税理士と対象設備の確認を行うことが重要です。

中小企業経営強化税制のように、設備取得前に認定計画を提出することが要件になっている制度もあります。設備投資を決定した段階で、適用可能な特別償却制度を税理士に確認し、必要な手続きを事前に進めることが特別償却の恩恵を確実に受けるための重要なポイントです。

まとめ

特別償却は租税特別措置法に基づく税制優遇であり、通常の減価償却に上乗せして初年度に多額の償却費を計上できます。課税の繰延べという性質を持つため耐用年数全体の償却費総額は変わりませんが、資金繰りの改善や投資の早期回収に有効です。税額控除との選択適用が可能な制度が多いため、自社の財務状況と中長期の税負担を踏まえた判断が重要です。

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