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経営者保険の選び方|生命保険・損害保険の活用法

中小企業の経営者が知っておくべき生命保険・損害保険の活用法を解説。事業保障、退職金準備、相続対策など目的別の保険選びのポイントと、税務上の取り扱いをまとめています。

中小企業では経営者個人の能力や信用に事業が大きく依存しているケースが多く、経営者に万一のことがあった場合の事業継続リスクは深刻です。経営者保険(法人契約の生命保険・損害保険)は、事業保障、退職金の準備、相続対策など複数の経営課題に対応できるツールとして活用されています。一方で、2019年の法人税基本通達の改正により保険料の税務上の取り扱いが大幅に見直されたため、節税目的だけでの加入は意味を成さなくなりました。本記事では、経営者保険の種類と目的別の選び方、税務上の注意点を解説します。

経営者保険の種類と特徴

法人が契約者となる生命保険は、保険種類によって保障内容や解約返戻金のカーブが異なります。自社の経営課題に合った保険を選ぶために、各種類の特徴を把握しましょう。

定期保険

一定期間の死亡保障を目的とした保険です。保険期間中に被保険者が死亡した場合に保険金が支払われます。掛け捨て型のため解約返戻金はほとんどなく、保険料は比較的割安です。

事業保障を目的とする場合に適しており、借入金の返済原資、運転資金の確保、取引先への信用維持などを想定して保険金額を設定します。保険金額は、有利子負債の残高に加え、6か月分程度の固定費を目安として算出する方法が一般的です。

長期平準定期保険

保険期間を長期(被保険者の年齢+保険期間が105を超えるなど)に設定した定期保険です。保険期間の前半では解約返戻率が高まり、後半では低下するという特性があります。

この解約返戻金のカーブを利用して、経営者の退職時期に合わせて解約し、退職金の原資として活用するケースがあります。ただし、後述する税務ルールの改正により、損金算入できる割合が制限されている点に注意が必要です。

逓増定期保険

保険期間の経過とともに保険金額が段階的に増加する定期保険です。保険期間の比較的早い時期に解約返戻率がピークに達するため、短期間での資金準備に活用されることがあります。

終身保険・養老保険

終身保険は被保険者が死亡するまで保障が続く保険で、必ず保険金が支払われるため貯蓄性が高い保険です。法人税上は保険料の全額が資産計上となるため、損金算入のメリットはありません。

養老保険は、保険期間中の死亡保障と満期時の生存保障を兼ね備えた保険です。福利厚生目的で全従業員を対象に加入する場合(いわゆるハーフタックスプラン)、保険料の2分の1を損金算入できるケースがあります。

目的別の保険選びのポイント

経営者保険は加入目的を明確にした上で、保険種類と保険金額を設計することが重要です。

事業保障(万一のリスク対策)

経営者に万一のことがあった場合の事業継続資金を確保する目的です。法人が保険金受取人となる定期保険が基本的な選択肢です。必要保障額は、有利子負債の残高、月商の3〜6か月分の運転資金、従業員の退職金・給与(数か月分)、役員借入金の返済原資などを合計して算出します。

保険期間は、後継者が育つまでの期間や借入金の返済期間を目安に設定します。経営状況の変化に応じて定期的に見直しを行い、過不足のない保障額を維持しましょう。

役員退職金の準備

経営者の退職時に支払う役員退職慰労金の原資を保険で準備する方法です。長期平準定期保険の解約返戻金を退職金の原資に充てるスキームが従来から利用されてきました。

役員退職金の適正額は、法人税法上「不相当に高額」と認定されない範囲で設定する必要があります。一般的には「最終報酬月額 x 役員在任年数 x 功績倍率」の計算式(功績倍率法)が用いられ、功績倍率は代表取締役で2.0〜3.0程度が実務上の目安とされています。

相続・事業承継対策

経営者の相続に備え、自社株の評価対策や納税資金の準備として保険を活用する方法もあります。詳細は税理士との個別相談が必要ですが、法人契約の保険により死亡退職金を支給し、相続税の死亡退職金非課税枠(500万円 x 法定相続人の数、相続税法第12条第1項第6号)を活用するケースが代表的です。

保険料の税務上の取り扱い(2019年改正後)

2019年6月の法人税基本通達の改正(令和元年6月28日付課法2-13ほか)により、法人が支払う定期保険等の保険料の取り扱いが大幅に変更されました。

改正後のルールでは、保険の最高解約返戻率に応じて損金算入できる割合が定められています。最高解約返戻率が50%以下の保険は保険料の全額を損金算入可能、50%超70%以下は保険料の60%を損金算入(残り40%は資産計上)、70%超85%以下は保険料の40%を損金算入(残り60%は資産計上)、85%超は保険期間に応じた計算式により限定的な損金算入となります。

この改正により、高い解約返戻率の保険を利用した租税回避的な活用は実質的に封じられました。経営者保険の選択にあたっては、節税効果よりも保障内容や資金準備としての実質的な効果を重視して判断することが重要です。

まとめ

この記事のポイント

  • 加入目的(事業保障・退職金準備・相続対策)を明確にし、必要保障額を具体的に算出する
  • 2019年の通達改正で損金算入割合が制限されたため、節税だけでなく保障内容を重視する
  • 経営状況の変化に応じて定期的に見直し、過不足のない保障額を維持する

保険の活用と並行して、利益改善の方法経営改善チェックリストで財務全体を見直すことも有効です。経営者保険の選び方や財務体質の改善についてご相談がある場合は、無料相談からお問い合わせください。

よくある質問

Q. 経営者保険にはどのような種類がありますか?
A. 代表的なものとして、定期保険、逓増定期保険、長期平準定期保険、終身保険、養老保険があります。目的によって適する保険種類が異なり、事業保障には定期保険、退職金準備には長期平準定期保険や養老保険、相続対策には終身保険が活用されるケースが一般的です。
Q. 法人が支払う生命保険料の税務上の取り扱いはどうなりますか?
A. 2019年の法人税基本通達の改正により、最高解約返戻率に応じて損金算入割合が定められています。最高解約返戻率50%以下の保険は全額損金、50%超70%以下は60%損金、70%超85%以下は40%損金、85%超は保険期間に応じた一定割合のみ損金算入となります。
Q. 経営者に万一のことがあった場合、保険金は何に使えますか?
A. 法人が受取人となる死亡保険金は、借入金の返済、当面の運転資金の確保、取引先への支払い、従業員の給与支払い、後継者への事業承継に伴う費用などに充てることができます。経営者の死亡による信用不安を防ぎ、事業を継続するための資金として機能します。
Q. 経営者保険の見直しはどのタイミングで行うべきですか?
A. 役員報酬の変更時、借入金の増減時、事業承継の方針が固まった時、税制改正があった時が主な見直しのタイミングです。少なくとも3年に1回は保障内容と保険料のバランスを確認し、経営環境の変化に合った設計になっているかを検証することが望ましいです。

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