減価償却
減価償却
減価償却とは、固定資産の取得原価を耐用年数にわたって費用配分する会計処理です。定額法・定率法の違いと中小企業向けの特例を解説します。
減価償却とは、建物・機械設備・車両・器具備品などの固定資産の取得原価を、その資産が使用可能な期間(耐用年数)にわたって各事業年度の費用として配分する会計処理です。企業会計原則および法人税法の両面から規定されており、正しい期間損益計算と適正な課税所得の算定を行ううえで欠かせない基本概念です。
減価償却の対象と耐用年数
減価償却の対象となるのは、時間の経過や使用によって価値が減少する資産(減価償却資産)です。建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、ソフトウェアなどが該当します。一方、土地や借地権のように時間の経過で価値が減少しない資産は減価償却の対象外です。
耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(耐用年数省令)で資産の種類・構造・用途ごとに定められています。主な資産の法定耐用年数として、鉄骨鉄筋コンクリート造の事務所用建物は50年、木造の事務所用建物は24年、普通自動車は6年、パソコンは4年、サーバー用コンピューターは5年が例として挙げられます。
法人税法上は、この法定耐用年数に基づいて償却限度額が計算されます。法定耐用年数より短い期間で償却を行った場合、限度額を超える部分は損金に算入されません(超過額は翌期以降に持ち越されます)。
中古資産を取得した場合は、法定耐用年数を全部経過した場合は「法定耐用年数×20%」、一部経過した場合は「法定耐用年数-経過年数×0.8」で見積もった年数(最低2年)を適用できます。
定額法と定率法の違い
定額法は、取得価額から残存価額を控除した金額を耐用年数で均等に配分する方法です。毎期の償却費が一定となるため、計算が簡便で損益の見通しが立てやすい特徴があります。建物・建物附属設備・構築物については、法人税法上、定額法のみが認められています(2016年4月1日以後取得分)。
具体例として、取得価額1,000万円・耐用年数5年の設備(残存価額0円)の定額法による年間償却費は、1,000万円÷5年=200万円です。5年間にわたって毎年200万円の減価償却費が計上されます。
定率法は、未償却残高(帳簿価額)に一定の償却率を乗じて償却費を計算する方法です。取得初期に大きな償却費が計上され、年を追うごとに償却費が逓減します。現行(2012年4月1日以後取得)の定率法は200%定率法であり、定額法の償却率の2倍の定率法償却率を用います。設備投資の早期費用化によるキャッシュフロー改善の効果があります。
法人の場合、建物等以外の減価償却資産は定率法が法定償却方法とされています。定額法を選択する場合は、所轄税務署に届出が必要です(税務署長への届出がない場合は定率法が適用されます)。
中小企業向けの特例制度
中小企業(資本金1億円以下の法人等)には、減価償却に関する優遇措置が設けられています。
少額減価償却資産の特例(租税特別措置法第67条の5)では、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、事業年度の合計額300万円を限度として全額を損金に算入できます。通常であれば耐用年数にわたって償却すべき資産を即時費用化できるため、節税効果があります。この特例は期限が設けられており、適用期限が延長されているかどうかを確認することが必要です。
一括償却資産(法人税法施行令第133条の2)の制度では、取得価額が20万円未満の減価償却資産を3年間で均等に償却(3分の1ずつ損金算入)できます。少額減価償却資産の特例(30万円未満)と異なり、一括償却資産は年間300万円の上限がなく、固定資産税(償却資産税)の対象にもなりません。
減価償却とキャッシュフローの関係
減価償却費は、損益計算書上では費用として計上されますが、実際の現金支出を伴わない「非資金費用」です。設備を購入した時点ですでに現金は支出されており、それ以降の減価償却費は現金流出を伴いません。
このため、減価償却費の計上は利益を減少させますが、キャッシュフローには影響しません。営業キャッシュフローの計算において、間接法では当期純利益に減価償却費を加算します(利益が減っているが現金は出ていないため、戻し加算)。
中小企業にとって、減価償却費を正確に計上することは「黒字なのに現金がない」という状態の原因を把握するうえでも重要です。利益とキャッシュフローのズレを決算書の読み方・財務分析の観点から理解することが、財務改善の基礎となります。
減価償却の過不足と税務上の取り扱い
税務上、毎期の減価償却は「任意償却」(限度額の範囲内で任意の額を費用計上できる)とされています。ただし、限度額を超える過大な償却は認められません。
損失が出た期に減価償却を少なめに計上して赤字幅を小さく見せるという処理は、会計上は認められる場合がありますが、税務上は繰り延べられた償却費は翌期以降に繰越超過額として扱われ、最終的には全額が損金算入されます。継続的に減価償却を行わないと、資産の帳簿価額が実態と乖離するリスクがあります。
まとめ
減価償却は固定資産の取得原価を耐用年数にわたって費用配分する処理であり、法定耐用年数と定額法・定率法の選択が実務の基本となります。中小企業には30万円未満の少額減価償却資産の即時費用化や中小企業経営強化税制など、有利な特例が用意されています。減価償却費は非資金費用であるため、キャッシュフローへの影響を理解したうえで、設備投資計画と節税対策を検討することが重要です。特例の適用期限や届出要件は毎年変わる可能性があるため、最新情報を税理士と確認するようにしてください。