IT企業が使える支援制度
IT企業・スタートアップで使える補助金まとめ
IT企業・スタートアップ向けの補助金・助成金を解説。ものづくり補助金、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、SBIR制度など、技術系企業が活用できる資金調達支援制度をまとめました。
IT企業やスタートアップは、プロダクトの開発、サーバーインフラの構築、人材の確保など、創業初期から多額の投資が必要な業種です。売上が安定するまでの「死の谷」を乗り越えるために、エクイティファイナンス(株式による資金調達)だけでなく、補助金・助成金を活用する選択肢も検討に値します。
補助金はエクイティと異なり持分の希薄化が発生せず、融資と異なり返済義務もないため、自己資本を維持しながら事業投資を行える手段です。
本記事では、IT企業・スタートアップが活用可能な主要な補助金・助成金を整理し、申請のポイントを解説します。
IT企業向けの主な補助金
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、名称に「ものづくり」と冠されていますが、サービス業やIT企業も対象です。革新的なサービス開発や試作品の開発、生産プロセスの改善に必要な設備投資を支援する制度であり、IT企業の場合はシステム開発に必要なサーバー・ネットワーク機器、開発環境の構築費用、検証用機器の購入費用などが補助対象となり得ます。
補助上限額は750万円から1,250万円(従業員規模による)、補助率は中小企業で2分の1、小規模事業者で3分の2です。審査では「革新性」が最重要の評価ポイントであり、既存技術の単なる応用ではなく、技術的な新規性や他社との差別化が明確に示されている事業計画が高く評価されます。
IT企業が申請する際の注意点として、クラウドサービスの利用料は補助対象期間中の経費のみが対象となること、人件費は補助対象外であること(ソフトウェア開発のコストの大部分が人件費であるIT企業にとっては大きな制約)が挙げられます。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新分野展開や業態転換に取り組む中小企業を支援する制度です。IT企業の場合、受託開発中心の事業モデルからSaaSプロダクトの自社開発・販売への転換、BtoB向けシステムの技術をBtoC市場に展開するケースなどが対象となり得ます。
補助上限額は類型によって異なりますが、成長枠で最大7,000万円と規模が大きいのが特徴です。事業計画書の審査に加えて、認定経営革新等支援機関(金融機関、税理士、中小企業診断士など)の確認書が必要です。
小規模事業者持続化補助金
従業員5人以下のIT企業・フリーランスエンジニアが利用しやすい補助金です。ウェブサイトの制作、展示会への出展、営業資料の作成、広告出稿など、販路開拓に必要な経費が補助対象となります。
一般型の補助上限額は50万円と小さいですが、申請手続きが比較的簡易であり、創業間もないスタートアップにとっても取り組みやすい制度です。
SBIR制度(中小企業技術革新制度)
SBIR制度は、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に基づき、研究開発型のスタートアップや中小企業に対して、政府の研究開発費の一定割合を優先的に配分する制度です。各省庁(経済産業省、文部科学省、厚生労働省など)が個別に研究開発課題を設定し、公募を行います。
SBIR制度の特徴は、研究開発費(人件費を含む場合がある)が補助対象となる点、採択後の事業化フェーズでも支援を受けられる点にあります。AIやIoTといった先端技術の研究開発に取り組むスタートアップにとって、有力な資金調達手段です。
スタートアップ向けの支援制度
NEDOのスタートアップ支援事業
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、技術シーズを持つスタートアップを対象とした支援事業を実施しています。研究開発型スタートアップ支援事業では、実用化に向けた研究開発費用の補助に加え、メンターによる経営指導や大企業とのマッチング支援も提供されます。
J-Startup関連の支援
経済産業省のJ-Startupプログラムに選定されたスタートアップは、政府機関や大企業との連携機会、海外展開の支援、各種補助金の加点措置など、さまざまな優遇を受けられます。選定には推薦が必要ですが、選定されれば資金調達だけでなくビジネス機会の拡大にもつながります。
各自治体の創業支援
各都道府県や市区町村は、独自の創業支援制度を設けています。創業補助金(開業費用の一部補助)、インキュベーション施設やコワーキングスペースの利用補助、創業セミナーの開催などが代表的です。
特に、東京都の「創業助成事業」は助成限度額300万円(助成率3分の2)と比較的手厚い制度であり、IT企業の創業期の支援に活用されています。
IT企業が補助金を活用する際の注意点
補助対象経費の制約
IT企業の最大のコストは人件費ですが、多くの補助金では人件費が補助対象外です。この制約を理解したうえで、補助対象となる経費(設備投資、外注費、クラウド利用料など)に焦点を当てた事業計画を策定する必要があります。
交付決定前の着手禁止
補助金の交付決定前に着手した経費は補助対象外となります。開発スケジュールが厳しいIT企業にとって、交付決定を待つ期間は事業のスピードを落とすことになり得ます。申請から交付決定まで2〜3か月を要することを織り込んだ開発計画を立てることが重要です。
知的財産の取り扱い
補助事業で生み出された知的財産(特許、ソフトウェアの著作権など)は、原則として補助事業者に帰属しますが、補助金の種類によっては報告義務や、処分制限期間中の譲渡制限が課される場合があります。公募要領で知的財産の取り扱い条項を確認しておくことが大切です。
業種を問わない資金繰り改善の全体像については、資金繰り改善の全体ガイドで体系的に解説しています。
売掛金の早期資金化を検討している場合は、ファクタリングの仕組みと選び方も参考になります。
まとめ
要点
- ものづくり補助金・事業再構築補助金などの汎用制度と、SBIR・NEDOなどの研究開発特化型制度を使い分ける
- 人件費は多くの補助金で対象外。設備投資・クラウド環境構築・外注開発費用が主な活用先となる
- 補助金は持分希薄化も返済義務もなく、自己資本を維持しながら事業投資できる手段として有効
補助金・助成金の申請や資金調達で判断に迷う場合は、財務改善ナビの無料相談窓口で事業規模、業種、資金需要を共有してください。
よくある質問
- Q. SaaS企業でも補助金は使えますか?
- A. はい、SaaS企業も中小企業の要件を満たせば各種補助金に申請可能です。ものづくり補助金では、SaaSプロダクトの開発に必要なサーバー構築費用やクラウド利用料(一定期間分)が補助対象となる場合があります。事業再構築補助金では、新たなSaaSサービスの開発・展開が対象となり得ます。ただし、人件費は多くの補助金で対象外である点に注意が必要です。
- Q. スタートアップ向けの補助金にはどのようなものがありますか?
- A. 中小企業庁の各種補助金に加え、SBIR制度(中小企業技術革新制度)を通じた研究開発補助金、NEDOのスタートアップ支援事業、経済産業省のJ-Startup関連の支援策などがあります。各自治体も独自のスタートアップ支援制度(創業補助金、インキュベーション施設の利用補助など)を設けている場合があり、所在地の自治体の制度を確認することが重要です。
- Q. 補助金で人件費は補助されますか?
- A. 多くの中小企業庁系の補助金では、人件費は補助対象外です。ものづくり補助金では機械装置費や技術導入費が主な対象であり、事業再構築補助金では建物費や機械装置費が中心です。ただし、SBIR制度に基づく研究開発補助金やNEDOの支援事業では、研究者の人件費が補助対象に含まれるケースがあります。公募要領で補助対象経費を確認してください。
- Q. 補助金の申請から入金までどのくらいの期間がかかりますか?
- A. 補助金は原則として後払い(精算払い)です。採択後に事業を実施し、完了報告を経て入金される流れとなるため、申請から入金までは通常6か月〜1年程度かかります。その間の資金繰りを考慮し、自己資金やつなぎ融資を確保しておく必要があります。
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