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未収金処理

債権種別で相場は変わる

未収金処理 9分で読める

債権の売却相場と種類別の取引目安

債権売却の相場を、売掛金・不良債権・リース債権・担保付き債権の種類別に比較。買取先(サービサー・ファクタリング業者・投資ファンド)ごとの価格差、ファクタリング手数料相場との違い、譲渡損益の税務処理と消費税の扱いまで実務目線で解説します。

「債権を売却すると、どのくらいの価格になるのか」「売掛金、リース債権、担保付き債権で相場は違うのか」――債権処理を検討するとき、最初に知りたいのは売却価格の目安です。

債権売却の相場は、正常債権か不良債権か、担保や保証があるか、売却先が誰かによって大きく変わります。本記事では、債権売却全般の相場を種類別・売却先別に整理し、ファクタリングや貸倒処理との違いまで解説します。

債権売却とは何か

債権売却とは、企業が保有する金銭債権を第三者に譲り渡し、対価を受け取る取引です。法律上は債権譲渡であり、売掛金、貸付金、リース債権、クレジット債権、不動産担保債権などが対象になります。

ただし、すべての債権が同じ価格で売れるわけではありません。正常な売掛債権は、期日に入金される可能性が高いため額面に近い価格で取引されます。長期滞留した不良債権は、回収リスクを買い手が負うため、額面の1〜10%程度が一般的な目安になります。

価格の本質は「回収可能性」と「処理コスト」

買い手は、額面ではなく期待回収額を見ます。担保があり、債務者の所在や資産が明確で、書類も整っていれば評価は上がります。反対に、時効が近い、債務者と連絡が取れない、契約書がない債権は、低い価格または取扱不可になります。

債権の状態価格帯の目安代表的な売却先
正常な売掛債権額面80〜95%程度ファクタリング会社
期限超過だが回収見込みあり額面10〜50%程度個別交渉、投資家、関連業者
長期滞留の不良債権額面1〜10%程度サービサー、バルクセール
時効間際・証拠不足額面1%前後または取扱外限定的

法的根拠と売却できる範囲

債権売却の根拠は民法にあります。一方で、買い手が業として回収を行う場合は、弁護士法やサービサー法の制限を受けます。

民法第466条・第467条・第468条

民法第466条は債権の譲渡性を定め、第467条は債務者や第三者への対抗要件を定めています。第468条により、債務者は譲渡人に対して有していた抗弁を、一定の範囲で譲受人にも主張できます。売却価格は、この抗弁リスクも織り込んで決まります。

サービサーが買い取って回収できるのは、サービサー法第2条第1項の特定金銭債権に限られます。一般事業会社の債権でも、発生原因や遅延状況によって扱いが分かれるため、サービサーへの売却を考える場合はサービサーへの債権譲渡で対象範囲を確認してください。

無許可業者への売却と回収委託に注意

債権を買い取るだけでなく、他人の債権について報酬を得て回収交渉を行うと、弁護士法第72条の問題が生じます。売却先がサービサーなのか、ファクタリング会社なのか、単なる事務代行なのかを契約前に確認してください。

債権種別ごとの相場マトリクス

債権種別ごとに、買い手が重視するポイントは異なります。価格帯は一般的な目安です。

債権種別価格目安高評価要因低評価要因
売掛金正常80〜95%、不良1〜10%検収済み、債務者の信用力、請求根拠争いあり、長期滞留、譲渡制限
リース債権額面5〜20%物件価値、保証人、残価物件不明、契約解除済み
クレジット債権額面3〜15%件数規模、本人確認、支払履歴少額単発、本人情報不足
個人貸付原則限定的公正証書、担保、保証サービサー対象外になりやすい
不動産担保債権額面20〜70%担保余力、順位、評価書担保割れ、先順位過大
連帯保証付き債権額面5〜30%保証人資力、保証契約書保証無効争い、所在不明

担保付き債権や保証付き債権は、回収原資が増えるため価格が上がりやすい一方、担保評価や保証の有効性を確認する手間が増えます。不動産担保債権では、登記順位、固定資産評価、先順位債権額、任意売却の見込みが価格を左右します。

売却先別の相場差と市場規模

売却先によって、評価ロジックと価格が変わります。サービサーは回収困難債権を専門に扱いますが、ファクタリング会社は正常債権の早期現金化を主目的にします。バルクセール市場では、多数の債権を束ねてポートフォリオとして評価します。

売却先向いている債権価格の見方注意点
サービサー長期滞留、不良債権、特定金銭債権回収可能性から逆算対象債権が限定される
ファクタリング会社正常な売掛金入金期日と債務者信用不良債権は対象外になりやすい
バルクセール市場少額多数債権、大量ポートフォリオ全体の回収率と管理コスト個別債権の高値売却には向かない
個別交渉担保付き、関係者がいる債権買い手固有の回収見込み利害関係や税務リスクを確認

法務省「債権回収会社(サービサー)の業務状況について」(2026年3月27日公表)によれば、2025年12月31日現在の営業会社数は74社、当期取扱債権数は1,393万件、当期取扱債権額は12兆2,744億円です。うち譲受債権額は1兆6,199億円、受託債権額は10兆6,545億円と公表されています。最新版は法務省ウェブサイトを参照してください。

ファクタリングとの相場差

債権売却と聞くと、ファクタリングを思い浮かべる方も多いはずです。両者は同じ債権譲渡を使いますが、対象債権の状態が違うため価格差が大きくなります。

比較項目不良債権売却ファクタリング
対象回収困難・長期滞留債権回収見込みのある売掛金
価格目安額面1〜10%程度額面80〜95%程度
主目的BS改善、回収業務削減資金繰り改善
買い手のリスク回収不能リスクが高い債務者の入金遅延リスク中心
使う場面督促後も回収困難入金期日前の早期現金化

相場差の本質は、買い手が負うリスクです。ファクタリングでは、請求先が通常どおり支払う前提で、期日までの時間と信用リスクを価格に反映します。不良債権売却では、回収できない可能性そのものを買い手が負うため、価格は大きく下がります。

売却かファクタリングか判断したい方へ

債権の入金予定日、滞留期間、債務者との連絡状況を整理すると、売却・ファクタリング・自己回収のどれが適するか見えます。未収債権の買取査定を相談する

売却手続きと税務処理の考え方

債権売却の実務は、債権の棚卸しから始まります。売却対象を決め、書類を整え、複数の売却先に打診し、価格と契約条件を比較します。

1

債権の棚卸し

債権額、発生日、滞留期間、入金履歴、担保・保証、契約書の有無を一覧化します。

2

売却先候補の選定

債権の状態に応じて、サービサー、ファクタリング会社、個別買い手、自己回収を比較します。

3

査定資料の提出

契約書、請求書、納品・検収記録、督促記録、債務者情報を提出し、価格提示を受けます。

4

契約条件の確認

価格、表明保証、買戻し条項、対抗要件、入金時期、通知方法を確認します。

5

売却損の会計処理

売却代金と帳簿価額の差額を債権売却損として処理し、必要に応じて税理士に確認します。

税務に関する一般的情報として、第三者への市場価格による売却で生じた損失は、法人税法第22条の損金算入の枠組みで扱われます。一方、貸倒損失は、回収不能の事実や形式基準など、別の要件確認が必要です。関連会社へ著しく低い価格で売ると寄附金認定のリスクがあるため、第三者査定や取締役会議事録を残します。

売却の具体手順は不良債権を売却する方法と手順で、サービサー相場の詳細はサービサー債権譲渡の相場と査定基準で解説しています。

売却損と貸倒損失の比較

債権を処理するときは、「売って損失を確定する」のか、「回収不能として貸倒処理する」のかを分けて考えます。どちらも帳簿上の債権を減らす効果がありますが、証拠として求められる資料が違います。

項目債権売却損貸倒損失
発生原因第三者への譲渡価格と帳簿価額の差額回収不能・形式基準などによる損失
根拠の中心売買契約、査定書、入金記録破産手続、債務超過、督促不能、債権放棄通知など
税務上の見方市場価格での取引か貸倒要件を満たすか
リスク関連会社間の低額譲渡は寄附金認定要件不備なら損金否認
向く場面買い手がつく債権、相場を示せる債権買い手がつかず回収不能が明確な債権

売却損は、第三者に市場価格で売った事実を示しやすい点が利点です。複数社の査定書、契約書、入金記録、取締役会議事録があれば、処理の合理性を説明しやすくなります。貸倒損失は、売却先を探す必要がない一方、回収不能の事実を示す資料が不足すると税務上の争点になりやすい処理です。

価格がつかない債権の扱い

査定依頼をしても、価格がつかない債権があります。価格がつかないこと自体が、回収可能性の低さを示す材料になる場合もありますが、そのまま損失処理できるとは限りません。なぜ査定対象外になったのかを記録しておくと、その後の判断に使えます。

査定対象外になりやすい理由次に確認すること
時効完成の疑いがある最終入金日、債務承認、時効更新の有無
債権の発生根拠が弱い契約書、発注メール、納品・検収資料
債務者が所在不明住所調査、商業登記、郵便返戻記録
争いが強い請求額の内訳、相手方の反論、和解余地
件数が少なく管理コストが高い同種債権の追加、バルク化の可否

売却できない債権でも、すぐに放置へ戻すのではなく、自己回収、弁護士委任、貸倒処理、債権放棄を並べて検討します。特に大口債権は、低い査定でも売却するほうがよいのか、訴訟費用をかけて回収を狙うほうがよいのかを比較します。

売却以外を選ぶべきケース

売却は有効な処理方法ですが、すべての債権に向くわけではありません。回収見込みがまだ高い債権は、弁護士委任や自己回収のほうが手残りが大きくなる場合があります。正常な売掛金で入金を早めたいだけなら、ファクタリングのほうが合います。

状況検討しやすい手段理由
期日前の売掛金を早期現金化したいファクタリング不良債権ではなく正常債権
訴訟で回収できる見込みがある弁護士委任回収額を残せる可能性がある
回収不能が明らかで税務要件を満たす貸倒処理売却先を探すコストを省ける
少額多数で社内工数が重いバルク売却管理コストを外部化できる

家賃保証会社の代位弁済債権MVNOの通信料未収金のように、件数が多い債権はバルク売却の候補になります。個別性が強い大口債権は、売却前に回収余地を再評価します。

債権売却の相場と処理方法を相談する

売却価格だけでなく、貸倒処理、自己回収、弁護士委任との比較も含めて整理できます。未収債権の買取査定を相談する

自社で作る査定用リスト

債権売却の相談前には、会計システムから出した残高一覧だけでなく、査定に使える形のリストを作ります。サービサーや買い手が見たいのは、科目残高ではなく、債権ごとの回収可能性です。

項目記載内容使われ方
債務者名法人名、個人名、顧客番号名寄せ、反社確認、所在確認
債権額元本、遅延損害金、入金済み額買取対象額の特定
発生日・期日請求日、支払期日滞留期間と時効の確認
最終接触日最終督促、最終入金、債務承認回収可能性と時効管理
証拠書類契約書、請求書、検収、メール債権の有効性確認
担保・保証抵当権、保証人、連帯保証回収原資の確認

このリストが整っていると、売却先ごとの見積もりを比較しやすくなります。逆に、資料が不足したまま複数社へ相談すると、各社が別々の前提で価格を出し、比較できない見積もりになりがちです。

業種別債権ではデータ形式も価格に影響する

少額多数債権では、紙の請求書よりも、CSVなどで債権明細を提出できるかが査定の進み方に影響します。件数が多いほど、買い手は個別書類よりもデータの整合性を重視します。

業種例見られるデータ
通信・MVNO顧客ID、契約日、解約日、請求月、本人確認情報
新電力供給地点、使用量、請求月、供給停止日
家賃保証物件、賃借人、代位弁済日、退去状況、保証人
SaaS契約プラン、利用期間、解約日、請求履歴

データに重複や欠損が多いと、買い手側の確認コストが増え、価格が下がりやすくなります。売却を急ぐ前に、名寄せ、重複削除、債権額の残高確認を済ませておくと、査定の前提が揃います。

まとめ

債権売却相場の要点

  • 正常債権は額面に近く、不良債権は額面1〜10%程度まで下がるのが一般的な目安
  • 債権種別、担保・保証、債務者属性、書類整備、時効が価格を左右する
  • サービサー、ファクタリング会社、バルクセールでは対象債権と評価ロジックが違う
  • 売却損と貸倒損失は税務上の扱いが異なるため、処理前に資料を整える

債権売却の相場は、債権の名前だけでは決まりません。正常債権なのか、滞留しているのか、担保や保証があるのかを分けて考えると、売却すべきか、回収を続けるべきかを判断しやすくなります。

よくある質問

Q. 債権売却の相場はどのくらいですか?
A. 不良債権の場合は額面の1〜10%程度が一般的な目安です。正常な売掛債権をファクタリングする場合は80〜95%程度になることがあります。
Q. 債権の種類で売却価格は変わりますか?
A. 変わります。担保・保証の有無、債務者属性、証拠書類、時効、債権の流通性によって評価が大きく異なります。
Q. 売却と貸倒損失はどちらが有利ですか?
A. 売却は市場取引として損失を確定しやすい一方、貸倒損失は税務上の要件確認が必要です。税務に関する一般的情報を踏まえ、税理士への確認を推奨します。
Q. ファクタリングとの相場差はなぜ大きいのですか?
A. ファクタリングは回収見込みのある正常債権の早期現金化で、不良債権売却は回収困難な債権処理です。買い手が負うリスクが大きく異なります。

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