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サービサーへの債権譲渡|手続き・費用・対象債権の実務ガイド

サービサーへの債権譲渡の仕組みと法的根拠、手続きの流れ、譲渡価格、取扱対象債権の制限を解説。サービサー法・民法を踏まえ、中小企業の経営者・経理担当者が実務判断に使える形でまとめました。

「未収金をサービサーに譲渡できると聞いたが、自社の債権が対象になるのか分からない」「譲渡の流れと費用感を、契約前にひととおり把握しておきたい」――こうした疑問は、不良債権処理を初めて検討する経営者・経理担当者からよく寄せられます。

サービサーへの債権譲渡は、民法とサービサー法(債権管理回収業に関する特別措置法)に基づく合法的な取引ですが、対象となる債権の範囲や手続きには独特のルールがあります。本記事ではサービサーへの債権譲渡の仕組みと法的根拠、実際の流れ、費用と価格相場、譲渡できないケースまでを実務ベースで整理します。

サービサーへの債権譲渡とは何か

サービサーへの債権譲渡とは、回収困難になった金銭債権を、法務大臣の許可を受けたサービサー(債権回収会社)に有償で譲り渡す取引です。譲渡人(債権者)は売却代金を受け取り、譲受人(サービサー)は買い取った債権を自ら回収して利益を得ます。

実務上は「未収金買取」「不良債権売却」と呼ばれることもあり、いずれも法律上は「債権譲渡」という法律行為に該当します。

取引の本質:不良債権の売買

サービサーへの債権譲渡は、回収可能性が下がった債権を額面より低い価格で売却する取引です。100万円の債権を5万円で売却すれば、債権者は5万円を即時回収でき、95万円分の不良債権が帳簿から消えます。サービサーは買い取った債権を独自に回収し、額面と取得価格の差で利益を確保します。

この仕組みが成り立つのは、サービサーが自社で回収専門部隊を抱え、督促・交渉・法的手続きを規模の経済で安価に運用できるためです。一方の債権者は、本業から回収業務を切り離して人的リソースを節約できます。

サービサーが扱える債権は「特定金銭債権」に限定される

サービサーへの債権譲渡で必ず確認すべきポイントは、サービサーが取り扱える債権が法律で限定されている点です。

サービサー法第2条第1項:特定金銭債権の範囲

サービサーが取り扱えるのは「特定金銭債権」と呼ばれる種類の債権に限られます。代表的なものは金融機関の貸付債権・リース債権・クレジット債権・倒産手続中の者の債権・ファクタリング会社が買い取った売掛債権などです。一般事業会社の通常の売掛金は原則として対象外です。

ただし制度施行後の改正で取扱範囲は段階的に拡大されており、業種特有の少額大量債権(MVNO の通信料未収金新電力の電気料金未収金家賃保証会社の代位弁済債権 など)は対象に含まれるケースが増えています。自社の債権が対象になるかは、サービサーの個別判断によるため、相談時に確認することが必要です。

法的根拠:民法とサービサー法の二層構造

サービサーへの債権譲渡が合法的な取引として成立する根拠は、民法とサービサー法という2つの法律の組み合わせにあります。

民法第466条:債権の自由譲渡原則

債権そのものを売買することの根拠は、民法に定められています。

民法第466条第1項

債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

金銭債権は性質上譲渡可能なので、原則として第三者に売却できます。これが「未収金を売る」という発想の出発点です。

2020年4月施行の改正民法では、譲渡制限特約があっても債権譲渡自体は有効と定められました(同条第2項)。ただし悪意・重過失の譲受人に対しては債務者が履行を拒める規定が残っているため、特約付きの債権を譲渡する際は実務的な配慮が必要です。

サービサー法:弁護士法72条の特例として

民法上は誰でも債権を買い取れそうに見えますが、ここで関わってくるのが弁護士法第72条(非弁行為の禁止)です。

弁護士法第72条の趣旨

他人の法律事務を業として取り扱うことは、原則として弁護士または弁護士法人に限られます。債権の取立てや交渉も「法律事務」に該当するため、無許可で業として行うと弁護士法違反となります。

つまり債権を業として買い取り回収することは、本来であれば弁護士にしかできません。この原則の例外として制定されたのが、サービサー法(正式名称:債権管理回収業に関する特別措置法、平成10年法律第126号)です。

サービサー法は、不良債権処理を加速する政策目的のもと、株式会社の形態で一定の要件を満たす事業者に債権回収業務を解禁しました。つまりサービサーに債権を譲渡できるのは、サービサー法によって弁護士法第72条の例外と位置づけられているからです。

サービサー許可の主な要件

サービサーとして認可されるには、次の要件を満たす必要があります。

要件内容
法人形態株式会社のみ
資本金5億円以上
役員構成常務に従事する取締役に弁護士1名以上
反社会的勢力関与排除の体制
主管庁法務大臣の許可

法務省の公表によれば、許可を受けているサービサーは70社程度です(2025年時点)。譲渡先のサービサーが正規の許可を受けているかは、法務省ウェブサイトの「債権回収会社(サービサー)」一覧で確認できます。

サービサーへの債権譲渡の流れ

サービサーへの債権譲渡は、相談から代金受領まで一般的に2〜4週間で進みます。流れを5ステップで整理します。

1

サービサーへの相談・債権情報の提出

債権者の概要、債務者の名称・所在地、債権額、契約書の有無、督促履歴などを提示します。複数のサービサーに並行相談して相見積もりを取るのが一般的です。

2

デューデリジェンス(査定)

サービサー側で債権の法的有効性・債務者の支払い能力・担保の有無・回収コスト見込みを精査します。1週間前後で買取価格が提示されます。

3

債権譲渡契約の締結

提示された価格に合意したら債権譲渡契約を締結します。契約書には譲渡対象債権の特定、買取価格、表明保証、譲渡通知の段取りなどが盛り込まれます。

4

対抗要件の具備(債務者通知または登記)

民法第467条の規定に基づき、確定日付のある証書での債務者への通知、または法人間取引であれば債権譲渡登記によって第三者対抗要件を具備します。

5

買取代金の入金・帳簿処理

対抗要件具備の確認後、サービサーから買取代金が入金されます。譲渡損の計上、[貸倒引当金](/glossary/kashidaore-hikiatekin/)の戻し入れなど必要な会計処理を行います。

対抗要件を備える2つの方法

サービサーへの債権譲渡を第三者にも主張できる状態にするには、対抗要件を備える必要があります。実務で使われるのは2つの方法です。

方法手続き費用目安適する場面
確定日付のある証書内容証明郵便で債務者に通知1,500〜3,000円/通少数の債権
債権譲渡登記法務局への登記申請登録免許税7,500円〜(5,000件超は15,000円)多数の債権を一括譲渡

両者の違いと使い分けの詳細は債権譲渡登記の仕組みと活用法で解説しています。

譲渡先のサービサー選びで確認したいこと

サービサーは70社程度ありますが、得意分野や取扱規模に差があります。相談前に確認しておきたいポイントを整理します。

  • 法務省の許可番号と最新の許可状況(許可取消や業務停止命令を受けていないか)
  • 自社の債権種別(B2B売掛金 / B2C少額債権 / 業種特化債権)の取扱経験
  • 単独査定・バルク査定どちらに対応しているか
  • 査定スピード(最短〜最長)
  • 親会社・系列(金融機関系・独立系・外資系)の違い
  • 過去の取扱実績の規模感

複数社に並行で相見積もりを取り、価格と対応スピードを比較するのが基本です。

譲渡価格はどう決まるか

サービサーへの譲渡価格は、額面の1〜10%程度が一般的な相場とされています。同じ100万円の債権でも、債務者の状況や書類整備の度合いによって買取価格が大きく変わります。

価格を左右する4つの要素

要素高く売れる条件安くなる条件
債務者の支払い能力事業継続中・資産あり休業中・資産なし
債権の裏付け書類契約書・請求書・督促記録が揃っている口頭契約・書類不備
残存時効期間時効まで余裕がある時効が迫っている
ロットサイズまとまった金額・件数少額の単発案件

このうち書類整備は債権者側の準備次第で改善できる項目です。譲渡前に契約書・発注書・納品書・請求書・督促記録をひとまとめにし、債権の存在と金額を立証できる状態に整えておくことで、査定価格を引き上げられる可能性があります。

価格交渉の余地

提示された価格は最終決定ではありません。次のような材料で交渉余地が生まれます。

  • 複数社からの相見積もりをぶつける
  • 同種債権を追加でまとめて売却する(バルク化)
  • 譲渡時期を調整する(決算期前など、サービサー側の在庫戦略に合わせる)
  • 担保情報や債務者資産の補足情報を提示する

ファクタリングとの違い

「サービサー 債権譲渡」と検索する方の多くが混同しがちなのが、ファクタリングです。両者は同じ「債権譲渡」という法律行為を使いますが、対象も使う場面もまったく異なります。

比較項目サービサーへの債権譲渡ファクタリング
対象債権回収困難な不良債権・未収金回収見込みのある正常な売掛金
譲受人サービサー(法務大臣許可)ファクタリング会社(許可制度なし)
取得価格額面の1〜10%額面の80〜95%
主目的BSの不良債権除去・回収業務削減資金繰り改善・早期現金化
根拠法サービサー法 + 民法民法のみ
償還請求原則ノンリコースノンリコース型・リコース型がある

ざっくり言えば、ファクタリングは「すぐ入金される正常債権の前倒し換金」、サービサー譲渡は「焦げ付いた債権の処理」という棲み分けです。両方を比較検討する場合は、未収金買取とは?売却の仕組みと活用すべき場面に判断軸をまとめています。

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サービサーに譲渡できないケース

サービサーへの債権譲渡を検討するときに最初の壁になるのが、対象債権の制限です。次のようなケースは譲渡が困難または不可能です。

法律上譲渡できないケース

ケース理由
一般事業会社のB2B売掛金(単発・少額)サービサー法第2条の特定金銭債権に該当しない場合がある
個人間の単純な貸付債権同上
養育費・婚姻費用性質上譲渡が制限される
法人税・消費税の還付請求権など公法上の債権民法の譲渡規定の対象外
譲渡禁止特約に対し悪意・重過失の場合改正民法第466条第3項により債務者が弁済を拒否可能

実務上譲渡が難しいケース

ケース理由
債務者が行方不明回収可能性が極めて低い
債権の存在を立証できる書類がないサービサーが査定できない
消滅時効が成立または間近法的回収手段が使えない
1件あたり数万円の単発少額債権バルク化できないと査定対象外

業種特有の少額多数債権(家賃保証・通信・新電力・サブスクリプションサービス など)は、単独だと「実務上譲渡が難しいケース」に見えても、業種特化のサービサーがバルクで引き受けるケースが増えています。「個別案件としては小さいが、件数が多い」状態であれば一度相談する価値があります。

弁護士に相談すべきケースとの線引き

サービサー譲渡が向かない場面では、弁護士への相談が有効です。具体的には次のようなケースです。

  • 債務者と現に係争中で、勝訴判決を取って強制執行する見込みがある
  • 個人間の貸付など、サービサー法の対象外である
  • 詐欺・横領・不正請求が絡み、債権の有効性自体を争う必要がある

判断軸の詳細は債権回収を弁護士に依頼する判断基準で扱っています。

実務上の注意点

サービサーへの債権譲渡を進める際に、契約前後で押さえておきたい注意点を整理します。

譲渡禁止特約と債務者対応

取引基本契約に譲渡禁止特約が入っていると、改正民法上は譲渡自体は有効でも、債務者が悪意・重過失の譲受人に弁済を拒める規定があります(民法第466条第3項)。リスクを回避するには次の対応が安全です。

  • 契約書を再確認し、特約の有無を整理する
  • 特約があれば、譲渡前に債務者の同意書を取る、または確定日付のある証書での通知を行う
  • どうしても通知を避けたい場合は、債権譲渡登記制度の活用を検討する

表明保証条項のリスク

サービサーとの債権譲渡契約には、債権者側が「債権が有効に存在し、瑕疵がないこと」などを保証する表明保証条項が必ず入ります。後日、契約書の不備や時効の進行などで債権が無効と判明した場合、買取代金の返還請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。

事前に書類を精査し、債権の有効性に疑義がある部分は契約交渉時に開示することが、後日のトラブル防止になります。

グループ会社間譲渡の税務リスク

親子会社・関連会社間で著しく低い価格で債権を譲渡した場合、税務上は寄附金と認定され損金算入が否認されるリスクがあります。市場価格に基づいた取引であることを示すため、第三者サービサー複数社の査定書を保管しておくのが安全です。

詳細は未収金の会計処理ガイドで扱っています。

自社の債権を譲渡できるか確認するチェックリスト

次の項目に4つ以上該当する場合、サービサーへの債権譲渡が現実的な選択肢になります。

  1. 督促を繰り返しても回収の見通しが立たない
  2. 取引先が事実上の休業状態、または所在は判明している
  3. 1件あたり、または合計で数百万円以上の規模がある
  4. 契約書・請求書・督促記録など、債権の存在を立証できる書類がある
  5. 消滅時効までまだ余裕がある
  6. 帳簿上の不良債権が融資審査・BS指標に悪影響を与えている
  7. 回収業務に割く人的リソースが慢性的に不足している
  8. 決算前にBSを正常化したい

業種別の典型パターンは業種別未収金対策まとめに整理しています。自社業種の事例を確認したうえで相談に進むと、サービサー側との情報共有がスムーズになります。

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まとめ

サービサーへの債権譲渡の要点

  • 民法第466条の自由譲渡原則と、弁護士法72条の特例であるサービサー法によって成立する合法的な取引
  • 対象は「特定金銭債権」に限定され、一般事業会社の売掛金は原則対象外。ただし業種特化の少額大量債権は取扱範囲が拡大している
  • 譲渡価格は額面の1〜10%が相場。書類整備と相見積もりで条件改善の余地がある
  • 譲渡禁止特約・表明保証・グループ間譲渡の税務リスクは契約前に整理しておく

サービサーへの債権譲渡が自社の状況に合うかは、債権の種類・規模・債務者属性によって変わります。判断に迷う段階で一度整理し、譲渡・弁護士委任・貸倒損失計上・債権放棄のどれが適するかを比較することが、無駄なコストを避けやすくなります。

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よくある質問

Q. サービサーへの債権譲渡はどんな企業の債権でも対象になりますか?
A. サービサー法第2条第1項で定める「特定金銭債権」に該当する場合に限られます。金融機関の貸付債権・リース債権・ファクタリング会社が買い取った債権などが中心で、一般事業会社の売掛金は原則対象外です。ただし倒産手続中の取引先に対する債権など、状況により対象となるケースもあります。
Q. サービサーへの売却を取引先に知られたくありません。可能ですか?
A. 債権譲渡登記制度を利用すれば、債務者への個別通知をせずに第三者対抗要件を具備できます。ただし債務者本人に対する対抗要件は別途必要なため、回収段階ではサービサーから債務者へ通知が行く点に注意が必要です。法人のみが譲渡人になれます(動産・債権譲渡特例法第4条第1項)。
Q. 個人間で貸し付けたお金の債権をサービサーに売れますか?
A. 原則として売却できません。サービサー法第2条第1項の特定金銭債権の範囲に、個人間の単純な貸付債権は含まれていないためです。回収困難であれば、弁護士への委任や時効管理のうえで自己回収を検討するのが一般的です。
Q. 譲渡禁止特約がついている債権でも譲渡できますか?
A. 2020年4月施行の改正民法第466条第2項により、譲渡制限特約があっても債権譲渡自体は有効です。ただし悪意・重過失の譲受人に対しては債務者が弁済を拒める規定があるため、特約がある場合は事前に債務者の同意を取るか、譲渡通知を確定日付のある証書で行うのが実務上の安全策です。

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