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決算書の作り方|中小企業の経理実務

中小企業向けに決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書)の作り方を解説。決算整理仕訳から税務申告までの流れと、経理担当者が押さえるべきポイントを紹介します。

決算書は、企業の一定期間の経営成績と期末時点の財政状態を示す書類です。法人税の確定申告、金融機関への融資申込み、取引先との契約など、あらゆる場面で必要になります。

中小企業の場合、決算書の作成を全面的に税理士に委任しているケースも多いですが、経営者や経理担当者が作成プロセスを理解しておくことは、自社の財務状態を正確に把握し、経営判断の精度を高めるうえで不可欠です。本記事では、中小企業の決算書作成の流れと実務上のポイントを解説します。

決算書の種類と構成

中小企業に必要な決算書

会社法上、株式会社は「計算書類」として次の書類を作成する義務があります(会社法第435条第2項)。

貸借対照表(BS)は、決算日時点の資産、負債、純資産の状態を示します。企業が保有する財産とその調達源泉を明らかにする書類です。

損益計算書(PL)は、事業年度の収益と費用を対比して、経営成績(利益または損失)を示します。売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益の5段階で利益を表示するのが一般的です。

株主資本等変動計算書(SS)は、純資産の各項目(資本金、資本剰余金、利益剰余金など)の変動を示します。当期純利益の計上や配当金の支払いによる変動が記録されます。

個別注記表は、計算書類の理解に必要な注記事項をまとめたものです。会計方針(減価償却の方法、棚卸資産の評価方法等)や重要な後発事象などを記載します。

なお、法人税の確定申告では、これらに加えて「勘定科目内訳明細書」「法人事業概況説明書」などの添付書類が必要です。

決算書作成のスケジュール

決算書の作成は、期末日の到来を待って開始するのではなく、事前準備から始めます。以下は3月決算企業の一般的なスケジュールです。

期末1か月前(2月)に、決算準備として期中処理の漏れがないかを確認し、在庫の棚卸しの段取り、固定資産台帳の確認、仮払金・仮受金の精算を進めます。

期末日(3月31日)に、実地棚卸しの実施、現金実査、銀行残高証明書の取得を行います。

期末後1か月目(4月)に、決算整理仕訳の計上、各勘定科目の残高確認と修正、決算書の作成を行います。

期末後2か月以内(5月末)に、株主総会の開催(計算書類の承認)、法人税等の確定申告と納税を完了します。

決算整理仕訳の実務

棚卸資産の計上

期末在庫の金額を確定するために、実地棚卸しを行います。棚卸しの結果と帳簿残高に差異がある場合は、棚卸減耗損や商品評価損を計上します。

棚卸資産の評価方法は、法人税法施行令第28条に定められた方法(個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法等)の中から選択し、所轄税務署に届け出ます。届出がない場合は最終仕入原価法が適用されます(法人税法施行令第31条)。

低価法を採用している場合は、期末時点の時価(正味売却価額)が取得原価を下回っている棚卸資産について、評価損を計上します。

減価償却費の計上

固定資産について、当期分の減価償却費を計上します。償却方法は定額法または定率法から選択しますが、建物(1998年4月以降取得分)および建物附属設備・構築物(2016年4月以降取得分)は定額法のみです(法人税法施行令第48条の2)。

中小企業者等(資本金1億円以下等の要件を満たす法人)には、取得価額が30万円未満の減価償却資産について全額損金算入が認められる少額減価償却資産の特例(租税特別措置法第67条の5)があります。年間の合計額は300万円が上限です。

引当金の計上

貸倒引当金は、売掛金や貸付金などの金銭債権の回収不能に備えて計上します。中小法人(資本金1億円以下等)には一括評価の法定繰入率の適用が認められています(法人税法施行令第96条第6項)。

賞与引当金は、翌期に支給する賞与のうち当期に帰属する部分を計上します。会計上は計上が必要ですが、税務上は損金に算入されない(未払賞与として損金算入が認められるのは支給日が到来しているもの、法人税法第22条第3項)点に注意してください。

その他の決算整理仕訳

前払費用・未払費用の計上(保険料、家賃、利息等の期間按分)、収益・費用の見越し・繰延べ処理、消費税の確定計算と未払消費税の計上、法人税・法人住民税・法人事業税の概算計上も決算整理仕訳として処理します。

決算書作成後の確認と活用

セルフチェックのポイント

決算書が完成したら、次の項目をチェックしてください。

貸借対照表について、資産合計と負債・純資産合計が一致しているか(貸借一致の原則)、現金預金の残高が銀行残高証明書や現金実査の結果と一致しているか、売掛金の残高が得意先別残高一覧表の合計と一致しているか、長期と短期の区分が正しいか(1年基準の適用)を確認します。

損益計算書について、売上高の計上時期が正しいか(実現主義の原則)、期ずれ(翌期の売上を当期に計上、またはその逆)がないか、各段階の利益が正しく計算されているかを確認します。

税務申告との関係

決算書の当期純利益を出発点として、法人税の課税所得を計算します。会計上の利益と税務上の課税所得は一致しないため、「別表四」で加算・減算(申告調整)を行います。

主な加算項目(会計上は費用だが税務上は損金不算入)として、交際費等の損金不算入額、減価償却の超過額、役員給与の損金不算入額(過大役員報酬等)があります。主な減算項目(会計上は収益だが税務上は益金不算入)として、受取配当金の益金不算入額があります。

確定申告は事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行います(法人税法第74条第1項)。申告期限の延長特例を受ける場合は、事業年度終了日までに届出書を提出する必要があります(法人税法第75条の2)。

まとめ

この記事のポイント

  • 決算書の準備は期末1か月前から開始するのが理想的なスケジュール
  • 決算整理仕訳の主要項目(棚卸資産・減価償却・貸倒引当金・前払未払費用・法人税概算)を確実に処理する
  • 確定申告は事業年度終了後2か月以内に完了する必要がある

完成した決算書の読み方と分析手法は決算書の見方|財務分析入門で解説しています。決算後の経営改善に取り組む際は、経営改善チェックリストも参考になります。決算書の作成や財務改善についてのご相談は、無料相談から受け付けています。

よくある質問

Q. 決算書の作成は自社で行うべきですか、税理士に依頼すべきですか?
A. 法人税の確定申告は専門知識が必要なため、税理士に依頼するのが一般的です。ただし、月次の記帳や試算表の作成は自社で行い、決算整理と申告書作成を税理士に依頼するという分担が最もコストパフォーマンスに優れます。クラウド会計ソフトの普及により、自社記帳のハードルは大幅に下がっています。
Q. 決算書の作成にはどのくらいの期間を見込むべきですか?
A. 法人税の確定申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(法人税法第74条第1項)。決算整理仕訳、決算書作成、税務申告書作成の全工程を考慮すると、期末日から申告期限まで余裕を持って進めるには、期末の1か月前から準備を始めるのが理想的です。申告期限の延長特例(法人税法第75条の2)を届け出ている場合は、1か月の猶予が得られます。
Q. 中小企業でも連結決算は必要ですか?
A. 会社法上、連結計算書類の作成義務があるのは有価証券報告書提出義務のある大会社です(会社法第444条第3項)。子会社がある中小企業でも、上場していなければ連結決算の法的義務はありません。ただし、グループ全体の経営状況を把握するために任意で作成する企業もあります。金融機関が融資審査でグループ全体の財務状況を確認するケースもあるため、必要に応じて対応してください。
Q. 決算書の作成でよくあるミスは何ですか?
A. 中小企業で多いのは、減価償却費の未計上・過少計上、期末在庫の実地棚卸しの不備、前払費用や未払費用の計上漏れ、仮払金や仮受金の未精算です。減価償却費を意図的に少なくすると利益が過大に表示されますが、金融機関は実態ベースに修正して評価するため見た目の改善にはなりません。期末の1か月前から決算準備チェックリストを使って漏れを防止することが有効です。

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