事業承継税制
事業承継税制
事業承継税制とは、非上場株式等の贈与税・相続税の納税を猶予・免除する制度です。一般措置と特例措置の違い、適用要件を解説します。
事業承継税制とは、中小企業の後継者が先代経営者から非上場会社の株式等を贈与または相続により取得した場合に、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税が猶予され、さらに一定の事由が生じたときに猶予税額が免除される制度です。租税特別措置法第70条の7から第70条の7の8に規定されています。
一般措置と特例措置
事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2つの枠組みがあります。
一般措置は2009年度税制改正で創設された恒久的な制度です。対象株式は発行済議決権株式総数の3分の2まで、猶予割合は贈与税が100%、相続税が80%となっています。後継者は1人に限定されます。
特例措置は2018年度税制改正で創設された10年間の時限措置です。対象株式数の上限が撤廃され全株式が対象となり、相続税の猶予割合も100%に引き上げられました。後継者は最大3人まで認められます。
特例措置の適用を受けるには、2026年3月31日までに特例承継計画を都道府県に提出し、2027年12月31日までに贈与・相続を実行する必要があります。特例措置は一般措置に比べて大幅に有利な内容ですが、適用期限があるため、事業承継を検討している経営者は早期の準備が求められます。
適用の主な要件
事業承継税制の適用を受けるには、会社・先代経営者・後継者のそれぞれについて要件を満たす必要があります。
会社の要件としては、中小企業者であること(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第2条)、風俗営業会社や資産管理会社に該当しないこと、上場会社でないことなどが定められています。資産管理会社(総資産に占める有価証券・現金等の割合が大きい会社)は対象外となるケースがあるため、自社が資産管理会社に該当しないかどうかの確認が重要です。
先代経営者の要件としては、会社の代表権を有していたこと、贈与の場合は贈与時に代表権を有していないこと(代表者を退任していること)、同族関係者と合わせて議決権の過半数を保有し筆頭株主であったことなどがあります。
後継者の要件としては、贈与時に会社の代表権を有していること、同族関係者と合わせて議決権の過半数を保有し同族内で筆頭となること、贈与の場合は18歳以上(2022年4月1日以後)で3年以上役員であることなどが求められます。
手続きの流れ
特例措置を活用する場合の手続きの流れを確認します。
特例承継計画の作成が出発点です。認定支援機関の指導・助言を受けながら、自社の現状、経営者の中長期的な経営方針、後継者が承継後に取り組む具体的な経営課題と解決策を記載した計画書を作成します。作成した計画書を都道府県に提出し、受理された日が提出日となります(2026年3月31日まで)。
特例承継計画の提出後、後継者への贈与を実行します。贈与が完了したら、都道府県知事に対して円滑化法に基づく認定申請を行います。認定を受けた後、税務署への贈与税の申告と合わせて特例措置の適用申請を行います。
毎年の届出(年次報告書)の提出も義務です。贈与税の申告後、毎年1回(贈与から5年間は年2回)、都道府県への年次報告と税務署への継続届出書の提出が必要です。
継続要件と取消リスク
納税猶予の適用を受けた後も、一定の要件を維持し続けなければなりません。
後継者が代表者であり続けることが継続要件の一つです。後継者が代表者を退任した場合は、原則として猶予税額を納付しなければなりません。
株式の保有継続も要件です。贈与・相続した株式を売却した場合、その割合に応じた猶予税額を納付する必要があります。
一般措置では雇用要件(5年平均で8割維持)が厳格に適用されますが、特例措置では要件を下回った場合でも認定支援機関の指導助言を受けた理由書を提出すれば猶予が継続されます。コロナ禍などの外部要因により従業員が減少した場合でも対応が可能になっています。
これらの要件を満たさなくなった場合、猶予されていた税額の全部または一部と利子税を納付しなければなりません。
事業承継税制の活用と財務への影響
事業承継税制を活用することで、後継者が株式取得時に多額の税金を負担する必要がなくなり、事業承継を財務的に実行しやすくなります。
特例措置の場合、全株式に対して100%の猶予が認められるため、事業承継のために株式を現金化する必要がなくなります。これにより、後継者が資金不足を理由に承継を躊躇するリスクが軽減されます。
一方で、猶予税額は将来的に免除されるまで「隠れた負債」として存在し続けます。会社が解散したり、後継者が株式を手放したりした場合には、猶予税額の納付が発生するリスクがあります。事業承継後の経営安定が猶予の継続に直結するため、承継後の経営計画を丁寧に策定することが重要です。
M&A・事業承継の専門相談を活用することで、事業承継税制の適用可能性や手続きの詳細について、税理士・認定支援機関のアドバイスを受けながら準備を進めることができます。
まとめ
事業承継税制は非上場株式の贈与税・相続税を猶予・免除する制度であり、特例措置は全株式・100%猶予という大幅に有利な内容です。特例措置には特例承継計画の提出期限(2026年3月31日)と実行期限(2027年12月31日)があるため、早期の準備が不可欠です。適用後も継続要件があり、要件を満たさなくなると猶予税額の納付が必要となるため、税理士等の専門家と連携した長期的な管理が重要です。事業承継を検討している場合は、できるだけ早い段階で認定支援機関に相談することが重要です。