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雇用調整助成金|条件・支給額・申請手順【2026年度】

売上減少で雇用維持が厳しい中小企業へ。雇用調整助成金の受給条件・支給額(日額上限8,870円)・申請の流れを2026年度版で整理。10%減少要件の判定方法から教育訓練加算まで実務に必要な情報を1ページにまとめました。

売上が急激に落ち込み、このままでは人員整理に踏み切るしかない。そんな局面で検討すべき制度の一つが雇用調整助成金です。従業員を解雇せずに休業・教育訓練・出向で雇用を維持した事業主に対し、休業手当等の一部を国が助成する仕組みで、雇用保険法第62条に基づく雇用安定事業として厚生労働省が所管しています。

本記事では、2026年度(令和8年度)時点の受給条件、支給額の計算方法、申請の流れを整理します。補助金と助成金の違いを先に確認しておくと理解がスムーズです。

雇用調整助成金の受給条件

事業主に求められる4つの条件

雇用調整助成金を申請するには、事業主が以下の条件を全て満たしている必要があります。

1つ目は、雇用保険の適用事業主であること。雇用保険に加入していない事業所はそもそも申請の対象外です。

2つ目は、売上高・生産量等の減少要件です。直近3か月間の売上高または生産量等の月平均が、前年同期と比べて10%以上減少していることが求められます。比較対象の「前年同期」は暦月ベースで判定し、月次の売上管理を日頃から行っておくことが前提になります。

3つ目は、雇用量が増加していないことです。直近3か月間の雇用保険被保険者数および受け入れ派遣労働者数の月平均値が、前年同期と比べて中小企業で10%超かつ4人以上増加していないこと。人員を増やしながら助成金を受け取ることはできません。

4つ目は、クーリング期間の経過です。過去に雇用調整助成金を受給した場合、前回の支給対象期間の満了日から1年超が経過していること。連続的な受給は認められません。

創業1年未満の事業者でも申請できる

前年同期の比較ができない創業1年未満の事業者は、直近3か月の月平均と創業時からの月平均売上高等を比較して判定できます。

休業の実施条件

助成金の対象となる休業には、実施方法に関する条件があります。

労使間で休業協定を締結していること、所定労働日の全1日または所定労働時間内で1時間以上の休業であること(短時間休業も可)、休業日数が判定基礎期間の所定労働日数の1/20以上(大企業は1/15以上)であること、労働基準法第26条に基づく休業手当(平均賃金の60%以上)を支払っていること。これらを全て満たす必要があります。

対象となる従業員

雇用保険の被保険者が対象です。週20時間以上勤務し31日以上の雇用見込みがあるパート・アルバイトは雇用保険の加入義務があるため、未加入者がいないか申請前に改めて確認してください。雇用保険に加入していない短時間労働者(学生アルバイト等)は対象外です。

支給額の計算方法と上限額

助成率と日額上限

雇用調整助成金の支給額は「休業手当相当額 × 助成率」で計算され、1人1日あたりの上限額が設定されています。

中小企業の助成率は休業手当の2/3、大企業は1/2です。1人1日あたりの上限額は雇用保険の基本手当日額の最高額に連動しており、令和7年8月1日時点で8,870円です。この上限額は毎年8月に改定されます。

なお、令和6年4月以降、累計支給日数が30日に達した判定基礎期間の翌期間からは、教育訓練の実施率に応じて助成率が段階的に変動する仕組みが導入されています。教育訓練実施率が1/10未満の場合、中小企業の助成率は1/2に、大企業は1/4に引き下げられます。一方、実施率1/5以上を維持すれば通常の助成率が適用されるうえ、教育訓練加算額も増額されます。

支給額の具体的な計算例

実際にどの程度の助成金が見込めるのか、月給30万円の従業員10人を20日間休業させたケースで計算してみます。

中小企業・休業手当80%・教育訓練なしの場合

平均賃金日額: 30万円 ÷ 30日 = 10,000円 休業手当(80%): 10,000円 × 0.8 = 8,000円/日 助成額: 8,000円 × 2/3 = 5,333円/日(上限8,870円以内) 1人あたり月額: 5,333円 × 20日 = 106,660円 10人合計: 106,660円 × 10人 = 1,066,600円

休業手当の支給率を60%に抑えた場合は1日4,000円(10,000円 × 0.6 × 2/3)で、10人20日間の合計は800,000円に下がります。休業手当を高く設定するほど助成額は増えますが、日額上限(8,870円)を超える分は自己負担になる点に注意してください。

教育訓練を併用した場合は、上記の助成額に加えて1人1日あたり1,200円(実施率1/5以上の場合は1,800円)が加算されます。上記の例で全休業日に教育訓練を実施すると、加算分だけで1,200円 × 20日 × 10人 = 240,000円が上乗せされ、合計1,306,600円の受給が見込めます。

教育訓練加算の段階的な仕組み

令和6年4月以降、教育訓練を組み合わせた場合の助成には段階的な優遇措置が設けられています。

累計支給日数が30日に達するまでは、通常の助成率(中小2/3、大企業1/2)に加えて1人1日あたり1,200円の加算が適用されます。30日を超えた後は教育訓練の実施割合がポイントになり、休業日数に対する教育訓練の実施率が1/5以上であれば加算額は1,800円に増額されます。逆に実施率1/10未満だと助成率自体が引き下げられるため、長期の受給を想定する場合は教育訓練を計画的に組み込むことが不可欠です。

支給限度日数

支給対象期間は1年間で、その間の休業日数に応じて助成金が支給されます。支給限度日数は1年間で100日、3年間で通算150日が上限です。長期間の経営悪化に備えるなら、年間100日を使い切らずに計画的に配分する視点も必要です。

出向の場合

出向による雇用調整の場合は、出向元事業主の負担額の2/3(大企業は1/2)が助成されます。出向期間は3か月以上1年以内で、出向元に復帰することが前提です。

申請の流れ(5ステップ)

雇用調整助成金の申請は、計画届の提出から支給決定まで5つのステップで進みます。

1

休業等計画届の提出

休業開始前に管轄の都道府県労働局またはハローワークへ提出。初回は事後届出が認められる場合あり

2

労使協定の締結

労働組合または過半数代表者と、休業の範囲・期間・手当率を定めた協定を締結する

3

休業の実施と手当支払い

計画どおりに休業を実施し、労働基準法第26条に基づく休業手当(平均賃金の60%以上)を支給する

4

支給申請書の提出

判定基礎期間の末日翌日から2か月以内に労働局へ提出。期限超過は申請不可となるため要注意

5

審査・支給決定

労働局の審査を経て、2〜3か月程度で事業主の指定口座に振込

休業等計画届の作成と提出

休業を実施する前に、管轄の都道府県労働局またはハローワークに「休業等実施計画(変更)届」を提出します。記載事項は、休業の期間・対象者数・休業の実施方法(全日休業か短時間休業か)です。原則として休業開始の前日までに届出が必要ですが、初回届出は休業後でも事後提出が認められる場合があります。

労使協定の締結手順

労働組合がある場合は労働組合と、ない場合は労働者の過半数代表者との間で休業協定を締結します。協定に定める事項は、休業の実施予定時期と期間、休業の日数、休業手当の額(支給率)、対象となる労働者の範囲です。過半数代表者は、管理監督者以外の労働者から民主的方法(投票・挙手等)で選出する必要があります(労働基準法施行規則第6条の2)。

支給申請に必要な書類

支給申請の際に提出する主な書類は、雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書、支給要件確認申立書・役員等一覧、休業・教育訓練実績一覧表、助成額算定書、休業協定書の写し、労働者代表選任届、出勤簿・タイムカードの写し、賃金台帳の写し、売上高等の減少を証明する書類(月次の売上報告書、試算表等)です。

書類の様式は厚生労働省の様式ダウンロードページから入手できます。

審査と支給

判定基礎期間の末日の翌日から2か月以内に支給申請書を提出します。期限を過ぎると申請できなくなるため、カレンダーに期限を登録しておいてください。労働局の審査を経て、問題がなければ2〜3か月程度で助成金が事業主の指定口座に振り込まれます。

教育訓練加算を最大限に活用する

単なる休業だけでは長期受給で助成率が低下する

令和6年4月からの制度改正で、累計30日超・教育訓練実施率1/10未満の場合は助成率が引き下げられます。休業期間を教育訓練と組み合わせることが、助成額の維持と従業員のスキルアップの両面で重要です。

教育訓練の加算を受けるには、訓練内容が職業に関する知識・技能・技術の習得や向上を目的としていること、受講者が訓練期間中に通常の業務に就いていないことが条件です。外部の教育訓練機関への委託、社内での集合研修、eラーニングなど形式は問いませんが、通常の業務と区別がつかないOJTは対象外です。

訓練のテーマとして活用しやすいのは、ITスキル研修(業務効率化ツールの習得)、安全衛生教育、品質管理手法の習得、語学研修などです。経営環境が変化するなかで事業構造の転換を見据えた教育訓練を実施すれば、助成金を受けながら組織力を高めることができます。

人材開発支援助成金(旧職業訓練助成金)との併用はできませんが、雇用調整助成金の支給期間終了後に人材開発支援助成金に切り替えて継続的なスキルアップを図る、という段階的な活用は可能です。

雇用調整助成金と産業雇用安定助成金の比較

雇用を守る助成金として、雇用調整助成金のほかに産業雇用安定助成金があります。名称が似ていますが、制度の目的と使いどころが異なります。

比較項目雇用調整助成金産業雇用安定助成金
目的経営悪化時の雇用維持出向によるスキルアップ・新規人材確保
対象となる取組休業・教育訓練・出向在籍型出向(スキルアップ支援コース)、新規雇用(産業連携人材確保等支援コース)
助成率(中小企業)2/3(教育訓練実施率で変動)出向運営経費の2/3(スキルアップ支援コース)
日額上限8,870円(令和7年8月時点)スキルアップ支援: 1万円/日、産業連携: 250万円/人(上限5人)
売上減少要件前年同期比10%以上減少スキルアップ支援: 不要、産業連携: 前年同期比10%以上減少
受給後の条件特になしスキルアップ支援: 出向復帰後に賃金5%以上引上げ
主な活用場面急激な売上減少で従業員を休ませる必要がある従業員を他社に出向させてスキルを習得させたい、新分野進出の人材が必要

経営悪化で従業員を休業させる局面では雇用調整助成金、出向を通じた人材育成や新分野への人材確保を図る局面では産業雇用安定助成金が適しています。両制度を組み合わせて活用するケースもあり、たとえば一部の従業員には休業で対応しつつ、別の従業員を在籍型出向でスキルアップさせるという判断が考えられます。

不正受給のリスクと注意点

不正受給は全額返還+延滞金+事業所名公表

虚偽の申請による不正受給が発覚した場合、助成金の全額返還に加えて年3%の延滞金が課されます。さらに事業所名が公表され、5年間は雇用関係助成金を受給できなくなります。

コロナ特例期間に不正受給が多発したことを受け、厚生労働省は事後調査を強化しています。実態と異なる休業日数の申告、架空の教育訓練の実施、売上高の意図的な操作などは不正受給に該当します。出勤簿・タイムカードと賃金台帳の整合性、教育訓練の実施記録(カリキュラム・受講者名簿・受講レポート等)は正確に記録・保管してください。

助成金を適正に受給するためには、社会保険労務士への相談も有効です。申請書類の作成から労使協定の締結、教育訓練計画の策定まで、制度に精通した専門家のサポートを受けることで、申請の不備や不正リスクを回避できます。助成金申請を支援機関に相談する流れもあわせてご覧ください。

他の雇用関連助成金との使い分け

雇用調整助成金は雇用維持の局面で使う制度ですが、経営改善や人材育成の段階では別の助成金も選択肢になります。

キャリアアップ助成金は非正規雇用者の正社員化等に、トライアル雇用助成金は未経験者の試行雇用に使える制度です。景気回復後に新たな人材を採用する段階では、特定求職者雇用開発助成金地域雇用開発助成金も検討対象になります。自社の経営フェーズに合った制度を選択することで、助成金を活用した段階的な経営改善が可能になります。

補助金申請の全体フローでは、申請に共通する準備事項をまとめています。

まとめ

この記事の要点

  • 受給条件は「売上10%以上減少」「雇用保険の適用事業所」「休業協定の締結」が柱。条件を満たすかの事前確認が最優先
  • 支給額は休業手当×助成率(中小2/3)で計算し、日額上限は8,870円(令和7年8月時点)。教育訓練加算(1,200円/日、実施率1/5以上で1,800円/日)を組み合わせると受給額が増加
  • 累計30日超は教育訓練の実施率が助成率に直結する。単純な休業だけの長期受給は助成率低下のリスクがあるため、教育訓練との併用計画を立てる
  • 申請は判定基礎期間の末日翌日から2か月以内が期限。休業手当は事業主が立て替える仕組みのため、資金繰りの計画が必須

助成金の申請手続きは要件確認から書類作成まで負担が大きく、特に初回申請では判断に迷う場面が多くなります。無料相談窓口では、自社に適した助成金の選び方や申請準備についてアドバイスを受けられます。

よくある質問

Q. 雇用調整助成金はどのような場合に申請できますか?
A. 経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用維持を図るために休業・教育訓練・出向を実施した場合に申請できます。直近3か月の売上高または生産量が前年同期と比べて10%以上減少していることが要件の一つです。
Q. 雇用調整助成金でいくらもらえますか?
A. 中小企業の場合、休業手当の2/3が助成されます(大企業は1/2)。1人1日あたりの上限額は8,870円(令和7年8月1日時点)です。教育訓練を併用すれば1人1日あたり1,200円(実施率1/5以上なら1,800円)の加算があります。
Q. パートやアルバイトも助成の対象になりますか?
A. 雇用保険の被保険者であれば、パート・アルバイトも対象になります。週20時間以上の勤務かつ31日以上の雇用見込みがある場合は雇用保険の加入義務があるため、未加入の労働者がいないか確認してください。
Q. 申請から支給までどれくらいかかりますか?
A. 支給申請後、労働局での審査を経て概ね2〜3か月程度で支給されます。休業手当は事業主が先に立て替えて支払い、後から助成金を受け取る仕組みです。資金繰りを考慮した計画が必要です。
Q. 売上が10%減少していなくても申請できますか?
A. 原則として直近3か月の売上高等が前年同期比10%以上減少していることが要件です。ただし、創業後1年未満で前年同期の比較ができない場合は、直近3か月と創業時からの月平均売上高等との比較で判定できます。
Q. 雇用調整助成金と産業雇用安定助成金はどう違いますか?
A. 雇用調整助成金は経営悪化時に休業・教育訓練・出向で雇用を維持する制度です。一方、産業雇用安定助成金は在籍型出向によるスキルアップ後に賃金を5%以上引き上げた場合や、景気変動に対応するための新規人材雇用を支援する制度です。目的と局面が異なるため、自社の状況に応じて使い分けます。

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