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新事業進出補助金 2026年|制度概要と申請ガイド

事業再構築補助金の後継制度「新事業進出補助金」を解説。2026年の公募スケジュール・補助率・上限額・申請要件・口頭審査対策・事業再構築補助金との違いを網羅しました。

事業再構築補助金が2024年度をもって終了し、その後継として「中小企業新事業進出促進補助金(新事業進出補助金)」が2025年に創設されました。補助上限額は最大9,000万円(大幅賃上げ特例適用時)で、従来の事業再構築補助金と同様に大型の設備投資を支援する制度です。事業再構築補助金の終了経緯と後継制度への移行については事業再構築補助金 2026年の最新状況で詳しく解説しています。

ただし、政策の目的や申請要件は大きく変わっています。コロナ禍からの脱却を支援していた事業再構築補助金に対し、新事業進出補助金は中小企業の成長志向の新事業創出を後押しする位置づけです。業態転換が対象外になった一方で、口頭審査やワークライフバランス要件が新設されるなど、申請にあたって押さえるべきポイントが増えています。

本記事では、新事業進出補助金の制度概要から申請フロー、事業再構築補助金との具体的な違い、そして2026年度のスケジュールまでを解説します。

新事業進出補助金の制度概要

正式名称は「中小企業新事業進出促進補助金」。経済産業省・中小企業庁が所管し、中小企業基盤整備機構が事務局を担当しています。中小企業が既存事業とは異なる新たな事業に進出する際の設備投資費用を補助する制度で、令和6年度補正予算(2025年度)で新設されました。

補助率と補助上限額

補助率は一律で2分の1です。事業再構築補助金では小規模事業者に3分の2の補助率が適用される枠がありましたが、新事業進出補助金では規模にかかわらず一律の設定になりました。

補助上限額は従業員数に応じて段階的に設定されています。

従業員数通常の補助上限額大幅賃上げ特例適用時
20人以下2,500万円3,000万円
21〜50人4,000万円5,000万円
51〜100人5,500万円7,000万円
101人以上7,000万円9,000万円

補助金額の下限は750万円(補助対象経費1,500万円以上の投資が前提)です。少額の設備投資には利用しにくい制度設計になっており、ある程度まとまった投資計画を持つ企業が対象です。

対象となる経費

対象経費はハード面とソフト面の両方をカバーしています。

ハード面の経費として、建物費(建設・改修・撤去)、構築物費、機械装置・システム構築費が認められています。事業再構築補助金でも建物費は対象でしたが、新事業進出補助金でも引き続き対象となるのは大きなポイントです。製造業が工場の増設や改修を伴う新事業に取り組む場合、建物費を含めた一体的な申請が可能です。

ソフト面では、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費が対象です。

交付決定前の発注・契約は対象外

交付決定日より前に製品の購入や契約を行った経費は、補助対象になりません。採択後も交付申請・交付決定の手続きが完了するまで発注を控えてください。補助事業の実施期間は交付決定日から14か月以内です。

5つの申請要件

新事業進出補助金の申請には、以下の5つの要件をすべて満たす事業計画を策定する必要があります。

申請に必要な5つの基本要件

  1. 新事業進出要件 — 自社にとって過去に提供したことのない製品・サービスを、既存事業とは異なる顧客層に提供する計画であること。新事業の売上高が総売上高の10%以上、または付加価値額の15%以上を占める見込みであること
  2. 付加価値額要件 — 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年率平均4.0%以上増加させる計画であること
  3. 賃上げ要件 — 給与支給総額を年率平均2.5%以上増加させる計画であること。地域別最低賃金の直近5年成長率以上の賃上げも求められる
  4. 事業場内最低賃金要件 — 事業場内の最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準に設定すること
  5. ワークライフバランス要件 — 一般事業主行動計画(次世代法に基づく)を策定し、公表すること。従業員100人以下の企業も対象

事業再構築補助金では認定経営革新等支援機関との共同策定が必須でしたが、新事業進出補助金でも認定支援機関の確認書が必要です。商工会議所、税理士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関など、中小企業庁の認定を受けた機関に早めに相談しましょう。

事業再構築補助金との違い

「事業再構築補助金の後継」と言われることが多いものの、制度の目的と設計思想は根本的に異なります。両制度の違いを正確に理解しておかないと、申請準備の方向を誤るリスクがあります。

政策目的の転換

事業再構築補助金はコロナ禍による売上減少からの回復を支援する「緊急対応型」の制度でした。ポストコロナの経済環境に適応するため、業態転換やビジネスモデルの転換を促す狙いがあったわけです。

新事業進出補助金は「成長促進型」に転換しています。コロナ関連の要件や加点項目はすべて撤廃され、中小企業が自律的に新事業を創出し、賃上げと生産性向上につなげることを政策目標としています。

対象事業の範囲が変わった

事業再構築補助金では5つの類型(新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編)が認められていました。新事業進出補助金では「業態転換」が対象外です。

業態転換とは、飲食店がテイクアウトを始める、小売店がEC販売を開始するといった「提供方法の変更」を指します。新事業進出補助金は「自社にとってまったく新しい製品・サービスを、新しい顧客層に提供する」計画でなければ申請できません。既存の商品を販売チャネルだけ変えるような計画は対象外になるため、要件の確認が欠かせません。

口頭審査の導入

事業再構築補助金は書面審査のみでしたが、新事業進出補助金ではオンラインによる口頭審査が導入されました。経営者自身が審査員の前で事業計画を説明し、質疑に応答する場です。

口頭審査では以下のような点が問われます。

  • なぜこの新事業に進出するのか。きっかけや動機
  • 既存事業の経営資源をどう活かすのか
  • 想定する市場規模と需要の根拠
  • 競合との差別化ポイント
  • 賃上げの原資をどのように確保するか
  • 投資回収の見通し

事業計画書を代行業者に丸投げしていると、口頭審査で内容を説明できず不採択になるケースが出てきています。計画策定の段階から経営者自身が関与し、数字の根拠や市場認識を自分の言葉で語れるようにしておくことが重要です。(事業計画書の作成方法は補助金の事業計画書の書き方を参照してください)

ワークライフバランス要件の新設

事業再構築補助金にはなかった要件として、ワークライフバランス要件が追加されました。次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく「一般事業主行動計画」を策定し、厚生労働省の「両立支援のひろば」サイトで公表する必要があります。

従来は従業員101人以上の企業に義務づけられていた行動計画の策定・届出が、新事業進出補助金では従業員規模にかかわらず求められます。20人以下の企業であっても計画策定が必要なので、申請前に都道府県の労働局に届出を済ませてください。

行動計画の策定は早めに着手する

一般事業主行動計画の策定・届出から「両立支援のひろば」への反映には一定の時間がかかります。申請締切直前に着手すると間に合わないおそれがあるため、公募開始前の段階で手続きを進めておくと安心です。厚生労働省のWebサイトにモデル行動計画が掲載されています。

その他の変更点

加点項目からコロナ関連(コロナ借換加点など)がすべて削除されました。代わりに、デジタル技術の活用や賃上げの実績、地域経済への波及効果に関する加点が設けられています。

補助事業の実績報告期限が厳格化され、事業完了から30日以内に報告書を提出する必要があります。期限を過ぎると交付決定が取り消される可能性があるため、事業の進捗管理と報告準備は計画段階から織り込んでおきましょう。(採択後の管理については補助金採択後の管理と報告で詳しく解説しています)

2026年の公募スケジュールと採択率

公募スケジュール一覧

新事業進出補助金は2025年4月の第1回公募から始まり、2026年にかけて計4回の公募が実施されています。

公募回公募期間申請受付開始採択発表
第1回2025年4月22日〜7月15日2025年6月17日2025年10月1日
第2回2025年9月12日〜12月19日2025年11月10日2026年3月31日
第3回2025年12月23日〜2026年3月26日2026年2月17日2026年7月上旬頃
第4回2026年3月27日〜6月19日2026年5月19日2026年9月末頃

電子申請のみの受付で、GビズIDプライムアカウントが必要です。GビズIDの取得には1〜2週間程度かかるため、申請を検討している段階で早めに発行手続きを済ませてください。

第1回公募の採択率

第1回公募の採択結果では、申請3,006件に対し採択1,118件、採択率は約37%でした。事業再構築補助金の初期公募(30〜50%台)と比較すると、やや厳しい水準です。

業種別に見ると製造業の採択率が51.9%と最も高く、宿泊業・飲食サービス業は24.4%と低い結果になりました。製造業は設備投資との親和性が高く、新製品開発の計画が具体的に描きやすいことが採択率に反映されています。観光業向けには別系統で観光業向け補助金まとめ(宿泊・飲食事業者の支援制度)があり、こちらも併せて検討すると幅が広がります。

申請額別の傾向として、補助金額3,000〜3,500万円の区分が採択率51.6%と高い水準でした。上限に近い大型投資計画のほうが「事業の本気度」が伝わりやすい面はあるものの、投資計画の実現可能性も問われるため、自社の体力に合った計画が求められます。

採択率を高めるためのポイント

  • 新事業の「新規性」を客観的に示す(自社の過去の事業と何が違うか)
  • 市場調査の根拠を具体的な数字で裏づける(○○市場は年間○億円規模、成長率○%)
  • 既存事業の経営資源を活かす「関連多角化」の視点で計画を構成する
  • 賃上げの原資をどう確保するか、収支計画との整合性を確認する
  • 口頭審査に備え、事業計画の要点を経営者自身が説明できるようにする

2026年度後半の制度統合

2026年度後半には、新事業進出補助金とものづくり補助金が「新事業進出・ものづくり補助金」として統合される予定です。統合後は「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つの申請枠が設けられる見込みで、公募要領は2026年6月公開予定、公募開始は8月見込みです。

統合後の制度では、現行のものづくり補助金の対象だった製品・サービスの高付加価値化と、新事業進出補助金の対象だった新事業への進出を、一つの制度のなかで選択できるようになります。中小企業省力化投資補助金もあわせた総額2,960億円規模の支援パッケージとして再編されるため、自社の投資計画に最も合った枠を選ぶ視点が一層重要になるでしょう。(統合後の詳細はものづくり補助金 2026年度で解説しています)

現行の新事業進出補助金としての公募は、第4回(2026年6月19日締切)が最後になる可能性があります。申請を検討中の企業は、第4回の締切を逃さないよう注意してください。

申請から採択後までの流れ

申請準備に必要なもの

申請に着手する前に、以下の準備が必要です。

GビズIDプライムアカウントの取得が第一歩です。法人は印鑑証明書、個人事業主は印鑑登録証明書の画像が登録に必要で、発行まで1〜2週間を見込んでください。

認定経営革新等支援機関の確認書も必要書類の一つです。認定支援機関は中小企業庁のWebサイト(認定経営革新等支援機関検索システム)で検索できます。税理士、中小企業診断士、商工会議所、金融機関などが該当するので、事業計画の策定支援を受けながら確認書の発行を依頼しましょう。

一般事業主行動計画の策定と「両立支援のひろば」への登録も忘れてはならない手続きです。前述のとおり、従業員規模にかかわらず対応が必要です。

申請フロー

1

事前準備

GビズIDプライム取得、認定支援機関の選定、行動計画の策定・届出

2

事業計画書の作成

新事業の内容、市場分析、収支計画、実施体制を記載。認定支援機関と共同で策定する

3

電子申請

専用申請システムのWebフォームに直接入力して提出。PDFの添付ではなくフォーム入力

4

書面審査・口頭審査

書面審査を通過した申請者に口頭審査(オンライン)が実施される

5

採択・交付申請

採択後、交付申請を提出し交付決定を受ける。交付決定前の発注は対象外

6

補助事業の実施

交付決定日から14か月以内に事業を完了させる

7

実績報告・確定検査

事業完了から30日以内に[実績報告書](/hojokin/hojokin-jisshi-houkoku/)を提出。検査後に補助金が確定・交付される

事業計画書は従来のようなPDFの添付ではなく、申請システム上のWebフォームに直接入力する方式に変わっています。A4の事業計画書を作り込んでから入力するよりも、まず入力項目の構成を確認し、それに合わせて計画を整理するほうが効率的です。(申請書類全般については補助金申請の全体フローも参考になります)

採択後の管理と注意点

補助金が採択されたあとも、適切な管理が求められます。

経費の支出はすべて証拠書類(発注書、契約書、納品書、請求書、振込明細など)を保管し、事業終了後5年間の保存義務があります。補助事業と他の事業を混同した経理処理は不正受給と見なされるリスクがあるため、補助事業用の勘定科目や管理コードを設定しておくとよいでしょう。

賃上げ要件(年平均2.5%以上の給与支給総額増加)は事業完了後も報告が求められ、目標を達成できない場合は補助金の一部返還義務が発生します。賃上げ計画は無理のない水準で策定し、事業の収益と連動した計画にすることが大切です。

補助事業で取得した財産(設備、建物など)は、補助事業終了後も一定期間(設備は原則5年)処分が制限されます。売却や転用を行う場合は事前に事務局の承認が必要で、残存簿価に応じた補助金の返還を求められることがあります。

まとめ

新事業進出補助金は、事業再構築補助金の後継制度として2025年に創設された大型補助金です。補助上限額は最大9,000万円(大幅賃上げ特例時)、補助率は1/2で、中小企業が新たな製品・サービスで新市場に進出するための設備投資を支援します。

事業再構築補助金との最大の違いは、業態転換が対象外になったこと、口頭審査が導入されたこと、ワークライフバランス要件が追加されたことの3点です。申請を検討する際は、自社の計画が「新たな製品・サービスを新たな顧客に提供する」という新事業進出要件を満たしているかを最初に確認してください。

2026年は第3回(締切済み)・第4回(6月19日締切)の公募があり、その後はものづくり補助金との統合が予定されています。現行制度での申請を考えている企業にとって、第4回公募が実質的な最後の機会になる可能性があります。GビズIDの取得や認定支援機関との相談など、早めの準備を進めることが重要です。

よくある質問

Q. 事業再構築補助金は2026年も申請できますか?
A. 事業再構築補助金は2024年度(第12回公募)をもって終了しました。後継制度として2025年に「中小企業新事業進出促進補助金」が創設されており、2026年は第3回・第4回の公募が実施されています。第4回の申請受付期間は2026年5月19日から6月19日です。
Q. 新事業進出補助金の補助率と上限額は?
A. 補助率は一律1/2です。補助上限額は従業員数に応じて異なり、20人以下で2,500万円、21〜50人で4,000万円、51〜100人で5,500万円、101人以上で7,000万円が上限です。大幅賃上げ特例を満たすと上限が最大9,000万円に引き上げられます。
Q. 事業再構築補助金と新事業進出補助金の大きな違いは?
A. 事業再構築補助金はコロナ禍からの脱却が目的で「業態転換」も対象でした。新事業進出補助金は成長志向の新事業創出が目的で、既存事業とは異なる新たな製品・サービスを新たな顧客層に提供する計画が必要です。口頭審査の導入やワークライフバランス要件の追加も大きな変更点です。
Q. 口頭審査ではどのようなことを聞かれますか?
A. オンラインで実施され、経営者自身が事業内容を説明します。なぜその新事業に進出するのか、既存事業との関連性、賃上げ原資をどう確保するか、市場の根拠などが問われます。事業計画書に書いた内容を自分の言葉で説明できる準備が不可欠です。
Q. 2026年度中にものづくり補助金と統合されると聞きました。
A. 2026年度後半に「新事業進出・ものづくり補助金」として統合が予定されています。統合後の公募要領は2026年6月公開予定、公募開始は8月見込みです。現行の新事業進出補助金は第4回公募が最後の個別募集となる可能性があります。

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