面接のNG質問を知っておく
採用面接で聞いてはいけないこと|法的リスクと適正な質問
採用面接で法律上聞いてはいけない質問項目と、その法的根拠を解説。厚生労働省の公正採用選考の指針に基づく適正な面接の進め方と、中小企業が注意すべきポイントをまとめています。
採用面接は、応募者の適性や能力を見極める重要な機会です。しかし、面接で聞いてはいけない質問があることを十分に理解していない面接担当者も少なくありません。厚生労働省は「公正な採用選考の基本」として、応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力のみを基準とした採用選考を行うよう企業に求めています。憲法第14条の法の下の平等、職業安定法第3条の均等待遇の原則に基づくこの指針は、中小企業にとっても遵守が不可欠です。本記事では、面接で避けるべき質問項目とその法的根拠、適正な面接の進め方を解説します。
面接で聞いてはいけない質問項目
厚生労働省の公正採用選考の指針では、採用選考において把握すべきでない事項を大きく2つのカテゴリーに分類しています。
本人に責任のない事項
このカテゴリーに該当する項目は、応募者本人の努力では変えられない事柄であり、採用の判断基準にすべきではないとされています。
本籍・出生地に関する質問は、いわゆる部落差別につながるおそれがあるため避けなければなりません。戸籍謄本の提出を求めることも不適切です。家族に関すること(家族構成、家族の職業・地位・収入、家族の健康状態、資産状況など)も同様に、本人の適性や能力とは直接関係がありません。
住宅状況(持ち家か賃貸か、間取り、住宅の広さなど)や生活環境・家庭環境に関する質問も、応募者の経済的背景を推測させるものとして不適切とされています。
本来自由であるべき事項
思想・信条に関わる事項は、憲法第19条(思想及び良心の自由)により保護される領域です。支持政党、宗教、人生観、尊敬する人物、購読している新聞・雑誌、愛読書などを面接で質問することは、応募者の思想・信条を探ることにつながるため避けるべきです。
労働組合への加入状況や社会運動への参加歴についても同様です。これらの質問が採否の判断に影響を与えた場合、不当労働行為(労働組合法第7条)や思想差別として法的な問題が生じるリスクがあります。
個人情報の収集に関する法的規制
職業安定法第5条の5は、求人者が求職者の個人情報を収集する場合、業務の目的の達成に必要な範囲内で行わなければならないと定めています。この規定に基づく指針(平成11年労働省告示第141号)では、人種・民族・社会的身分・門地・本籍・出生地、思想・信条、労働組合への加入状況などの情報は、特別な職業上の必要性がない限り収集してはならないとされています。
また、個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)第20条第2項は、要配慮個人情報(人種、信条、病歴、犯罪の経歴、障害の有無など)の取得について、原則として本人の同意を得ることを求めています。採用面接でこれらの情報を質問すること自体が、法令上のリスクを伴う行為であることを認識しましょう。
適正な面接の進め方
法的リスクを回避しつつ、応募者の適性を的確に見極めるための面接方法を整理します。
質問すべき項目の整理
面接で確認すべきは、応募者の職務遂行能力に関する事項です。具体的には、職務経歴と業務経験、保有資格やスキル、志望動機と入社後のキャリアビジョン、業務に必要な条件の確認(勤務地、勤務時間、出張の可否など)、チームワークやコミュニケーション能力に関する行動事実の確認などが該当します。
行動面接(ビヘイビア面接)の手法を取り入れ、過去の具体的な経験について「どのような状況で、どのような行動をとり、どのような結果を得たか」を掘り下げる質問は、応募者の能力を客観的に評価する有効な方法です。
面接担当者への教育
中小企業では、面接の専門研修を受けていない管理職や経営者が面接を担当するケースが多くあります。悪意がなくても、雑談のつもりで家族構成や出身地を聞いてしまうことは珍しくありません。
面接前に、聞いてはいけない質問項目のリストを面接担当者に配布し、共有することが効果的です。質問票やチェックリストをあらかじめ作成しておき、面接の流れに沿って適正な質問のみを行うよう統一する方法も有効です。
エントリーシートや応募書類の見直し
面接だけでなく、応募時に提出を求める書類にも注意が必要です。厚生労働省は、統一応募用紙(新卒者向け)やJIS規格の履歴書を参考にした、適正な応募書類の使用を推奨しています。本籍地の記入欄がある履歴書フォーマットの使用や、戸籍謄本・住民票の提出要求は避けてください。
健康診断書の提出を内定前に求めることも、障害者差別解消法の趣旨に照らして慎重に対応すべき事項です。業務遂行に必要な健康状態の確認は、採用決定後の入社時健康診断で行うのが適切です。
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まとめ
この記事のポイント
- 本籍・家族構成・思想信条など適性に無関係な質問は法的リスクがある
- 行動面接で過去の具体的経験から能力を客観評価することが法的リスク回避にも有効
- 面接担当者への事前教育と質問票の整備で不適切な質問を組織的に防止する
よくある質問
- Q. 採用面接で家族構成を聞いてはいけない理由は何ですか?
- A. 家族構成、家族の職業、家族の収入などは、本人の適性や能力とは関係のない事項であり、これらの情報に基づく採否の判断は就職差別につながるおそれがあります。厚生労働省の公正採用選考の指針では、本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項を採用選考の判断基準にしないよう求めています。
- Q. 面接で聞いてはいけない質問をしてしまった場合、罰則はありますか?
- A. 採用面接での不適切な質問に対する直接的な罰則規定はありませんが、職業安定法第5条の5は求職者の個人情報の収集に制限を設けています。不適切な質問が原因で不採用とした場合、応募者から損害賠償を請求される可能性があり、ハローワークから是正指導を受けることもあります。
- Q. 健康状態について質問することは許されますか?
- A. 業務遂行に直接関係する範囲内であれば質問は許容されます。たとえば重量物の運搬がある業務で腰の持病を確認するなど、職種に必要な身体的要件に関する質問は合理的です。ただし、既往歴を網羅的に聞くことや、HIVや肝炎などの感染症、妊娠の有無について質問することは差別的取り扱いにつながるため避けるべきです。
- Q. 応募者の前職の退職理由を確認することは問題ありますか?
- A. 前職の退職理由を質問すること自体は違法ではありません。ただし、職業安定法第5条の5に基づき、業務の目的の達成に必要な範囲内での収集に限定する必要があります。退職理由から思想信条や労働組合活動に関する情報を探ろうとする質問は不適切とされるため、あくまで職務適性の判断に必要な範囲で確認してください。