知らないと損する税制の話
中小企業が使える税制優遇まとめ|2025年度版
中小企業が活用できる主要な税制優遇措置を2025年度版として網羅的に解説。法人税の軽減税率、少額減価償却資産の特例、賃上げ促進税制など、実務で使える制度を整理します。
中小企業には、法人税法や租税特別措置法において多くの税制優遇措置が設けられています。しかし制度の数が多いうえに毎年改正が行われるため、自社に適用できる制度を見落としているケースも珍しくありません。税制優遇を正しく活用すれば、法人税の負担軽減だけでなく、設備投資の促進や従業員の処遇改善にもつながります。本記事では2025年度時点で中小企業が活用できる主要な税制優遇措置を体系的に整理します。
法人税率の特例と基本的な優遇措置
中小企業に対する法人税の基本的な優遇措置として、まず押さえておくべき制度を解説します。
中小法人の軽減税率
法人税法第66条第2項および租税特別措置法第42条の3の2により、資本金1億円以下の中小法人に対しては、年間所得800万円以下の部分に15%の軽減税率が適用されます。通常の法人税率23.2%と比較して8.2ポイントの優遇です。所得が800万円ちょうどの場合、軽減税率の適用により約65万円の法人税が軽減されます。
軽減税率15%は2027年3月31日までの時限措置
延長されなければ本来の税率19%に戻るため、今後の税制改正の動向に注意が必要です。
ただし、この軽減税率は2027年3月31日までの時限措置であり、延長されなければ本来の税率19%に戻ります。また、資本金の額にかかわらず、大法人の100%子会社等は軽減税率の適用対象外です。
貸倒引当金の繰入
資本金1億円以下の中小法人は、売掛金や貸付金などの金銭債権について、貸倒引当金の繰入額を損金算入できます(法人税法第52条)。大法人については一括評価による繰入が認められていないため、中小企業に限定された優遇措置です。一括評価の繰入率は業種ごとに定められており、実績繰入率と法定繰入率のいずれか有利な方を選択できます。
交際費の損金算入特例
中小法人は、年間800万円までの交際費等を全額損金算入できます(租税特別措置法第61条の4)。大法人の場合は飲食費の50%に限定されるため、中小企業にとって有利な制度です。取引先との関係構築に必要な交際費について、税務上の負担を軽減する効果があります。
設備投資に関する税制優遇
中小企業の設備投資を後押しする税制優遇措置は複数あり、対象設備や手続きが異なります。
少額減価償却資産の特例
租税特別措置法第67条の5に基づき、青色申告を行う中小企業者等は、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、取得した事業年度に全額を損金算入(即時償却)できます。年間の合計限度額は300万円です。
パソコン、ソフトウェア、事務機器など、日常的に発生する少額の設備投資に広く活用できる制度で、中小企業の実務で最も利用頻度の高い税制優遇の一つです。通常であれば耐用年数に応じて数年にわたって減価償却する資産を、購入年度に一括して経費化できるため、利益が出ている期の節税対策としても有効です。
中小企業投資促進税制
租税特別措置法第42条の6に基づく制度で、一定の機械装置(1台160万円以上)やソフトウェア(70万円以上)等を取得した場合、取得価額の30%の特別償却か、7%の税額控除(資本金3,000万円以下の場合)を選択適用できます。
製造業の設備更新やIT投資に際して活用されることが多く、通常の減価償却に上乗せして初年度の償却額を増やす特別償却か、法人税額を直接減額する税額控除かを選べる点が特徴です。
中小企業経営強化税制
中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、計画に記載された設備を取得した場合に適用される制度です(租税特別措置法第42条の12の4)。即時償却(取得価額の全額を初年度に償却)か、取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円以下の場合)を選択できます。
投資促進税制と比較して優遇率が高いですが、事前に経営力向上計画の策定と認定手続きが必要です。設備投資の計画段階で申請を行う必要があるため、投資実行の数か月前から準備を始めることが望ましいでしょう。
人件費・賃上げに関する税制優遇
従業員の処遇改善を促進するための税制優遇も、中小企業にとって重要な制度です。
賃上げ促進税制
中小企業向けの賃上げ促進税制は、租税特別措置法第42条の12の5に基づき、雇用者給与等支給額が前年度比で一定割合以上増加した場合に、増加額の一定割合を法人税額から控除できる制度です。
基本要件として、雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加していれば、増加額の15%が税額控除されます。さらに2.5%以上の増加であれば控除率は30%に上乗せされます。教育訓練費が前年度比10%以上増加している場合はさらに10%が加算され、最大で増加額の40%の税額控除を受けることが可能です。
控除限度額は法人税額の20%です。控除しきれない額が生じた場合、中小企業は5年間の繰越控除が認められています。
所得拡大促進税制との関係
賃上げ促進税制は、かつての所得拡大促進税制を改組した制度です。年度ごとに要件や控除率が改正されるため、適用を検討する際は最新の税制改正大綱や国税庁の情報を確認してください。
欠損金の繰越控除と繰戻還付
中小企業には、欠損金(赤字)の取り扱いについても優遇措置があります。
欠損金の繰越控除
青色申告法人は、欠損金を10年間繰り越して将来の所得と相殺できます(法人税法第57条)。中小法人は繰越欠損金の控除限度額に制限がなく、所得の全額と相殺可能です。大法人の場合は所得の50%が控除上限であるため、中小企業に有利な取り扱いとなっています。
欠損金の繰戻還付
中小企業は、当期に欠損金が発生した場合、前年度に納付した法人税の還付を請求できます(法人税法第80条)。大法人については繰戻還付が停止されているため、中小企業に固有の制度です。事業年度の初期に大きな設備投資を行って赤字が見込まれる場合などに、前期の納税額の一部を早期に回収する手段として活用できます。
まとめ
この記事の要点
- 軽減税率(所得800万円以下に15%)、交際費の損金算入特例(年間800万円)など基本的な優遇措置を確実に適用し、申告漏れのないようにする
- 設備投資の際は少額減価償却資産の特例(30万円未満を即時償却)、投資促進税制、経営強化税制の中から最も有利な制度を選択する
- 賃上げ促進税制は従業員の給与引き上げで最大40%の税額控除が受けられ、人件費の増加と税負担の軽減を両立できる
各制度の適用要件や手続きは年度ごとに改正される可能性があるため、顧問税理士と連携して最新情報を把握しておくことが重要です。税理士の選び方に迷う場合は税理士の選び方ガイドを、利益改善の全体像は利益改善の方法を参考にしてください。
税制優遇の活用や財務改善に関するご相談は、無料相談からお問い合わせください。
よくある質問
- Q. 中小企業の法人税の軽減税率はいくらですか?
- A. 資本金1億円以下の中小法人の場合、年間所得800万円以下の部分に15%の軽減税率が適用されます(租税特別措置法第42条の3の2)。800万円超の部分には通常の23.2%が課されます。この軽減税率は2027年3月31日までの時限措置です。
- Q. 少額減価償却資産の特例は個人事業主も使えますか?
- A. はい、青色申告の個人事業主も利用可能です。取得価額30万円未満の減価償却資産について、年間合計300万円を上限に全額を即時償却(必要経費に算入)できます(租税特別措置法第67条の5、第28条の2)。
- Q. 賃上げ促進税制の適用を受けるにはどうすればよいですか?
- A. 前年度と比較して給与等支給額が1.5%以上増加していることが基本要件です。増加額の15%を法人税額から控除でき、2.5%以上の増加や教育訓練費の増加がある場合は控除率が上乗せされます。適用にあたっては確定申告書に明細書を添付する必要があります。
- Q. 設備投資に使える税制優遇にはどんなものがありますか?
- A. 中小企業投資促進税制(特別償却30%または税額控除7%)、中小企業経営強化税制(即時償却または税額控除10%)などがあります。対象設備や手続きが異なるため、投資計画の段階で税理士に相談することが重要です。