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申告忘れでも5年以内なら取り戻せる

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更正の請求でふるさと納税の控除漏れを取り戻す手順

ふるさと納税の寄附金控除を申告し忘れた場合に、更正の請求で税金を取り戻す方法を解説。e-Taxと書面での手続き手順、必要書類、5年の期限、ワンストップ特例との関係まで、実務上の注意点を網羅。

ふるさと納税で寄附をしたのに、確定申告で寄附金控除の記載を忘れてしまった。あるいは、ワンストップ特例を申請したつもりが手続き漏れで控除が反映されていなかった。こうしたケースは決して珍しくありません。

控除を受けられなかった分の税金は、そのまま放置すれば戻ってきません。しかし、「更正の請求」という手続きを使えば、法定申告期限から5年以内であれば申告内容を修正し、払いすぎた税金の還付を受けることが可能です(国税通則法第23条第1項)。

本記事では、ふるさと納税の控除漏れを更正の請求で取り戻すための具体的な手順を、e-Tax・書面それぞれの方法で解説します。「更正の請求は難しそう」と感じている方にも実務の流れが分かるよう、必要書類や注意点まで整理しました。

更正の請求とは何か

更正の請求は、確定申告書を提出した後に税額の計算に誤りがあった場合、正しい税額への修正を税務署に求める手続きです。国税通則法第23条に基づき、納税者の権利として認められています。

確定申告の「やり直し」には、税額を増やす方向の「修正申告」と、税額を減らす方向の「更正の請求」の2種類があります。この2つに加えて期限内の訂正申告を含めた3つの手続きの違いを把握しておくと、申告修正の全体像が見えやすくなります。ふるさと納税の控除を申告し忘れた場合は、本来の税額より多く納めている状態なので、更正の請求を使って差額の還付を求めます。修正申告との違いやそれぞれのリスクについても把握しておくと、申告の修正手続き全体が理解しやすくなります。

更正の請求の期限

更正の請求ができる期間は、法定申告期限から5年以内です。所得税の場合、法定申告期限は翌年3月15日なので、2025年分の所得税であれば2031年3月15日が期限になります。

ここで注意すべきは、「寄附をした年」ではなく「申告対象の年分」で起算する点です。2024年中に行ったふるさと納税は2024年分の所得税に関係するため、法定申告期限は2025年3月15日、更正の請求の期限は2030年3月15日となります。

確定申告をしていない場合は「期限後申告」

そもそも確定申告を提出していない場合は、更正の請求ではなく「期限後申告」で対応します。確定申告の義務がない給与所得者がふるさと納税の還付だけを受けたい場合は「還付申告」に該当し、こちらも5年以内に提出可能です。更正の請求はあくまで「提出済みの申告書を修正する」手続きである点を区別してください。

ふるさと納税で更正の請求が必要になる典型パターン

ふるさと納税に関連して更正の請求が必要になるケースはいくつかあります。

1つ目は、確定申告でふるさと納税の寄附金控除を記載し忘れたケースです。申告書の寄附金控除欄に金額を入れず、あるいは寄附先の自治体の情報を記載せずに提出してしまった場合がこれに該当します。

2つ目は、寄附金額の合算ミスです。複数の自治体に寄附した場合、一部の自治体分を合算し忘れて過少に申告してしまうケースがあります。

3つ目は、ワンストップ特例制度の手続き不備です。ワンストップ特例を申請したが申請書の記載不備や期限超過で受理されず、控除が適用されていなかったという事例は少なくありません。この場合、確定申告で改めて寄附金控除を申告する必要がありますが、既に確定申告を別の理由で提出していれば更正の請求で対応することになります。

4つ目は、確定申告によってワンストップ特例が無効になったケースです。これは後述の「ワンストップ特例との関係」で詳しく説明します。

ワンストップ特例制度との関係を整理する

ふるさと納税の更正の請求を正しく理解するうえで、ワンストップ特例制度との関係は避けて通れません。ここでの認識不足が手続きミスにつながりやすいためです。

ワンストップ特例が無効になる条件

ワンストップ特例制度は、確定申告を行わない給与所得者が、寄附先の自治体に申請書を提出するだけでふるさと納税の控除を受けられる制度です。ただし、次のいずれかに該当すると、ワンストップ特例は無効になります。

条件具体例
確定申告を行った医療費控除や住宅ローン控除(初年度)の申告のため確定申告を提出した
寄附先が6自治体以上1年間に6つ以上の自治体にふるさと納税をした
申請書に不備があった申請書の記載ミス、マイナンバー書類の不備、期限(寄附翌年の1月10日必着)の超過

特に注意が必要なのは1番目の条件です。医療費控除を受けるために確定申告を行ったところ、ふるさと納税分の寄附金控除を申告書に含めるのを忘れてしまうケースは実務上よく発生します。ワンストップ特例は確定申告書の提出によって自動的に無効となるため、申告書にふるさと納税分を書かなければ控除がゼロになってしまいます。

ワンストップ特例が無効になった場合の対応

ワンストップ特例が無効になった状態で確定申告を提出済みの場合、更正の請求によってふるさと納税分の寄附金控除を追加する必要があります。

この場合、更正の請求書にはふるさと納税の寄附金額をすべて記載します。ワンストップ特例で一部は控除されていたはず、という考えは誤りです。確定申告をした時点でワンストップ特例は全件が無効になるため、更正の請求では寄附金控除の全額を改めて申告します。

住民税への影響にも注意

ワンストップ特例は住民税からのみ控除される仕組みですが、確定申告(および更正の請求)で寄附金控除を受ける場合は所得税と住民税の両方から控除されます。更正の請求が認められると、所得税分は還付され、住民税分は翌年度の住民税から減額されます。住民税の減額反映には時間がかかるため、すぐに全額が戻るわけではない点を認識しておいてください。

更正の請求に必要な書類

更正の請求の手続きを始める前に、必要書類を揃えておきます。書類不備は手続きの遅延に直結するため、事前準備が重要です。

必須書類

更正の請求で必ず用意する書類は以下のとおりです。

更正の請求書(所得税及び復興特別所得税の更正の請求書)は、国税庁のウェブサイトからダウンロードするか、e-Taxの画面上で作成します。所得税の場合は「第一表」と「第五表(修正申告書・別表)」を使用します。e-Taxを利用する場合は、画面の指示に沿って入力すれば自動的に様式が生成されるため、様式を意識する必要はありません。

寄附金受領証明書は、寄附先の各自治体から送付される書類です。ふるさと納税ポータルサイト(ふるさとチョイス、さとふる、楽天ふるさと納税など)を経由した場合は、サイト上で「寄附金控除に関する証明書」(XMLデータ)をダウンロードできるケースがあります。このXMLデータはe-Taxでそのまま読み込めるため、個別の受領証明書より管理が簡単です。

当初の確定申告書の控えは、更正の請求書に「請求前の税額」を記載するために必要です。e-Taxで申告していれば、マイナポータルまたはe-Taxのメッセージボックスから受信通知・申告データを確認できます。

マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)は、e-Tax利用時はICカードリーダーまたはスマートフォンでの読み取りに使用します。書面提出の場合はマイナンバーカードの写し(両面)を添付します。

あると手続きがスムーズになる書類

源泉徴収票は給与所得者の場合に手元にあると確認がスムーズです。更正の請求書に給与所得の金額を記載する際に参照します。

ふるさと納税の寄附履歴の一覧も用意しておくと便利です。複数の自治体に寄附している場合、寄附先・寄附日・金額をまとめた一覧表を事前に作成しておくことで、更正の請求書への転記ミスを防げます。

e-Taxで更正の請求を行う手順

e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使えば、自宅から更正の請求の手続きを完了できます。税務署に出向く必要がなく、添付書類の提出も原則省略できるため、最も効率的な方法です。

1

国税庁の確定申告書等作成コーナーにアクセスする

国税庁ウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」を開き、「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」を選択します。マイナンバーカードでログイン後、更正の請求の対象年分を選択します。

2

当初の申告内容を読み込む

e-Taxで当初の確定申告をしていれば、申告データを自動で読み込めます。書面で申告した場合は、手元の申告書の控えを見ながら手入力で当初の申告内容を再現します。

3

寄附金控除の情報を入力する

「所得控除の入力」画面で「寄附金控除」を選択し、寄附先の自治体名・所在地・寄附金額・寄附年月日を入力します。ポータルサイトからダウンロードしたXMLデータがあれば、読み込み機能で一括入力が可能です。

4

更正の請求の理由を記載する

請求の理由欄に「確定申告時にふるさと納税の寄附金控除を適用していなかったため」と記載します。事実をそのまま簡潔に書けば問題ありません。

5

計算結果を確認して送信する

更正後の所得税額と還付金額が表示されるので、寄附金額と還付予想額に大きな齟齬がないか確認します。問題なければ電子署名を付与してe-Taxで送信します。

送信後、税務署での審査に通常1か月から3か月程度かかります。審査の結果、更正が認められれば「更正通知書」が届き、指定した口座に還付金が振り込まれます。

e-Taxの利用環境

e-Taxの確定申告書等作成コーナーはマイナンバーカードとスマートフォン(またはICカードリーダー)があれば利用できます。マイナポータルと連携しておくと、ふるさと納税の寄附情報が自動で反映される「マイナポータル連携」も利用可能です。2024年分以降の申告では、対応するポータルサイト経由の寄附であれば手入力の手間を大幅に省けます。

書面(紙)で更正の請求を行う手順

e-Taxを使わない場合は、更正の請求書を書面で作成し、管轄の税務署に提出します。

1

更正の請求書の様式を入手する

国税庁ウェブサイトから「更正の請求書」(所得税及び復興特別所得税)のPDFをダウンロードして印刷するか、税務署の窓口で入手します。確定申告書等作成コーナーで画面入力してから印刷する方法もあります。

2

請求書に必要事項を記入する

氏名・住所・マイナンバーのほか、「請求前の課税標準等」「請求後の課税標準等」の欄に、当初申告の数値と更正後の正しい数値をそれぞれ記入します。寄附金控除の金額を加えた結果、所得税額がいくら減るかを計算して記載します。

3

請求の理由と添付書類を準備する

請求の理由として「ふるさと納税の寄附金控除の適用漏れ」を記載し、寄附金受領証明書の原本とマイナンバーカードの写しを添付します。

4

管轄の税務署に提出する

納税地を管轄する税務署の窓口に持参するか、郵送で提出します。郵送の場合は信書として扱われるため、普通郵便または簡易書留で送付します。控えに収受印が欲しい場合は、返信用封筒(切手貼付済み)と控えのコピーを同封します。

書面提出の場合は寄附金受領証明書の原本添付が必要です。e-Taxでは原本提出を省略できますが、5年間の保管義務が残る点は共通しています。

更正の請求でよくある失敗と注意点

更正の請求の手続き自体は難しくありませんが、実務上つまずきやすいポイントがあります。事前に把握しておくことで、手続きの差し戻しや追加対応を防げます。

寄附金受領証明書を紛失した場合

寄附金受領証明書は更正の請求の根拠資料として不可欠です。紛失した場合は、寄附先の自治体に再発行を依頼してください。多くの自治体は電話やウェブサイトから再発行申請を受け付けています。再発行には2週間から1か月程度かかることが多いため、早めに手配を進める必要があります。

ふるさと納税ポータルサイトを利用した場合は、サイト上の寄附履歴から「寄附金控除に関する証明書」(XML形式)をダウンロードできることがあります。この証明書は各自治体発行の受領証明書に代えて使用できるため、紛失時の代替手段としても有効です。

控除上限額を超えた寄附に注意

ふるさと納税には実質自己負担2,000円で控除を受けられる上限額があります。この上限は所得金額や家族構成によって異なります。更正の請求で寄附金控除を追加しても、上限を超えた分は控除対象になりません。

寄附額が上限を大幅に超えていた場合、更正の請求をしても還付額がわずかになる可能性があります。手続きに取り組む前に、上限額のシミュレーションで見込みの還付額を確認しておくことを推奨します。

住民税の反映には時間差がある

更正の請求が認められた場合、所得税分は税務署から直接還付されますが、住民税分は翌年度の住民税に反映される形で減額されます。税務署から市区町村に情報が伝達され、住民税の再計算が行われるまでにタイムラグが発生します。

所得税の還付通知は届いたが住民税の変更通知が届かない、という状況になっても、通常は数か月以内に市区町村から「住民税変更通知書」が届きます。届かない場合は、お住まいの市区町村の税務課に問い合わせてください。

更正の請求が認められない場合

税務署の審査の結果、更正の請求が認められないケースもあります。この場合は「更正をすべき理由がない旨の通知書」が届きます。通知の内容に納得できない場合は、通知を受けた日の翌日から3か月以内に国税不服審判所に審査請求を行うことができます(国税通則法第75条)。更正処分への不服申立ての手続きで、不服申立ての流れを確認できます。

ただし、ふるさと納税の控除漏れという明確な事実誤りに基づく更正の請求が否認されることは稀です。更正の請求全般のデメリットや注意点も事前に確認しておくと安心です。寄附金受領証明書を適切に添付し、計算に誤りがなければ認められるのが通常です。

過去に税務調査を受けた年分の更正の請求

税務調査を経験した方の中には、調査対象となった年分について更正の請求ができるのか疑問に思う方もいるかもしれません。税務調査で指摘を受けた論点とは別の項目(たとえばふるさと納税の控除漏れ)であれば、5年の期限内であれば更正の請求は可能です。ただし、調査で確定した論点について再度争う目的での更正の請求は認められにくいのが実情です。

延滞税・加算税との関係

更正の請求は「払いすぎた税金を返してもらう」手続きのため、納税者側に延滞税や加算税が発生することはありません。むしろ還付金に対して還付加算金(利息に相当するもの)が付くことがあります。延滞税や加算税の計算方法は修正申告(税額が増える方向)の場合に関係する論点であり、更正の請求とは方向が逆である点を区別しておいてください。

個人事業主・法人役員が注意すべきポイント

ここまでは給与所得者を中心に説明しましたが、個人事業主や法人役員の場合に追加で注意すべき点があります。

個人事業主は毎年確定申告を行っているため、ワンストップ特例制度を利用できません。確定申告書に寄附金控除を記載し忘れた場合は、更正の請求が唯一の救済手段となります。事業所得の計算と寄附金控除は申告書上の記載箇所が異なるため、事業の経費計算に気を取られて寄附金控除を書き忘れる事例が見受けられます。

法人役員が個人としてふるさと納税を行った場合は、役員報酬に対する所得税の確定申告でふるさと納税分の寄附金控除を申告します。役員報酬が2,000万円を超えるなど確定申告が必要な方は、事業年度の決算業務と個人の確定申告時期が重なるため、ふるさと納税の申告漏れが起きやすい傾向にあります。

また、所得金額が年によって変動する個人事業主は、ふるさと納税の控除上限額も年ごとに変わります。前年の所得を基準に寄附額を決めたが、当年の所得が下がって上限を超過してしまった、というケースでは、更正の請求をしても期待した還付額にならない可能性がある点に留意してください。

この記事の要点

  • ふるさと納税の控除漏れは、法定申告期限から5年以内なら更正の請求で取り戻せる(国税通則法第23条)
  • 確定申告をするとワンストップ特例は自動的に無効になるため、申告書にふるさと納税分を含め忘れると控除がゼロになる
  • e-Taxなら自宅から手続きが完結し、寄附金受領証明書の原本提出も省略可能
  • 更正の請求は還付方向の手続きなので、延滞税・加算税は発生しない

ふるさと納税は節税メリットが大きい制度ですが、申告手続きのミスで控除を取りこぼしている方は少なくありません。「もう遅いのでは」と諦める前に、5年という更正の請求の期限を確認してください。手続きに不安がある場合は、税理士に相談することで確実に還付を受けられます。

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よくある質問

Q. ふるさと納税の控除を申告し忘れた場合、いつまでに更正の請求をすれば間に合いますか?
A. 法定申告期限から5年以内であれば更正の請求が可能です(国税通則法23条1項)。
Q. ワンストップ特例を申請済みでも更正の請求は必要ですか?
A. 確定申告を行うとワンストップ特例は無効になるため、申告書にふるさと納税分を含める必要があります。
Q. 更正の請求にかかる費用はありますか?
A. 税務署への手続き自体は無料です。税理士に依頼する場合は別途報酬が発生します。
Q. e-Taxで更正の請求をする場合、寄附金受領証明書の原本提出は必要ですか?
A. e-Taxの場合は原本提出を省略できますが、5年間の保管義務があります。

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