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還付を受けるにも落とし穴はある

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更正の請求のデメリット・注意点|還付の落とし穴を5つ解説

更正の請求のデメリットと注意点を5つ解説。審査に3〜6か月かかる、税務署から確認・調査が入る可能性がある、棄却時の不服申立てに手間がかかるなど、還付手続き特有のリスクと事前に確認すべきポイントを整理しています。

確定申告で税金を多く納めすぎた場合、更正の請求をすれば払いすぎた分の還付を受けられます。納税者にとって有利な手続きであることは間違いありませんが、「デメリットはないのか」「何かリスクがあるのではないか」と不安に感じる方も少なくありません。

結論から言えば、更正の請求に加算税や延滞税といった金銭的ペナルティはありません。修正申告とは異なり、手続きをしたことでお金が減る心配は不要です。ただし、審査に時間がかかる、税務署から確認が入る、棄却された場合に不服申立ての手間が発生するなど、知っておくべき注意点はあります。

本記事では、更正の請求の5つのデメリット・注意点を整理し、事前に知っておけば回避できるリスクと、修正申告のデメリットとの比較まで解説します。

そもそも更正の請求とは

更正の請求は、国税通則法第23条に基づく手続きです。確定申告書を提出した後に、申告した税額が本来の税額より多かったと気づいた場合に、税務署に対して減額と還付を求めます。

対象となるのは、控除の適用漏れ、経費の計上漏れ、税額計算の誤りなどです。医療費控除の申告を忘れていた、減価償却費の計算を間違えていた、消費税の仕入税額控除を適用していなかった、といったケースが典型例です。

更正の請求の期限は法定申告期限から5年以内で、所得税・法人税・消費税いずれにも対応しています。手続きの詳細は「更正の請求のやり方・期限」で解説していますので、手続き自体について知りたい方はそちらを先にご覧ください。

更正の請求の5つのデメリット・注意点

更正の請求にペナルティはありませんが、手続きを進める中で直面する「想定外」がいくつかあります。事前に把握しておけば対処できる内容です。

注意点1:審査に3〜6か月かかる

更正の請求の最大の注意点は、還付までの期間が長いことです。

通常の確定申告による還付金は1〜2か月で振り込まれますが、更正の請求による還付は3か月から6か月、場合によってはそれ以上かかります。更正の請求は税務署が内容を審査する工程が入るため、通常の還付よりも時間を要します。

税務署は更正の請求書を受理した後、帳簿や証拠書類と申告書の内容を照合し、請求に理由があるかどうかを確認します。この審査期間中、還付金はまだ確定していない状態です。資金繰りの計画に還付金を織り込んでいる場合は、入金時期が遅れるリスクを見込んでおく必要があります。

還付が確定するまでの流れ

更正の請求書を提出すると、税務署の審査を経て「減額更正通知書」が届きます。この通知書が届いて初めて還付が確定し、その後に還付金が指定口座に振り込まれます。審査中に追加の資料提出を求められることもあり、その場合はさらに時間がかかります。

注意点2:税務署から確認・調査が入る可能性がある

更正の請求を提出すると、税務署が内容を確認するために照会を行うことがあります。電話での確認、書面での追加資料の提出依頼、場合によっては事業所への訪問を伴う実地確認が行われるケースもあります。

これは通常の税務調査(実地調査)とは性格が異なる手続きですが、帳簿の提示や取引先への確認など、調査に近い対応を求められる場合があります。税務調査と追徴課税の相場で解説している本格的な税務調査とは別の手続きとはいえ、対応には時間と手間がかかります。

還付金額が大きい場合、過去に税務調査で問題が指摘されたことがある場合、請求理由が複雑な場合は、より詳細な確認が行われる傾向にあります。逆に、計算誤りが明白で証拠書類も揃っているケースでは、書面審査だけで完結することがほとんどです。

注意点3:棄却された場合の不服申立てに手間がかかる

更正の請求は全てが認められるわけではありません。税務署が審査した結果「更正をすべき理由がない」と判断した場合、請求は棄却され、「更正をすべき理由がない旨の通知書」が届きます。

棄却に対して不服がある場合は、国税通則法第75条に基づいて不服申立てを行えます。不服申立ての手段は2つあり、通知を受けた日の翌日から3か月以内に税務署長に対する「再調査の請求」か、国税不服審判所に対する「審査請求」を行います。

不服申立ては権利として認められている手続きですが、実際に行うとなると相当の手間がかかります。再調査の請求では税務署内で改めて審理が行われ、審査請求では国税不服審判所が第三者の立場で裁決を下します。いずれも請求理由の書面化、証拠書類の整備、場合によっては口頭意見陳述への出席が必要で、数か月から1年近い期間を要することもあります。

棄却の主な理由

更正の請求が棄却される典型的な理由は、請求の根拠が不十分、証拠書類が揃っていない、当初の申告に誤りがない(正しく申告されていた)、選択した処理方法(減価償却方法など)の変更に該当する、といったケースです。棄却を避けるためには、請求前に理由と証拠書類を入念に準備することが重要です。

注意点4:認められた更正の請求は取り消しにくい

更正の請求が認められて減額更正の処分が行われると、その結果を納税者側から「やはり元に戻したい」と撤回することは原則としてできません。

これがデメリットになるのは、更正の請求書の内容に誤りがあった場合です。たとえば、控除額を過大に計算した更正の請求が通ってしまい、後からその誤りに気づいた場合は、修正申告で追加納税する必要が生じます。この場合、当初の更正の請求がなければ発生しなかった手続きと、過少申告加算税のリスクが追加で発生します。

更正の請求書を提出する前に計算内容を十分に確認し、証拠書類と金額の整合性を検証してから提出するのが鉄則です。税理士に依頼している場合は、請求書のドラフト段階で数値の確認を済ませておきましょう。

注意点5:5年の期限を過ぎると請求できない

更正の請求の期限は法定申告期限から5年以内です(国税通則法第23条第1項)。この期限を過ぎると、どれだけ明白な誤りであっても原則として更正の請求はできなくなります。

5年という期間は一見長いように思えますが、実務では「数年前の帳簿を見直していたら計算誤りに気づいた」というケースが珍しくありません。気づいた時点で既に期限ギリギリ、あるいは期限を過ぎていたという事態は十分に起こり得ます。

5年を超えた場合の例外は「後発的事由」(国税通則法第23条第2項)に該当する場合に限られます。判決の確定、契約の取消し・解除、税法改正による遡及適用などが該当しますが、該当するケースは限定的です。「計算を間違えていた」「控除を忘れていた」といった事由は後発的事由には該当せず、5年の期限で打ち切られます。

修正申告のデメリットとの比較

更正の請求と修正申告は方向が逆の手続きですが、両者のデメリットを比較すると、更正の請求のほうがリスクは大幅に小さいことがわかります。

比較項目更正の請求修正申告
金銭的ペナルティなし過少申告加算税(10〜15%)+ 延滞税
不服申立ての権利棄却されても不服申立て可能提出後は原則として不服申立て不可
取消し・撤回認容後の撤回は困難提出後の取消しは原則不可
審査期間3〜6か月即時受理(審査なし)
税務署の確認内容審査ありなし(自主的な行為)
金融機関への影響影響なしマイナス評価の材料になり得る

修正申告は一度提出すると不服申立ての権利を失い、加算税と延滞税が確定的に発生します。一方、更正の請求で最悪のケースは「棄却されて還付を受けられない」ことであり、請求したこと自体で金銭的な損失が生じることはありません。

修正申告と更正の請求の違いも参照しながら、自分のケースがどちらに該当するかを正確に把握しておくことが大切です。「迷ったら修正申告ではなく更正の請求を検討する」というのが、リスクを最小化する考え方です。

更正の請求をすべきか判断する3つの基準

更正の請求の注意点を理解した上で、実際に手続きに進むかどうかは以下の3つの基準で判断できます。

まず、還付金額と手間のバランスを確認します。還付金額が数万円以下の場合、請求書の作成や証拠書類の準備にかかる時間と、税理士に依頼する場合の費用を考慮すると、手続きを見送るほうが合理的な場合もあります。還付金額が数十万円を超えるのであれば、手続きの手間を差し引いても取り組む価値があります。

次に、証拠書類が揃っているかを確認します。請求理由を裏付ける領収書、帳簿の記録、契約書などが手元にあるかどうかは、更正の請求の成否を左右する最大の要因です。証拠書類が散逸している場合は、取引先に再発行を依頼するなどの準備が必要になります。証拠が全くない場合は、棄却のリスクが高くなります。

最後に、請求期限までの残り期間を確認します。法定申告期限から5年以内という期限は動かせません。期限まで1年以上あれば余裕をもって準備できますが、期限が迫っている場合は早急に対応する必要があります。証拠書類の準備や税理士への相談に数か月かかることを想定し、余裕を持った行動が求められます。

少額でも検討すべきケース

還付金額が小さくても、e-Taxを使えば更正の請求書をオンラインで作成・提出できるため、手間は大幅に減ります。控除の適用漏れのように請求理由が明確で証拠書類もそのまま使える場合は、数万円の還付でも手続きする価値があります。書き方の詳細は「更正の請求書の書き方・記載例」を参照してください。

更正の請求でトラブルを避けるための実務ポイント

証拠書類を事前に揃える

更正の請求が棄却される最大の原因は、請求理由を裏付ける証拠書類の不備です。請求書を作成する前に、以下の書類が手元にあるかを確認してください。

所得税の場合は、医療費の領収書、保険料の控除証明書、寄附金の受領証、住宅ローンの年末残高証明書など、控除の根拠となる書類です。法人税の場合は、計上漏れの経費に関する領収書や契約書、減価償却費の計算明細、税額控除の根拠資料などです。消費税の更正の請求では、インボイスや帳簿の記載が証拠となります。

証拠書類が揃わない状態で請求を提出すると、追加資料の提出を求められて審査期間が延びるか、最悪の場合は棄却されます。

請求理由は具体的に記載する

更正の請求書の「請求の理由」欄には、何をどう間違えたのか、正しい処理はどうあるべきだったのかを具体的に記載します。「計算を間違えていたため」のような曖昧な記載では、税務署が請求内容を正確に把握できず、確認に時間がかかります。

たとえば「2024年分の確定申告において、配偶者特別控除(38万円)の適用を失念していたため、所得税額を過大に申告していた。正しくは控除額38万円を適用した税額XXX円とすべきところ、控除なしの税額XXX円で申告していた」のように、金額と根拠を明示するのが効果的です。

税理士への相談は早めに

更正の請求を税理士に依頼する場合の報酬体系は、還付額の一定割合(10%〜30%)を成功報酬とする形式か、固定報酬で受ける形式が一般的です。

還付金額が50万円を超える場合や、請求理由が複雑な場合は、税理士への依頼を検討してください。請求書の記載内容や証拠書類の整備が不十分だと棄却のリスクが高まるため、専門家のチェックを受ける価値は大きいです。相談のタイミングは「請求書を書く前」が理想です。請求書を書いた後に「このままで大丈夫か」と相談するよりも、方針の段階から関与してもらったほうが、審査通過率は高くなります。

よくある更正の請求の失敗パターン

処理方法の変更を更正の請求で行おうとするケース

更正の請求は「申告内容に誤りがあった」場合に使う手続きです。申告時に選択した処理方法(たとえば減価償却の定額法・定率法の選択、棚卸資産の評価方法の選択)が「不利だった」という理由では、更正の請求は認められません。

選択した方法自体は正しく適用されていた場合、それは「誤り」ではなく「選択の結果」です。税務署はこの区別を厳密に見るため、処理方法の変更を目的とした更正の請求は棄却される確率が高くなります。

期限ギリギリに慌てて提出するケース

請求期限が迫った状態で急いで更正の請求書を作成すると、計算ミスや証拠書類の不備が起きやすくなります。棄却されて不服申立てに進む事態になれば、さらに数か月の時間と労力がかかります。

払いすぎに気づいた時点で期限までの残り時間を確認し、十分な準備期間を確保してから手続きに入るのが鉄則です。期限が迫っている場合は、不完全な状態であっても期限内にまず提出し、追加資料を後から提出するという方法もあります。提出日が期限内であれば、受理されます。

まとめ

この記事のポイント

  • 更正の請求に加算税・延滞税は発生しない。金銭的なペナルティがない点で修正申告よりもリスクは小さい
  • 審査に3〜6か月かかる。還付金の入金時期を資金計画に織り込む際は余裕を持つ
  • 税務署からの確認・調査が入る可能性がある。証拠書類を事前に揃えておけば、通常は書面審査で完結する
  • 棄却された場合は不服申立てが可能だが、相当の手間と期間を要する。請求前の準備が棄却リスクを下げる
  • 法定申告期限から5年の期限がある。払いすぎに気づいたら早期に行動する

更正の請求は払いすぎた税金を取り戻す正当な手続きであり、手続き自体にペナルティはありません。「更正の請求をしたら税務署に目をつけられるのではないか」と不安に感じる方もいますが、正当な理由があり証拠書類が揃っていれば、審査は事務的に進みます。

注意すべきは「手続きの手間と時間」と「棄却リスク」です。どちらも事前の準備で大幅に軽減できます。請求理由と証拠書類を入念に整えてから提出すること、期限に余裕を持って着手すること。この2点を守れば、更正の請求で大きなトラブルに発展することはまずありません。

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よくある質問

Q. 更正の請求にデメリットはありますか?
A. 更正の請求は払いすぎた税金を取り戻す手続きであり、加算税や延滞税が課されることはありません。ただし、審査に3〜6か月かかる、税務署から確認や調査が入る場合がある、棄却されると不服申立ての手間が発生するなど、手続き上の注意点はあります。
Q. 更正の請求をすると税務調査が来ますか?
A. 更正の請求を提出すると、税務署が内容を審査するために帳簿や証拠書類の確認を行うことがあります。通常の税務調査(実地調査)とは異なる簡易的な確認ですが、還付金額が大きい場合や請求内容が複雑な場合は、より詳細な調査が実施される可能性があります。
Q. 更正の請求が棄却されたらどうなりますか?
A. 更正の請求が棄却されると『更正をすべき理由がない旨の通知書』が届きます。この処分に不服がある場合は、通知を受けた日の翌日から3か月以内に再調査の請求(税務署長あて)または審査請求(国税不服審判所あて)を行えます(国税通則法第75条)。
Q. 一度認められた更正の請求を取り消すことはできますか?
A. 更正の請求が認められて減額更正の処分が行われた後に、納税者側から『やはり元の税額に戻してほしい』と撤回することは原則としてできません。更正の請求書を提出する前に、請求内容が正確であるかを十分に確認してください。
Q. 更正の請求と修正申告はどちらがリスクが高いですか?
A. 修正申告は不服申立ての権利を失う、加算税・延滞税が発生するなど、更正の請求よりもリスクが大きい手続きです。更正の請求は還付を受ける手続きで金銭的なペナルティはありませんが、審査期間や税務署対応の負担がある点に注意が必要です。
Q. 更正の請求はいつまでにすればいいですか?
A. 法定申告期限から5年以内です。所得税2025年分であれば2031年3月15日が期限になります。期限を過ぎると原則として請求できなくなるため、払いすぎに気づいたら早めの対応が重要です。

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