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多すぎたら更正、少なすぎたら修正

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修正申告と更正の請求の違い|どちらを使うべきか判断フローつきで解説

修正申告と更正の請求の違いを比較表で整理。税金が多すぎた場合は更正の請求、少なすぎた場合は修正申告。判断フロー、手続きの流れ、間違えた場合の対処法、訂正申告との3者比較まで解説しています。

確定申告を済ませた後に計算ミスや控除の適用漏れに気づくケースは珍しくありません。そのとき「修正申告を出せばいいのか、更正の請求をすればいいのか」で迷う方が多いのですが、この2つは目的も手続きの方向も正反対です。

修正申告は「税金を少なく申告していた」場合に追加で納税する手続きで、更正の請求は「税金を多く納めすぎた」場合に還付を受ける手続きです。どちらを選ぶかを間違えると、本来取り戻せたはずの税金を取り戻せなくなる場合があります。

本記事では、修正申告と更正の請求の違いを比較表で整理し、どちらを使うべきかの判断フロー、訂正申告を含めた3者比較、そして間違えて手続きしてしまった場合の対処法まで解説します。

修正申告とは

修正申告は、国税通則法第19条に基づく手続きです。すでに提出した確定申告書の内容に誤りがあり、本来の税額より少なく申告していた場合に、納税者自身が正しい金額に直して再度申告します。

たとえば、売上の計上漏れがあった、経費として認められない支出を経費に含めてしまっていた、控除額を過大に計算していた、といったケースが該当します。修正申告を行うと、当初の申告との差額を追加で納付する義務が生じます。

手続きの概要

修正申告は、納税者が自ら誤りを発見して行う場合と、税務調査の結果として求められる場合の2つがあります。

自ら誤りに気づいた場合は、修正申告書を作成して所轄税務署に提出し、差額の税金を納付します。税務調査で指摘を受けた場合は、調査官から修正申告を求められることが多く、指摘内容に同意できる場合は修正申告書を提出します。同意できない場合は、修正申告に応じず「更正処分」を受ける選択肢もあります。

修正申告の法的根拠

国税通則法第19条は、納税申告書を提出した者が、その税額が過少であること等を知った場合に修正申告書を提出できると規定しています。修正申告書を提出した場合、過少申告加算税(原則10%)と、法定納期限の翌日からの延滞税が課されます。

修正申告のリスク

修正申告には注意すべき点があります。修正申告は「納税者の自主的な行為」として扱われるため、一度提出すると後から「やはり修正前の金額が正しかった」と主張することが難しくなります。税務調査で指摘を受けて修正申告に応じた場合、その内容について不服申立て(再調査の請求・審査請求)を行う権利が原則として失われます。

修正申告のタイミングによって、加算税の負担が変わることも重要なポイントです。税務調査の事前通知前に自主的に提出すれば過少申告加算税は免除されますが、調査着手後の提出では10%〜15%の加算税が課されます。修正申告のデメリットやリスクの詳細は「修正申告のデメリット・リスク」で整理しています。

更正の請求とは

更正の請求は、国税通則法第23条に基づく手続きです。確定申告で税額を過大に申告した場合(税金を多く納めすぎた場合)に、税務署に対して正しい税額への減額と還付を求めます。

控除の適用漏れに後から気づいた、経費の計上漏れがあった、税制改正で有利な取扱いが遡及的に適用されることになった、といった場面で使います。なお、更正の請求・修正申告・訂正申告の3つの手続きの違いをさらに詳しく比較した記事も用意しています。更正の請求が認められれば、払いすぎた分の税金が還付されます。

手続きの概要

更正の請求書を作成し、請求の理由とそれを裏付ける証拠書類を添えて所轄税務署に提出します。税務署は内容を審査し、請求が正当であると認めれば減額更正の処分を行い、差額が還付されます。

還付までの期間は通常3か月から6か月程度です。確定申告の還付(1〜2か月)よりも時間がかかるのは、税務署が更正の請求の内容を審査する工程が入るためです。更正の請求の具体的なやり方や必要書類については「更正の請求のやり方・期限」で詳しく解説しています。

更正の請求の期限

更正の請求は無期限にできるわけではなく、法定申告期限から5年以内という期限が設けられています。2011年(平成23年)12月の税制改正で、それまでの1年から5年に延長されました。

たとえば2025年分の所得税の確定申告(法定申告期限: 2026年3月15日)について更正の請求を行う場合、期限は2031年3月15日です。

5年を超えた場合でも、判決の確定や契約の取消しなどの「後発的事由」(国税通則法第23条第2項)に該当する場合は、例外的に更正の請求が認められることがあります。

更正の請求と税務調査

更正の請求を提出すると、税務署が内容を確認するために照会や調査を行うことがあります。証拠書類を整えて提出すれば通常は書面での審査で完結しますが、金額が大きい場合や内容が複雑な場合は、実地の確認が行われる可能性があります。

比較表で見る10の違い

修正申告と更正の請求は、目的からペナルティまであらゆる面で異なります。以下の比較表で全体像を確認してください。

比較項目修正申告更正の請求
目的過少申告の是正(追加納税)過大申告の是正(還付)
法的根拠国税通則法第19条国税通則法第23条
税額の方向増える(追加で納付)減る(還付を受ける)
提出期限制限なし(いつでも可)法定申告期限から5年以内
加算税あり(過少申告加算税10〜15%)なし
延滞税あり(法定納期限の翌日から起算)なし(逆に還付加算金が付く場合あり)
不服申立て原則不可(自主的行為のため)請求が通らない場合は不服申立て可能
提出後の取消し原則不可税務署が審査し判断
税務署の対応即時受理(申告に基づき課税)審査後に減額更正の可否を決定(3〜6か月)
きっかけ自主発見または税務調査での指摘自主発見、税制改正、後発的事由

この表で重要なのは、修正申告には提出期限がない一方で更正の請求には5年の期限がある点です。税金の払いすぎに気づいた場合は、早めに更正の請求を行う必要があります。

また、修正申告は提出後に取消しが難しいのに対し、更正の請求は税務署の審査を経て認否が決まります。更正の請求が認められなかった場合は、再調査の請求や審査請求で争う道が残されています。

修正申告と更正の請求——根本的な違い

  • 修正申告は「税額が少なすぎた」ときに使う(納税者が追加で払う)
  • 更正の請求は「税額が多すぎた」ときに使う(税務署から還付を受ける)
  • 修正申告は提出後に争えなくなるが、更正の請求は不認容でも不服申立てが可能
  • 更正の請求には5年の期限があるため、払いすぎに気づいたら早期の対応が必要

どちらを使うべきか判断フロー

確定申告の誤りに気づいたとき、修正申告と更正の請求のどちらを使うべきかは、3つのステップで判断できます。

1

申告期限が過ぎているか確認する

確定申告の期限内であれば、修正申告でも更正の請求でもなく「訂正申告」(申告書の再提出)で対応します。期限内の訂正は加算税も延滞税もかかりません。期限を過ぎている場合はステップ2へ進みます。

2

正しい税額と申告済みの税額を比較する

本来の正しい税額が申告済みの税額より多い(払い不足)なら修正申告、少ない(払いすぎ)なら更正の請求です。売上の計上漏れや経費の過大計上は修正申告、控除の適用漏れや経費の計上漏れは更正の請求になるケースが多いです。

3

期限と証拠書類を確認する

修正申告は期限なしでいつでも可能です。更正の請求は法定申告期限から5年以内で、理由を裏付ける証拠書類が必要です。更正の請求の期限が迫っている場合は、早急に更正の請求書と証拠書類を準備してください。

判断に迷うのは「一部は税額が増え、一部は税額が減る」というケースです。たとえば、ある経費が否認されて税額が増える一方で、別の控除の適用漏れがあり税額が減るといった場合です。

この場合、増額と減額を相殺した結果で判断します。差し引きで税額が増えるなら修正申告、減るなら更正の請求です。ただし、増額部分と減額部分の論点が異なる場合は、税理士に相談のうえ対応方針を決めることを推奨します。

判断の原則は単純

「本来の正しい税額」が「申告した税額」より大きければ修正申告、小さければ更正の請求。期限内なら訂正申告。この3択です。

訂正申告を含めた3者比較

確定申告の誤りを直す手続きは、厳密には「修正申告」「更正の請求」「訂正申告」の3つがあります。訂正申告はあまり知られていませんが、期限内であれば最も有利な選択肢です。

比較項目訂正申告修正申告更正の請求
使える期間申告期限内のみ申告期限後(期限なし)申告期限後(5年以内)
税額の方向増減どちらも可増額のみ減額のみ
加算税なしありなし
延滞税なしありなし
不服申立て不要(自由に出し直せる)原則不可不認容なら不服申立て可
手続き申告書の再提出修正申告書の提出更正の請求書の提出

訂正申告は、確定申告期限内(所得税であれば3月15日まで)に申告書を改めて提出するだけで手続きが完了します。税務署は最後に提出された申告書を有効な申告として扱うため、計算誤りであれ控除漏れであれ、期限内であればペナルティなしで修正できます。

この制度を考えると、確定申告後に「何か間違えたかもしれない」と思ったら、まず申告期限が過ぎていないかを確認するのが最優先です。期限内であれば訂正申告で無条件に直せます。

確定申告期限の整理

所得税の確定申告期限は原則として翌年3月15日です。法人税は事業年度終了日の翌日から2か月以内、消費税は個人が翌年3月31日、法人が事業年度終了日の翌日から2か月以内です。期限内であれば訂正申告で対応でき、加算税・延滞税は一切発生しません。

よくある間違いと対処法

間違えて修正申告を出してしまった場合

「本来は更正の請求をすべき(税金を払いすぎていた)だったのに、よく分からないまま修正申告を出してしまった」というケースがあります。

修正申告は原則として提出後の取消しができないため、同じ論点について後から更正の請求で覆すことは認められていません。ただし、修正申告の内容自体に計算誤りがあった場合は、その誤りについて更正の請求を行う余地はあります。

また、税務調査において調査官から修正申告を求められた場合に安易に応じてしまうと、不服申立ての権利を失います。指摘内容に少しでも疑問がある場合は、修正申告書に署名する前に税理士に相談してください。修正申告に応じるリスクの全体像は「修正申告のデメリット・リスク」にまとめています。

更正の請求の期限が切れていた場合

更正の請求は法定申告期限から5年以内という期限が定められているため、期限を過ぎると原則として還付を受けることができません。

ただし、後発的事由(国税通則法第23条第2項)に該当する場合は、5年を超えていても更正の請求が認められます。後発的事由には、判決の確定、契約の取消しや解除、税法の改正による遡及適用などがあります。該当する可能性がある場合は、税務署や税理士に確認してください。

期限切れが明らかな場合は「嘆願書」を税務署に提出するという実務上の方法もあります。法的な権利ではなく税務署長の裁量による減額更正を求めるもので、認められるかどうかは個別の事情次第ですが、金額が大きい場合は検討の余地があります。

修正申告と更正の請求を同時に行う場合

まれにですが、修正申告と更正の請求を同じ年分について同時に行うケースがあります。たとえば、ある項目について売上を過少に計上していた(修正申告の対象)一方で、別の項目について経費の計上漏れがあった(更正の請求の対象)場合です。

このケースでは、全体として税額が増えるなら修正申告、減るなら更正の請求としてまとめて手続きを行います。増減の項目を分けて別々に提出するのではなく、差し引きした結果で一本化するのが原則です。

修正申告は慎重に

修正申告は一度出すと取り消しが難しい不可逆的な手続きです。「少し多めに申告しておけば安心」という考えで過大な修正申告を行うと、本来不要な税金を払い続けることになります。正確な税額を計算してから提出してください。

加算税と延滞税の取扱い

修正申告を行うと、原則として過少申告加算税と延滞税が発生します。加算税率はタイミングによって異なります。

タイミング過少申告加算税延滞税
事前通知前に自主修正0%(免除)あり
事前通知後・調査着手前5%(50万円超部分は10%)あり
調査着手後10%(50万円超部分は15%)あり
仮装・隠蔽(重加算税)35%あり

延滞税は修正申告のタイミングに関係なく、法定納期限の翌日から起算されます。修正申告の提出が遅れるほど延滞税の金額は膨らみます。誤りに気づいたら早期に対応するのが税負担を抑えるポイントです。

更正の請求では、加算税も延滞税も発生しません。逆に、還付が認められた場合には還付加算金(還付金に対する利息に相当するもの)が付くことがあります。

自主的な修正申告で加算税が免除される詳しい条件は「自主修正申告で加算税免除される条件」で解説しています。加算税・延滞税の具体的な計算方法は「延滞税・加算税の計算方法」を参照してください。

まとめ

修正申告と更正の請求の違い——判断のポイント

  • 税額が少なすぎた(払い不足)→ 修正申告(国税通則法第19条)
  • 税額が多すぎた(払いすぎ)→ 更正の請求(国税通則法第23条)
  • 申告期限内であれば「訂正申告」で加算税・延滞税なしに修正できる
  • 修正申告は提出後に取消しが困難なため、内容を十分に確認してから提出する
  • 更正の請求は法定申告期限から5年以内という期限があり、期限切れに注意

修正申告と更正の請求は方向が真逆の手続きですが、「確定申告の誤りを正す」という目的は共通しています。更正の請求にも審査期間の長さや棄却リスクといった注意点があるため、手続きに入る前に確認しておいてください。迷ったときは「正しい税額は申告した金額より多いか、少ないか」を確認すれば、どちらを使うべきかは自然に決まります。

修正申告は一度提出すると不服申立ての権利を失うため、特に税務調査の場面では慎重な判断が求められます。判断に迷う場合は、提出前に税理士などの専門家に相談することを強く推奨します。更正の請求の具体的な書き方については「更正の請求書の書き方・記載例」も参考にしてください。

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よくある質問

Q. 修正申告と更正の請求はどう違いますか?
A. 修正申告は『税金を少なく申告した』場合に追加納税する手続きで、更正の請求は『税金を多く納めた』場合に還付を受ける手続きです。方向が逆で、修正申告は税務署有利、更正の請求は納税者有利の手続きです。
Q. 確定申告の間違いに気づいたらどちらを使えばいいですか?
A. 税額が本来より多い(払いすぎ)なら更正の請求、税額が本来より少ない(払い不足)なら修正申告です。申告期限内であれば、どちらの場合も訂正申告(申告書の再提出)で対応できます。
Q. 修正申告を出した後に更正の請求はできますか?
A. 原則としてできません。修正申告は自主的な行為のため、提出後に『やはり前の金額が正しかった』と更正の請求で取り消すことは認められていません。修正申告すべきか迷う場合は、提出前に税理士に相談してください。
Q. 訂正申告とは何ですか?
A. 訂正申告は確定申告の期限内に申告書を出し直す手続きです。期限内であれば何度でも訂正でき、加算税も延滞税もかかりません。税額を増やす場合も減らす場合も、期限内なら訂正申告で対応するのが最善です。

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