払いすぎた税金を取り戻す
更正の請求とは|やり方・期限・必要書類を税目別に解説【税金還付の手続き】
更正の請求のやり方・提出期限・必要書類を所得税・法人税・消費税の税目別に解説。確定申告で税金を多く納めてしまった場合の還付手続きと、修正申告との違い、更正の請求書の書き方をまとめています。
確定申告を済ませた後に計算ミスや控除の適用漏れに気づいた場合、払いすぎた税金を取り戻す手続きが「更正の請求」です。申告期限後に自分のミスに気づいたケースだけでなく、税制改正によって有利な取扱いが遡及適用される場合にも使える制度です。
更正の請求は所得税・法人税・消費税いずれにも対応していますが、手続きの期限や必要書類が税目によって異なります。本記事では、更正の請求のやり方・期限・必要書類を税目別に整理し、実務上のポイントを解説します。
更正の請求の基本
更正の請求とは
更正の請求は、国税通則法第23条に基づく手続きです。確定申告で納税額を過大に申告した場合、または純損失等の金額を過少に申告した場合に、税務署に対して税額の減額(還付)を求めることができます。
「更正」とは税務署が税額を正しく改める処分のことで、「更正の請求」はそれを納税者側から求める手続きです。税務署がこの請求を審査し、内容が正当であると認めれば、減額更正の処分が行われ、払いすぎた税金が還付されます。
修正申告との違い
更正の請求と修正申告は方向が逆の手続きです。
更正の請求は「税金を多く納めすぎた」場合に使います。納税者にとって有利な手続きで、還付を受けることが目的です。修正申告は「税金を少なく申告した」場合に使います。追加で納税する手続きで、自主的に行えば過少申告加算税が軽減される場合があります。
確定申告期限内であれば「訂正申告」(申告書の再提出)で対応できます。期限後に税額が多いことに気づいた場合が更正の請求、少ないことに気づいた場合が修正申告です。
修正申告は慎重に
修正申告は一度提出すると、後から「やっぱり修正前の金額が正しかった」と更正の請求で取り消すことが原則としてできません。修正申告すべきか迷う場合は、税理士に相談してから判断してください。
更正の請求の期限
原則: 法定申告期限から5年以内
2011年(平成23年)12月2日以後に法定申告期限が到来する国税については、更正の請求の期限が法定申告期限から5年に延長されています。それ以前は1年でしたが、現在は5年間の猶予があります。
所得税の場合、2025年分の確定申告の法定申告期限は2026年3月15日です。更正の請求の期限はそこから5年後の2031年3月15日になります。
法人税の場合は、事業年度終了日の翌日から2か月後が法定申告期限です。3月決算の法人であれば、2026年3月期の法定申告期限は2026年5月31日で、更正の請求の期限は2031年5月31日です。
消費税も同様に、法定申告期限から5年以内です。
特例: 後発的事由による更正の請求
5年を超えた場合でも、国税通則法第23条第2項に定める「後発的事由」に該当すれば更正の請求が可能です。
後発的事由には、判決により申告内容と異なる事実が確定した場合、契約が取消し・解除された場合、税法の改正により遡及適用される場合などがあります。後発的事由が発生した日の翌日から2か月以内に更正の請求を行う必要があります。
税目別の手続きと必要書類
所得税の更正の請求
所得税の更正の請求書は「所得税及び復興特別所得税の更正の請求書」(国税庁様式)を使用します。
提出先は所轄の税務署です。e-Taxでも書面でも提出できます。書面で提出する場合は税務署の窓口に持参するか、郵送します。
更正の請求書には、更正の請求をする理由と、請求前の課税標準等と税額、請求後の課税標準等と税額を記載します。「どこが間違っていたか」「正しい金額はいくらか」「その結果、いくら還付されるべきか」を明示する書類です。
添付書類として、更正の請求の理由を裏付ける証拠書類が必要です。医療費控除の適用漏れであれば医療費の領収書、扶養控除の誤りであれば扶養親族の情報を証明する書類、経費の計上漏れであれば領収書や帳簿の写しなどです。
誤りの特定
確定申告書の控えと帳簿を突き合わせ、どの項目がいくら間違っていたかを特定します。
正しい税額の再計算
誤りを訂正した場合の課税所得と税額を再計算します。還付される金額を確認します。
更正の請求書の作成
国税庁の様式に沿って、請求前と請求後の数値を記入します。請求理由を明確に記載します。
証拠書類の準備
請求理由を裏付ける領収書・帳簿の写し・契約書などを準備します。
税務署への提出
所轄税務署にe-Taxまたは書面で提出します。
税務署の審査・還付
税務署が内容を審査し、正当と認めれば減額更正の通知と還付が行われます。審査に3〜6か月程度かかります。
法人税の更正の請求
法人税の更正の請求書は「法人税及び地方法人税の更正の請求書」を使用します。手続きの流れは所得税と同様で、提出先は法人の本店所在地を管轄する税務署です。
法人でよくある更正の請求の事由は、減価償却費の計上漏れ、貸倒引当金の計算誤り、交際費等の損金不算入額の誤り、税額控除(試験研究費税額控除など)の適用漏れなどです。
法人税の更正の請求が認められると、連動して地方法人税・事業税・住民税も減額されるため、還付の総額はそれなりの金額になることがあります。ただし、地方税については別途、都道府県税事務所や市区町村に更正の請求または還付の手続きが必要な場合があります。
消費税の更正の請求
消費税の更正の請求書は「消費税及び地方消費税の更正の請求書」を使用します。
消費税でよくある更正の請求の事由は、仕入税額控除の適用漏れ(課税仕入れの計上漏れ)、簡易課税制度の事業区分の誤り、免税事業者の判定誤りなどです。
インボイス制度導入後は、適格請求書の保存要件を満たしていない仕入について仕入税額控除を適用してしまい、後から気づいて修正申告が必要になるケースも出ています。逆に、本来は仕入税額控除を適用できたのに控除しなかった場合は、更正の請求で還付を受けられます。
更正の請求が認められないケース
更正の請求は全てが自動的に認められるわけではありません。税務署が審査した結果、請求を棄却(認めない)する場合もあります。
税務署は更正の請求を受けると、内容の審査のために帳簿や証拠書類の確認を行います。[税務調査と追徴課税の相場](/column/zeimu-chousa-tsuicho-kazei-souba/)で解説している税務調査とは性質が異なりますが、事実関係の確認という点では似た作業が行われます。
証拠書類が不十分な場合は、請求が認められないことがあります。「経費の計上漏れ」を理由に更正の請求をしても、その経費の領収書や帳簿の記録がなければ、税務署としては請求の正当性を確認できません。
申告時に選択した処理方法(たとえば減価償却の方法や棚卸資産の評価方法)を、更正の請求で遡及的に変更することは原則として認められません。選択した計算方法が「誤り」ではなく「不利だった」というだけでは、更正の請求の対象にはならないためです。
更正の請求が棄却された場合
税務署が更正の請求を棄却した場合は「更正をすべき理由がない旨の通知書」が届きます。この処分に不服がある場合は、通知を受けた日の翌日から3か月以内に国税不服審判所に審査請求を行うことができます(国税通則法第75条)。
実務上のポイント
よくある更正の請求の事由
個人事業主で多いのは、医療費控除の適用漏れ、住宅ローン控除の計算誤り、扶養控除の適用漏れ、社会保険料控除の申告忘れです。
法人で多いのは、減価償却費の計算誤り、税額控除の適用漏れ、受取配当等の益金不算入の処理漏れ、外国税額控除の適用漏れです。法人税の更正の請求書の別表記入については法人税の更正の請求書の書き方で記載例つきで解説しています。重加算税の要件と対策で税務上のリスクを整理しているので、申告の誤りが意図的と見なされるリスクについても確認しておくことを推奨します。
税理士への相談タイミング
更正の請求は納税者自身でも行えますが、還付金額が大きい場合や、適用の可否が微妙な場合は税理士に相談することを推奨します。請求理由の記載方法や証拠書類の整え方で、審査の結果が変わることがあるためです。
税理士に依頼する場合の費用は、還付税額の一定割合(10%〜30%程度)を成功報酬とするケースや、固定報酬で受けるケースがあります。還付税額が数十万円以上であれば、専門家への依頼コストを差し引いても手元に残る金額が大きくなります。
まとめ
この記事のポイント
- 更正の請求は確定申告で税金を多く納めた場合に還付を受ける手続き。法定申告期限から5年以内が請求期限
- 所得税・法人税・消費税それぞれに専用の請求書があり、e-Taxでも提出可能
- 請求理由を裏付ける証拠書類(領収書・帳簿の写し等)が不十分だと棄却されるため、資料の準備が重要
- 審査から還付まで3〜6か月程度かかるのが一般的。還付金額が大きい場合は税理士への相談を推奨
確定申告の誤りに気づいた時点で、更正の請求の期限内であれば還付を受けられる可能性があります。相続税の更正の請求のように税目によって特有の要件がある点にも注意してください。「数年前の申告ミスだから今さら」とあきらめず、5年以内であれば手続きを検討してください。帳簿と領収書は廃業後も7年間の保存義務がありますので、更正の請求の可能性も含めて保管を続けることが大切です。
よくある質問
- Q. 更正の請求と修正申告の違いは何ですか?
- A. 更正の請求は「税金を多く納めすぎた」場合に還付を受ける手続きで、修正申告は「税金を少なく申告してしまった」場合に追加で納める手続きです。方向が逆で、更正の請求は納税者有利、修正申告は税務署有利の手続きです。
- Q. 更正の請求をすると税務調査が来やすくなりますか?
- A. 更正の請求を行うと、税務署が内容を審査するために調査に近い確認が行われることがあります。ただし、正当な理由があり証拠書類が揃っていれば、通常の税務調査とは異なる簡易な確認で済むケースがほとんどです。
- Q. 還付金が振り込まれるまでどのくらいかかりますか?
- A. 通常の確定申告による還付は1〜2か月程度ですが、更正の請求による還付は審査を要するため3か月から6か月程度かかるのが一般的です。税務署の処理状況によってはさらに時間がかかる場合もあります。
- Q. 5年より前の申告内容を更正の請求で訂正できますか?
- A. 原則としてできません。更正の請求の期限は法定申告期限から5年以内です。ただし、後発的事由(判決の確定や法令の改正など)に該当する場合は、特例として5年を超えた更正の請求が認められることがあります(国税通則法第23条第2項)。
- Q. 更正の請求はe-Taxで提出できますか?
- A. e-Taxで提出可能です。所得税・法人税・消費税のいずれも、e-Taxの更正の請求書作成機能を使ってオンラインで提出できます。紙で提出する場合は、所轄税務署に持参または郵送します。