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廃業年度の申告を正しく終える

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廃業時の確定申告|最後の申告で損しないための5つの注意点

廃業したら確定申告はどうなる?廃業届の期限、減価償却の打ち切り、廃業後の経費を廃業年分などに算入できる特例(所得税法63条)、消費税の最終申告、事業税の見込控除。見落とすと損する5項目をまとめました。

事業をたたむ決断をしたとき、廃業届の提出や取引先への通知に意識が向きがちですが、忘れてはならないのが最後の確定申告です。廃業年度の申告には、通常の確定申告とは異なる処理がいくつもあり、知らずに申告すると税金を余分に払うことになりかねません。

減価償却の打ち切り計算、廃業後の経費算入、消費税の最終申告、事業税の見込控除など、廃業年度だけに発生する税務処理が複数あります。本記事では、個人事業主と法人それぞれの廃業時の確定申告で見落としがちな注意点を整理し、手続きの全体像を解説します。

廃業時の確定申告の基本

個人事業主の場合

個人事業主が年の途中で廃業した場合でも、確定申告は翌年の通常の時期に行い、期限は原則3月15日で、土日祝日等にあたるときは翌日です(国税通則法10条2項。受付は通常2月16日から)。

申告の対象は、その年の1月1日から12月31日までに生じた全ての所得です。事業所得は廃業日までの事業の分に、所得税法63条による廃業後の費用・損失を反映して計算し、廃業後に勤務先から給与を受けていればその給与所得も合わせて申告します。

各種所得を合計し、そこから基礎控除を含む所得控除を差し引いて残る金額がなければ、原則として申告の必要はありません。基礎控除は所得税法第86条が定めていますが、令和7年分以後は租税特別措置法第41条の16の2により合計所得金額に応じた上乗せがあり、実際の控除額は本法の額とは異なります。

金額は改正されるため、申告の要否はその年の確定申告の手引きで確認してください。ただし、源泉徴収された所得税がある場合は、申告することで還付を受けられる可能性があります。

青色申告をしている方が廃業する場合、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の提出期限は、やめようとする年分の所得税に係る確定申告期限まで(原則はその年の翌年3月15日。土日祝日等にあたるときは翌日)です(所得税法第151条第1項)。なお不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき業務の全部を廃止したときは、届出書を出さなくても廃止した日の属する年の翌年分以後は承認の効力を失います(同条第2項)。

損失が生じた年分に青色申告書を提出し(所得税法第70条第1項)、その後の各年も連続して確定申告書を提出していれば(同条第4項)、純損失は原則として翌年以後3年間繰り越せます(特定非常災害に係る一定の損失には5年の特例があります)。翌年以降に給与所得などがある場合は損失の繰越控除を適用できます。

廃業届(「個人事業の開業・廃業等届出書」)の提出期限は、令和8年1月1日以後はその事実があった日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までです(所得税法第229条)。

長らく「1か月以内」でしたが、令和5年度税制改正で変わりました。廃業手続きの全体ガイドで届出書類の一覧と記入方法を詳しく解説しています。

法人の場合

株式会社が任意に解散する場合は、株主総会の決議で解散し、解散日の翌日から2か月以内に解散の日の属する事業年度の確定申告を行います(法人税法第74条第1項)。

持分会社など会社の種類によって決議の要件は異なります。解散確定申告では、事業年度の開始日から解散日までの所得に対する法人税を申告・納付します。

その後は清算手続きに入り、残余財産が確定した日の属する事業年度について確定申告を行います。

申告期限は残余財産の確定の日の翌日から1か月以内で、その期間内に残余財産の最後の分配が行われるときは、その前日までです。

株式会社の場合、清算中の事業年度は定款で定めた事業年度にかかわらず、解散日の翌日から1年ごとの清算事務年度になり(会社法494条1項、法人税基本通達1-2-7)、清算が1年以上かかるときはその事業年度ごとに確定申告が必要です。

持分会社が解散した場合や、破産手続開始の決定により解散した場合は清算事務年度が定められていないため、定款等で定めた事業年度が法人税法上の事業年度になります(国税庁の通達解説)。会社清算の手続きと税金では清算確定申告の具体的な流れを解説しています。

廃業から最終申告までのタイムライン(個人事業主)

廃業を決めてから最後の確定申告を終えるまでの時系列を整理します。例として9月末に廃業する場合の流れを示します。

1

廃業日(9月30日)

事業を停止する。棚卸資産の処分・事業用資産の売却を完了させておく。従業員の退職日と取引先への通知時期は廃業前に決めて必要書類を整理しておく。社会保険・雇用保険の届出は、退職日や事業所を廃止した日など、それぞれの事実があった日を起算点として法定期限内に提出する。

2

廃業届提出(10月中)

所轄税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出(期限はその年分の確定申告期限まで)。給与を支払っていた場合は、給与支払事務所等を廃止した日から1か月以内に廃止届出書を提出する(最終給与の支払いが廃業日より後になるなら、起算日は廃業日と一致しない)。青色申告をやめる場合は取りやめ届出書を(業務の全部を廃止したなら翌年分以後は自動失効)、課税事業者でほかに課税売上げに当たる所得がない場合は消費税の事業廃止届出書を提出する。都道府県税事務所への届出もこの時期に。

3

帳簿整理(10-12月)

1月1日〜9月30日の帳簿を締める。廃業日までの費用と、廃業後に生じて所得税法第63条の要件を満たす費用・損失を分けて整理する。事業税の見込控除額を概算しておく。

4

確定申告(期限は原則翌年3/15・土日祝日等は翌日)

その年1月1日〜12月31日の全ての所得を申告(事業所得は1月1日〜9月30日の事業の分)。減価償却の月割り計算(資産ごとにその年に業務に使用していた月数。年初から使っていた資産なら9か月分)、廃業後経費の特例、事業税の見込控除を漏れなく反映する。消費税の最終申告も、課税期間の特例を選択していなければ原則3月31日(土日祝日等にあたるときは翌日)までに。

5

帳簿保存(原則7年間)

青色申告者の帳簿・書類は原則7年間、請求書・見積書・納品書・送り状などは5年間の保存が必要。税務調査は廃業後でも行われることがあるため、処分しない。

見落としがちな5つの注意点

注意点1: 減価償却の打ち切り計算

廃業日に事業用資産を保有している場合、その年の減価償却費はその年に業務に使用していた月数による月割り計算になります(国税庁 No.2106)。年初から使っていた資産を3月に廃業して使わなくなった場合は3か月分(12分の3)、その年の5月に取得して9月に廃業した資産は5か月分です。

個人事業主が事業用資産を廃業後も個人として使い続ける場合(自家用車や自宅兼事務所など)、所得税では譲渡がないため事業所得の収入にはならず、未償却残高も事業所得の計算上の経費にはなりません。

ただし消費税の課税事業者だった場合は、事業用資産を家事のために使用したものとして、後述のみなし譲渡(消費税法第4条第5項)の対象になり得ます。

事業用の機械・車両などの減価償却資産を売却した場合は原則として譲渡所得で、使用可能期間1年未満・取得価額10万円未満(業務の性質上基本的に重要なものを除く)・一括償却資産の必要経費算入を受けたものなどは譲渡所得に含まれません(国税庁 No.1460)。

棚卸資産を自分で引き取ると、所得税では収入になります

個人事業主が廃業時に棚卸資産(在庫)を自家消費する場合、所得税法第39条により、その資産の価額を総収入金額に算入します。

所得税基本通達39-2は、通常の販売価額の70%と仕入原価のいずれか高い方以上の金額で計上していればこれを認めるとしています。なお、後述する消費税の「みなし譲渡」は判定も対価の基準も別の制度なので、混同しないでください。

棚卸資産を自家消費した場合の計算例(所得税)

飲食店を廃業し、仕入原価40万円・通常販売価額80万円の食材在庫を個人で引き取るケースで考えます。

項目金額
通常の販売価額80万円
販売価額の70%56万円
仕入原価40万円
みなし収入金額(高い方)56万円

この場合、56万円を事業所得の収入に計上します。仕入原価40万円との差額16万円が課税所得に反映されるため、在庫の処分方法(売却・廃棄・自家消費)は廃業前に検討しておく必要があります。賞味期限のある食材は廃棄損として処理するほうが税務上は有利になるケースもあります。

注意点2: 廃業後の経費算入特例

所得税法第63条は、事業を廃止した後に生じた費用・損失で「当該事業を廃止しなかつたとしたならば…必要経費に算入されるべき金額」を、政令の定めるところにより廃業年分またはその前年分の必要経費に算入できる特例を定めています。

所得税法施行令179条は算入できる金額に限度を置いており、まず廃業年分について、直前に確定している総所得金額・山林所得金額・退職所得金額の合計額と、その計算の基礎とされた不動産所得・事業所得・山林所得の金額のいずれか低い金額を限度に算入します。

引ききれない部分だけを、前年分について同じ考え方で計算した限度内で算入します。廃業した年にその所得の総収入金額がなかったときは、総収入金額があった最近の年分とその前年分が対象になります。

対象になり得る費用の例は、廃業後に生じた事務所の原状回復費用、賃貸借契約の違約金、売掛金の回収に要した費用などです。判定は請求書が届いた日ではなく、廃業後に生じた費用・損失で、事業を続けていれば必要経費になるものかどうかで行います。廃業日までの期間に対応する光熱費・通信費は、請求が廃業後に届いても通常の必要経費として扱います。

この特例を知らないと、廃業後の支出を一切経費に入れずに申告してしまい、所得が過大に計算されます。対象になる費用は領収書とともに「廃業後に発生した事業関連費用」として整理しておきましょう。

注意点3: 消費税の最終申告

消費税の課税事業者が廃業する場合も、最後の消費税申告が必要です。個人事業者は年の中途で廃業しても、課税期間は短くなりません。

消費税基本通達3-1-2は、年の中途で事業を廃止した場合の課税期間を「その事業を廃止した日の属する年の1月1日から12月31日までの期間」と定めています(課税期間の特例を受けている場合を除く)。

申告期限は、個人事業主で課税期間の特例を選択していない場合は原則翌年3月31日(土日祝日等にあたるときは翌日)です。3か月または1か月ごとの課税期間の特例を選択している場合は、廃業日を含む特例の課税期間の末日の翌日から2か月以内です(たとえば3か月の特例で9月30日に廃業したなら11月30日)。ただし12月31日を含む課税期間(3か月の特例の10〜12月分、1か月の特例の12月分)は、特例を選択していても翌年3月31日です(国税庁 No.6601)。法人は課税期間の末日の翌日から2か月以内が原則で、残余財産が確定した課税期間は確定の日の翌日から1か月以内(その期間内に最後の分配を行うときはその前日まで)です(消費税法第45条第1項・第4項)。

見落としやすいのが、事業用資産の処分に伴う消費税です。事業用の備品や車両を売却した場合、その売却額に消費税が課税されます。個人事業主が事業用資産を個人利用に転用する場合も、みなし譲渡として消費税の課税対象になり得ます(消費税法第4条第5項)。

インボイス制度(適格請求書発行事業者)に登録していた場合、事業の廃止に伴って登録を取り消すときに提出するのは「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」ではなく、事業廃止届出書です(国税庁 No.6603)。名前から取消届出書を選びたくなるところですが、廃業が理由なら事業廃止届出書1通で足ります。

消費税の課税事業者(課税事業者を選択している方を含む)で、廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得(不動産所得等)がない方は、「消費税の事業廃止届出書」を廃業後速やかに税務署に提出してください(国税庁 A1-5)。この届出を忘れると、翌年以降も消費税の申告を求められることがあります。

注意点4: 事業税の見込控除

年の中途で事業を廃止した場合、個人事業税は事業の廃止後直ちに課されます(地方税法72条の51第3項。1月1日から3月31日までに廃止した場合は3月31日後)。

申告も別に必要で、地方税法72条の55により、個人事業税の納税義務者(第1種〜第3種事業)で、事業の所得が事業主控除額を超える場合は廃止の日から1か月以内に、その年1月1日から廃止の日までの事業の所得を申告する必要があります(廃止が死亡によるときは4か月以内)。

租税公課は原則としてその年12月31日までに納付すべきことが具体的に確定したものを必要経費に算入するため(所得税基本通達37-6。賦課決定もここでいう「申告等」に含まれます)、廃業年の事業税の賦課決定がその年のうちにあればその年分の必要経費になりますが、確定が翌年にずれ込むと、そのままでは廃業年分の経費になりません。

これに対応するのが「事業税の見込控除」です。所得税基本通達37-7は、事業税を課税される事業を廃止した場合、37-6にかかわらず、その年分の所得に課税される事業税の課税見込額を、廃業年分のその事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入できると定めています。

課税見込額は、事業税の課税見込額を控除する前のその年分のその事業に係る所得金額(A)、事業税の課税標準の計算上Aに加算・減算する金額(B)、事業税の税率(R)を用いて (A±B)×R÷(1+R) で計算します。

事業主控除は B のうち減算する金額として扱われます。

年の中途で廃業して事業を行った期間が1年に満たない場合、事業主控除は290万円に事業を行った月数を乗じて12で除した額になります(地方税法72条の49の14第2項。9月末に廃業した場合は217万5,000円)。単純に「所得-290万円×税率」で求めるのではなく、控除する事業税の分だけ所得が減ることを織り込んだ算式である点に注意してください。

見込控除によらない場合でも権利を失うわけではありません。

通達37-7の注は、この取扱いによらないときは事業税の賦課決定があった時点で所得税法63条(事業を廃止した場合の必要経費の特例)と152条(各種所得の金額に異動を生じた場合の更正の請求の特例)の適用があるとしています。実際の金額は税率・課税標準の判定で変わるため、計算は税理士に確認してください。

注意点5: 届出書類の提出漏れ

廃業時に提出すべき届出書は複数あり、提出先も税務署・都道府県税事務所・市区町村と分かれます。

税務署に提出するものは、個人事業の開業・廃業等届出書(その年分の確定申告期限まで)、所得税の青色申告の取りやめ届出書(やめようとする年分の確定申告期限まで。業務の全部を廃止した場合は所得税法151条2項で翌年分以後の承認が自動失効します)、消費税の事業廃止届出書(速やかに。廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得がない方が対象)です。

給与を支払っていた場合の給与支払事務所等の廃止の届出は、所得税法230条で「その事実があつた日から一月以内」とされています。

起算日は給与支払事務所等を廃止した日で、廃業日とは限りません。令和5年度税制改正で、廃業届を出す場合の提出不要規定が削除されたため、令和8年1月1日以後に生じた事実については廃業届とは別に提出します。

都道府県税事務所には事業開始(廃止)等申告書を提出します。提出期限は都道府県の条例で定められており、10日以内とする都道府県もあれば、「遅滞なく」とだけ定める都道府県もあります。事業所のある都道府県税事務所の案内で確認してください。

法人の場合は、異動届出書(税務署・都道府県・市区町村)、解散届(都道府県・市区町村)が追加で必要です。

社会保険では、適用事業所が廃止等で適用事業所に該当しなくなる場合に「適用事業所全喪届」を事実発生から5日以内に年金事務所へ提出します(日本年金機構)。

法人は事業主のみでも適用事業所になり得るため、従業員の有無にかかわらず確認してください。

雇用保険では、事業所の廃止届とは別に、離職した被保険者ごとの資格喪失届を離職の翌日から起算して10日以内にハローワークへ提出します(雇用保険法施行規則7条)。

届出を忘れたときに起きること

青色申告の取りやめ届出書を出さないまま翌年の確定申告を白色で行うと、税務署側の記録と齟齬が生じる場合があります。不要なトラブルを避けるため、廃業時の届出はチェックリストを作成して漏れなく提出しましょう。

廃業年度の確定申告を有利に進めるための工夫

青色申告の繰越損失を使い切る

廃業年度が赤字でも、その赤字がそのまま翌年以降に持ち越せるわけではありません。まずその年の各種所得のあいだで損益通算を行い、それでも控除しきれずに残った金額が「純損失」です。

青色申告者の純損失は、所得税法70条1項により翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年の総所得金額などから控除できます(繰越控除)。

翌年以降の給与所得と相殺できるのは、この繰越控除によるものです。控除を受けるには、損失が生じた年分の確定申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出している必要があります(同条第4項)。廃業後に会社員として再就職する予定がある方は、年末調整で済む年でも確定申告を続けてください。

前年が黒字であれば、繰戻し還付(所得税法第140条1項)も選択肢です。その年に生じた純損失を前年の所得にぶつけて、払いすぎになった所得税の還付を請求します。

前年分について青色申告書を提出していること、その年分の青色申告書を提出期限までに提出すること、還付請求書を確定申告書と同時に提出することが要件です。さらに同条5項は、事業の全部の譲渡または廃止があった場合について、前年に生じた純損失を前々年分にさかのぼって還付請求できる特例を定めています(前年分・前々年分を青色申告していることが条件)。

小規模企業共済の一時金受取り

小規模企業共済に加入していた場合、廃業を理由に共済金を受け取れます。

個人事業主が個人事業を廃業した場合の請求事由は、原則として共済金Aです(複数の事業を営んでいるときは、そのすべてを廃止したことが条件)。ただし平成28年3月以前に配偶者または子へ事業の全部を譲渡して廃業した場合は準共済金になります。また、掛金納付月数が6か月未満だと共済金Aは受け取れず、掛金は掛け捨てになります(中小機構)。

共済金Bは65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ方の老齢給付、解約手当金は任意解約の場合なので、廃業とは別ものです。

一括で受け取る共済金は退職所得として課税され、退職所得控除(掛金納付月数に応じた控除額)が適用されます。

同じ年に他の退職手当等を受け取る場合や、分割受取り(公的年金等の雑所得)と併用する場合は税負担が変わるため、受取方法は請求前に確認してください。廃業時の負債と個人保証で資金面の全体像を整理しています。

専門家への相談

廃業年度の確定申告は、通常の年次申告と比べて判断が求められる項目が多くなります。減価償却の打ち切り計算、廃業後経費の特例適用、事業税の見込控除など、一つひとつは単純でも組み合わせが複雑になるため、顧問税理士や税務署の無料相談を活用してください。

廃業時の確定申告チェックリスト

最後に、廃業年度の確定申告で確認すべき項目を時系列で整理します。

廃業前に済ませること

  • 棚卸資産(在庫)の処分方針を決める(売却・廃棄・自家消費ごとに税務処理が異なる)
  • 売掛金・未収金をできる限り回収する。回収見込みのない債権は貸倒処理の要件を確認するか、サービサーへの売却で簿外化する選択肢も検討する
  • 事業用固定資産の売却・処分を検討し、譲渡損益を試算する
  • 従業員の退職日を決め、社会保険・雇用保険の届出に必要な書類(賃金台帳など)を整理しておく(届出はそれぞれの事実があった日から法定期限内)

廃業後から申告までに整理すること

  • 資産ごとに、その年に業務に使用していた月数で減価償却費を月割り計算する
  • 廃業後に生じた費用・損失のうち、事業を廃止しなかったとしたら必要経費に算入されるべきものを仕分ける(所得税法第63条。算入できる金額には施行令179条の限度がある)
  • 廃業年分の事業税の課税見込額を概算し、見込控除(所得税基本通達37-7)を使うか確認する
  • 消費税の課税売上・課税仕入を集計する(課税期間の特例を選択していなければ、課税期間は廃業した年の12月31日まで)。事業用資産の処分に伴う消費税を含める
  • 小規模企業共済の請求事由(原則は共済金A)と掛金納付月数を確認し、受取方法・受取時期と退職所得控除額を確認する

届出書類の提出確認

  • 個人事業の開業・廃業等届出書(税務署 / その年分の確定申告期限まで)
  • 所得税の青色申告の取りやめ届出書(税務署 / その年分の確定申告期限まで。業務の全部を廃止した場合は自動失効)
  • 給与支払事務所等の廃止届出書(税務署 / 廃止した日から1か月以内。給与を支払っていた場合は廃業届とは別に提出)
  • 消費税の事業廃止届出書(税務署 / 速やかに。ほかに課税売上げに当たる所得がない場合)
  • ※インボイス登録者が廃業する場合、登録の取消しを求める旨の届出書は不要です(事業廃止届出書を提出すれば足ります)
  • 事業開始(廃止)等申告書(都道府県税事務所 / 期限は都道府県の条例による)
  • 個人事業税の申告(都道府県税事務所 / 廃止の日から1か月以内。個人事業税の納税義務者(第1種〜第3種事業)で、事業の所得が事業主控除額を超える場合・地方税法72条の55)
  • 適用事業所全喪届(年金事務所 / 事実発生から5日以内。適用事業所だった場合)
  • 雇用保険の資格喪失届(ハローワーク / 離職の翌日から起算して10日以内。被保険者が離職した場合)
  • 雇用保険の適用事業所廃止届(ハローワーク / 雇用保険の適用事業所だった場合)

帳簿・書類の保存

  • 帳簿類(仕訳帳・総勘定元帳)は原則7年間保存する
  • 決算関係書類・領収書などは原則7年間、請求書・見積書・納品書・送り状などは5年間保存する
  • e-Taxで申告した場合も、帳簿・書類の保存義務は変わらない(電子取引でやり取りしたデータは電子帳簿保存法に従って電子のまま保存する)

出典

まとめ

この記事のポイント

  • 個人事業主の廃業年度の確定申告は翌年の通常申告期間に行う。法人は解散事業年度の申告を解散日の翌日から2か月以内、残余財産確定事業年度の申告を確定の日の翌日から1か月以内(最後の分配がその期間内ならその前日まで)に行う
  • 減価償却の月割り計算、廃業後経費の特例(所得税法第63条)、事業税の見込控除(通達37-7)は見落とすと税金を余分に払う原因になる
  • 消費税の最終申告とインボイス登録の取消し、各種届出書の提出漏れにも注意が必要
  • 青色申告の繰越損失・繰戻し還付を活用すれば、廃業後の税負担を軽減できる

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よくある質問

Q. 廃業した年の確定申告はいつまでに行えばよいですか?
A. 個人事業主の場合、廃業した年分の確定申告は翌年3月15日(土日祝日等にあたるときは翌日。国税通則法10条2項)が期限で、受付は通常2月16日から始まります。年の途中で廃業しても、申告の対象はその年の1月1日から12月31日までに生じた全ての所得です。廃業日までの事業所得に加え、廃業後に得た給与所得なども含まれます。法人(株式会社の任意解散の場合)は、解散の日の属する事業年度の確定申告を解散日の翌日から2か月以内に行い、残余財産が確定した事業年度の確定申告は確定の日の翌日から1か月以内(その期間内に最後の分配を行うときはその前日まで)に行います(法人税法第74条第1項・第2項)。
Q. 廃業した年が赤字でも確定申告は必要ですか?
A. 各種所得の合計から所得控除を差し引いて残る金額がなければ、個人事業主に原則として申告義務はありません。基礎控除の額は合計所得金額に応じて変わり、令和7年分以後は租税特別措置法41条の16の2による上乗せもあります。金額は改正されるため、その年の確定申告の手引きで確認してください。ただし、源泉徴収された税金がある場合や青色申告の繰越損失を使いたい場合は、赤字でも申告したほうが有利です。法人は赤字でも解散確定申告が必要です。
Q. 廃業後に生じた費用や、廃業後に届いた請求書の支払いは経費にできますか?
A. 所得税法第63条の特例により、事業を廃止しなかったとしたら必要経費に算入されるべき費用・損失は、政令の定めるところにより廃業した年分またはその前年分の必要経費に算入できます。算入できる金額には施行令179条の限度があります。廃業年にその所得の総収入金額がなかったときは、総収入金額があった最近の年分とその前年分が対象です。廃業後に生じた事務所の原状回復費用などが例です。請求書が届いた日ではなく、費用・損失が生じた時期と条文の要件で判定します。
Q. 廃業届を出した後でも税務調査は来ますか?
A. 廃業届の提出と税務調査は別の話です。廃業後であっても、過去の申告内容に疑義があれば税務調査の対象になります。青色申告者の帳簿・書類は原則7年間の保存が必要で、請求書・見積書・納品書・送り状などは5年間でよいとされています(国税庁 No.2070)。廃業後も同じなので、処分しないでください。
Q. 個人事業主の廃業届の提出先はどこですか?
A. 所轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。提出期限は令和5年度税制改正により、令和8年1月1日以後は「その事実があった日の属する年分の所得税に係る確定申告期限まで」となりました(所得税法第229条)。従来の1か月以内ではありません。ただし給与支払事務所等の廃止届出書は同法第230条により、廃止の事実があった日から1か月以内のままです。消費税の事業廃止届出書は、課税事業者で、廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得がない場合に速やかに提出します。まとめて提出するのが実務的です。

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