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保育料の滞納に正しく対応

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保育園の未収金対策|保育料滞納への対応

保育園の保育料滞納の回収手順と予防策を解説。私立保育所は市町村、認定こども園・小規模保育は施設が徴収するなど、施設の種類で回収ルートが違います。時効、督促から支払督促・少額訴訟まで、児童手当からの徴収、貸倒処理まで整理します。

保育園の経営において、保育料の滞納は安定的な運営を脅かす問題です。認可外保育施設や企業主導型保育事業、認定こども園、小規模保育などでは保育料を施設・事業者が徴収するため、未収金への対応が経営課題になりやすい構造にあります。私立の認可保育所では保育料は市町村が徴収しますが、副食費・延長保育料・行事費といった園が直接徴収する実費部分の未納が積み上がりやすく、回収窓口が二重になっているという独特の難しさがあります。

なお、2019年10月から、保育所・認定こども園等を利用する3歳から5歳までの子どもの利用料は無償化されています。0歳から2歳までは住民税非課税世帯が無償化の対象です。食材料費や行事費などは引き続き保護者の負担で、年収360万円未満相当世帯のこどもと全ての世帯の第3子以降のこどもは、3歳から5歳の副食費が免除されます(企業主導型保育施設は国の免除措置の対象外)。0歳から2歳でも、保育所等を利用する最年長のこどもを第1子と数えて、第2子は半額、第3子以降は無償となる軽減があります(こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」)。保育を利用する場合、無償化の期間は、満3歳になった後の4月1日から小学校入学前までの3年間です。住民税課税世帯の0歳から2歳の保育料(第2子は半額、第3子以降は多子軽減で無償)や、施設が徴収する実費は、引き続き保護者が支払います。認可外保育施設の無償化は、保育所・認定こども園等を利用できていない方が、市町村から保育の必要性の認定を受けることが条件で、施設側も都道府県等への届出と国が定める基準を満たすことが必要です。また、月額の上限(3歳から5歳は3.7万円、0歳から2歳の住民税非課税世帯は4.2万円)があり、上限を超える部分も保護者の負担です。

未収金は、放置すると消滅時効によって回収する権利そのものが失われます。さらに、児童の福祉を最優先に考えながら回収を進める必要があるため、一般の商取引のように一律で督促を強めればよいわけではありません。法律上の枠組みと、児童・保護者への配慮の両方を踏まえた手順の設計が欠かせないのが、保育料未収金の特徴です。

本記事では、保育園で発生する保育料の滞納問題について、認可保育園と認可外保育施設の違いを踏まえ、督促の進め方・時効・法的手段・自治体連携・会計処理までを実務に即して解説します。

この記事の要点

  • 私立保育所の保育料は市町村が徴収し、滞納処分の例により裁判を経ずに差押えができます(子ども・子育て支援法附則第6条第4項・第6項)。
  • 認定こども園・小規模保育などの保育料は施設・事業者が徴収します。このうち幼保連携型認定こども園と、小規模保育などの家庭的保育事業等では、一定の要件を満たし市町村が必要と認めるときに、施設の請求に基づいて市町村が滞納処分の例により処分できます(児童福祉法第56条第6項・第7項)。
  • 副食費・延長保育料・行事費など園が徴収する実費部分、幼保連携型以外の私立認定こども園の保育料、認可外の保育料は、園が民事手続きで回収します。
  • 消滅時効は、市町村が徴収する保育料が地方自治法による5年、園が徴収する債権が民法による5年(知った時から)です。
  • 回収手順は口頭確認 → 書面督促 → 内容証明 → 支払督促・少額訴訟の段階を踏み、児童への影響を最後まで配慮します。
  • 回収不能が確定した未収金は、要件を満たせば貸倒損失として損金算入できます。期末には貸倒引当金の検討も必要です。

認可保育園と認可外保育施設の違い

認可保育園の保育料徴収

認可保育園の保育料は市町村が定めますが、根拠と徴収する人は施設の種類で異なります。

私立の認可保育所では、市町村が保育所に委託費を支払い、保育料は、家計に与える影響を考慮して子どもの年齢等に応じて市町村が定める額を、市町村が保護者から徴収します(子ども・子育て支援法附則第6条第1項・第4項)。期限までに納付がないときは、市町村が地方税の滞納処分の例により処分できます(同条第6項)。この場合、保育所は保育料を直接徴収しません。

認定こども園や、小規模保育などの地域型保育事業では、保育料(政令で定める額を限度として世帯の所得の状況などを勘案して市町村が定める額。同法第27条第3項第2号など)は施設・事業者が保護者から徴収します。このうち幼保連携型認定こども園と、小規模保育などの家庭的保育事業等については、善良な管理者と同一の注意をもって支払いを受けることに努めても支払われず、保育に支障が生じ、または生ずるおそれがあり、市町村が保育の確保のため必要と認めるときは、施設・事業者の請求に基づいて、市町村が地方税の滞納処分の例により処分できます(児童福祉法第56条第6項・第7項)。

認可外保育施設の保育料徴収

認可外保育施設や企業主導型保育事業では、保育料は事業者と保護者との利用契約に基づいて事業者が直接徴収します。保育料は私債権であり、滞納時の回収も事業者自身が行う必要があります。

認可外保育施設の保育料回収において、地方税の滞納処分のような強制徴収権は認められていないため、一般の民事手続き(催告、訴訟等)によって回収を図ることになります。

徴収主体と滞納処分の有無で回収ルートが分かれる

保育料未収金を考えるうえで、その債権を誰が徴収し、滞納処分が使えるかを最初に区別することが回収方針を決める出発点になります。

対象徴収主体滞納処分(差押え)消滅時効
私立の認可保育所の保育料市町村市町村ができる(子ども・子育て支援法附則第6条第6項)5年(地方自治法第236条)
幼保連携型認定こども園・家庭的保育事業等(小規模保育など)の保育料施設・事業者要件を満たせば、施設・事業者の請求に基づき市町村ができる(児童福祉法第56条第6項・第7項)5年(民法第166条第1項、知った時から)
幼稚園型・保育所型・地方裁量型の認定こども園(私立)の保育料施設不可(訴訟等が必要)5年(同上)
認可外・企業主導型の保育料事業者不可(訴訟等が必要)5年(同上)
副食費・延長保育料・行事費などの実費保育園不可(訴訟等が必要)5年(同上)

私立の認可保育所の保育料は、地方税の滞納処分の例によって市町村が処分でき、裁判手続きを経ずに差押え・換価を行える点が、認可外の保育料や、園が徴収する副食費などの実費との決定的な違いです。幼保連携型認定こども園や小規模保育などの保育料も、要件を満たせば施設の請求に基づいて市町村が同じ処分をできます。一方、認可外保育施設の保育料や、園が直接徴収する副食費・実費部分は、回収に支払督促や訴訟といった民事手続きが必要になります。

まず未収金の内訳を確認する

私立の認可保育所で滞納が発生したときは、市町村が徴収する保育料の部分か、園が徴収する副食費・延長保育料・行事費の部分かを最初に切り分けてください。前者の窓口は市町村、後者の窓口は園であり、対応する手続きと時効の扱いが異なります。

保育料滞納の回収手順

施設・事業者が徴収する保育料や実費部分、認可外の保育料は、段階を踏んで回収を進めます。いきなり法的手段に進むのではなく、保護者との関係性と児童の福祉に配慮しながら、督促の強度を少しずつ上げていく流れが基本です。

1

口頭での確認と支払い案内

支払いが遅れた直後に、まず口頭で保護者に確認します。口座の残高不足や振込忘れなど単純な原因であれば、この段階で解決します。

2

書面による督促

口頭で改善しない場合、滞納金額・滞納期間・支払期限・相談窓口を明記した督促状を送付します。分割払いの相談に応じる姿勢も示します。

3

内容証明郵便による催告

数か月にわたり滞納が続く場合、内容証明郵便で催告します。催告した事実・日付・内容を証明でき、後の法的手続きの記録になります。催告をすると、その時から6か月間は時効が完成しませんが、その間に催告を重ねても延びません(民法第150条)。

4

支払督促・少額訴訟

それでも支払いがない場合、支払督促や少額訴訟を申し立てます。支払督促に仮執行宣言が付くか、少額訴訟の判決(仮執行宣言つき)や確定判決を得れば、差押えなどの強制執行の手続きに進めます。

ステップ1:口頭での確認と支払い案内

保育料の支払いが遅れた場合、まず口頭で保護者に確認します。引き落とし口座の残高不足や振込忘れなど、単純な原因であればこの段階で解決します。

保護者との日常的な信頼関係があるため、初回の督促は威圧的にならないよう配慮しつつ、支払いの重要性を伝えます。送迎時の立ち話で踏み込みすぎると、ほかの保護者の目に触れてプライバシーの問題になりかねないため、別室での声かけや電話など、第三者に滞納の事実が知られない方法を選びます。

ステップ2:書面による督促

口頭での連絡で改善しない場合、書面で督促を行います。滞納金額、滞納期間、支払期限を明記し、支払い方法の相談にも応じる旨を伝えます。

保護者の家計が厳しい場合は、分割払いの相談に応じることも重要です。保育の継続と費用回収を両立させる現実的な対応が求められます。督促状は普通郵便で送ることが多いですが、後の法的手続きに備えて送付日と内容の控えを残しておくと、滞納の経緯を客観的に説明できます。

ステップ3:内容証明郵便

数か月にわたって滞納が続く場合、内容証明郵便で催告を行います。内容証明郵便は、いつ・どのような内容で催告したかを証明できるため、法的手続きの前段階として重要です。催告をすると、その時から6か月間は時効が完成しません(民法第150条第1項)。ただし、この猶予期間中に催告を重ねても、猶予は延びません(同条第2項)。配達証明を付けることで、相手方が受け取った事実も記録に残せます。

ステップ4:法的手段

内容証明郵便でも支払いがなされない場合、少額訴訟(60万円以下、民事訴訟法第368条)や支払督促(民事訴訟法第382条)を検討します。支払督促は書類審査のみで手続きが進み、相手方から異議がなければ仮執行宣言を経て差押えが可能になります。少額訴訟は原則1回の期日で審理が終わるため、少額の未収金を短期間で解決したい場合に向いています。ただし、同じ簡易裁判所で同じ年に利用できる回数には上限があります(民事訴訟法第368条第1項ただし書)。なお、保護者との関係性や児童への影響を考慮し、法的手段は最終手段として慎重に判断します。

督促段階ごとの目安

段階手段滞納期間の目安主な効果
第1段階口頭・電話での確認数日〜2週間偶発的滞納の早期解消
第2段階書面(督促状)1〜2か月支払意思の確認・記録化
第3段階内容証明郵便3〜6か月催告の証拠化・心理的督促
第4段階支払督促・少額訴訟6か月以上債務名義の取得・強制執行

滞納期間は目安であり、家計急変など事情がある場合は段階を急がず、生活再建を支える相談につなぐ判断も必要です。

保育料滞納の時効と注意点

未収金には消滅時効があり、一定期間が経過すると回収する権利が消滅します。督促を後回しにするほど時効のリスクが高まるため、滞納が発生した時点で時効の起算日を意識した管理が求められます。

消滅時効の期間

私立の認可保育所の保育料は市町村が徴収する債権であり、地方自治法第236条により、行使できる時から5年で時効により消滅します。この時効は援用を要しません(同条第2項)。認定こども園・小規模保育などで施設が徴収する保育料、認可外保育施設の保育料、園が徴収する副食費・実費部分は、民法第166条第1項により、権利を行使できることを知った時から5年(行使できる時から10年)で時効が完成します。いずれの場合も、原則として5年で時効が完成すると考えて管理します。

時効の更新(中断)

時効は、一定の行為によって完成が猶予されたり、更新されてその時点から改めて期間が進行したりします。園が徴収する債権の場合、訴訟の提起や支払督促の申立てがあると、その手続きが終わるまで(権利が確定せずに終わった場合は、その時から6か月を経過するまで)時効は完成せず、判決などで権利が確定すると更新されます(民法第147条)。債務者による債務の承認(一部支払いや支払いの約束など)があると、その時点で更新されます(民法第152条)。内容証明郵便などで催告をすると、その時から6か月を経過するまでは時効が完成しません(民法第150条第1項)。催告だけでは更新されないため、時効の完成が迫っているときは、この6か月の間に支払督促や訴訟を申し立てます。猶予期間中に催告を重ねても、猶予は延びません(同条第2項)。

市町村が徴収する保育料は時効の扱いが違う

法令の規定により市町村がする納入の通知と督促には、時効の更新の効力があります(地方自治法第236条第4項)。また、この時効は援用を要しません(同条第2項)。私立の認可保育所の保育料の時効管理は市町村が行うため、園が徴収する実費部分とは分けて考えてください。

認可保育料の強制徴収と自治体の対応

私立の認可保育所の保育料が滞納された場合、徴収主体は市町村です。裁判を経る必要はなく、地方税の滞納処分の例による処分が可能です。幼保連携型認定こども園や小規模保育などでも、要件を満たせば施設・事業者の請求に基づいて市町村が同じ処分をできます。園としては、このルートを理解したうえで市町村の担当部門と連携します。

滞納処分による差押え

市町村は、地方税の滞納処分の例により、財産を調査して差し押さえ、換価して滞納保育料に充てることができます。具体的な手順は自治体ごとに定められているので、市町村の担当部門に確認してください。

延滞金

市町村が徴収する保育料を納期限までに納付しなかった場合、督促をしたうえで、条例の定めるところにより延滞金を徴収することができます。延滞金は滞納した日数に応じて加算されるため、滞納が長期化するほど保護者の負担も増えます。延滞金の率や計算方法は自治体ごとに条例で定められています(地方自治法第231条の3第2項)。

保育料滞納の予防策

口座振替の導入

保育料の支払い方法として、口座振替(自動引き落とし)を標準とすることが最も効果的な予防策です。振込忘れによる滞納を防止でき、保護者にとっても毎月の振込手続きが不要になるメリットがあります。

利用契約書の整備

認可外保育施設では、利用契約書に次の項目を明記します。保育料の金額と支払期日、延長保育料・その他実費の精算方法、遅延損害金の定め、滞納が一定期間続いた場合の取り扱い(利用制限・契約解除の可能性)です。

ただし、契約解除(退園措置)は児童の福祉に直結する問題であるため、児童の福祉(児童福祉法第1条)の観点から、安易な退園は避けるべきです。

保育料の減免・補助制度の案内

保護者の経済的困窮が保育料滞納の原因である場合、利用可能な公的支援制度を案内します。市町村の保育料減免制度、生活保護制度、生活困窮者自立支援制度などが該当します。認可外保育施設の利用者には、無償化の対象となる施設等利用給付認定を受けているかも確認します。

保護者が公的支援を受けることで保育料の負担が軽減され、結果として滞納の予防につながります。

規程・契約による予防の仕組み化

予防策は属人的な声かけに頼らず、規程と契約で仕組み化することが重要です。延長保育料や行事費の前納制、副食費の引き落とし日と保育料の引き落とし日の統一、督促の手順と担当者を定めた未収金管理規程の整備などが、滞納の発生と長期化を抑えます。とくに、引き落とし失敗を翌営業日には把握し、その月のうちに再請求まで進む運用にしておくと、数か月分が積み上がる前に手を打てます。

未収金の外部委託と債権回収の選択肢

自園での回収が難しくなった場合、外部の力を借りる選択肢があります。どの方法が適しているかは、未収金の金額・件数・滞納の長期化の程度によって変わります。

弁護士・司法書士への委託

法的手続きを伴う回収は、弁護士に委託できます。司法書士は、法務大臣の認定を受けた司法書士であれば、簡易裁判所での訴訟・支払督促で請求額が140万円を超えないものの代理と、140万円以下の紛争についての相談や裁判外の和解の代理ができます(司法書士法第3条第1項第6号・第7号・第2項、裁判所法第33条第1項第1号)。弁護士(司法書士は上記の範囲内)に内容証明郵便の作成や支払督促・訴訟の代理を依頼することで、保育士・職員が本来の保育業務に集中できます。ただし、少額の未収金では弁護士費用が回収額を上回ることもあるため、費用対効果を見極める必要があります。

集金代行・督促代行サービス

毎月の保育料を口座振替やクレジットカード決済でまとめて回収する集金代行サービスを使えば、引き落とし管理と督促の一次対応を外部化できます。引き落とし失敗時の再請求まで自動化されるため、偶発的な滞納の積み上がりを抑える効果があります。

未収金の売却(債権譲渡)

長期化して回収の見込みが立たない未収金は、債権を第三者に売却して早期に資金化する選択肢もあります。回収業務の手間から解放され、貸借対照表から不良債権を切り離せる点がメリットです。詳しくは未収金買取の仕組みと活用方法で解説しています。

回収方法は未収金の状態で選ぶ

偶発的な引き落とし失敗は集金代行で予防し、数か月の滞納は内容証明や支払督促で対応し、回収の見込みが立たない長期未収金は債権譲渡で資金化する、というように、未収金の状態に応じて手段を使い分けると効率的です。

未収金の会計・財務上の処理

未収金は、発生時に「未収金」または「未収入金」として資産計上されますが、回収可能性が低下した場合は、貸倒引当金や貸倒損失として適切に処理する必要があります。期末の決算では、回収見込みを評価したうえで処理方針を決めます。

貸倒引当金の計上

将来発生が見込まれる貸倒れに備えて、期末に貸倒引当金を計上します。貸倒引当金は、回収不能になりそうな金額をあらかじめ費用として見積もっておく勘定科目です。一般の債権(一般債権)は過去の貸倒実績率などで一括評価し、回収可能性に問題がある債権(貸倒懸念債権)は個別に回収不能見込額を見積もります。社会福祉法人が運営する認可保育園では、社会福祉法人会計基準に基づいた処理が必要です。

貸倒損失の計上

実際に回収不能が確定した未収金は、貸倒損失として処理します。法人税で貸倒損失として損金算入できるのは、法令の規定や債権者集会の協議決定などによる切り捨て、債務者の債務超過の状態が相当期間継続して弁済を受けられない場合に書面で明らかにした債務免除、債務者の資産状況・支払能力等から全額回収できないことが明らかになった場合などです(国税庁 タックスアンサー No.5320)。全額回収不能の場合も、担保物があるときはその処分後でなければ損金経理できません。売掛債権については、継続的な取引を行っていた債務者の資産状況・支払能力等が悪化したため取引を停止し、取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき(担保物のある場合を除く)などに、備忘価額を残して貸倒れとして損金経理できる取扱いもあります。同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合も同様です。これらは法人税の取扱いなので、社会福祉法人など運営主体によって扱いが異なる点に注意してください。安易に損失計上せず、督促など回収努力の記録を残しておくことが大切です。

未収金の会計処理の詳細は、未収金の会計処理についてで解説しています。

保育園特有の注意点

児童の福祉への配慮

保育料の滞納問題において最も重要なのは、児童の福祉を最優先に考えることです。保育料の滞納を理由に保育サービスの質を低下させたり、児童への対応を変えたりすることは絶対に避けなければなりません。

児童福祉法第1条では「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること」が理念として掲げられています。保育料の回収と児童の福祉は分離して対応する必要があります。

個人情報の取り扱い

保育料の滞納情報は保護者の個人情報であり、個人情報保護法に基づく適切な管理が求められます。滞納の事実を他の保護者や職員に不必要に共有することは、プライバシーの侵害に該当するおそれがあります。督促や回収を進める際も、滞納の情報に触れる職員を必要最小限に絞り、書類の保管や受け渡しの方法を定めておくことが望まれます。

認可保育園の保育料負担構造と滞納パターン

認可保育園の保育料は、保護者世帯の所得・保育の必要量の区分・きょうだいの人数などで決まる複雑な構造です。3歳から5歳までの利用料は無償化の対象ですが、住民税課税世帯では、多子軽減で無償となる第3子以降を除き(第2子は半額)、0歳から2歳の保育料と、保育を利用する場合の満3歳になってから最初の3月31日までの保育料は無償化の対象外です。滞納が発生したときに「どの部分」が未収になっているかを把握することで、回収アプローチを最適化できます。

保育料の決定構造

構成要素主体滞納時の影響
保育料(私立保育所)家計への影響を考慮し子どもの年齢等に応じて市町村が決定(子ども・子育て支援法附則第6条第4項)市町村の未収
保育料(認定こども園・地域型保育)政令で定める額を限度に市町村が決定(同法第27条第3項第2号など)施設の未収
世帯所得階層別の負担割合各自治体階層認定の見直し可能性
きょうだい軽減国の基準+自治体の上乗せ軽減要件再確認の対象
副食費(実費徴収)各保育園保育園の歳入不足
延長保育料・行事費各保育園保育園の歳入不足

私立の認可保育所では保育料を市町村が徴収し、副食費・延長保育料・行事費などの実費徴収部分は園が徴収します。認定こども園や小規模保育などでは、保育料も実費も施設が徴収します。滞納時の対応窓口が異なるため、滞納金額の内訳を最初に整理することが重要です。

よくある滞納パターン

  • パターン1: 世帯所得の急変(リストラ・離婚等)による生活困窮型滞納
  • パターン2: 副食費・延長保育料など実費徴収部分の見落とし型滞納
  • パターン3: きょうだい軽減の申請漏れによる結果的滞納
  • パターン4: 銀行口座変更・残高不足による偶発的滞納

各パターンで対応窓口・解決アプローチが異なります。パターン1は自治体の生活困窮者自立支援制度との連携、パターン2は園からの督促強化、パターン3は保護者への減免申請案内が有効です。

児童手当からの徴収特例と自治体連携

保育料の滞納については、児童手当から保育料を徴収できる制度があります(児童手当法第22条)。児童手当の受給資格者が保育料を支払うべき保護者などである場合に、市町村長が手当を支払う際に保育料を徴収(特別徴収)できる仕組みです。対象の保育料には、私立保育所について市町村が徴収する保育料(子ども・子育て支援法施行令附則第9条による読替え)のほか、幼保連携型認定こども園や家庭的保育事業等の保育料のうち市町村が滞納処分の例により処分できるもの(児童福祉法第56条第6項・第7項)も含まれます。市町村長は、特別徴収する旨や額などをあらかじめ本人に通知しなければなりません(児童手当法第22条第2項)。

また、受給資格者本人が申し出た場合には、児童手当の全部または一部を、施設に支払うべき保育料などの支払いに充てて、市町村から施設に直接支払う仕組みもあります(同法第21条第2項)。

児童手当からの徴収を活用する際の確認点

  • 児童手当の受給資格者が、保育料を支払うべき保護者などであること
  • 市町村長が、特別徴収する旨や額などをあらかじめ通知すること
  • 施設が徴収する保育料の場合は、施設の請求に基づいて、市町村がその保育料を滞納処分の例により徴収する段階にあること
  • 自治体の運用方針との整合

特別徴収をするかどうかは市町村長が判断するため、運用は自治体ごとに異なります。保育園が独自に判断できるものではないため、自治体の保育主管課または児童手当主管課に事前確認した上で、保護者への説明資料を準備してください。

自治体との連携体制づくり

認可保育園では、自治体と日常的な連携体制を持つことで滞納対応の選択肢が広がります。

  • 月次の徴収状況報告(自治体への定期報告)
  • 滞納長期化時の自治体相談ルート
  • 生活困窮者自立支援制度への接続
  • 児童家庭支援センターとの情報共有(児童福祉の観点から、保護者の同意を得るなど個人情報保護法に沿った範囲で)

自治体との情報共有は児童福祉と保育料回収の両立に有効です。形式的な督促を超えて、世帯の根本的な課題解決につなげるアプローチが、結果的に回収率向上にも結びつきます。

まとめ

保育園の保育料滞納対策は、口座振替の導入による予防と、児童の福祉に配慮した段階的な回収手順が柱となります。施設の種類によって保育料の徴収主体と法的枠組みが異なり、私立の認可保育所の保育料は市町村が徴収し、幼保連携型認定こども園や小規模保育などは施設が徴収し、要件を満たせば施設の請求に基づいて市町村が滞納処分の例により処分でき、それ以外の私立認定こども園や認可外の保育料、園が徴収する実費部分は民事手続きで回収するという違いがあります。自園の未収金がどの債権に当たるかを切り分け、時効に注意しながら、必要に応じて外部委託や債権譲渡、会計上の貸倒処理まで含めて方針を組み立てることが、安定した園経営につながります。


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よくある質問

Q. 保育料を滞納している保護者の児童を退園させることはできますか?
A. 認可保育所では、保育を必要とする児童を保育所で保育することは市町村の責務とされています(児童福祉法第24条第1項)。認定こども園や小規模保育などについても、市町村は必要な保育を確保するための措置を講じなければならないとされています(同条第2項)。いずれも園だけの判断で退園させるのではなく、まず市町村に相談してください。認可外保育施設は利用契約に基づく関係なので、契約書の定めに従って検討しますが、児童の福祉への配慮が欠かせません。
Q. 保育料の滞納に時効はありますか?
A. 私立保育所の保育料は市町村が徴収する債権で、地方自治法第236条により5年で時効により消滅します(援用は要しません)。認定こども園・小規模保育などで施設が徴収する保育料、認可外保育施設の保育料、副食費などの実費は、民法第166条第1項により、権利を行使できることを知った時から5年です。民法上の債権は、訴訟の提起や支払督促の申立てで時効の完成が猶予され、判決などで権利が確定すると更新されます。債務の承認(一部の支払いなど)があると、その時点で更新されます。催告をすると6か月間は時効が完成しませんが、その間に催告を重ねても延びません。
Q. 認可保育園の保育料を市町村はどのように徴収しますか?
A. 私立保育所の保育料は市町村が徴収し、納付がないときは地方税の滞納処分の例により処分できます(子ども・子育て支援法附則第6条第4項・第6項)。認定こども園や小規模保育などは施設・事業者が保育料を徴収します。このうち幼保連携型認定こども園と、小規模保育などの家庭的保育事業等では、善良な管理者の注意をもって支払いを求めても支払われず、保育に支障が生じ、または生ずるおそれがあり、市町村が保育の確保のため必要と認めるなどの要件を満たす場合、施設・事業者の請求に基づいて市町村が地方税の滞納処分の例により処分できます(児童福祉法第56条第6項・第7項)。
Q. 未収金の回収を弁護士に依頼する場合の費用はどのくらいですか?
A. 弁護士費用は事務所ごとに定められており、案件の規模や手続きによって変わります。依頼前に見積もりを取ってください。保育料の未収金は1件あたりの金額が小さいことが多く、弁護士費用が回収額を上回る可能性もあるため、費用対効果を慎重に検討してください。

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