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事業再生ファンドの仕組みと活用条件

事業再生ファンドの仕組み、投資スキーム、活用条件を解説。中小企業再生支援機構や地域経済活性化支援機構(REVIC)の役割、ファンドによる支援の流れをまとめました。

過剰債務や経営不振に陥った企業の再建を支援する手段として、事業再生ファンドが注目されています。金融機関からの追加融資が困難な状況でも、ファンドからの出資により財務を立て直し、経営改善を進めることができます。

事業再生ファンドは、単に資金を投入するだけでなく、経営人材の派遣や事業戦略の策定支援など、ハンズオン(経営参画)型の支援を行う点が特徴です。金融機関の債権買取りやDES(デット・エクイティ・スワップ)を組み合わせて、財務と事業の両面から再建を図ります。

本記事では、事業再生ファンドの仕組み、投資スキーム、活用の条件を解説します。

事業再生ファンドの概要

事業再生ファンドとは

事業再生ファンドは、経営危機に瀕した企業に出資または債権買取りを行い、経営改善を支援したうえで、企業価値が回復した段階で投資を回収(EXIT)する投資ファンドです。

通常のバイアウトファンド(成長企業や安定企業を対象とする投資ファンド)との違いは、対象企業が経営不振にあるという点です。財務的に困難な状況にある企業の再建をミッションとしており、債権者との調整や経営改善計画の策定まで含めた総合的な支援を行います。

ファンドの組成形態は、投資事業有限責任組合(LPS)契約に関する法律に基づく有限責任組合が一般的です。投資家(LP:有限責任組合員)が資金を拠出し、ファンド運営会社(GP:無限責任組合員)が投資判断と経営支援を行います。

公的な事業再生ファンド

日本における主な公的事業再生ファンドの枠組みを紹介します。

地域経済活性化支援機構(REVIC)は、「株式会社地域経済活性化支援機構法」に基づき設立された官民ファンドです。過大な債務を抱えた事業者の事業再生を支援し、地域経済の活性化に寄与することを目的としています。REVICは自ら直接支援を行うほか、地域金融機関と連携して地域活性化ファンドの組成にも関与しています。

中小企業基盤整備機構は、中小企業の事業再生を支援するファンドの組成に出資者として参加しています。民間のファンド運営会社と共同でファンドを組成し、中小企業への投資を行います。

民間の事業再生ファンドとしては、銀行系列のファンドや独立系のファンドが存在します。各ファンドの投資対象(業種、規模、地域)や投資スタイルは異なるため、自社の状況に合ったファンドを選定することが重要です。

ファンドの投資スキーム

事業再生ファンドの投資スキームは、対象企業の状況に応じてさまざまですが、代表的な手法を紹介します。

株式取得は、既存株主から株式を買い取るか、第三者割当増資により新株を引き受けて出資する方法です。ファンドは通常、経営に関与するために過半数以上の株式を取得します。

債権買取りは、金融機関が保有する貸付債権をファンドが割引価格で買い取る方法です。金融機関にとっては不良債権の処理になり、ファンドは買い取った債権を放棄またはDESにより株式に転換して、対象企業の財務を改善します。

DES(デット・エクイティ・スワップ)は、債権を現物出資して株式に転換する方法です。対象企業の負債が減少し資本金が増加するため、BSが改善されます。法人税法上、時価による現物出資として取り扱われるため、債務消滅益の課税に注意が必要です(法人税法第22条第2項)。

ファンド活用の条件と流れ

ファンドが投資対象とする企業の条件

事業再生ファンドが投資を検討する企業には、一般的にいくつかの条件が求められます。

事業に競争力があることが最も重要です。技術力、顧客基盤、市場シェア、人材など、財務を正常化すれば再び成長できる基盤があることが前提です。事業そのものに収益力がなければ、ファンドは投資回収(EXIT)の見通しが立たないため、投資対象としません。

過剰債務が経営悪化の主因であることも条件です。[資金繰り改善の方法](/jigyou-saisei/shikin-guri-kaizen-guide/)で対応可能な範囲であれば、ファンドに頼る前に自力再建を検討するのが先決です。事業のオペレーションは健全だが、過去の設備投資や事業拡大に伴う借入金が重荷になっている、というケースがファンドの支援に最も適しています。

経営改善の実現可能性があることとして、コスト削減、不採算事業の整理、事業モデルの転換などにより、一定期間内に黒字化・債務返済が可能なシナリオが描けることが必要です。

支援の流れ

事業再生ファンドによる支援は、概ね次のステップで進みます。

最初に、デューデリジェンス(事業・財務・法務の調査)が行われます。ファンドは対象企業の実態を詳細に調査し、事業の将来性と再建の可能性を判断します。

次に、事業再生計画の策定です。ファンドと対象企業の経営陣が共同で、売上・利益の改善策、不採算事業の整理、組織体制の見直し、金融機関への債務調整案などを含む再生計画を策定します。

続いて、金融機関との調整です。債権放棄やDESなど、金融機関に対する債務調整を交渉します。ファンドが債権を買い取ることで、金融機関側の不良債権処理が進む場合もあります。

投資実行後は、ハンズオン支援として、ファンドから経営人材の派遣、経営会議への参加、月次モニタリングなどが行われます。経営改善が進んだ段階で、ファンドはEXIT(株式の売却、IPO、MBOなど)により投資を回収します。

EXIT(出口戦略)

ファンドの投資期間は一般的に3〜7年程度です。この期間内に企業価値を向上させ、次のいずれかの方法でEXITを行います。

第三者への株式売却は、他の事業会社やファンドに株式を売却する方法です。M&Aの買い手が見つかれば、比較的スムーズにEXITできます。

MBO(マネジメント・バイアウト)は、経営者がファンドの保有株式を買い取る方法です。経営者が自社の株式を取り戻すことになるため、再び独立した経営が可能になります。

IPO(株式公開)は、株式を上場して市場で売却する方法です。中小企業の事業再生ではIPOに至るケースは稀ですが、再建が大きく成功した場合の選択肢です。

ファンド活用の留意点

経営権への影響

経営権の移転が前提となる

事業再生ファンドは通常、過半数以上の株式を取得します。経営の意思決定にファンドの意向が反映されるため、経営者の役割やEXIT後の体制について事前に十分な協議が必要です。

事業再生ファンドから出資を受ける場合、ファンドが過半数以上の株式を取得するのが一般的です。これにより、経営の意思決定においてファンドの意向が反映されることになります。

既存の経営者が引き続き経営に携わるケースもありますが、経営者の退任を求められることもあります。ファンドの目的はあくまで企業価値の向上と投資回収であり、そのために最適な経営体制を構築しようとします。

経営者としては、ファンドとの間で経営の方向性や自身の役割について事前に十分な協議を行い、合意したうえで支援を受けることが重要です。経営者保証ガイドラインによる保証債務の整理も、ファンド活用と並行して検討すべきテーマです。

従業員への影響

ファンドによる経営改善の過程では、不採算部門の縮小や組織のスリム化が行われることがあります。人員削減が伴う場合は、労働基準法や労働契約法の規定に基づき、整理解雇の4要件(人員削減の必要性、解雇回避努力、被解雇者選定の合理性、手続きの妥当性)を満たす必要があります。

ファンドの介入に対して従業員が不安を感じることも多いため、適切なタイミングでの情報開示と丁寧な説明が求められます。

まとめ

この記事のポイント

  • 事業再生ファンドは出資・債権買取り・DESによる財務正常化とハンズオン型の経営支援を組み合わせて再建を図る
  • 投資対象は過剰債務が主因で業績悪化しているが事業に将来性がある企業であり、事業の収益力が前提条件
  • ファンドは過半数の株式取得が一般的で、経営権の移転を前提とした検討が必要

事業再生ファンドの活用について確認事項がある場合は、無料相談窓口からご相談ください。

よくある質問

Q. 事業再生ファンドは中小企業でも利用できますか?
A. 利用できます。地域経済活性化支援機構(REVIC)が出資する地域活性化ファンドや、中小企業基盤整備機構が組成に関わるファンドは、中小企業の再生を目的としています。ただし、ファンドが投資対象とする企業規模や業種に条件がある場合があるため、個別に確認が必要です。
Q. 事業再生ファンドから出資を受けると経営権はどうなりますか?
A. ファンドは通常、過半数以上の株式を取得して経営に関与します。既存の経営者が続投するケースもありますが、ファンドから新たな経営者が派遣されることもあります。ファンドの目的は企業価値の向上と投資回収であり、一定期間後にEXIT(株式の売却)を行います。
Q. 事業再生ファンドと通常の投資ファンドの違いは何ですか?
A. 通常の投資ファンド(バイアウトファンド等)は健全な企業を対象に成長支援を行いますが、事業再生ファンドは経営危機にある企業を対象に再建支援を行います。事業再生ファンドは債権の買取りやDES(デット・エクイティ・スワップ)を行い、財務の正常化と事業の立て直しを同時に進めます。
Q. ファンドの支援を受けた後、経営者が株式を買い戻すことは可能ですか?
A. 可能です。MBO(マネジメント・バイアウト)として、企業価値が回復した段階で経営者がファンドの保有株式を買い取り、経営権を取り戻すことができます。ファンドのEXIT手段の一つとして一般的な方法です。

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