短く働いて成果を上げる仕組み
年間労働時間の削減方法|生産性向上につなげる実践策
年間労働時間を削減しながら生産性を向上させる方法を解説。変形労働時間制の活用、業務効率化の具体策、働き方改革関連法への対応など、中小企業が実践できる労働時間削減の手法をまとめています。
長時間労働の是正は、働き方改革の中核をなすテーマです。2019年4月施行の労働基準法改正により時間外労働の上限規制が法定化され、違反した場合は罰則が科されるようになりました。一方で、単に労働時間を減らすだけでは業績の悪化を招きかねません。年間労働時間を削減しながら生産性を維持・向上させるには、業務プロセスの見直しや制度の活用が不可欠です。本記事では、中小企業が実践できる労働時間削減の方法を解説します。
労働時間の現状把握と課題の特定
労働時間を削減するための第一歩は、自社の労働時間の現状を正確に把握することです。現状を知らなければ、どこに問題があり、何を改善すべきかを判断できません。
労働時間の客観的な把握
労働安全衛生法第66条の8の3に基づき、事業者は労働者の労働時間の状況を客観的な方法で把握しなければなりません。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、タイムカード、ICカード、パソコンのログイン・ログアウト記録など、客観的な記録による把握が原則とされています。
まず、部署別・従業員別の月間労働時間、時間外労働時間、休日労働時間を集計し、全社的な傾向を把握します。特定の部署や時期に労働時間が集中していないか、恒常的に長時間労働が発生している部署はどこか、といった分析を行います。
業務分析と課題の優先順位づけ
労働時間のデータを基に、業務内容の分析を行います。各業務について「その業務は本当に必要か」「より効率的な方法はないか」「他の担当者やシステムに代替できないか」を検討します。
分析の結果、優先的に取り組むべき課題を特定します。効果の大きさ(削減できる時間数)と実現の容易さ(必要なコストや期間)を軸に優先順位をつけると、具体的なアクションプランを立てやすくなります。
制度面からのアプローチ
労働基準法に定められた各種制度を適切に活用することで、労働時間の効率的な配分が可能になります。
変形労働時間制の活用
変形労働時間制は、一定期間を平均して法定労働時間(週40時間)内に収まるよう所定労働時間を配分する制度です。業務の繁閑差が大きい企業では、繁忙期に所定労働時間を長く設定し、閑散期に短くすることで、時間外労働の発生を抑制できます。
1か月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2)は、就業規則への規定と労使協定の締結で導入できます。月末に業務が集中する経理部門や、月前半と後半で業務量に差がある営業部門などに適しています。
1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の4)は、季節変動の大きい業種に有効です。ただし、1日10時間・1週52時間を超える所定労働時間は設定できないなどの制限があります。
年次有給休暇の計画的付与
関連記事: 有給休暇の管理も併せてご確認ください。
労働基準法第39条第6項に基づく年次有給休暇の計画的付与制度を活用することで、年間の休日数を増やし、実質的な労働時間を削減できます。労使協定を締結することで、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、計画的に取得日を定めることが可能です。
夏季休暇や年末年始休暇と組み合わせた大型連休の設定、月1回の「ノー残業・有休取得デー」の設定、ブリッジホリデー(飛び石連休の間を有休で埋める)の推進などが実践例です。
勤務間インターバル制度
勤務間インターバル制度は、勤務終了後から次の勤務開始までに一定の休息時間(インターバル)を確保する制度です。労働時間等の設定の改善に関する特別措置法により、事業主の努力義務とされています。
インターバル時間は11時間以上が推奨されており、前日の残業が深夜に及んだ場合に翌日の始業時刻を繰り下げるなどの運用を行います。過重労働の防止と従業員の健康確保に効果的です。
業務効率化による労働時間の削減
制度の整備と併せて、業務そのものの効率化に取り組むことが不可欠です。IT化・自動化を進めることで、人手による作業時間を大幅に削減できる場合があります。
業務のIT化・自動化
定型的な事務作業の自動化は、労働時間削減の即効性が高い施策です。たとえば、請求書の作成・発送を会計ソフトとの連携で自動化する、勤怠管理をクラウドシステムに移行する、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で定型入力作業を自動化するなどの取り組みがあります。
IT導入補助金やデジタル化基盤導入補助金を活用することで、導入コストの一部を補助金でまかなうことも可能です。
会議・コミュニケーションの効率化
不要な会議や非効率なコミュニケーションは、労働時間を浪費する主要な要因です。会議の目的と終了条件を事前に明確にする、定例会議の頻度と時間を見直す、チャットツールを活用して非同期コミュニケーションを増やすなどの工夫が有効です。
助成金の活用
厚生労働省の働き方改革推進支援助成金は、労働時間の削減に取り組む中小企業を支援しています。労働時間短縮・年休促進支援コースでは、勤怠管理システムの導入費用や、コンサルタントへの相談費用、就業規則変更に伴う経費などが助成対象となります。申請要件や助成額は年度ごとに変更されるため、厚生労働省の最新情報を確認してください。
関連記事: [36協定の届出と残業管理](/roumu/36kyoutei-todoke/)も併せてご確認ください。
まとめ
この記事のポイント
- まず客観的な労働時間把握と業務分析で課題を特定する
- 変形労働時間制・計画年休・勤務間インターバル制度で効率的な時間配分を実現する
- 働き方改革推進支援助成金を活用し、労働時間削減と生産性向上を両立させる
労務管理や就業規則の整備で確認事項がある場合は、無料相談からご連絡ください。
よくある質問
- Q. 日本の年間労働時間の平均はどのくらいですか?
- A. 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、一般労働者の年間総実労働時間は約1,950時間前後で推移しています。パートタイム労働者を含む全労働者の平均では年間約1,600時間台です。政府は長時間労働の是正を政策目標に掲げており、労働基準法の改正による時間外労働の上限規制が2019年から段階的に適用されています。
- Q. 変形労働時間制を導入すると残業代は不要になりますか?
- A. いいえ、変形労働時間制を導入しても残業代の支払いが不要になるわけではありません。変形労働時間制は、一定期間を平均して法定労働時間内に収まるよう所定労働時間を配分する制度です。配分された所定労働時間を超えた分や、法定労働時間の総枠を超えた分については、時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。
- Q. 労働時間の削減で助成金は使えますか?
- A. はい。働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コースなど)は、生産性向上に取り組みながら労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進を図る中小企業を支援する助成金です。設備導入やコンサルティング費用、就業規則変更に伴う経費などが助成対象となります。詳細は厚生労働省のウェブサイトで確認してください。
- Q. 勤怠管理をエクセルで行っていますが問題ありますか?
- A. 2019年の労働安全衛生法改正により、労働時間の客観的な把握が義務化されました(同法第66条の8の3)。厚生労働省のガイドラインでは、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間記録など客観的な方法での記録が求められています。エクセルによる自己申告制は、やむを得ない場合の例外として位置づけられており、客観的な記録との照合が必要です。