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法人税の計算シミュレーション|所得別に税額を試算

中小企業の法人税を所得500万円・1,000万円・3,000万円の3パターンでシミュレーション。法人税法の税率、法人住民税・事業税を含む実効税率の計算方法を法令根拠とともに解説します。

「利益は出ているはずなのに、手元に現金が思ったほど残らない」。中小企業の経営者であれば、一度はこう感じた経験があるのではないでしょうか。その大きな要因のひとつが、法人税をはじめとする税負担です。

しかし、法人税の仕組みを正しく理解し、自社の税額をあらかじめシミュレーションしておけば、資金繰りの見通しは格段にクリアになります。本記事では、法人税法の根拠条文を示しながら、所得金額別に法人税等の総額をシミュレーションします。

法人税の基本的な仕組み

法人税の課税対象と税率

法人税は、法人の各事業年度の所得に対して課される国税です(法人税法第5条)。ここでいう「所得」とは、会計上の利益に税務上の加算・減算(申告調整)を行った「課税所得」を指します。

中小法人(資本金1億円以下の普通法人)に適用される法人税率は、所得金額に応じて2段階に分かれています。

所得区分税率根拠法
年800万円以下の部分15%租税特別措置法第42条の3の2
年800万円超の部分23.2%法人税法第66条第1項

年800万円以下の部分に適用される15%は、租税特別措置法に基づく軽減税率(時限措置)です。2027年3月31日までに開始する事業年度に適用されます。なお、令和7年度税制改正により、年間所得が10億円を超える事業年度については、この軽減税率が17%に引き上げられることが決定しています。売上規模が数十億円の中堅企業でない限り、多くの中小企業には15%が引き続き適用されます。

課税所得の計算構造

法人税の出発点となる「課税所得」は、損益計算書上の「税引前当期純利益」と一致しません。税務申告の過程で、次のような調整が加えられます。

課税所得 = 税引前当期純利益 + 加算項目(損金不算入) - 減算項目(益金不算入)

加算項目の代表例は、交際費の損金不算入額、役員報酬のうち不相当に高額な部分、減価償却の超過額などです。減算項目には、受取配当等の益金不算入額や所得税額控除などがあります。

この調整を理解しておくと、「会計上の利益がこれくらいなのに、なぜ税金がこんなに高いのか」という疑問が解消されます。

「課税所得」と「会計上の利益」のズレに注意

会計ソフト上の利益と実際の課税所得は一致しないことが一般的です。顧問税理士に別表四(所得の金額の計算に関する明細書)を確認させてもらうと、どの項目でどれだけのズレが生じているかを把握できます。

法人税以外にかかる税金の全体像

法人が負担する税金は法人税だけではありません。法人税を起点に、複数の税が連動して課税されます。事業全体の税負担を把握するには、これらをすべて合算して考える必要があります。

地方法人税

地方法人税は、法人税額に10.3%を乗じて算出する国税です(地方法人税法第6条)。2019年10月1日以後に開始する事業年度から、税率が4.4%から10.3%に引き上げられました。法人税と一体で国に申告・納付し、地方自治体の財源として配分されます。

法人住民税

法人住民税は、道府県民税と市町村民税で構成されます。それぞれ「法人税割」と「均等割」の2つの要素があります。

法人税割は法人税額に一定の税率を乗じて計算します。標準税率は次のとおりです。

区分標準税率
道府県民税 法人税割1.0%
市町村民税 法人税割6.0%

均等割は法人の資本金等の額と従業員数に応じて定額で課される税金で、赤字であっても支払う必要があります。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の最小区分で、道府県民税均等割が2万円、市町村民税均等割が5万円、合計7万円が年額の目安です。

法人事業税

法人事業税は都道府県に納める地方税で、事業を行うこと自体に対して課税されます。中小法人(資本金1億円以下で外形標準課税が適用されない法人)の場合、所得に応じた「所得割」のみが課税されます。

東京都の標準税率を例にとると、3段階の累進構造になっています。

所得区分標準税率
年400万円以下3.5%
年400万円超〜800万円以下5.3%
年800万円超7.0%

法人事業税には、他の税にはない特徴があります。翌期の損金に算入できるという点です。この特徴が、後述する「実効税率」の計算に影響します。

特別法人事業税

特別法人事業税は、法人事業税(所得割)の額に37%を乗じて算出する国税です。2019年10月1日以後に開始する事業年度から適用されています。法人事業税の申告と一体で都道府県に申告・納付します。

防衛特別法人税(2026年4月以降の事業年度から適用)

2026年4月1日以後に開始する事業年度から、防衛特別法人税が新たに課税されます。計算式は次のとおりです。

防衛特別法人税 = (基準法人税額 - 500万円) x 4%

基準法人税額が500万円以下の場合は課税されません。法人税額が500万円となる課税所得の水準は約2,200万円(800万円 x 15% + 1,400万円 x 23.2% = 444.8万円…ではなく、正確には所得が大きくなりますが)であるため、多くの中小企業は実質的に負担が発生しないと考えられます。

法人にかかる税金の全体像

  • 法人税(国税): 所得800万円以下15%、800万円超23.2%
  • 地方法人税(国税): 法人税額の10.3%
  • 法人住民税: 法人税割(約7%)+ 均等割(最低7万円/年)
  • 法人事業税: 所得に応じて3.5%〜7.0%(翌期の損金に算入可)
  • 特別法人事業税: 法人事業税の37%
  • 防衛特別法人税(2026年4月〜): (法人税額 - 500万円)x 4%

実効税率とは何か

表面税率と実効税率の違い

各税率を単純に合計したものを「表面税率」と呼びます。一方、法人事業税が翌期に損金算入される効果を考慮した税率が「実効税率」です。

実効税率は、「1円の所得を追加で得たときに、最終的にいくらの税金を払うことになるか」を示す指標です。税引後の手取り額を正確に見積もるには、表面税率ではなく実効税率を使います。

実効税率の計算式

法定実効税率の計算式は次のとおりです。

実効税率 = (法人税率 x(1 + 地方法人税率 + 住民税率)+ 事業税率 x(1 + 特別法人事業税率))/(1 + 事業税率 x(1 + 特別法人事業税率))

数式だけでは分かりにくいので、具体的な数値を当てはめます。所得800万円超の部分について、標準税率で計算した場合の実効税率は次のとおりです。

税目税率
法人税率23.2%
地方法人税率10.3%
住民税率(法人税割合計)7.0%
事業税率(所得割)7.0%
特別法人事業税率37%

分子 = 23.2% x(1 + 10.3% + 7.0%)+ 7.0% x(1 + 37%)= 27.21% + 9.59% = 36.80%

分母 = 1 + 7.0% x(1 + 37%)= 1 + 9.59% = 1.0959

実効税率 = 36.80% / 1.0959 = 約33.58%

所得800万円以下の部分(法人税率15%)の実効税率は約21〜23%になります。

実効税率はあくまで概算の目安

実効税率は自治体の超過課税、外形標準課税の適用有無、防衛特別法人税の適用有無によって変動します。東京都23区では住民税の超過税率が適用されるため、実効税率は若干高くなります。正確な税額は顧問税理士に確認してください。

所得金額別の法人税シミュレーション

ここからは、中小法人(資本金1億円以下・従業員50人以下)を前提に、所得金額別の税額をシミュレーションします。均等割は道府県民税2万円+市町村民税5万円=7万円、事業税は東京都の標準税率を使用します。

パターンA: 課税所得500万円の場合

所得500万円はすべて800万円以下の軽減税率が適用される区間です。

1

法人税の計算

500万円 x 15% = 75万円

2

地方法人税の計算

75万円 x 10.3% = 7万7,250円

3

法人住民税(法人税割)の計算

75万円 x 7.0% = 5万2,500円

4

法人住民税(均等割)

7万円(資本金1,000万円以下・従業員50人以下の場合)

5

法人事業税の計算

400万円 x 3.5% + 100万円 x 5.3% = 14万円 + 5万3,000円 = 19万3,000円

6

特別法人事業税の計算

19万3,000円 x 37% = 7万1,410円

税目税額
法人税75万円
地方法人税7万7,250円
法人住民税(法人税割)5万2,500円
法人住民税(均等割)7万円
法人事業税19万3,000円
特別法人事業税7万1,410円
合計約121万4,160円

所得500万円に対する税負担率は約24.3%です。軽減税率が適用される所得水準では、税負担は比較的軽くなります。

パターンB: 課税所得1,000万円の場合

所得1,000万円の場合、800万円以下の部分と800万円超の部分で法人税率が分かれます。

税目計算税額
法人税800万円 x 15% + 200万円 x 23.2%120万円 + 46万4,000円 = 166万4,000円
地方法人税166万4,000円 x 10.3%17万1,392円
法人住民税(法人税割)166万4,000円 x 7.0%11万6,480円
法人住民税(均等割)定額7万円
法人事業税400万円 x 3.5% + 400万円 x 5.3% + 200万円 x 7.0%49万2,000円
特別法人事業税49万2,000円 x 37%18万2,040円
合計約269万5,912円

所得1,000万円に対する税負担率は約27.0%です。800万円を超える部分から法人税率が23.2%に上がるため、500万円のケースと比べて負担率が3ポイントほど上昇します。

パターンC: 課税所得3,000万円の場合

所得3,000万円の場合、800万円超の部分が2,200万円と大きくなるため、税負担も相応に増加します。

税目計算税額
法人税800万円 x 15% + 2,200万円 x 23.2%120万円 + 510万4,000円 = 630万4,000円
地方法人税630万4,000円 x 10.3%64万9,312円
法人住民税(法人税割)630万4,000円 x 7.0%44万1,280円
法人住民税(均等割)定額7万円
法人事業税400万円 x 3.5% + 400万円 x 5.3% + 2,200万円 x 7.0%189万2,000円
特別法人事業税189万2,000円 x 37%70万40円
合計約1,005万6,632円

所得3,000万円に対する税負担率は約33.5%です。実効税率に近い水準になっていることがわかります。所得800万円超の部分が大半を占めるため、法人税率23.2%が全体の税負担を引き上げています。

3パターンの比較まとめ

項目所得500万円所得1,000万円所得3,000万円
法人税75万円166万4,000円630万4,000円
地方法人税7万7,250円17万1,392円64万9,312円
住民税(法人税割+均等割)12万2,500円18万6,480円51万1,280円
事業税+特別法人事業税26万4,410円67万4,040円259万2,040円
税負担の合計約121万円約270万円約1,006万円
税負担率約24.3%約27.0%約33.5%

所得が増えるにつれて税負担率が上がる累進的な構造になっている点が見て取れます。特に800万円を境に法人税率が8.2ポイント上がるため、この前後で税負担の感覚が大きく変わります。

法人税を合法的に減らす方法

シミュレーション結果を見て「税金が高い」と感じた方も多いかもしれません。ここでは、法律で認められた範囲で税負担を軽減する方法を紹介します。各手法の詳細は関連記事で解説していますので、あわせてご確認ください。

役員報酬の適正な設定

法人の所得を圧縮するもっとも基本的な方法が、役員報酬の設定です。法人の利益を減らして法人税を抑える一方、個人の所得税が増えるため、法人・個人の合計税負担が最小になるラインを見極める必要があります。

役員報酬が損金に算入されるためには、定期同額給与(法人税法第34条第1項第1号)の要件を満たす必要があり、期中での恣意的な変更は認められません。毎期の事業年度開始後3ヶ月以内に改定する「通常改定」の枠組みで計画的に設定してください。

少額減価償却資産の特例

30万円未満の資産を取得した場合、取得事業年度に全額を損金算入できます(租税特別措置法第67条の5)。年間合計300万円が上限ですが、パソコンや事務機器などを期末までに購入して即時に費用化できるため、利益調整のツールとして活用されています。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

掛金の全額が損金に算入される共済制度です。月額5,000円〜20万円の範囲で掛金を設定でき、年間最大240万円を損金に算入できます。累計掛金が800万円に達するまで積立可能で、40ヶ月以上の加入で掛金の100%が解約手当金として戻ります。

ただし解約手当金は益金に算入されるため、効果は「課税の繰り延べ」です。解約のタイミング(赤字の年に解約して益金と損失を相殺するなど)まで含めた設計が重要です。

詳しくは[小規模企業共済の活用ガイド](/shikin-choutatsu/shokibo-kigyou-kyousai-guide/)も参考にしてください。

中小企業経営強化税制の活用

一定の要件を満たす設備投資に対して、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超は7%)の税額控除を選択適用できます(租税特別措置法第42条の12の4)。即時償却は課税の繰り延べ、税額控除は永久節税という性質の違いを理解して選択してください。

その他の節税手段

生命保険の活用(保険種類により1/2〜全額が損金算入)、不良在庫の廃棄・評価減、決算賞与の未払計上(法人税法施行令第72条の3の要件を満たす場合)なども、決算前の税額調整に使われる手法です。

法人税の節税方法でこれらの手法を根拠法とともに詳しく解説しています。

節税と銀行融資のバランス

節税のために利益を過度に圧縮すると、銀行融資の審査でマイナスに作用します。債務償還年数(有利子負債 / 年間キャッシュフロー)が悪化し、融資審査基準を下回るリスクがあるため、節税と財務健全性のバランスを税理士と相談のうえ判断してください。

計算時に注意すべきポイント

益金不算入と損金不算入

法人税の計算では、会計上の収益・費用がそのまま税務上の益金・損金として認められるとは限りません。

代表的な益金不算入項目は「受取配当等の益金不算入」(法人税法第23条)です。完全子法人株式等の配当は全額が、関連法人株式等の配当は負債利子控除後の金額が益金から除外されます。

損金不算入の代表例としては、法人税・住民税(法人税法第38条)、交際費の損金不算入額(租税特別措置法第61条の4)、寄附金の損金不算入額(法人税法第37条)などがあります。

交際費の取扱い

中小法人は年間800万円までの交際費を全額損金算入できます(租税特別措置法第61条の4第2項)。800万円を超える部分は損金不算入です。なお、1人あたり1万円以下の社外飲食費は交際費から除外されます(2024年4月1日以後の支出から、従来の5,000円基準が引き上げ)。

繰越欠損金の控除

過去の赤字(欠損金)がある場合、青色申告を行っている法人は、その欠損金を翌期以降10年間にわたって繰り越し、所得から控除できます(法人税法第57条)。中小法人はその事業年度の所得の全額まで控除可能です(大法人は所得の50%が上限)。

過去に赤字決算がある場合、繰越欠損金を使い切っていないかどうかを確認してから税額シミュレーションを行ってください。繰越欠損金がある期間は、シミュレーション結果よりも実際の税負担が軽くなる可能性があります。

中間納付と確定申告

事業年度が6ヶ月を超える法人は、事業年度開始日から6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内に中間申告・納付を行う必要があります(法人税法第71条)。前期の法人税額の1/2を納付する「予定申告」か、仮決算に基づく「仮決算申告」を選択できます。

中間納付は確定申告時に精算されますが、資金繰りに直接影響するため、納税スケジュールに組み込んでおくことが大切です。

税務調査で否認されないために

節税策が税務調査で否認されると、本税に加えて延滞税や加算税が課される場合があります。事業との関連性が説明できない経費計上や実態を伴わない取引は避け、税理士と相談のうえ適正な申告を行ってください。

まとめ

この記事の要点

  • 中小法人の法人税率は所得800万円以下が15%、800万円超が23.2%の2段階構造
  • 法人税に加えて、地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税が課税され、実効税率は約33〜34%が目安
  • 所得500万円で税負担約121万円(24.3%)、1,000万円で約270万円(27.0%)、3,000万円で約1,006万円(33.5%)が概算の目安
  • 役員報酬の最適化、少額減価償却資産の特例、経営セーフティ共済など合法的な節税策があるが、銀行融資への影響も考慮して計画的に活用することが重要

法人税の計算は、法人税だけを見ていても実態は掴めません。住民税・事業税を含めた全体像をシミュレーションしてはじめて、手元に残る金額を正確に把握できます。

本記事の計算はあくまで標準税率に基づく概算です。自治体ごとの超過課税、外形標準課税の適用有無、繰越欠損金の有無、各種税額控除の適用可否によって実際の税額は変わります。自社の正確な税額を知りたい場合は、顧問税理士にご相談ください。

補助金や助成金を受給した場合の会計処理も、法人税の計算に影響する項目です。あわせてご確認ください。

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よくある質問

Q. 中小企業の法人税率は何%ですか?
A. 資本金1億円以下の中小法人は、年800万円以下の所得に15%、800万円超の部分に23.2%の税率が適用されます(法人税法第66条、租税特別措置法第42条の3の2)。
Q. 法人税以外にかかる税金は何がありますか?
A. 法人住民税(法人税割+均等割)、法人事業税(所得割)、特別法人事業税、地方法人税があります。これらを合わせた実効税率は約33〜34%が目安です。
Q. 実効税率と表面税率の違いは何ですか?
A. 表面税率は各税率の単純合算です。実効税率は法人事業税が損金算入される効果を考慮した税率で、実際の税負担に近い数値になります。
Q. 所得1,000万円の場合、法人税等はいくらになりますか?
A. 法人税・住民税・事業税等を合わせて約290〜310万円が目安です。所得800万円以下の部分と800万円超の部分で税率が異なるため、段階的に計算します。
Q. 法人税を合法的に減らす方法はありますか?
A. 役員報酬の適正設定、少額減価償却資産の特例活用、経営セーフティ共済への加入、中小企業経営強化税制の適用など、法律で認められた方法が複数あります。

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