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税務調査の事前通知への対応|11項目の読み方と当日までの準備手順

税務調査の事前通知が届いて焦っていませんか?通知11項目の読み方、日程変更の交渉方法、当日までにやるべき準備チェックリストを時系列で整理。無予告調査の条件も解説します。

税務署から「税務調査に伺いたい」と電話が入ると、経営者は動揺します。何を聞かれるのか、どれだけの追徴が発生するのか、不安は尽きません。ただ、最初の電話は「日程を調整したい」という打診に過ぎず、この時点では何も始まっていません。事前通知を受けてからの対応次第で、調査の結果はかなり変わります。

この記事では、事前通知に定められた法的な中身、日程変更の方法、通知から調査当日までにやるべきことを順番に整理します。事前通知なしで調査が来る「無予告調査」の条件についても解説します。

税務調査の事前通知とは何か

税務調査は申告内容の正確性を確認する行政手続きで、国税通則法第74条の2に基づく質問検査権の行使として行われます。納税者には受忍義務があり、正当な理由なく拒否すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になります(国税通則法第128条)。

実地調査を行う前に調査官は事前通知を行わなければなりません。これは2012年の国税通則法改正で明文化されたルールで、第74条の9が根拠条文です。改正前は事前通知の有無や内容が調査官の裁量に任されていましたが、改正後は通知すべき事項が法律で列挙されました。

事前通知は原則として電話で行われます。調査官が直接連絡してくる場合と、顧問税理士に先に連絡が入る場合があります。電話を受けた際に、その場で日程を確定する必要はありません。「顧問税理士に確認してから折り返します」と伝えて問題ありません。

事前通知の根拠条文

国税通則法第74条の9は「税務職員は、内国税の調査を行う場合には、あらかじめ、当該調査に係る事項を通知しなければならない」と規定しています。同条第1項各号に通知すべき11項目が列挙されています。

事前通知で伝えられる11項目

国税通則法第74条の9第1項は、事前通知の内容として11項目を定めています。それぞれの意味を確認しておくと、通知を受けたときに何が始まろうとしているかを正確に把握できます。

通知内容の一覧

番号通知事項実務上のポイント
調査を行う旨通常の任意調査であることの確認
調査の開始日時日程変更の交渉対象になる
調査を行う場所通常は事業所・事務所
調査の目的「法人税等の申告内容の確認」など
調査の対象税目法人税・消費税・源泉所得税が多い
調査の対象期間通常直近3年分が対象
調査対象帳簿書類その他の物件総勘定元帳・仕訳帳・証憑類など
納税者の氏名・住所または居所確認・訂正できる機会
調査担当者の氏名・所属担当署の確認、必要なら問い合わせ先
日時または場所の変更可能性変更が認められる条件の示唆
非違があった場合の調査範囲の拡大問題が見つかれば他の税目や年度に拡大できる

⑪は「非違事項が発見された場合は追加調査が行われる」ことの事前告知です。実際に何か指摘されると、当初の調査期間や税目が拡大されることがあります。

通知は電話で行われる

実務上、事前通知は電話によるものが大半です。FAXや書面が届くこともありますが、口頭での連絡が一般的です。電話を受けた内容は必ず記録しておきましょう。担当者の氏名・所属・連絡先、提示された日程、対象期間と税目を控えておくと、その後の税理士との打ち合わせがスムーズになります。

日程変更の方法

事前通知で示された調査日程は、合理的な理由があれば変更を求めることができます。「通知後すぐに自動的に調査が始まる」わけではなく、日程の調整には一定の余地があります。

変更が認められる理由の例

以下のような事情があれば、日程変更の申し出が通ることがほとんどです。

  • 経営者や担当経理担当者の病気・入院
  • 繁忙期や決算期と重なっており準備ができない
  • 顧問税理士のスケジュールが確保できない
  • 出張・長期不在が既に確定している

変更の交渉は、顧問税理士を通じて行うのが基本です。税理士から担当調査官へ連絡し、代替日程を複数提案する形で進めます。顧問税理士がいない場合は、立会いを依頼する税理士が決まった段階でその税理士から連絡してもらうと、税務署との交渉がスムーズです。

何度も延期を繰り返すのは逆効果

日程変更は1回程度であれば問題になりません。ただし、正当な理由なく何度も拒否・延期を繰り返した場合は、国税通則法第74条の9第3項に基づき、税務署が事前通知なしで調査を開始できる場合があります。実際にそのような対応をされることは少ないですが、不要な摩擦を生まないためにも、変更は最小限にとどめてください。

日程変更は1回まで、と考えておく

事前通知後の日程交渉は、準備のための時間を確保することが目的です。過度な引き延ばしは調査官の印象を悪化させ、調査が厳しくなるリスクもあります。確保できた時間で集中して準備することを優先してください。

事前通知から調査当日までの準備の流れ

通知を受けてから実地調査が始まるまで、通常2〜3週間あります。この期間を有効に使うことで、調査当日の対応が大きく変わります。

1

顧問税理士への連絡(通知当日または翌日)

電話で受けた通知内容(日程・税目・対象期間)を税理士に伝え、日程調整と立会い依頼を行います。顧問税理士がいない場合は、立会い専門の税理士サービスに相談します。

2

調査対象帳簿・証憑の洗い出し(通知後3〜5日以内)

通知された対象期間(通常直近3年分)の総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・預金通帳・売上帳・仕入帳・固定資産台帳を確認します。電子保存している場合はデータの取り出し環境も整えます。

3

証憑書類の整理(通知後1週間以内)

請求書・領収書・契約書などの証憑を年度・取引先別に整理します。金額の大きな取引、期末前後の取引、関連会社との取引を優先して確認し、不足している証憑は取引先に再発行を依頼します。

4

税理士との事前打ち合わせ(調査日の1週間前まで)

税理士と一緒に申告内容を見直し、指摘リスクのある項目(交際費と会議費の区分、売上の期ズレ、役員報酬の相当性など)を洗い出します。回答の準備ができていない論点は、当日その場で答えず確認してから答えることを決めておきます。

5

調査当日の受け入れ環境の準備(調査日前日まで)

調査官(通常2名)が作業できる会議室スペースと電源を確保します。社長室など機密書類が目に触れる場所は避け、帳簿類を広げやすい作業テーブルを用意します。

準備の詳細については「税務調査の事前準備チェックリスト」で項目ごとに解説しています。

事前通知なしで行われる「無予告調査」の条件

通常の任意調査では事前通知が義務づけられています。ただし、国税通則法第74条の9第1項には「あらかじめ通知することにより当該調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合は、この限りでない」というただし書きがあります。これが「無予告調査(突然の調査)」の根拠です。

無予告調査が行われやすい業種・状況

無予告調査は以下の条件下で適用されやすいとされています。

  • 現金商売を主体とする業種(飲食、小売、美容、パチンコなど)
  • 売上の一部を現金で管理しており、帳簿に反映しているかどうか事前告知で確認できない場合
  • 脱税の通報・情報提供があった場合
  • 過去の調査で重大な不正が指摘されていた場合
  • 証拠書類や帳簿の隠滅・改ざんが懸念される場合

現金を中心に事業を行っている業種の場合、事前通知をすることで売上記録の書き換えや証拠の廃棄が行われるリスクを税務署が判断すると、通知なしで来る可能性があります。

突然の訪問を受けたときの対応

突然調査官が来訪した場合でも、その場ですぐに調査を受ける義務はありません。まず調査官の身分証(国税庁の手帳)と調査通知書の提示を求め、調査の根拠を確認してください。その後、すぐに顧問税理士に電話で連絡を入れ、税理士が到着するまで待ってもらえるよう申し出ます。税務署側もこの申し出に応じるのが一般的です。

突然来訪されても「即座に受け入れる義務」はない

無予告調査であっても、経営者が単独で対応しなければならないわけではありません。顧問税理士または立会い専門の税理士に連絡し、専門家が到着してから調査を開始してもらう交渉は認められています。すぐに電話できる状態にしておくことが重要です。

調査当日の流れと基本的な心構え

事前通知に基づく実地調査は、通常2名の調査官が訪問し、2〜3日かけて行われます。初日の午前中は経営者へのヒアリング(概況調査)が中心で、事業の概要、取引の流れ、経理処理の方法を確認されます。

ヒアリングで気をつけるべきことは、「質問されたことだけに正確に答える」という点です。曖昧な記憶で答えると後の確認作業で矛盾が生じることがあります。確信が持てない場合は「確認してから回答します」と言って、その場での即答を避けてください。

午後からは帳簿・証憑の実査に移ります。調査官が帳簿と証憑を突き合わせながら確認していく作業で、随時質問が入ります。資料提示を求められたら速やかに対応し、書類の隠蔽は絶対にしないでください。隠蔽・仮装があったと認定されると、重加算税(過少申告の場合35%、無申告の場合40%)の対象になります。

顧問税理士が立ち会っている場合は、原則として税理士を通じて回答します。調査当日の対応の詳細については「税務調査の対応方法|事前準備と当日の流れ」を参照してください。

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顧問税理士がいない、または顧問税理士に調査対応の実績が少ない場合でも、税務調査対応の専門家が対応します。事前通知を受けた直後のご相談から承っています。

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事前通知を受けた直後の初動チェックリスト

事前通知の電話を受けてから24時間以内にやるべきことを整理します。

通知当日中にやること

  • 調査官から伝えられた11項目(日程・対象税目・対象期間・調査官氏名・所属・連絡先)をメモに記録する
  • 顧問税理士に電話で連絡する。税理士が不在の場合はメールで通知内容を送り、折り返しを依頼する
  • 顧問税理士がいない場合、立会い専門の税理士サービスに問い合わせる(通知から調査日まで2〜3週間が一般的。早めの確保が重要)
  • 社内の経理担当者に共有し、帳簿・証憑の準備を開始してもらう

1週間以内にやること

  • 対象期間の決算書・申告書を一式取り出す
  • 総勘定元帳・仕訳帳を印刷またはデータとして準備する
  • 銀行の通帳・取引明細(対象期間の全口座分)を用意する
  • 売上に関する請求書・契約書を年度別に整理する
  • 経費に関する領収書・請求書を科目別に整理する
  • 固定資産台帳を確認し、取得・除却の記録を整える

税理士との事前打ち合わせで確認すべき論点

  • 売上の期ズレ(期末前後の売上計上時期に問題がないか)
  • 交際費と会議費の区分(1人5,000円基準を超える飲食がないか)
  • 役員報酬の改定手続き(定期同額給与の要件を満たしているか)
  • 関連会社との取引(移転価格の論点がないか)
  • 消費税の仕入税額控除(インボイスの保存漏れがないか)
  • 源泉徴収の処理(外注費と給与の区分に問題がないか)

「答えられない質問」の扱いを事前に決めておく

税理士との打ち合わせでは、調査当日に答えに窮しそうな論点をあらかじめ洗い出し、「確認してから回答します」と答えるべき項目をリスト化しておきましょう。その場の勢いで不正確な回答をしてしまうと、後の調査で矛盾として指摘されるリスクがあります。

調査後の手続きと修正申告の考え方

実地調査が終わると、調査官から調査結果の説明があります。問題がなければ「申告是認」として通知されます。指摘事項がある場合は、修正申告の勧奨または更正の予知が行われます。

修正申告に応じるかどうかは、指摘内容の妥当性を税理士と慎重に検討したうえで判断してください。修正申告は納税者の自主的な申告行為であり、断ることができます。ただし、断った場合は税務署が「更正処分」を行い、税務署側の判断で税額が確定します。

修正申告を選んだ場合、過少申告加算税(原則10%、50万円超の部分は15%)と延滞税が発生します。事前通知の前に自主的に修正申告していた場合は加算税が免除されるというルールもあります(国税通則法第65条第5項)。修正申告への対応の詳細は「税務調査で修正申告を断ることはできる?」で解説しています。

また、立会いを依頼する税理士の選び方については「税務調査の立会いは誰に頼む?税理士選びのポイントと費用相場」を参考にしてください。

まとめ

この記事のポイント

  • 税務調査の事前通知は国税通則法第74条の9に基づくもので、11項目の内容が法定されている
  • 通知を受けたらまず顧問税理士へ連絡し、日程調整と準備着手を同時に進める
  • 日程変更は合理的な理由があれば1回程度は認められる。繰り返しの延期は逆効果
  • 無予告調査(事前通知なし)は現金商売の業種や脱税が疑われるケースで行われる
  • 突然の訪問でも税理士到着まで待ってもらう交渉は認められている

税務調査の対応について確認事項がある場合は、無料相談からご連絡ください。

よくある質問

Q. 税務調査の事前通知はいつ届きますか?
A. 通常、実地調査の2〜3週間前に電話で連絡があります。書面ではなく電話が一般的で、担当調査官が直接または顧問税理士を通じて調査日程を打診してきます。
Q. 事前通知で伝えられる内容は何ですか?
A. 国税通則法第74条の9に基づき、①調査を行う旨、②開始日時、③場所、④目的、⑤対象税目、⑥対象期間、⑦対象帳簿、⑧納税者の氏名・住所、⑨調査担当者の氏名・所属、⑩日時変更の可能性、⑪非違がある場合の追加調査権の11項目が通知されます。
Q. 税務調査の日程を変更することはできますか?
A. 合理的な理由(病気、出張、繁忙期など)があれば変更を求めることができます。ただし、正当な理由なく何度も拒否・延期を繰り返すと、調査官が任意の協力なしに調査を開始できる場合もあります。
Q. 事前通知なしに税務調査が来ることはありますか?
A. あります。国税通則法第74条の9第1項のただし書きにより、事前通知が調査の障害になると認められる場合は、通知なしで調査が行われます。現金商売の業種や脱税の疑いが強い案件で適用されることがあります。
Q. 事前通知を受けたらまず何をすべきですか?
A. まず顧問税理士に連絡し、税理士経由で日程を調整します。顧問税理士がいない場合は、立会い専門の税理士サービスへの相談を急いでください。その後、対象期間の帳簿・証憑の整備に着手します。

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