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調査に選ばれる個人事業主の共通点

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個人事業主の税務調査|調査率0.9%でも狙われる人の共通点と対策

個人事業主の税務調査率は約0.9%。狙われやすいのは売上900万円台・現金商売・経費率が急変した事業者です。飲食・美容・建設など業種別の調査傾向、白色と青色で変わる対応、当日の流れと事前準備をまとめました。

個人事業主として独立して数年が経ち、「そろそろ税務調査が来るんじゃないか」と気になり始める人は少なくありません。あるいは税務署から突然電話がかかってきて、「調査に伺いたい」と言われた経験を持つ方もいるでしょう。

税務調査は法人だけでなく、フリーランス・個人事業主も対象になります。確率で見れば低いように思えますが、申告内容や業種によっては選ばれやすいパターンが存在します。本記事では、個人事業主が税務調査の対象になる確率、狙われやすい理由と業種、白色・青色申告の違いが調査にどう影響するか、調査の実際の流れと準備すべきことを解説します。

個人事業主の税務調査確率は約0.9%

国税庁が公表している「税務行政の現状と課題」によると、個人事業主(所得税)を対象とした実地調査件数は年間4〜5万件前後で推移しています。一方、所得税の確定申告者数はおよそ530万人規模です。単純に割り算すれば、確率は0.9%前後という計算になります。

法人と比較すると若干低い水準ですが(法人の実地調査率は約1.9%)、「自分は関係ない」と考えるのは早計です。調査対象は申告者全体からランダムに選ばれるわけではなく、申告内容や業種に応じて選定されているためです。調査を受けた場合の「申告漏れ等の誤りを指摘される率」は、個人事業主では8割を超えるというデータもあります。

調査確率の意味

0.9%という確率は「100人中1人が選ばれる」ではなく、「特定の条件に当てはまる人が繰り返し選ばれる」に近いイメージです。一度調査を受けて是認(問題なし)となった事業主の次回調査間隔は延びる傾向がある一方、問題が見つかった場合は数年後に再び選定される確率が高まります。

調査が集中する時期

個人事業主への実地調査は、5〜7月に集中する傾向があります。確定申告(3月15日締め)の内容を税務署が検討し終える4月以降、調査担当者に案件が割り振られるためです。9月前後にも年度末の調査が行われることがあります。

事前通知は国税通則法第74条の9の規定に基づき、調査開始日の2〜3週間前に電話または書面で行われます。通知内容には調査の日時・場所・調査担当者の氏名・調査対象税目・調査対象期間が含まれます。

調査対象に選ばれやすい業種と申告パターン

税務署は申告書の内容を統計的に分析し、「同業他社と比べて異常値がある」「過去の申告と整合しない」といったシグナルをもとに調査対象を絞り込んでいます。2021年度以降、国税庁はこの選定プロセスにAIの活用を拡大しており、より精度の高いスクリーニングが行われるようになっています。

申告漏れが多い業種

国税庁が毎年公表する「所得税等の調査等の状況」では、申告漏れ所得金額が高い業種が示されています。近年のデータで上位に挙がることが多いのは、経営コンサルタント、廃棄物処理業、ブリーダー、風俗関連業などです。これらの業種は取引の証跡が残りにくく、現金収入が大きいことから調査官も重点的に確認します。

また、飲食店・美容室・建設業(一人親方を含む)・不動産賃貸業なども調査頻度が高い業種です。現金取引の割合が高いため、売上の一部が申告から漏れていないかを確認されやすいという背景があります。

調査対象になりやすい申告パターン

業種以外に、申告内容のパターンとして調査リスクが高まる主なものを挙げます。

  • 売上高が1,000万円前後で推移している — 消費税の課税事業者の判定基準(前々年の課税売上高1,000万円)を意識した意図的な調整を疑われることがある
  • 前年と比べて売上は増えているのに所得が減少している — 経費の急増が自然な事業拡大によるものか、個人的な支出が混入していないかを確認される
  • 個人口座と事業用口座が混在している — 事業収入と個人収入の区別がつきにくく、申告漏れのリスクが高いと判断される
  • 無申告または申告期限を繰り返し超過している — 税務署の内部管理リストに登録され、優先的に調査対象となる
  • 消費税の還付申告をしている — 特に設備投資や開業初期に多いが、架空仕入の偽装に利用されることがあるため確認される

売上1,000万円前後への注意

売上が980万円台で数年続いている場合、税務署は「意図的に1,000万円を超えないよう操作しているのでは」という仮説で確認を進めます。実際に課税回避の意図がなくても、説明できる帳簿と証憑がなければ不利な状況になりかねません。消費税の仕組みと自社の売上規模の関係を、税理士と事前に整理しておくと安心です。

白色申告と青色申告、調査への影響の違い

個人事業主の確定申告には白色申告と青色申告の2種類があります。税制上のメリットだけでなく、税務調査との関係でも両者には違いがあります。

青色申告の場合

青色申告(正式には「青色申告承認申請」に基づく申告)は、複式簿記による記帳と一定の帳簿書類の保存が義務づけられています(所得税法第148条)。帳簿が整備されている分、調査官が確認すべき対象が明確になるという側面があります。

帳簿の整合性が取れていれば「経理処理がしっかりしている」という印象を与えられますが、逆に帳簿の不備があると「わかっているのにやっていない」と厳しく見られることもあります。65万円の特別控除を受けるために複式簿記を採用している事業主は多いですが、会計ソフトの自動仕訳に頼りすぎて実際の取引内容と帳簿が乖離しているケースは注意が必要です。

白色申告の場合

白色申告は簡易な記帳(収入と必要経費の記録)で申告できます。2014年1月以降、すべての白色申告者に記帳と帳簿書類の保存が義務化されましたが、複式簿記は求められません。

帳簿の精度が相対的に低いケースが多いため、調査官の側から見ると「実態が確認しにくい」申告として扱われることがあります。所得の金額が低いわりに生活水準が高いと見えた場合(例えば、高額なローンの返済が確認された場合など)、税務署が実地調査で実態確認を試みることがあります。

共通して重要なこと

申告形式を問わず、税務調査の場では次の3点が帳簿と突き合わせて確認されます。収入の計上が網羅されているか、経費として計上した支出に事業上の必要性があるか、証憑(領収書・請求書・契約書など)が保管されているか。この3点が確認できる状態であれば、白色・青色どちらの申告形式でも調査に対応できます。

税務調査の実際の流れ

個人事業主への税務調査は、事前通知から始まり、実地調査、調査結果の連絡という流れで進みます。初めて経験する方のために、各フェーズで何が行われるかを整理します。

1

事前通知

電話または書面で調査の日時・対象税目・調査期間が通知される。通常、調査日の2〜3週間前。日程変更は合理的な理由があれば可能。

2

準備期間

帳簿・証憑の整備、調査対象期間の申告内容の確認、税理士との打ち合わせ。必要であれば税理士への立会い依頼も。

3

実地調査(初日)

調査官2名が来訪。事業概況のヒアリング(事業内容・取引の流れ・経理処理の方法など)が中心。

4

実地調査(2〜3日目)

帳簿・領収書・通帳の実査。売上計上漏れ(→売上除外の指摘とペナルティ)・経費の妥当性・棚卸し計上(→棚卸資産・在庫の指摘ポイント)の確認などが行われる。

5

調査結果の説明

問題なければ「申告是認」。指摘事項があれば修正申告の勧奨または更正処分の予知が行われる。

6

修正申告または不服申立て

指摘内容に納得した場合は修正申告。納得できない場合は更正処分を受けて不服申立て(再調査の請求・審査請求)も選択できる。

調査当日に調査官が確認する主な項目

調査官は帳簿の数字を確認するだけでなく、経営者や担当者への質問を通じて実態を把握しようとします。よく質問される項目を挙げます。

  • 売上の計上基準(いつ売上として記録するか)
  • 現金の管理方法(レジ記録・日次現金残高の確認など)
  • 外注費・人件費の相手方との取引実態
  • 車両・携帯電話・自宅の按分比率の根拠
  • 期末在庫の計上方法と実態

「正直に話してください」と促されても、曖昧な記憶に基づいて回答するのは危険です。不確かな事項については「確認してから回答します」と伝え、税理士を通じて回答する姿勢が望ましいでしょう。

事前に取り組める対策

税務調査の対象になるかどうかは申告内容と業種によって決まりますが、調査が来た場合に備えた準備と、そもそも選ばれにくい申告を続けることの両方が重要です。

日常的な記帳と証憑の保管

最も効果的な対策は、日常的に正確な帳簿を維持することです。会計ソフト(クラウド型のものが記録の改ざんリスクを低減できる点で推奨されます)を使って取引をリアルタイムに入力し、領収書・請求書・通帳明細を日付順に整理して保管します。

証憑の保管期間は、青色申告では7年、白色申告では5年が原則です(所得税法施行規則第102条、第104条)。ただし、調査対象期間が過去5年(重加算税案件では7年)に遡ることがあるため、余裕をもって7年分を保管しておくのが安心です。

経費の按分比率を根拠と合わせて記録する

自宅兼事務所の家賃・光熱費、プライベートと兼用の車両費・通信費を経費として計上する場合、按分比率の根拠を記録しておくことが調査対応のカギになります。「仕事用として使っている面積の割合」「業務利用の時間割合」など、客観的な根拠を説明できる状態にしておいてください。

調査官が最もよく指摘するのは、高すぎる按分比率と根拠の欠如です。例えば、自宅全体の面積のうち仕事スペースが10%しかないのに50%を経費にしているような場合は、否認の対象になり得ます。

消費税の課税判定を毎年確認する

個人事業主にとって消費税の課税事業者になるかどうかは、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで決まります(消費税法第9条)。売上が伸びてきた時期に、この判定を見落として申告漏れになるケースが後を絶ちません。

また、2023年10月にスタートしたインボイス制度適格請求書等保存方式)により、消費税の申告と記録の正確性がより重要になっています。取引先からインボイス番号を求められているにもかかわらず未登録のままのケースは、消費税の申告漏れとあわせて確認されることがあります。

顧問税理士の活用

税務調査に対して最も実効的な備えは、信頼できる税理士に顧問をお願いし、日頃から申告内容の適正性を確認してもらうことです。顧問税理士がいれば、申告書の提出前にリスクポイントを洗い出せるだけでなく、調査通知が来た際に即座に対応方針を相談できます。

顧問税理士がいない場合でも、税務調査の通知を受けた段階で立会いのみを依頼することは可能です。ただし、調査直前の依頼だと準備期間が短く、事前の帳簿確認が十分にできないことがあります。税務調査の立会いを依頼する際の選び方と費用も参考にしてください。

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調査で指摘を受けた場合の対応

調査の結果、指摘事項が生じた場合は、修正申告を行うか、更正処分を受けて不服申立てをするかを判断することになります。

修正申告に応じた場合、原則として過少申告加算税(10%、50万円超の部分は15%)と延滞税が課されます。一方で、修正申告は納税者の自主的な申告として扱われるため、その後の不服申立て(再調査の請求・審査請求)が原則としてできなくなります。

調査官の指摘内容に法的・事実的な根拠がないと判断できる場合は、修正申告に応じず更正処分を待つという選択肢もあります。更正処分を受けた後であれば、再調査の請求(税務署長への申立て)または審査請求(国税不服審判所への申立て)を行うことができます(国税通則法第75条)。

修正申告を求められたときの判断の考え方は、税務調査で修正申告を断ることはできるかにまとめています。

この記事のポイント

  • 個人事業主の税務調査確率は約0.9%だが、業種・申告パターンで大きく変わる
  • 売上1,000万円前後・現金商売・無申告などは選定リスクが高い
  • 白色・青色を問わず、正確な帳簿と証憑の保管が調査対応の基本
  • 経費の按分比率は客観的な根拠とあわせて記録しておく
  • 修正申告に応じると原則として不服申立てができなくなるため、指摘内容の妥当性を税理士と確認してから判断する

税務調査への対応や事前準備についてご不明な点がある場合は、早めに税理士へ相談することが重要です。無料相談からもご連絡ください。

よくある質問

Q. 個人事業主が税務調査を受ける確率はどのくらいですか?
A. 国税庁の統計によると、個人事業主(所得税)の実地調査件数は年間約4〜5万件で、申告者数に対する割合はおよそ0.9%前後です。単純計算では100〜110年に1回の頻度ですが、業種や申告内容によって確率は大きく変わります。
Q. 税務調査で特に狙われやすい業種はどれですか?
A. 国税庁の調査結果では、経営コンサルタント・廃棄物処理業・ブリーダー・風俗関連業などが申告漏れ1件あたりの金額が高い業種として挙げられています。また、飲食店・美容業・建設業など現金取引の多い業種も調査頻度が高い傾向があります。
Q. 白色申告と青色申告では税務調査リスクに差がありますか?
A. 青色申告は複式簿記の記帳が求められるため、帳簿の整備状況が調査の心証を左右します。一方、白色申告は簡易な記帳で済む反面、所得の把握精度が低いと判断されると調査対象に選ばれやすくなることがあります。どちらの申告形式でも、正確な記帳と証憑の保管が最も重要です。
Q. 売上が900万円台のフリーランスは税務調査に選ばれやすいですか?
A. 消費税の課税事業者の基準は前々年の課税売上高1,000万円です。900万円台の売上が続いている場合、消費税の申告義務を回避するために意図的に売上を抑えているのではないかと疑われることがあり、調査対象に選ばれる可能性が高まる傾向があります。
Q. 税務調査はいつ頃通知が来ることが多いですか?
A. 個人事業主への実地調査は5〜7月に集中する傾向があります。確定申告の処理が4月頃に一段落し、調査官が割り当てられやすくなるためです。事前通知は通常、調査日の2〜3週間前に行われます(国税通則法第74条の9)。

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