令和8年以後は確定申告期限まで
廃業届の書き方と提出先|記入項目と連動手続きを解説
個人事業主の廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の書き方と提出先を、国税庁の様式と記載要領に沿って解説。提出期限は令和5年度税制改正で、令和8年1月1日以後の廃業から確定申告期限までに変わりました。青色申告の取りやめ・消費税の事業廃止届・給与支払事務所等の廃止届で期限が違う点も条文つきで整理します。
廃業を決断したあと、最初に頭を悩ませるのが税務署への届出です。「どの書類を、いつまでに、どこへ出せばいいのか」。廃業届だけで済むのか、他にも手続きが必要なのか、わからないまま放置してしまう事業主は少なくありません。
廃業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」。提出期限は、その事実があった日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までです(所得税法第229条)。令和5年度税制改正により、令和8年1月1日以後に生じた事実についてこの扱いになりました。書き方自体はそれほど難しくありません。ただし、青色申告をしていた場合や消費税の課税事業者だった場合は、連動して提出すべき書類が複数あります。
本記事では、廃業届の記載項目の詳細から提出先、e-Taxでの電子提出手順、連動する届出書類の整理まで、個人事業主が廃業時に必要な税務手続きをまとめました。
廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)とは
廃業届は、個人事業主が事業を廃止したことを税務署に通知する書類です。法人の解散とは異なり、廃業のための登記手続きは要りません。ただし廃業届1通で全ての手続きが済むわけではなく、青色申告の取りやめ、消費税の事業廃止、給与支払事務所等の廃止、都道府県税事務所への届出など、状況に応じて別の届出が必要です(後述)。
廃業届の位置づけと法的根拠
所得税法第229条は、事業の開廃業等があった場合に届出書を提出することを義務付けています。条文は次のとおりです。
その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない
長らく「その事実があった日から1か月以内」でしたが、令和5年度税制改正で改められました。 令和8年1月1日以後に生じた開業・廃業等の事実について適用され、それより前に生じた事実は従前どおりです(改正法附則10)。 国税庁の手続案内でも提出時期は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」となっています。期限が土日祝にあたる場合は翌日が期限です。
ただし廃業に伴う届出のうち、期限が緩和されたのは廃業届と青色申告の取りやめ届出書です(229条の改正は開業や事務所の新設・移転・廃止の届出にも及びます)。給与支払事務所等の廃止届出書は同法第230条により「その事実があつた日から一月以内」のままです(給与支払事務所等の廃止が令和8年1月1日以後に生じた場合は、廃業届とは別に提出します)。消費税の事業廃止届出書は、課税事業者で、廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得がない場合に「速やかに」提出します。廃業届に合わせて全部を先延ばしにすると、他の期限を落とします。
法人の場合は会社法上の解散・清算手続きが必要ですが、個人事業の場合は登記を伴う手続きはなく、税務署や都道府県税事務所などへの届出で進めます。
届出書の正式書式は国税庁が定めており、「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」として公表されています。税務署の窓口での受け取りのほか、国税庁ウェブサイトからのダウンロードも可能です。
廃業と休業はどう違うか
事業を一時的に止めるだけなら廃業届を出す必要があるのか、という疑問がよく出ます。
所得税には「休業」の届出がありません。 所得税法229条が届出の対象としているのは、事業の開始・事務所等の設置移転廃止・事業の廃止で、休業はここに含まれていません。したがって、事業を再開する見込みがあるなら廃業届を出さず、その年の所得が少なければ確定申告でそのまま申告することになります。
判断の分かれ目は、事業を再開する意思があるかどうかです。再開する見込みがないのに廃業届を出さずにいると、後述するとおり納税通知が届き続けたり、青色申告の扱いが宙に浮いたりします。
休業のまま申告をしないと純損失の繰越が切れる
青色申告の純損失の繰越控除は、原則として翌年以後3年間です(所得税法70条1項。特定非常災害に係る一定の損失には5年の特例があります)。繰越は連続して確定申告書を提出していることが前提なので、休業のつもりで申告をしない年が続くと、繰り越していた損失を使えなくなります。事業を止めた年に純損失があるなら、後述の繰戻し還付とあわせて先に検討してください。
廃業届と確定申告の関係
廃業届は、確定申告とは別の手続きです。廃業年の1月1日から廃業日までに生じた事業所得は、廃業したからといって申告の対象から外れるわけではありません。確定申告の対象はその年の1月1日から12月31日までの全ての所得なので、廃業後に得た給与所得なども含めて、所得と所得控除を差し引いた結果で申告の要否が決まります。申告する場合の期限は原則として翌年3月15日で、土日祝日等にあたるときは翌日です(国税通則法10条2項)。
廃業届と確定申告は別の手続き
事業を廃止した年分に所得があり、各種控除を差し引いても納める税額が残る場合は、原則として翌年3月15日(土日祝日等にあたるときは翌日)までに確定申告を行います。基礎控除の額は改正されることがあるため、申告が必要かどうかは確定申告の手引きで確認してください。廃業届の提出と確定申告は別手続きです。
廃業届の書き方と記載項目
廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は1枚の書類ですが、記入漏れや誤記が起きやすい項目がいくつかあります。
記載項目の一覧
| 記載欄 | 記載内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 提出先税務署名 | 納税地(原則として住所地)を管轄する税務署名 | 事業所と住所が異なる場合は住所地の税務署が基本 |
| 提出年月日 | 提出する日付 | 廃業日ではなく提出日を記入 |
| 区分・納税地 | 区分の欄に該当する番号(5.住所地 6.居所地 7.事業所等)を記載し、納税地の住所を記入 | 住所地が原則。ここも届出の区分と同じく番号を記載する欄 |
| 氏名・生年月日 | 届出者の氏名、フリガナ、生年月日 | マイナンバー(個人番号)の記入欄あり |
| 職業 | 事業の種類 | 「小売業」「飲食業」「コンサルタント」など具体的に記入 |
| 屋号 | 屋号を使用していた場合に記入 | 特になければ空欄で可 |
| 届出の区分 | 「廃業」の欄に「1」を記載する | 用紙に「該当する届出に『1』を記載してください」と刷り込まれている。チェックや丸ではない |
| 所得の種類 | 「事業(農業)所得」等から該当するものを選択 | 複数の所得がある場合は全て記入 |
| 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合 | 設立した法人の名称・代表者名・法人の納税地・設立登記日 | 法人成りのときだけ記入する欄。これ以外に廃業の理由を書く欄は用紙にない |
| 開業・廃業等日 | 実際に事業を廃止した日 | 最後の取引日や事業活動を終了した日を記入。用紙の欄名は「開業・廃業等日」 |
記入例(飲食業を廃業する場合)
国税庁の「書き方」に沿って、実際に書き込む内容を欄ごとに示します。届出日を令和8年3月10日、廃業日を令和8年2月28日とした場合の例です。
| 記載欄 | 記入例 |
|---|---|
| 税務署名・提出日 | 〇〇税務署長 / 令和8年3月10日 |
| 区分・納税地 | 区分の欄に「5」(住所地)と記載し、〒000-0000 東京都〇〇区〇〇1-2-3 を記入。電話番号は別欄に 03-0000-0000 |
| 氏名・生年月日 | 国税 太郎(コクゼイ タロウ)/ 昭和55年4月1日 |
| 個人番号 | 12桁の個人番号 |
| 職業・屋号 | 飲食業 / 〇〇食堂 |
| 届出の区分 | 「廃業」の欄に「1」と記載(事業を譲渡した場合は右側に譲渡先の住所・氏名も記入) |
| 所得の種類 | 「事業(農業)所得」にレ点。事業を2つ以上行っていて全部をやめるなら「全部」、一部だけなら「一部」にレ点を付け、やめる事業を括弧内に書く |
| 開業・廃業等日 | 令和8年2月28日(用紙の説明は「開業や廃業、事務所・事業所の新増設等のあった日」) |
| 事業の概要 | 「〇〇にて定食店を経営」など、具体的に |
| 給与等の支払の状況 | 専従者・使用人・計の区分ごとに、届出日現在の従事員数、給与の定め方(日給・月給など)、税額の有無(有・無)を記入 |
| 給与支払を開始する年月日 | 届出日の時点で既に給与を支払っていた場合は、その支払を開始した日を記入。給与を払っていなければ空欄 |
| 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 青色申告をしていて取りやめ届出書も出すなら上段「有」、消費税の事業廃止届出書も出すなら下段「有」。出さないなら「無」 |
| その他参考事項 | 給与の支払事務を他の事務所に引き継いだ場合は、その引継ぎ先の所在地 |
この例の提出期限は、廃業した令和8年分の所得税の確定申告期限(令和9年3月15日)です。廃業の翌月までに出す必要はありません。
「所得の種類」の全部・一部の区分と、「給与等の支払の状況」欄は書き漏らしが起きやすい箇所です。とくに従業員や専従者に給与を払っていた場合、各人の給与額や扶養親族等の状況から納付すべき税額があるかどうかを自分で判断して、「有」「無」を記入します。
なお書面で提出するときは、個人番号の記載に加えて、本人確認書類の提示または写しの添付が必要です(e-Taxで送信する場合は不要です)。控えを保管するときは、控えに個人番号が残らないようにします。
記入する前に手元に用意するもの
用紙は国税庁のサイトからダウンロードでき、税務署の窓口にも置いてあります。記入を始める前に次を揃えておくと、書き直しが減ります。
- 開業時に提出した「個人事業の開業・廃業等届出書」の控え(屋号・職業・所得の種類を合わせるため)
- マイナンバーカード、または番号確認書類と本人確認書類(通知カードは記載された氏名・住所等が住民票の記載と一致している場合に限って番号確認書類として使えます。一致しない場合はマイナンバーの記載がある住民票の写しなどを用意します)
- 廃業日を判断する材料(最後の請求書、事業用賃貸借契約の解約日、資産の処分日など)
- 青色申告をしていた場合は、承認を受けた年が分かるもの
控えが手元にない場合は、税務署で保有個人情報の開示請求をすれば写しを取得できます。ただし時間がかかるため、記憶が確かなら屋号や職業は当時と同じ表記にそろえる程度でも差し支えありません。
届出の区分と所得の種類の書き方
この2つは同じ用紙を開業でも廃業でも使うために設けられている欄で、記入を間違えると届出の意味が変わります。
届出の区分の欄には「開業」「廃業」が並び、それぞれの右側に住所・氏名を書く欄があります。用紙には開業の行に「事業の引継ぎを受けた場合は、受けた先の住所・氏名を記載します」、廃業の行に「事業の引継ぎ(譲渡)による場合は、引き継いだ(譲渡した)先の住所・氏名を記載します」と刷り込まれています。事業を誰かに譲って廃業したなら、廃業側にも譲渡先を書きます。単に事業をやめただけなら空欄で構いません。
所得の種類の欄は「不動産所得」「山林所得」「事業(農業)所得」のチェックです。あわせて「廃止の場合……□全部 □一部( )」という欄があり、記載要領は、事業所得を生ずべき事業を2つ以上(たとえば小売業と建設業)行っている方が、その全部を廃止するなら「全部」、一部を廃止するなら「一部」にレ印を付け、一部の場合は廃止する事業を括弧内に簡記すると説明しています。
廃業の理由を書く欄はない
現行の様式には、廃業の理由を自由に書く欄がありません。用紙にあるのは「廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合」の欄だけで、これは法人成りのときに設立した法人の情報を書くためのものです。
したがって、事業不振・後継者不在・体調不良といった事情を書く必要はありません。書く場所を探して手が止まる箇所ですが、記入するのは廃業した日と事業の概要で足ります。
事業を誰かに譲って廃業した場合だけ、「届出の区分」の廃業の行の右側に、引き継いだ(譲渡した)先の住所・氏名を記入します。法人成りの場合は、次に述べる欄に法人の情報を書きます。
法人成りの場合に書くこと
個人事業を法人に切り替えた場合は、用紙の下部にある「廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合」の欄に、設立した法人の名称・代表者名・法人の納税地・設立登記日を記入します。
法人成りでは、廃業届のほかに法人側の設立届出書が必要です。法人でも青色申告を選ぶなら、あわせて青色申告の承認申請書を提出します(選ばないなら不要です)。個人側の廃業と法人側の開始を同じ日付でそろえるか、事業年度をまたぐかで税額が変わるため、切り替えの日付は事前に決めておきます。
廃業年月日はいつにするか
実務上、廃業年月日の決め方で迷うケースがあります。原則として「最後の事業活動を行った日」が廃業日です。
具体的には、最後の取引(売上・仕入)が発生した日、事業用資産を処分した日、事業用の賃貸借契約を解約した日などを参考に判断します。
判断に迷いやすいのは、営業は止めたが売掛金の回収や在庫の処分が残っている場合です。回収や処分が終わるまで事業が続いていると考えるか、営業をやめた日を廃業日とするかで、その年の事業所得の区切りが変わります。
実務では営業活動を終えた日を廃業日とすることが多いものの、その後に生じた入金や費用をどの年に帰属させるかは内容によります。廃業後に生じた費用が事業所得の必要経費になるかは個別に判断が要るため、金額が大きい場合は税理士に確認してください。
廃業日は、実際に事業をやめた事実にもとづいて決めるものです。税額が変わるからといって日付を動かすものではありません。ただし廃業日がいつになるかで、予定納税の減額申請が間に合うか、純損失をどの年で処理するかといった段取りは変わります。事実関係の整理と申告の段取りをあわせて、顧問税理士と相談してください。
よくある記入ミス
廃業届で多い誤りのパターンを挙げます。
- 提出年月日と廃業年月日を混同して同じ日を記入してしまう(廃業後に提出する場合、提出日と廃業日は別)
- 納税地の欄と、提出先の税務署名が食い違っている(納税地として選んだ場所を所轄する税務署に提出する)
- 屋号欄を空白にしたまま提出し、開業届の記載と整合しない
- 「届出の区分」欄の「廃業」に「1」を記載し忘れる
開業届の控えを手元に用意してから記入する
廃業届の記載内容(屋号・職業・所得の種類など)は、開業時に提出した届出書と一致させることで整合性が保てます。控えが手元にない場合は税務署で写しを取得できます。
提出先と提出方法
提出先
廃業届の提出先は、納税地(通常は住所地)を管轄する所轄税務署です。提出方法は3種類あります。
| 提出方法 | 手続き | 必要なもの |
|---|---|---|
| 窓口持参 | 税務署の受付に提出 | 届出書1部、本人確認書類 |
| 郵送 | 所轄税務署あてに送付 | 届出書1部、本人確認書類のコピー |
| e-Tax | インターネット経由で電子送信 | 利用者識別番号、電子証明書など(環境により異なる) |
控えに収受日付印は押されなくなりました
国税庁は令和7年1月から、申告書や届出書の控えへの収受日付印の押なつを取りやめています。窓口で提出した場合は、希望すれば提出日と税務署名を記載したリーフレットを受け取れます。提出した事実を確実に残したいなら、受信通知が保存されるe-Taxが確実です。
事業所(自宅以外)を納税地としていた場合は、その事業所を管轄する税務署が提出先になります。住所地と事業所が異なる都道府県にある場合は、それぞれの所在地を管轄する税務署に問い合わせて確認してください。
都道府県税事務所への届出
個人事業税の課税対象事業(第1種・第2種・第3種事業)を営んでいた場合は、税務署への廃業届に加えて、都道府県税事務所への廃業届出も必要です。書式と期限は各都道府県の条例で定められており、「事業開始(廃止・変更)等申告書」等の名称で窓口で取得できます。
この届出とは別に、個人事業税の申告の期限があります。
地方税法72条の55は、事業の所得が事業主控除額を超える納税義務者が年の中途で事業を廃止した場合、廃止の日から1か月以内(廃止が死亡によるときは4か月以内)に、その年の1月1日から廃止の日までの事業の所得を申告しなければならないと定めています。
所得税の確定申告期限(原則翌年3月15日。土日祝日等にあたるときは翌日)とは期限が別なので、廃業年は先にこちらを確認してください。
e-Taxでの電子提出手順
e-Taxを使えば税務署に出向かずに廃業届を提出できます。国税庁の手続案内はe-Taxソフトでの作成・送信を案内しています。以下は一般的な流れで、画面構成や署名の方法は改訂されることがあるため、実際の手順はe-Taxホームページでご確認ください。
e-Taxの利用者識別番号を用意する
初めて利用する場合は利用者識別番号を取得します。取得済みならe-Taxにログインします
届出書を作成する
国税庁の手続案内はe-Taxソフトでの作成・提出を案内しています。画面構成は改訂されることがあるため、e-Taxホームページで最新の手順を確認してください
届出書の各項目を入力する
届出の区分「廃業」に1を記載し、開業・廃業等日・職業・屋号・所得の種類・事業の概要を入力
内容を確認して送信する
入力内容を確認し、利用する環境に応じた方法で電子署名を付して送信します
送信・受信通知を確認する
送信完了後、e-Taxのメッセージボックスに「受信通知」が届いたことを確認。これが受付の証明になる
届出書の作成はパソコンで行います
国税庁の手続案内は、この届出書についてパソコンのe-Taxソフトで作成・提出する方法を案内しています。e-Taxソフト(WEB版)のスマートフォン対応手続の一覧に、個人事業の開業・廃業等届出書は含まれていません。
マイナンバーカード対応のスマートフォンは、ICカードリーダーの代わりに本人認証・電子署名の用途で使える場合があります。対応状況は変わるため、e-Taxホームページの案内を確認してください。
e-Taxで受信通知が来た場合、その通知が書面提出における受付印の役割を果たします。ダウンロードしてPDFで保存しておくことを推奨します。
廃業届と連動して提出すべき書類
廃業届だけを提出しても、それで全ての税務手続きが完了するわけではありません。個人事業主の状況に応じて、以下の書類を合わせて提出します。
書類ごとに期限の決まり方が違う
ここが廃業手続きでいちばん取り違えやすいところです。同じ「廃業に伴う届出」でも、期限の建て付けが書類ごとに違います。
| 書類名 | 提出先 | 提出期限 | 根拠 | 対象者 |
|---|---|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 所轄税務署 | その年分の確定申告期限まで(令和8年1月1日以後に生じた事実) | 所得税法229条 | 全員 |
| 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 所轄税務署 | その年分の確定申告期限まで | 所得税法151条1項 | 青色申告をやめる事業主(業務の全部を廃止した場合は同条2項で自動失効) |
| 給与支払事務所等の廃止届出書 | 所轄税務署 | 事実があった日から1か月以内 | 所得税法230条 | 従業員や専従者に給与を支払っていた事業主(給与支払事務所等の廃止が令和8年1月1日以後なら、廃業届とは別に提出) |
| 事業廃止届出書(消費税) | 所轄税務署 | 速やかに | 消費税法57条1項3号 | 消費税の課税事業者(廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得がない方) |
| 予定納税額の減額申請書 | 所轄税務署 | 原則7月15日/11月15日(土日祝日等にあたるときは翌日) | 所得税法111条(申請書の提出は112条) | 予定納税の通知を受けた事業主 |
| 個人事業税の廃業届 | 都道府県税事務所 | 各都道府県の条例による | 地方税法・各都道府県条例 | 第1〜3種事業を営んでいた事業主 |
| 個人事業税の申告 | 都道府県税事務所 | 廃止の日から1か月以内 | 地方税法72条の55 | 個人事業税の納税義務者(第1種〜第3種事業)で、事業の所得が事業主控除額を超える事業主 |
上の表の税務署に出す書類の期限(「速やかに」とされているものを除く)が土日祝日等にあたるときは、翌日が期限になります(国税通則法10条2項)。都道府県税事務所に出す書類の期限も同様です(地方税法20条の5第2項)。
上の表の届出書のうち、1か月以内という期限が法律に書かれているのは、給与支払事務所等の廃止届出書だけです(所得税法230条)。給与支払事務所等の廃止が令和8年1月1日以後に生じた場合は、廃業届を出していてもこの届出が別に必要です。廃業届そのものは、令和8年1月1日以後に生じた事実なら229条により確定申告期限までで、この2つの期限を混同しないようにしてください。都道府県税事務所への個人事業税の申告も、要件に当たる場合は廃止の日から1か月以内です(地方税法72条の55)。
また届出書ではありませんが、年の中途で退職した従業員の給与所得の源泉徴収票も、税務署への提出期限は原則として退職の日以後1か月以内です(所得税法226条1項)。国税庁は、他の受給者の分と取りまとめて翌年1月31日までに提出しても差し支えないとしています。
令和5年度税制改正では229条と151条1項の期限が確定申告期限まで緩和されましたが、230条の1か月以内は据え置かれました。財務省の改正解説は、その理由を「源泉徴収事務は原則として毎月その徴収及び納付が行われるものであり、給与支払事務所等の開設、廃止等の事実についてはその発生後に早急に税務署に届け出る必要がある」と説明しています。
令和8年以後に給与支払事務所等を廃止したなら、廃業届とは別に1か月以内の届出が要ります
改正前の所得税法230条には「その事実につき前条の届出書を提出すべき場合を除き」という文言があり、給与支払事務所等の廃止という同じ事実について前条(229条)の届出書を提出すべき場合は、給与支払事務所等の廃止届出書は不要とされていました。
令和5年度税制改正でこの除外が削除され、給与支払事務所等の廃止が令和8年1月1日以後に生じた場合は、廃業届を出していても給与支払事務所等の廃止届出書を別に提出します。新旧どちらの扱いになるかは、廃業の日ではなく、それぞれの事実が生じた日で決まります。たとえば2025年に事業を廃止し、最後の給与を払い終えて2026年に給与支払事務所等を廃止した場合、給与支払事務所等の廃止届出書は改正後の扱いで必要です。財務省の改正解説も、廃業届と提出期限が別々になったことを削除の理由に挙げています。廃業届の様式に給与等の支払状況を書く欄はありますが、それで廃止の届出を兼ねられるわけではありません。
青色申告の取りやめ届出書
青色申告の承認を受けていた事業主は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出します(所得税法151条1項)。提出期限はその年分の所得税に係る確定申告期限までです。たとえば2026年中に廃業した場合は2027年3月15日が期限で、廃業届と同時に出せます。
ただし条文を読むと、業務の全部をやめた場合は青色申告の承認が自動的に失効します。同条2項は「業務の全部を譲渡し、又は廃止した場合には、その譲渡し、又は廃止した日の属する年の翌年分以後の各年分の所得税については、その承認は、その効力を失う」と定めています。
ここでいう業務は青色申告の承認の対象になっている業務で、不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき業務です。事業をやめても不動産所得を生ずべき業務が残っている場合や、2つある事業のうち1つだけをやめた場合は「全部」にあたらないため、承認は失効しません。
では取りやめ届出書に意味がないかというとそうではなく、税務署に事業を廃止した事実を伝えて記録を合わせるための書類です。国税庁も廃業届の案内の備考で、青色申告を取りやめる場合は提出するよう求めています。出さない不利益があるというより、出しておけば後で照会を受けにくい、という位置づけです。
法人成りの場合は青色申告を取りやめないケースもある
法人成りをしても、個人として不動産所得を生ずべき業務などが残る場合は、青色申告の承認は失効しません(所得税法151条2項の「業務の全部」にあたらないため)。雑所得だけが残る場合は青色申告の対象にならないので、扱いが変わります。取りやめるかどうかは顧問税理士と確認のうえで判断してください。
事業廃止届出書(消費税)
消費税の課税事業者で、廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得がない場合は、「事業廃止届出書」を速やかに提出します(消費税法第57条第1項第3号)。国税庁の記載要領は、適格請求書発行事業者・課税事業者・課税事業者を選択している方で、廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得(不動産所得等)がない方が対象だと案内しています。不動産の賃貸を続けるなど課税売上げが残る場合は、この届出書の対象になりません。
なお適格請求書発行事業者が事業廃止届出書を提出した場合、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を別に出す必要はありません。
廃業年の消費税の申告は、個人事業者で課税期間の特例を選択していない場合、原則として翌年3月31日(土日祝日等にあたるときは翌日)までに行います(特例を選択している場合は、廃業日を含む特例の課税期間の末日の翌日から2か月以内。ただし12月31日を含む課税期間は特例を選択していても翌年3月31日。国税庁 No.6601)。
仕入税額控除の精算のほか、みなし譲渡(消費税法第4条第5項)に注意が必要です。個人事業者が棚卸資産または事業用の資産を家事のために消費・使用した場合、その消費・使用を資産の譲渡とみなして消費税を計算します。対象は在庫だけではありません。 車両や工具、事務機器のように、廃業後もそのまま私用で使い続ける事業用資産があれば、同じように対象になり得ます。
予定納税額の減額申請書
前年の所得が大きかった事業主には、その年の所得税を前払いする予定納税の通知が届きます。年の途中で廃業すると、その年の所得は通知の前提より小さくなるのが普通なので、そのまま払うと納めすぎになります。
所得税法111条は、6月30日時点の見積りが予定納税基準額に満たないと見込まれる場合は7月15日までに、10月31日時点の見積りで第2期分だけを減らす場合は11月15日までに、減額の承認を申請できると定めています。これらの期限が土日祝日等にあたるときは翌日が期限です(国税通則法10条2項。たとえば2026年11月15日は日曜日のため、同年の第2期分の申請期限は11月16日です)。
申請書の提出手続を定めているのは112条で、国税庁の手続案内(A1-3)もこちらを手続根拠に挙げています。廃業した年はこの申請を検討してください。
同法113条2項は、事業の全部または一部の廃止によって申告納税見積額が下回ると認められる場合、税務署長は承認をしなければならないと定めています。廃業はここに明記された事由です。
期限を過ぎると申請できません。払いすぎた分は確定申告で精算されて戻ってきますが、その間は資金が寝ることになります。
社会保険・雇用保険の手続き
従業員を雇用していて社会保険の適用事業所だった場合は、税務署への届出とは別に、年金事務所へ「適用事業所全喪届」、ハローワークへ「雇用保険適用事業所廃止届」を提出します。
事業主が出すのは「雇用保険被保険者離職証明書」で、それをもとにハローワークが離職票を交付します。離職する方が交付を希望しない場合は作成を省略できますが、離職日に59歳以上の方については本人の希望にかかわらず必要です。
これらは税務の届出より期限が短いものがあります。 法人の場合の期限は廃業時の社会保険の脱退手続きで整理しています。従業員がいる廃業では、税務署への届出より先にこちらの段取りを組んでください。
給与支払事務所等の廃止届出書
給与支払事務所等を廃止した場合の届出は、所得税法230条により「その事実があつた日から一月以内」と定められています。前述のとおり、給与支払事務所等の廃止が令和8年1月1日以後に生じた場合は、廃業届を提出する場合でもこの届出を別に行います。廃業届の期限(確定申告期限まで)に引きずられて後回しにすると、1か月を過ぎてしまうので注意してください。
源泉徴収義務は廃業後も給与支払いがある期間は継続するため、最終給与の源泉徴収と納付、退職所得の源泉徴収、年の中途で退職した全ての給与の受給者(青色事業専従者を含む)への源泉徴収票の交付(退職の日以後1か月以内・所得税法226条1項)も忘れずに行います。
廃業年の確定申告における注意点
廃業届の提出と確定申告は別の手続きです。申告が必要になる場合、廃業年の確定申告では通常の申告とは異なる論点が生じます。
減価償却資産の処理
廃業時に事業用の減価償却資産(機械・車両・パソコン等)が残っている場合、その資産を売却したのか、自家使用(プライベートに転用)したのかによって処理が変わります。
売却した場合、機械・車両などの事業用減価償却資産の売却益は原則として譲渡所得です。
使用可能期間が1年未満のもの、取得価額が10万円未満のもの(業務の性質上基本的に重要なものを除く)、一括償却資産として必要経費に算入したものなどの売却は、譲渡所得に含まれません(国税庁 No.1460)。自家消費・転用した場合は、原則として時価で収入に計上する必要はありませんが、プライベート転用の場合は減価償却を廃業日付けで打ち切ります。
棚卸資産の処理
廃業年の確定申告では、廃業日時点の棚卸資産を「廃業時の棚卸」として計上します。消費税の課税事業者だった場合は、前述のみなし譲渡の対象になる点に注意してください。家事のために消費・使用したのが在庫か事業用資産かを問わず対象になり得ます。
事業所得の経費の締め
廃業後に生じた費用(賃貸借契約の解約に伴う違約金、廃業に伴う撤去・原状回復の費用等)については、所得税法63条が、事業を廃止した後に生じた費用・損失を、政令の定めるところにより廃業年分またはその前年分の必要経費に算入する扱いを定めています。
廃業年にその所得の総収入金額がなかったときは、総収入金額があった直近の年分とその前年分が対象になります。
条文が対象としているのは「事業を廃止しなかったとしたならば必要経費に算入されるべき金額」です。
請求書が届いた日で判定するのではなく、費用・損失が生じた時期で判定します。廃業日までの期間に対応する家賃や光熱費は、請求が廃業後に届いても通常の必要経費です。
さらに所得税法施行令179条は、算入できる金額に限度を置いています。まず廃業年分(または上記の年分)について、その金額が生じた時の直前に確定している総所得金額・山林所得金額・退職所得金額の合計額と、その計算の基礎とされた不動産所得・事業所得・山林所得の金額の、いずれか低い金額が限度です。
そこで引ききれない部分だけを、前年分について同じ考え方で計算した限度内で算入します。金額が大きいほど限度で頭打ちになりやすいので、税理士に確認してください。
純損失があるなら繰戻し還付を検討する
廃業年に純損失(各種所得の損失を損益通算してもなお残る損失)が生じた場合、前年に納めた所得税の還付を請求できます(所得税法140条1項)。損失を前年の所得にぶつけて、払いすぎになった分を返してもらう仕組みです。
前年分について青色申告書を提出していること、その年分の青色申告書を提出期限までに提出すること、還付請求書を確定申告書と同時に提出することが要件です。単に赤字であれば使えるというものではありません。
さらに廃業には特例があります。同条5項は、事業の全部の譲渡または廃止があった場合について、その事実が生じた日の属する年の前年に生じた純損失があるときは、前年分・前々年分を青色申告していることを条件に、その年分の確定申告期限までに還付を請求できると定めています。
通常の繰戻しは「その年に生じた損失」を前年の所得にぶつける制度なので、前年に生じた損失は本来この年には使えません。廃業の場合はその前年分の損失についても、前々年の所得にさかのぼって還付を請求できるということです。
繰越控除(所得税法70条1項)は原則として翌年以後3年間にわたって純損失を繰り越す制度で、廃業後に事業所得がなくても使えます。要件を満たせば給与所得など他の所得を含めた総所得金額から控除されます。廃業後に勤務先の給与があるなら、繰り越して使い切れる場合があります。
繰戻しと繰越のどちらが有利かは、前年の所得税額と、翌年以後に見込まれる所得によって変わります。前年に相応の所得税を納めていて翌年以後の所得が小さいなら繰戻しが効き、逆なら繰越が効きます。どちらを選ぶかは個別の税額計算になるため、顧問税理士にご相談ください。 繰戻し還付の請求は確定申告書と同時に提出する必要があるので、申告を作る段階で判断します。
廃業年の確定申告は顧問税理士に依頼を推奨
廃業年の確定申告は、減価償却・棚卸・消費税のみなし譲渡など通常年とは異なる処理が集中します。特に数千万円規模の資産がある場合や消費税の課税事業者だった場合は、税理士に依頼して計算漏れを防ぐことを推奨します。
決算書の欄への記載で届出に代えられるようになる予定
財務省の改正解説によると、廃業届と青色申告の取りやめ届出書は廃業に際してまとめて提出されることが想定されるため、国税庁において青色申告決算書または収支内訳書に所定の欄を創設し、その欄への記載をもってそれぞれの届出書の提出に代えられるようにすることとされています。実際の運用は決算書の様式で確認してください。
廃業届を出さないとどうなるか
所得税法229条に罰則の定めはなく、提出しなかったことだけで過料などが科されることはありません。それでも出しておくべき理由がいくつかあります。
税務署は事業が続いていると認識したままになります。 確定申告の案内が届き続け、申告がないことについて照会を受けることがあります。なお確定申告が必要かどうかは実際の所得や法定の要件で決まるので、届出を出さなかったこと自体で申告義務が生じるわけではありません。
個人事業税の納税通知が届き続けることがあります。 都道府県は税務署とは別に課税しているため、都道府県税事務所への廃業届を出さないと、事業をやめた後も課税の対象として扱われる可能性があります。
消費税の届出を出さないと、課税事業者としての扱いが残ります。 消費税の課税事業者で、廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得がない方は、消費税法57条1項3号により事業廃止届出書の提出が義務づけられています。
なお青色申告の承認は、業務の全部を廃止した場合には前述のとおり翌年分以後について自動的に失効します(所得税法151条2項)。この場合、取りやめ届出書を出し忘れたことで翌年の申告が不利になることはありません。ただし不動産所得を生ずべき業務が残る場合や、2つある事業のうち1つだけをやめた場合は失効しないため、青色申告をやめるなら届出書の提出が必要です。
廃業前後のタイムライン
廃業の決断から確定申告完了まで、手続きのスケジュールをまとめます。
| 時期 | 手続き |
|---|---|
| その年分の確定申告期限まで ※9 | 廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を所轄税務署へ |
| 給与支払事務所等を廃止した日から1か月以内 ※5 | 給与支払事務所等の廃止届出書 ※1 ※9 |
| 速やかに | 消費税の事業廃止届出書 ※2 |
| 都道府県の条例による期限 ※5 | 都道府県税事務所への廃業届(個人事業税) |
| 廃止の日から1か月以内 ※5 | 個人事業税の申告 ※3 |
| 退職の日以後1か月以内 ※5 | 年の中途で退職した受給者への給与所得の源泉徴収票の交付 ※4 |
| 翌年1月31日 ※5 | 給与支払報告書(市区町村へ)・給与所得の源泉徴収票(税務署へ) ※6 |
| 翌年3月15日 ※5 | 廃業年分の所得税の確定申告・納付(申告が必要な場合) |
| 翌年3月15日 ※5 | 青色申告の取りやめ届出書(青色申告の承認を受けていて、取りやめる場合。所得税法151条1項) |
| 7月15日/11月15日 ※5 | 予定納税額の減額申請書 ※7 |
| 翌年3月31日 ※5 | 廃業年分の消費税の確定申告・納付(課税事業者の場合) ※8 |
- ※1 給与を支払っていた場合(所得税法230条)。最終給与の支払いが廃業日より後になるなら、廃止の日は廃業日と一致しません
- ※2 課税事業者で、ほかに課税売上げに当たる所得がない場合
- ※3 個人事業税の納税義務者(第1種〜第3種事業)で、事業の所得が事業主控除額を超える場合(地方税法72条の55)
- ※4 所得税法226条1項。対象は年の中途で退職した全ての給与の受給者(青色事業専従者を含む)です。廃業日より前に退職した人は、その人の退職日から数えます
- ※5 期限が土日祝日等にあたるときは翌日が期限です(国税は国税通則法10条2項、地方税は地方税法20条の5第2項)
- ※6 給与支払報告書は、年の中途で退職した従業員は退職時の住所地、それ以外は翌年1月1日現在の住所地の市区町村へ提出します。年の中途で退職した従業員でその年の支払金額が30万円以下の分は提出範囲外です。給与所得の源泉徴収票の税務署への提出は、年の中途で退職した従業員の分は原則として退職の日以後1か月以内で、他の受給者の分と取りまとめて翌年1月31日までに提出しても差し支えありません。提出範囲は国税庁の手引で確認してください。令和9年1月以降は、給与支払報告書を市区町村に提出すれば源泉徴収票は税務署に提出したものとみなされます
- ※7 廃業年に予定納税の通知があり、6月30日または10月31日時点の見積りが予定納税基準額などに満たないと見込まれる場合(所得税法111条/112条)
- ※8 課税期間の特例を選択していない場合
- ※9 令和8年1月1日以後に生じた事実についての扱いで、新旧は届出ごとにその事実が生じた日で判定します。それより前に生じた事実では、廃業届の期限は事実があった日から1か月以内で、給与支払事務所等の廃止という同じ事実について廃業届を提出すべき場合は、給与支払事務所等の廃止届出書の提出は不要でした
廃業届の提出と並行して、事業用の銀行口座・クレジットカード・保険の解約手続き、事業用資産の処分、取引先への通知なども進めることになります。法人の場合は社会保険の脱退届出(届出期限5日以内)が税務届出よりも先に必要になるため、スケジュールの組み立てに注意してください。
出典
- e-Gov法令検索 国税通則法(第10条第2項・期限が休日等にあたる場合)
- e-Gov法令検索 所得税法(第63条・第70条・第111条・第112条・第113条・第140条・第151条・第229条・第230条)
- e-Gov法令検索 所得税法施行規則(第98条)
- 国税庁 A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続(提出時期・提出先・手続根拠。2026年9月14日確認)
- e-Gov法令検索 地方税法(第72条の2第3項・第72条の51第3項・第72条の55・個人の事業税の課税対象、廃業時の課税時期、申告)
- 国税庁 No.1460 譲渡所得(土地、建物及び株式等以外の資産を譲渡したとき)(2026年9月15日確認)
- 国税庁 法定調書の種類及び提出期限(給与所得の源泉徴収票の中途退職者分は退職の日以後1か月以内、取りまとめて翌年1月31日までの提出も可。2026年9月15日確認)
- 国税庁 No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等(中途退職者の給与支払報告書の提出先・提出範囲。2026年9月15日確認)
- 国税庁 F1-1 給与所得の源泉徴収票(同合計表)(提出時期・令和9年1月以降のみなし提出。2026年9月15日確認)
- 日本年金機構 適用事業所が廃止等により適用事業所に該当しなくなったときの手続き(適用事業所全喪届は事実発生から5日以内。2026年9月15日確認)
- e-Gov法令検索 雇用保険法施行規則(第7条・資格喪失届、離職証明書、離職日に59歳以上の場合)
- 国税庁 A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続(手続根拠は所得税法第112条。2026年9月15日確認)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令(第179条・廃業後の費用又は損失の必要経費算入の限度)
- e-Gov法令検索 消費税法(第4条第5項・第57条第1項第3号)
- 国税庁 No.6601 申告と納税(消費税)(個人事業者の12月31日の属する課税期間は3月31日、課税期間の特例の期限。2026年9月15日確認)
- 財務省 令和5年度税制改正の解説(所得税法等の改正)(開業・廃業等の届出の期限の見直し、提出不要規定の削除、適用関係)
- 国税庁 No.6603 個人事業者が事業を廃止した場合(適格請求書発行事業者が事業を廃止する場合は事業廃止届出書を提出。2026年9月15日確認)
まとめ
廃業届・連動手続きのポイント
- 廃業届の提出期限は、その年分の所得税に係る確定申告期限まで(所得税法第229条・令和8年1月1日以後)。給与を支払っていた場合の給与支払事務所等の廃止の届出は第230条により1か月以内で、その廃止が令和8年1月1日以後なら廃業届とは別に提出する
- 業務の全部を廃止した場合、青色申告の承認は所得税法151条2項で翌年分以後に自動失効する。不動産所得が残る場合や一部の事業だけをやめた場合は失効しないため、やめるなら取りやめ届出書をその年分の確定申告期限までに提出する
- e-Taxなら税務署に出向かずに提出でき、受信通知で受付を確認できる。令和7年1月から控えへの収受日付印は押されない
- 廃業届と確定申告は別の手続き。申告の要否は実際の所得と所得控除で決まる。申告する場合は減価償却・棚卸・消費税のみなし譲渡など特有の処理があるため、税理士への相談を推奨する
廃業後の財務整理や残余資産の扱いについて確認事項がある場合は、無料相談からご連絡ください。個別の税額計算や申告書の作成、具体的な税務判断は税理士が行う業務のため、必要に応じて税理士をご紹介します。
廃業を検討している段階で、廃業か事業再生かの判断基準もあわせてご確認ください。財務状況によっては、廃業より先に事業再生の可能性を探ることで、選択肢が広がる場合があります。また、廃業後も個人保証が残るケースについては、廃業後の個人保証・連帯保証の処理で詳しく解説しています。
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よくある質問
- Q. 廃業届の提出期限はいつですか?
- A. 令和8年1月1日以後は、その事実があった日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに所轄税務署へ提出します(所得税法第229条)。令和5年度税制改正で従来の「1か月以内」から変わり、令和8年1月1日以後に生じた事実について適用されます。罰則はありません。青色申告の取りやめ届出書は廃業届と同じくその年分の確定申告期限までですが、消費税の事業廃止届出書は「速やかに」(課税事業者で、廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得がない場合)、給与支払事務所等の廃止届出書は廃止した日から1か月以内と期限が異なります(給与支払事務所等の廃止が令和8年1月1日以後なら、廃業届とは別に提出します)。書類ごとに期限を確認してください。
- Q. 廃業届はe-Taxで提出できますか?
- A. できます。国税庁の手続案内は、e-Taxソフトで届出書を作成して送信する方法を案内しています。e-Taxを初めて使う場合は利用者識別番号の取得が必要です。電子署名の方法は利用する環境によって異なるため、e-Taxホームページで最新の手順をご確認ください。
- Q. 青色申告をしていた場合、廃業届以外に何が必要ですか?
- A. 「所得税の青色申告の取りやめ届出書」をその年分の確定申告期限までに提出します(所得税法151条1項)。ただし業務の全部を廃止した場合は、同条2項により翌年分以後の承認が自動的に失効します。届出書は事実を税務署に伝えて記録を合わせるためのもので、出さなかったから翌年も青色申告のままになるわけではありません。事業の一部だけをやめた場合や不動産所得が残る場合は失効しないため、取りやめるなら提出が必要です。
- Q. 廃業届を出さないとどうなりますか?
- A. 法律上の罰則はありません。確定申告が必要かどうかは実際の所得や法定の要件で決まるため、届出を出さなかったこと自体で申告義務が生じるわけではありません。ただし税務署が事業の継続を前提に案内を送り続けたり、申告がないことについて照会を受けたりする可能性があります。
- Q. 消費税の課税事業者が廃業する場合、追加で必要な手続きはありますか?
- A. 「事業廃止届出書(消費税)」を速やかに提出します。対象は、廃業する事業のほかに課税売上げに当たる所得(不動産所得等)がない方です。不動産の賃貸を続けるなど課税売上げが残る場合は提出しません。廃業年の消費税の確定申告は、個人事業者の場合、課税期間の特例を選択していなければ原則として翌年3月31日(土日祝日等にあたるときは翌日)までに行います(特例を選択している場合は、廃業日を含む特例の課税期間の末日の翌日から2か月以内。ただし12月31日を含む課税期間は特例を選択していても翌年3月31日。国税庁 No.6601)。