再建期でも資金は調達できる
事業再生中の資金調達|利用可能な制度一覧
事業再生中の企業が利用できる資金調達方法を解説。DIPファイナンス、日本政策金融公庫の融資制度、ファクタリング、事業再生ファンドなど、再生局面での選択肢と注意点をまとめました。
事業再生に取り組む企業にとって、再生プロセスを維持するための「つなぎ資金」の確保は生命線です。経営改善計画を実行するにも資金が必要であり、計画が軌道に乗るまでの運転資金をどう調達するかは、再生の成否を左右する重大な課題となります。
再生中の資金確保は時間との勝負
経営改善計画を実行するにも資金が必要であり、計画が軌道に乗るまでの「つなぎ資金」の確保が再生の成否を左右します。手元資金が尽きてからでは選択肢が極めて限られます。
しかし、経営不振に陥った企業が通常の銀行融資を受けることは容易ではありません。本記事では、事業再生中の企業が利用できる資金調達の選択肢を整理し、各手段の特徴と活用上の注意点を解説します。
事業再生中の資金調達が困難な理由
通常融資が受けにくい構造
事業再生中の企業は、赤字決算、債務超過、リスケジュール中といった状態にあることが一般的です。こうした企業は銀行の融資審査において「要管理先」や「破綻懸念先」に区分され、新規融資の審査が大幅に厳格化されます。
加えて、既存の借入金について返済条件の変更(リスケジュール)を行っている場合、金融機関は追加融資に対してさらに慎重な姿勢をとります。信用保証協会の保証も、既存の保証枠が上限に達している場合は利用が困難です。
利用可能な資金調達手段
日本政策金融公庫の融資制度
日本政策金融公庫は、民間金融機関では対応が難しい企業に対して融資を行う政府系金融機関です。事業再生に関連する融資制度として、企業再建資金(国民生活事業・中小企業事業)があります。
企業再建資金は、中小企業活性化協議会の支援を受けて経営改善計画を策定した企業などが利用できる制度です。融資限度額は国民生活事業で7,200万円(うち運転資金4,800万円)、中小企業事業で7億2,000万円です。リスケジュール中であっても、実現可能性の高い再生計画があれば審査の対象となります。
DIPファイナンス
法的整理手続き(民事再生・会社更生)に移行した場合、事業継続に必要な運転資金を確保するための融資がDIPファイナンスです。DIP融資は民事再生法第119条に基づく共益債権として取り扱われ、再生手続き後の弁済において一般の再生債権に優先します。
金融機関にとっては優先弁済が保証されるため、再生手続中であっても融資が可能となります。ただし、DIP融資の審査では事業の収益性と再生計画の実現可能性が厳しく評価されます。
資産の売却・流動化
遊休不動産、設備、有価証券など、事業活動に直接必要のない資産を売却して資金を確保する方法です。貸借対照表のスリム化にもつながるため、再生計画の一環として位置づけられることが多い手法です。
売掛金のファクタリングも、再生中の企業にとって有効な資金調達手段の一つです。ファクタリングの審査は売掛先の信用力が中心となるため、自社が赤字やリスケジュール中であっても売掛先が健全であれば利用できる可能性があります。ただし、手数料が高い点を踏まえ、一時的な利用にとどめることが前提です。
事業再生ファンド
事業再生ファンドは、再生可能性のある企業に対して出資(エクイティ投資)や劣後ローンを提供する投資ファンドです。単なる資金提供にとどまらず、経営人材の派遣や事業戦略の策定支援など、ハンズオン型の経営支援を行うファンドが多いのが特徴です。
地域経済活性化支援機構(REVIC)や中小企業基盤整備機構が運営するファンド、民間の事業再生ファンドなどが存在します。出資を受ける場合は株式の一部を譲渡する形になるため、経営権の希薄化が生じる点を理解しておく必要があります。
スポンサー型支援
事業に魅力がある企業の場合、スポンサー(買収企業)からの出資や融資を受けて再生を図る方法もあります。スポンサーが見つかれば再生資金の問題は大きく改善しますが、実質的にM&Aに近い形態となるため、経営権の移転や株主構成の変更を伴います。
資金調達における注意点
資金使途の明確化
事業再生中の資金調達では、調達した資金の使途を金融機関やファンドに明確に説明する必要があります。「とりあえず手元資金を確保したい」という漠然とした理由では、審査を通過することは困難です。具体的な運転資金の内訳と、その支出が事業再生にどう貢献するかを示すことが求められます。
既存債権者との調整
新たな資金調達を行う際は、既存の金融機関(メインバンク等)との事前調整が不可欠です。既存債権者に知らせずに別の金融機関から借入を行うと、信頼関係が損なわれ、リスケジュールの継続に支障が出る恐れがあります。
過度な借入の回避
再生中の企業が新たな借入を重ねることは、財務状況をさらに悪化させるリスクがあります。資金調達はあくまで再生計画の実行に必要な最小限の金額にとどめ、本質的な経営改善による収益力の回復に注力することが大切です。
まとめ
この記事のポイント
- 事業再生中でも日本政策金融公庫の制度融資、DIPファイナンス、資産の流動化、事業再生ファンドなど複数の選択肢がある
- 自社の再生フェーズと資金ニーズに合った手段を選択し、既存の金融機関との信頼関係を維持しながら調達する
- 計画的な資金確保が再生成功の鍵であり、早期の動きが選択肢を広げる
事業再生中の資金調達について確認事項がある場合は、無料相談窓口からご相談ください。
よくある質問
- Q. リスケジュール中でも新規融資を受けることはできますか?
- A. 困難ですが不可能ではありません。リスケジュール中は通常の銀行融資の審査が厳しくなりますが、経営改善計画が金融機関に認められ、計画どおりの実績を示している場合は追加融資が検討される場合があります。また、日本政策金融公庫の企業再建資金や、信用保証協会のセーフティネット保証を活用できるケースもあります。
- Q. DIPファイナンスとは何ですか?
- A. DIPファイナンスとは、法的整理手続き(民事再生・会社更生)の申立て後に、事業の継続に必要な運転資金を確保するための融資です。DIPはDebtor In Possessionの略で、経営権を維持したまま再建を進める債務者を意味します。DIP融資は一般債権に優先して弁済される共益債権として扱われるため、金融機関にとっての回収リスクが低く、再生手続中でも融資が可能となります。
- Q. 事業再生ファンドからの出資を受けるにはどうすればよいですか?
- A. 事業再生ファンドは、再生可能性のある企業に対して出資や融資を行う投資ファンドです。利用するには、事業に収益性や成長性があること、再生計画の実現可能性が高いこと、ファンドの投資基準に合致することが条件となります。ファンドへのアプローチは、M&Aアドバイザーや事業再生コンサルタントを通じて行うのが一般的です。
- Q. 事業再生中に利用できる公的支援制度はありますか?
- A. 日本政策金融公庫の企業再建資金、信用保証協会のセーフティネット保証、中小企業活性化協議会の再生計画策定支援などが利用可能です。経営改善計画策定支援事業(405事業)では専門家費用の3分の2が補助されるため、費用面のハードルも低くなっています。