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銀行交渉の進め方|リスケ・追加融資の実務

銀行交渉の進め方をリスケジュールと追加融資の場面別に解説。交渉の準備、経営改善計画の作り方、金融機関が見るポイントなど、中小企業経営者が知るべき実務を整理します。

資金繰りが厳しくなったとき、銀行への返済条件の変更(リスケジュール)や追加融資の依頼は、中小企業の経営者にとって避けて通れない局面です。しかし、準備不足のまま銀行に相談しても、望む結果は得られません。金融機関は企業の将来性と返済可能性を数字で判断します。本記事では、リスケジュールと追加融資の2つの場面に分けて、銀行交渉を成功させるための準備と進め方を解説します。

リスケジュール交渉の進め方

リスケジュール(以下「リスケ」)とは、銀行借入の返済条件を変更することです。毎月の返済額の減額、返済期間の延長、一定期間の元金返済猶予(据置)などの形態があります。中小企業金融円滑化法は2013年3月に終了しましたが、金融庁は引き続き金融機関に対して、中小企業から条件変更の申出があった場合には適切に対応するよう監督指針で求めています。

準備不足の交渉は失敗する

金融機関は企業の将来性と返済可能性を数字で判断します。リスケの依頼は「苦しいから猶予してほしい」ではなく、窮境原因の分析と改善計画を計画書として提示する必要があります。

リスケ交渉の準備として最も重要なのは、経営改善計画の策定です。金融機関にリスケを依頼する際は、単に「返済が苦しいので猶予してほしい」と伝えるのではなく、なぜ返済が困難になったのか(窮境原因)、どのような改善策を実施するのか、いつまでに正常返済に復帰できるのかを計画書として提示する必要があります。

経営改善計画の作成ポイント

金融機関が重視する計画書の要素は、窮境原因の明確な分析、具体的かつ実行可能な改善施策、保守的な前提に基づく数値計画、返済計画のシミュレーションの4点です。

窮境原因については、外部環境の変化(市場縮小、競合の増加など)と内部要因(過剰投資、管理不足、不採算事業の継続など)を分けて分析します。金融機関は「経営者が問題の本質を理解しているか」を見ています。

数値計画は損益計画、資金繰り計画、貸借対照表推移の3つを5年程度作成します。売上計画は過去の実績に基づく保守的な設定とし、「何を根拠にこの数字を見込んでいるのか」を説明できるようにしておくことが重要です。楽観的すぎる計画は信頼を損ないます。

経営改善計画策定支援事業(405事業)を利用すれば、認定経営革新等支援機関(税理士、中小企業診断士等)の支援を受けて計画を策定する際の費用について、3分の2(上限300万円)の補助を受けられます。経営改善計画の作り方も参照してください。

追加融資の交渉と審査のポイント

業績改善に向けた設備投資や運転資金の確保のために追加融資を依頼する場合は、リスケとは異なるアプローチが必要です。金融機関は追加融資の審査において、返済原資の確保(キャッシュフローで返済できるか)、資金使途の妥当性(何に使い、どのような効果があるか)、保全の状況(担保・保証の有無)を重点的に確認します。

融資審査で重視される財務指標として、債務償還年数(借入金を何年で返済できるか)があります。計算式は「有利子負債 ÷ 営業キャッシュフロー」で、10年以内が正常先の目安とされています。この指標が長期化している場合は、借入金を減らす施策か営業キャッシュフローを増やす施策を計画に盛り込み、改善の見通しを示す必要があります。

審査を通りやすくするための事前準備

融資審査に臨む前に、試算表(最新月まで)、資金繰り表(向こう6カ月から12カ月)、事業計画書(資金使途と効果を含む)を準備してください。特に資金繰り表は、融資を受けなかった場合と受けた場合のシミュレーションを並べて、融資の必要性と返済可能性を示すことが効果的です。

業績が好調なときの関係構築が重要

業績の良いときから定期的に試算表を持参して銀行に説明する習慣をつけておくと、融資が必要になったときの審査がスムーズに進みます。「困ったときだけ相談する」パターンは金融機関の心証を悪くします。

また、メインバンクとの関係構築も重要です。業績が好調なときから定期的に試算表を持参して説明する習慣をつけておくと、融資が必要になったときの審査がスムーズに進みます。業績の良いときだけ連絡し、悪くなったときに初めて相談するパターンは、金融機関の心証を悪くします。

複数行との調整と信用保証協会の活用

複数の金融機関から借入れがある場合のリスケ交渉は、全行一律の条件で調整するのが原則です。特定の銀行だけ返済を継続し、他行にリスケを求めると、不平等として協力を得られなくなります。

実務的には、まずメインバンクに相談し、方針と計画の骨子について了解を得ます。その後、メインバンクの協力のもとで他行への説明会(バンクミーティング)を開催し、全行から一括して同意を得るのが一般的な流れです。

中小企業活性化協議会を活用すると、第三者の立場で金融機関との調整を仲介してもらえます。協議会の活用方法も確認しておくとよいでしょう。特に取引金融機関が多い場合や、金融機関間の利害が対立する場合には、協議会の関与が交渉の円滑化に有効です。

信用保証協会の保証付き融資をリスケする場合は、信用保証協会の同意も必要です。保証協会は条件変更に比較的柔軟に対応してくれますが、経営改善計画の提出を求められるのは銀行と同様です。

日本政策金融公庫への対応

日本政策金融公庫(以下「公庫」)から借入れがある場合も、リスケ交渉の対象に含めます。公庫は政策金融機関として中小企業の支援に積極的な姿勢を取っており、経営改善に向けた条件変更には比較的前向きに対応してくれます。ただし、民間金融機関と同じタイミングで交渉し、条件を揃えることが基本です。

まとめ

この記事のポイント

  • リスケ交渉の成否は経営改善計画の質で決まり、窮境原因の分析と返済シミュレーションを含む計画書の提示が不可欠
  • 追加融資では最新の試算表・資金繰り表・事業計画書を事前に準備し、融資の必要性と返済可能性を数字で示す
  • 複数行からの借入れがある場合は全行一律のリスケ条件が原則で、メインバンクへの事前相談と中小企業活性化協議会の活用が有効

銀行交渉や経営改善計画の策定について確認事項がある場合は、無料相談窓口からご相談ください。

よくある質問

Q. リスケジュールを依頼すると新規融資は受けられなくなりますか?
A. リスケ中は原則として新規融資を受けることが困難になります。ただし、経営改善計画を着実に実行し、業績が回復基調にある場合は、正常先への格上げを経て再び融資を受けられるようになります。
Q. リスケジュールの交渉は何行同時に行うべきですか?
A. 複数行から借入れがある場合は、原則として全行同時に交渉します。特定の銀行だけリスケを依頼し、他行には通常返済を続けると、不公平として他行の協力を得にくくなります。メインバンクに事前相談し、全行への説明方針を調整するのが一般的です。
Q. 銀行にリスケを断られた場合はどうすればよいですか?
A. 中小企業活性化協議会に相談し、第三者を交えた交渉を検討してください。協議会が間に入ることで、金融機関も交渉に応じやすくなります。また、経営改善計画の内容を見直し、より実現可能性の高い計画を再提示することも有効です。
Q. 経営改善計画書に盛り込むべき内容は何ですか?
A. 企業概要と事業内容、窮境原因の分析、具体的な改善施策、数値計画(損益・資金繰り・BS推移の5年程度)、返済計画が必須項目です。計画の実現可能性を示す根拠やアクションプランの詳細が金融機関の判断材料になります。

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