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休眠か廃業か、判断のポイント

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休眠会社のメリット・デメリット|維持コストとみなし解散リスクを解説

休眠会社にすると均等割7万円は払い続ける必要があるのか、12年放置のみなし解散リスクはどう回避するか。許認可の維持可否、廃業との10年間コスト比較まで判断材料を整理しました。

事業を一時的に止めたいが、廃業するほど踏ん切りがつかない。そういった状況で「休眠」という選択肢を検討する経営者は少なくありません。休眠会社には確かに使い道がある一方、放置すると思わぬコストや法的リスクが積み重なる側面もあります。

本記事では、休眠会社のメリット・デメリットを整理し、均等割の税負担、みなし解散リスク、許認可業種別の注意点、廃業との10年コスト比較まで、実務的な観点から解説します。

休眠会社とは何か

休眠会社とは、登記上は存続しながら、事業活動を停止している会社のことです。法律上の定義としては、会社法第472条が「最後の登記から12年を経過した株式会社」を休眠会社と位置づけ、みなし解散の対象としています。

ただし一般的な実務では、12年以上経過していなくても、「事実上の休眠状態」として事業を停止している状態を指すことがほとんどです。

休眠と廃業(解散・清算)の最大の違いは、法人格が存続するかどうかという点です。

比較項目休眠廃業(解散・清算)
法人格存続消滅
事業再開いつでも可能不可
許認可維持される(条件あり)失効
手続き届出のみ(簡易)登記・官報公告が必要
維持コスト均等割・申告義務あり消滅後はゼロ
法的リスクみなし解散リスクあり清算完了で消滅

休眠会社にするメリット

廃業より手続きコストが低い

会社を廃業するには、解散登記(登録免許税3万円)、清算結了登記(同2千円)、官報公告費用(約3〜4万円)などが必要です。専門家費用を含めると30〜60万円程度の費用がかかります(詳しくは廃業手続きの費用・流れを参照)。

休眠の場合、税務署への「異動届出書」の提出と、都道府県・市区町村への届出だけで済みます。登記費用や官報公告費用はかかりません。手続きにかかる時間も数日程度で完了します。

事業再開がいつでもできる

廃業すると法人格は消滅するため、同じ会社名・法人番号で事業を再開することは不可能です。一方、休眠中であれば取締役会決議(または株主総会決議)と事業再開の届出だけで、元の法人格のまま事業を再開できます。

「今は厳しいが、数年後に市場環境が改善したら再開したい」「事業の引き受け手を探している」といった場合に、選択肢を残せるのが休眠の大きな利点です。

法人税・消費税の実質的な負担がなくなる

事業活動がなければ、課税売上も所得も発生しません。そのため、実質的に法人税と消費税の納税額はゼロになります。

ただし、申告義務は残ります。無申告が2年連続で続くと青色申告の承認が取り消されるため、収入ゼロでも毎年確定申告を行う必要があります(法人税法第127条参照)。

許認可・ライセンスを維持できる

建設業許可、古物商許可、宅建業免許、派遣業許可など、取得に時間と費用がかかる許認可を保有している場合、廃業すると原則として失効します。再開時に許認可を取り直す手間と費用を考えると、休眠中もライセンスを維持しておくことには経済的な合理性があります。

許認可は休眠中も更新義務が残る

許認可の種類によっては、有効期限内に更新申請が必要なものがあります。休眠中でも更新を怠ると許認可が失効するため、各許認可の有効期限を必ず確認してください。

M&Aの受け皿として活用できる

休眠会社は、M&Aや事業譲渡の文脈で活用される場合があります。許認可を保有している休眠会社は、その許認可ごと買収(株式譲渡)することで、買い手側が新たに許認可を取得する手間を省けるためです。

特に建設業許可や産廃処理業許可のように取得要件が厳しいものは、それ自体に価値がつくことがあります。

休眠会社のデメリットと注意点

法人住民税の均等割が毎年かかる

休眠中でも事業活動がゼロであっても、法人住民税の均等割は原則として課税されます。均等割は資本金の規模によって異なりますが、最低でも都道府県民税2万円+市区町村民税5万円の合計7万円程度が毎年の負担となります。

一部の自治体では、休業の届出をすることで均等割の減免申請ができる場合があります。制度の有無は各自治体の税務担当窓口に確認してください。

会社規模(資本金等)均等割の目安(年間)
1,000万円以下(従業員50人以下)約7万円
1,000万円以下(従業員50人超)約14万円
1,000万円超〜1億円以下(従業員50人以下)約18万円
1,000万円超〜1億円以下(従業員50人超)約29万円

※ 金額は都道府県民税と市区町村民税の合算目安。自治体によって異なります。

役員変更登記を怠ると過料が発生する

役員(取締役等)の任期は、会社が休眠中でも関係なく進行します。任期満了後に重任または後任の選任登記を怠った場合、会社法第976条に基づき役員個人に100万円以下の過料が課される可能性があります。

株式会社の取締役の任期は原則2年(非公開会社は最長10年)です。休眠期間が長くなるほど、登記懈怠のリスクが高まります。

みなし解散リスク(最後の登記から12年)

会社法第472条の規定により、法務局は最後の登記から12年を経過した株式会社に対して、「まだ事業を廃止していない」旨の届出を求める官報公告を行います。この公告後2か月以内に届出がなければ、その会社は解散したものとみなされます(みなし解散)。

みなし解散後の復活には時間制限がある

みなし解散後も、3年以内であれば株主総会の特別決議で会社を継続させることができます。しかし3年を超えると清算手続きを経て法人格は消滅します。長期休眠の場合は、登記状況を定期的に確認してください。

実際に起きるみなし解散の典型パターン

法務局が毎年10月頃に実施する「休眠会社の整理作業」で、官報公告と通知が行われます。この通知が旧住所や旧代表者宛に送られても、現実には届かないケースがあります。気づかないまま2か月が経過するとみなし解散が成立し、銀行口座の凍結や取引先からの信用喪失につながることがあります。

みなし解散後に会社を復活させるには、株主総会の特別決議による「継続の決議」と登記が必要です。費用と時間がかかるうえ、3年の期限を過ぎると復活自体ができなくなります。詳しい手続きはみなし解散からの復活手続きで解説しています。

みなし解散を避けるために必要な対応は次のとおりです。

  • 役員変更登記を任期ごとに確実に行う(これが最も確実な方法)
  • 法務局からの「事業廃止に関する届出」の通知を見落とさない
  • 毎年の確定申告と税務申告を継続する

確定申告義務が残り続ける

休眠中でも法人の確定申告義務はなくなりません。収入ゼロ・支出ゼロでも申告書を提出し続ける必要があります。税理士に依頼している場合は顧問料も継続してかかるため、「会社を維持するだけのコスト」が毎年生じます。

資産保有による固定資産税

休眠中も不動産や設備を会社名義で保有している場合、固定資産税は課税され続けます。使用していない不動産であっても同様です。保有資産がある場合は、休眠前に売却・処分するか、資産ごとの維持コストを試算しておきましょう。

許認可業種別の注意点

休眠する前に、保有する許認可の取り扱いを必ず確認してください。許認可の種類によって、休眠中の扱いが大きく異なります。

建設業許可(国土交通省・都道府県)

有効期限は5年で、期限前の更新申請が必要です。更新を怠ると失効し、再取得には改めて要件を満たす必要があります。また、専任技術者や経営業務管理責任者(経管)の常勤要件があるため、休眠中も名目上の人員配置を維持しているか確認が必要です。実態として要件を満たせない場合は、廃業届(建設業法第12条)を提出することになります。

項目内容
有効期限5年(期限前更新が必要)
休眠中の維持専任技術者・経管の要件を形式上維持できれば継続
失効後の再取得新規申請が必要(3〜6か月程度)
M&A活用許認可ごと株式譲渡で売却可能なケースあり

宅地建物取引業免許(都道府県・国土交通省)

有効期限は5年で、更新が必要です。宅建業法上、業務を行っていない状態が続く場合は廃業届の提出が求められることがあります。免許を維持するためには、専任の宅地建物取引士の配置も形式上必要となります。

古物商許可(都道府県公安委員会)

有効期限はなく、取得後は永続的に有効です。休眠中も許可は維持されます。ただし、代表者や営業所の変更があれば変更届が必要です。

労働者派遣業許可(厚生労働省)

有効期限は3年(更新後は5年)で、更新が必要です。許可要件として財産的基礎(基準資産2,000万円以上等)の維持が求められるため、休眠中は要件を満たすのが難しいケースがあります。

産業廃棄物処理業許可(都道府県)

有効期限は5年で、更新が必要です。取得要件が厳しく、許可ごとM&Aで活用される価値が高い許認可の一つです。休眠中でも更新を継続することで資産として保持できます。

許認可の廃業届は任意のケースが多い

許認可によっては、事業を実際に行っていなくても届出の義務がないものがあります。廃業届の提出が必要かどうかは、管轄の役所に個別確認してください。届出なく放置すると、後の更新申請や変更手続きでトラブルが生じることがあります。

休眠 vs 廃業:10年間のコスト試算

休眠か廃業かの判断で見落とされがちなのが、長期にわたる維持コストの累積です。以下は、一般的な中小企業(資本金1,000万円以下・従業員50人以下)を想定した10年間の試算です。

休眠を選んだ場合の10年コスト

コスト項目年間費用10年合計
法人住民税(均等割)約7万円約70万円
確定申告費用(税理士)3〜8万円30〜80万円
役員変更登記費用1〜3万円(2〜3回)2〜9万円
合計(目安)11〜18万円102〜159万円

※ 不動産等の固定資産を保有する場合は固定資産税が別途発生します。

廃業(解散・清算)を選んだ場合の費用

コスト項目金額の目安
解散登記(登録免許税)3万円
清算結了登記(登録免許税)2,000円
官報公告費用3〜4万円
税理士・司法書士費用20〜50万円
合計(目安)26〜57万円(1回限り)

廃業は初期費用がかかりますが、その後のランニングコストはゼロです。10年間で比較すると、再開の見込みがない場合は廃業のほうが総コストを大幅に抑えられます。

コスト試算からわかること

均等割と申告費用だけで10年間に100万円超の費用が発生します。「いつか使うかもしれない」という理由だけで休眠を継続するのは、財務的に合理的とは言えません。再開の可能性が具体的に見えている場合や許認可に価値がある場合に限り、休眠を選ぶ判断が成り立ちます。

休眠の手続きの流れ

休眠状態にするための手順は以下のとおりです。

1

株主総会(または取締役会)で休業の決議

休業する旨を決議します。定款に特段の定めがない場合、取締役会設置会社は取締役会決議で足ります。

2

従業員・取引先への通知と対応

雇用保険・社会保険の脱退手続き、取引先への連絡、契約の整理を行います。

3

税務署へ異動届出書を提出

「異動届出書」に「休業」と記入して提出します。都道府県税事務所・市区町村にも同様に届出が必要です。

4

許認可の更新状況を確認

保有する許認可の有効期限を確認し、更新が必要なものについてはスケジュールを管理します。

5

毎年の確定申告を継続

収入ゼロでも申告義務は継続します。役員変更登記のタイミングも管理してください。

法人設立登記の変更は不要

休眠にあたって法務局への登記は不要です。ただし「休眠」という登記手続きは存在しないため、法務局の登記簿上は変化がありません。

休眠と廃業、どちらを選ぶか

休眠が向いているケースと廃業が向いているケースを整理します。

休眠が合理的なケース

事業再開の可能性が具体的にある場合は、休眠を選ぶ理由があります。市場環境の回復待ち、体調回復後の再起、後継者や買収先の探索中といった状況です。

また、取得に時間とコストがかかった許認可(建設業許可・産廃処理業許可等)を保有している場合も、失効させるより維持する選択が合理的です。

さらに、M&Aの相手を探している段階であれば、法人格と許認可を保ったまま交渉できる休眠状態のほうが、売り手として有利な場合があります。

廃業(解散・清算)が合理的なケース

事業再開の見込みがなく、維持コストを長期にわたり負担するだけの状況であれば、廃業で法人格を消滅させるほうがすっきりします。

上記のコスト試算からもわかるとおり、10年間で100万円超の維持費が積み重なります。将来の可能性が見えない中でこのコストを払い続けるのは合理的ではありません。

廃業手続きの詳細については廃業か事業再生か、判断基準の考え方もあわせてご参照ください。

状況推奨
数年以内に再開の可能性がある休眠
許認可を維持したい休眠
M&Aの相手を探している休眠
再開の見込みが全くない廃業
維持コストを払い続けたくない廃業
債務超過で清算できない事業再生・特別清算・破産

債務超過の状態で会社を整理する場合は、通常の清算ではなく特別清算や破産といった手続きが必要です。会社清算の手続きと注意点で詳しく解説しています。

3つの質問で判断する簡易フローチャート

休眠か廃業かの判断に迷う場合は、以下の3つの質問に順に答えてみてください。

質問1「3年以内に具体的な事業再開の計画または見込みがあるか」——「ある」なら休眠が妥当です。「ない」場合は質問2へ進みます。

質問2「維持したい許認可(建設業許可・宅建業免許・産廃処理許可等)を保有しているか」——「ある」なら、許認可の残存有効期限とM&Aでの売却可能性を確認したうえで休眠が検討に値します。「ない」場合は質問3へ進みます。

質問3「毎年11万円〜18万円(均等割+申告費用)の維持コストを、見込みのないまま負担し続ける意思と財力があるか」——「ある」場合でも合理性は低く、廃業が合理的です。「ない」なら廃業が合理的です。

「とりあえず休眠にしておこう」という判断は、3年・5年後に振り返ると数十万円の維持費を失っていた、という結果に終わることが珍しくありません。判断を先延ばしにすること自体にコストがかかる点を認識したうえで、意思決定してください。

事業の立て直しを検討している場合は、廃業か事業再生か、判断基準の考え方や、[経営改善計画の策定方法](/jigyou-saisei/keiei-kaizen-keikaku-sakusei/)もあわせて参照してください。

まとめ

休眠会社のポイント

  • 休眠は廃業よりも手続きコストが低く、事業再開や許認可維持の選択肢を残せる — ただし均等割(年7万円以上)や申告義務・役員登記義務は消えない
  • 10年間の維持コストは100万円超になることも多く、再開の見込みがない場合は廃業のほうが総コストを大幅に抑えられる
  • 建設業・宅建業・派遣業など許認可業種は、休眠中も更新義務や人員要件が残るため、取り扱いを事前に確認する
  • 最後の登記から12年を経過すると法務局によるみなし解散のリスクがある — 役員変更登記を定期的に行うことが最大の対策
  • 「再開の見込みがない」「維持コストを払い続けられない」という場合は廃業のほうが合理的 — 休眠は「暫定的な待機状態」として活用するのが本来の使い方

休眠か廃業かの判断に迷う場合は、まず現状の維持コストと事業再開の現実的な可能性を試算してみることが重要です。専門家への相談を通じて、客観的な判断基準を得ることも有効です。

財務整理や法人の存続・廃業についてご相談がある場合は、無料相談からご連絡ください。

よくある質問

Q. 休眠会社にしても均等割の税金はかかりますか?
A. はい、事業活動がなくても法人住民税の均等割(年間最低7万円程度)は原則かかります。ただし一部自治体では申請により減免制度がある場合があります。
Q. 休眠中に役員の任期が切れたらどうなりますか?
A. 役員の任期は休眠とは関係なく進行します。任期満了後に重任登記を怠ると過料(最大100万円)が課される場合があります。最長10年に1度は登記が必要です。
Q. 休眠会社が12年間登記しないとどうなりますか?
A. 会社法第472条の規定により、法務局から官報公告が行われ、2か月以内に届出がなければ「みなし解散」となります。みなし解散後も3年以内は継続の決議で復活できますが、3年を超えると清算結了が必要です。
Q. 休眠と廃業、どちらを選ぶべきですか?
A. 「数年以内に事業再開の可能性がある」「許認可を維持したい」「M&Aの相手を探している」といった場合は休眠が有効です。再開の見込みがなく、維持コストを抑えたい場合は廃業(解散・清算)を選ぶほうが合理的です。
Q. 休眠中でも確定申告は必要ですか?
A. 必要です。収入がゼロでも法人税の確定申告義務は残ります。無申告が2年連続で続くと青色申告の承認が取り消されるため、休眠中も毎年申告を行ってください。
Q. 建設業許可は休眠中も維持できますか?
A. 建設業許可は休眠中も有効期間(5年)内であれば維持されますが、更新申請を怠ると失効します。また、専任技術者や常勤役員等の要件は休眠中も形式上満たしている必要があります。実態として要件を満たせない場合は廃業届を提出する必要があります。

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