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会社清算の手続きと流れ|解散から清算結了まで

株式会社の清算手続きを解散決議から清算結了登記まで時系列で解説。会社法に基づく手続き、債務超過時の対応、税務処理をまとめました。費用相場と所要期間の目安も掲載しています。

後継者がいない、事業の将来性が見えない、健康上の理由で経営を続けられない。理由はさまざまですが、会社を閉じる決断をした後に待っているのが「清算手続き」です。

会社の清算は、株主総会での解散決議に始まり、資産の換価、債務の弁済、残余財産の分配、清算結了の登記まで、会社法471条〜509条に定められた一連の手続きを踏む必要があります。手続きを誤ると、清算結了後に問題が発覚するリスクもあります。

本記事では、株式会社の通常清算を前提に、解散から清算結了までの流れと税務処理を時系列で解説します。

会社清算とは

清算の法的位置づけ

会社清算とは、会社の法人格を消滅させるために、現在の事業を終了し、資産の換価・債務の弁済・残余財産の分配を行う手続きです。会社法上、解散した会社は「清算の目的の範囲内」でのみ存続します(会社法476条)。

清算には「通常清算」と「特別清算」の2種類があります。

種類根拠条文適用場面
通常清算会社法475条〜509条資産で全債務を弁済できる場合
特別清算会社法510条〜574条債務超過の疑いがある場合、清算の遂行に著しい支障がある場合

本記事では通常清算を中心に解説します。

解散事由

会社法471条では、次の解散事由が定められています。

  1. 定款で定めた存続期間の満了
  2. 定款で定めた解散事由の発生
  3. 株主総会の特別決議(最も一般的)
  4. 合併(吸収合併の消滅会社)
  5. 破産手続開始の決定
  6. 裁判所の解散命令・解散判決

中小企業の自主的な廃業では、3番の株主総会決議が大半を占めます。特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が必要です(会社法309条2項11号)。

解散決議から清算結了までの流れ

全体のタイムライン

段階手続き期限・目安
1株主総会で解散決議・清算人選任解散日を決定
2解散登記・清算人選任登記解散日から2週間以内
3届出(税務署・都道府県・市区町村)解散日から速やかに
4財産目録・貸借対照表の作成解散後遅滞なく
5官報公告・債権者への個別催告2か月以上の期間
6資産の換価・債務の弁済公告期間中〜終了後
7残余財産の確定・分配全債務弁済後
8清算事業年度の確定申告各期末から2か月以内
9決算報告書の作成・株主総会承認残余財産確定後
10清算結了登記承認後2週間以内

解散決議と清算人の選任

株主総会で解散の特別決議を行います。同時に清算人を選任します。清算人は、定款に定めがなければ取締役が就任するのが一般的です(会社法478条1項1号)。

清算人は代表取締役に代わって会社の代表者となり、現務の結了(進行中の取引の完結)、債権の取立て及び債務の弁済、残余財産の分配を行います。

解散登記と届出

解散日から2週間以内に、法務局で解散の登記(登録免許税: 3万円)と清算人の選任登記(登録免許税: 9,000円)を申請します(会社法926条)。

登記と並行して、各関係機関への届出も行います。

届出先届出書類期限
税務署異動届出書(解散の届出)速やかに
都道府県税事務所法人異動届出書各自治体の定め
市区町村法人異動届出書各自治体の定め
年金事務所全喪届(従業員がいる場合)事由発生から5日以内
ハローワーク雇用保険適用事業所廃止届廃止日の翌日から10日以内

債権者保護手続き

清算人は、解散後遅滞なく債権者保護手続きを行います(会社法499条)。具体的には、官報に解散公告を掲載して債権者に対し2か月以上の期間を定めて債権の申出を求めるとともに、知れている債権者(会社が把握している債権者)に対しては個別に書面で通知します。

官報公告の2か月間は短縮できない

債権者保護手続きとして、官報に解散公告を掲載し、2か月以上の期間を定めて債権の申出を求める必要があります(会社法499条)。この期間は法律上短縮できず、清算手続きが最短でも約2か月半を要する理由です。

この2か月の公告期間は短縮できません。清算手続きが最短でも約2か月半を要する理由です。

公告期間内に申出のなかった債権者は清算から除斥されますが、知れている債権者(会社が認識している債権者)は除斥されません(会社法503条)。個別催告を怠ると、清算結了後に債権者から請求を受けるリスクがあります。

資産の換価と債務の弁済

公告期間中および期間終了後に、資産の換価と債務の弁済を進めます。

資産の換価としては、不動産・車両・設備などの売却、売掛金・貸付金の回収、保険の解約返戻金の回収、預金口座の整理があります。

債務の弁済としては、借入金の返済、買掛金・未払金の支払い、未払税金の納付、リース契約の解約精算などを行います。

弁済は公告期間が経過するまでは行えないのが原則ですが(会社法500条1項)、裁判所の許可を得て早期に弁済することも可能です(同条2項)。

債務超過の場合の対応

通常清算ができないケース

清算の過程で債務超過が判明した場合、清算人は通常清算を続けることができません。清算人は裁判所に特別清算の申立て(会社法511条)または破産手続開始の申立て(破産法16条)を行う必要があります。

実務上、債務超過が軽微で債権者との協議が可能であれば特別清算、債務超過が大きく協議が困難であれば破産手続が選択されるケースが多いです。清算の前に廃業と事業再生のどちらが適切かの判断基準も確認しておくことが重要です。

特別清算の概要

特別清算は裁判所の監督のもとで行われる清算手続きで、通常清算と比べて次のような違いがあります。

  • 裁判所が手続きを監督する
  • 協定型(債権者集会での協定)と和解型(個別の和解)がある
  • 協定型では債権者の3分の2以上かつ債権額の3分の2以上の同意が必要(会社法567条)
  • 破産と比較して手続きが簡易で費用も抑えられる

解散前に債務超過が判明している場合

解散前の段階で債務超過が明らかな場合は、通常清算ではなく、最初から特別清算または破産手続を前提に計画を立てる必要があります。税理士・弁護士と事前に協議し、どの手続きが適切かを判断しましょう。

債務超過の会社は通常清算ができない

通常清算は会社の資産で全ての債務を弁済できることが前提です。清算の過程で債務超過が判明した場合、清算人は裁判所に特別清算の申立て(会社法511条)または破産手続開始の申立て(破産法16条)を行う必要があります。

清算に伴う税務処理

清算事業年度の区分

解散すると、事業年度の区分が通常と異なります。

  • 解散事業年度: 事業年度開始日〜解散日
  • 清算事業年度: 解散日の翌日から1年ごとに区分(法人税法14条1号)
  • 最終清算事業年度: 残余財産確定日を含む事業年度

それぞれの事業年度について法人税の確定申告が必要です。

解散事業年度の申告

解散事業年度の確定申告期限は、解散日の翌日から2か月以内です(法人税法74条1項)。通常の決算申告と同じ手続きで行いますが、解散日までの損益を計算する点、固定資産の減価償却は月割計算となる点、引当金の計上は解散日時点の残高で行う点に注意が必要です。

清算中の法人税

清算事業年度の法人税は、従来の「清算所得課税」が廃止され、通常の各事業年度の所得に対する法人税として課税されます(2010年度税制改正)。

清算事業年度中に資産の売却益や債務免除益が発生した場合は、その事業年度の益金に算入されます。繰越欠損金がある場合は、全額を控除できます(法人税法57条11項。中小法人等は控除限度なし)。

残余財産の分配と税務

全ての債務を弁済した後に残った財産(残余財産)は、株主に分配されます。分配額のうち、会社の資本金等の額に対応する部分は「資本の払戻し」、それを超える部分はみなし配当として課税されます(法人税法24条1項4号、所得税法25条1項4号)。

株主が個人の場合、みなし配当は配当所得として総合課税の対象です。株主が法人の場合は受取配当等の益金不算入(法人税法23条)の適用を受けられる場合があります。

残余財産規模ごとのみなし配当額・株主の手取り早見表は会社清算の税金と残余財産分配で個別ケース別に整理しています。

清算結了後の届出

清算結了登記の後、税務署に異動届出書(清算結了の届出)と清算確定申告書を提出し、都道府県税事務所・市区町村には法人異動届出書を提出します。清算結了登記に必要な書類と申請期限の詳細は清算結了登記の必要書類と手続きを参照してください。

なお、清算結了登記が完了しても、税務申告義務は残余財産確定日を含む事業年度の申告が完了するまで継続します。登記と申告の順序を間違えないよう注意してください。廃業手続きの全体像もあわせて参照してください。

繰越欠損金は清算事業年度で全額控除できる

清算事業年度中に資産の売却益や債務免除益が発生した場合でも、繰越欠損金があれば全額を控除できます(法人税法57条11項。中小法人等は控除限度なし)。欠損金の残高を事前に確認しておきましょう。

まとめ

この記事の要点

  • 会社清算は最短でも2か月半、実務上は3〜6か月程度を要する。官報公告による債権者保護手続き(2か月以上)は省略できない
  • 債務超過の場合は通常清算ができず、特別清算または破産手続きへの移行が必要。解散前の段階で財務状態を正確に把握しておくことが重要
  • 清算事業年度ごとに法人税の確定申告が必要であり、残余財産の分配ではみなし配当の課税にも注意が必要

清算を検討する段階で税理士・司法書士に相談し、スケジュールと費用の見通しを立てたうえで進めることが重要です。

会社清算の手続きについて確認事項がある場合は、無料相談窓口からご相談ください。

よくある質問

Q. 会社の清算にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 最短でも約2か月半です。解散後に行う債権者保護手続き(官報公告)に2か月以上の期間が必要なためです(会社法499条1項)。実務上は、残余財産の処分や税務申告の準備も含めると、3〜6か月程度かかるケースが多いです。
Q. 債務超過の会社は通常清算できますか?
A. 通常清算は、会社の資産で全ての債務を弁済できることが前提です。債務超過の場合は通常清算ができず、裁判所の監督のもとで行う「特別清算」(会社法510条以下)または「破産手続」(破産法)が必要になります。
Q. 清算結了までに必要な登記は何ですか?
A. 主に2回の登記が必要です。1回目は解散登記(会社法926条)で、解散決議後2週間以内に行います。2回目は清算結了登記で、残余財産の分配が完了した後に行います。それぞれ登録免許税として解散登記3万円、清算結了登記2,000円がかかります。
Q. 清算中の法人税申告はどうなりますか?
A. 解散日の翌日から1年ごとに清算事業年度が区切られ、各事業年度ごとに確定申告が必要です(法人税法14条1号)。残余財産が確定した事業年度の申告は、残余財産確定日の翌日から1か月以内に行います(法人税法74条2項)。

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