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民事再生手続きの流れ|申立てから認可まで

民事再生手続きの流れを申立てから再生計画の認可まで時系列で解説。手続きの要件、費用、スケジュール、経営者が押さえるべき実務上のポイントを中小企業向けに整理します。

資金繰りが行き詰まり、このままでは事業の継続が困難になる。しかし事業自体には将来性があり、清算するのはもったいない。そのような状況で検討すべき選択肢が民事再生手続きです。民事再生法に基づくこの手続きは、裁判所の監督のもとで債務を大幅に圧縮し、事業を継続しながら再建を図る法的手続きです。中小企業でも利用可能であり、経営者が引き続き経営にあたれる点が破産との大きな違いです。本記事では、民事再生手続きの全体像を申立てから認可まで時系列で解説します。

民事再生手続きの概要と利用要件

民事再生法第21条は、債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき、または債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときに、民事再生手続きの申立てができると定めています。

早期の申立てが再建成功率を高める

民事再生は完全に支払不能に陥る前の段階でも申立てが可能です。手元資金が完全に枯渇してからでは手続き費用を捻出できず、事業継続自体が困難になります。

ここで重要なのは、完全に支払不能に陥る前の段階でも申立てが可能だという点です。資金繰りの逼迫が近い将来見込まれる段階で早めに申し立てることが、再建の成功率を高めます。手元資金が完全に枯渇してからでは、手続き費用を捻出できず、事業の継続自体が困難になります。

民事再生手続きの大きな特徴は、DIP(Debtor In Possession)型の手続きであることです。原則として、従来の経営者がそのまま経営権を維持し、再生債務者として事業を運営します。ただし、裁判所が選任する監督委員(通常は弁護士)の監督のもとで、一定の行為については監督委員の同意が必要になります。

民事再生を選択すべきケース

民事再生手続きが適しているのは、事業そのものに収益力があり、債務の圧縮により経営が成り立つ見込みがあるケースです。逆に、事業の収益力自体が低く、債務を圧縮しても事業継続が困難な場合は、破産や会社清算を検討すべきです。廃業と事業再生の判断基準も参考にしてください。

また、民事再生では担保権は別除権として扱われ、再生手続きの拘束を受けません(民事再生法第53条)。つまり、銀行が不動産に抵当権を設定している場合、その不動産に対する担保権の実行は原則として止められません。事業に不可欠な資産に担保が設定されている場合は、担保権者との個別交渉(担保権消滅請求制度の活用を含む)が必要になります。

申立てから再生計画認可までの流れ

民事再生手続きは、大きく分けて5つのステップで進行します。

第一段階は申立ての準備です。弁護士に依頼し、財務状況の精査、事業の収益見通しの作成、再生計画の骨子の検討を行います。この準備段階で2週間から1カ月程度を要するのが一般的です。申立て前に手元資金(運転資金と手続き費用)を確保しておくことが極めて重要です。

第二段階は申立てと保全処分です。裁判所に再生手続開始の申立てを行うと同時に、弁済禁止の保全処分(民事再生法第30条)を申し立てます。これにより、既存の債務の弁済が原則として停止されます。裁判所は通常、申立て当日または翌日に保全処分を発令します。

第三段階は手続き開始決定と債権届出です。申立てから1週間程度で裁判所が再生手続開始決定を行い、債権届出期間と認否書の提出期限が設定されます。債権者は届出期間内に債権の届出を行い、再生債務者はその内容を認否します。

第四段階は再生計画案の作成と提出です。財産評定(資産負債の時価評価)を行い、清算価値保障原則(再生計画による弁済額が破産した場合の配当額を下回ってはならない)を満たす再生計画案を作成します。中小企業の場合、債務の70%から90%をカットし、残額を5年から10年で分割弁済する計画が多く見られます。

第五段階は債権者集会での決議と裁判所の認可です。再生計画案は、届出再生債権者の頭数の過半数かつ届出再生債権の総額の2分の1以上の同意により可決されます(民事再生法第172条の3)。可決された計画を裁判所が認可すると、再生計画が確定し、計画に基づく弁済が始まります。

スケジュールの目安

申立てから再生計画認可までの標準的なスケジュールは6カ月から10カ月です。具体的には、申立てから開始決定まで1週間から2週間、債権届出期間が約2カ月、財産評定と計画案作成に2カ月から3カ月、債権者集会まで1カ月から2カ月というのが一般的な流れです。

申立て前後の実務上のポイント

民事再生の成否を分ける最大のポイントは、申立て直後の事業継続の確保です。弁済禁止の保全処分が出ると、仕入先への支払いが止まるため、取引先が商品の出荷を停止する可能性があります。このため、申立て当日または翌日に主要取引先を訪問し、事業継続の方針と今後の取引条件(申立て後の取引は現金払い等)を説明して理解を得ることが不可欠です。

従業員への説明も迅速に行う必要があります。申立ての事実は速やかに報道されるため、従業員が不安に感じて離職する事態を防がなければなりません。賃金は共益債権として優先的に支払われること、雇用を維持する方針であることを明確に伝えてください。

また、申立て後は裁判所が選任する監督委員のもとで経営を行うことになります。一定額以上の支出、資産の処分、新たな借入れなどには監督委員の同意が必要です。監督委員との信頼関係を構築し、迅速な意思決定ができる体制を整えることが、手続き期間中の事業運営の鍵となります。

スポンサー型再生の活用

中小企業の民事再生では、自力での再建が困難な場合にスポンサー企業の支援を受ける「スポンサー型再生」が有効です。スポンサー企業が資金を提供し、その資金で再生計画に基づく弁済を行う方式です。

スポンサー型の場合、申立て前からスポンサー候補との交渉を進めておくのが理想的です。スポンサーが確定していることで債権者の賛同を得やすくなり、再生計画の認可に向けた手続きがスムーズに進みます。スポンサーの選定にあたっては、M&Aアドバイザリーや事業再生の専門家の支援を受けることが一般的です。

まとめ

この記事のポイント

  • 民事再生は支払不能に陥る前の早期申立てが再建成功の鍵で、予納金と弁護士費用として1,000〜2,000万円程度の確保が必要
  • 申立てから再生計画認可まで6〜10か月で進行し、届出債権者の頭数過半数かつ債権額2分の1以上の同意が必要
  • 申立て直後の取引先・従業員への迅速な説明が成否を分け、自力再建困難な場合はスポンサー型再生も有効

民事再生や事業再生の手続きについて確認事項がある場合は、無料相談窓口からご相談ください。

よくある質問

Q. 民事再生と破産の違いは何ですか?
A. 破産は事業を清算して法人を消滅させる手続きですが、民事再生は事業を継続しながら債務を圧縮して再建を目指す手続きです。民事再生では原則として経営者が引き続き経営にあたることができます。
Q. 民事再生の申立てにかかる費用はどのくらいですか?
A. 裁判所への予納金は負債総額に応じて200万円から1,000万円程度、弁護士費用は500万円から1,500万円程度が目安です。中小企業の場合、合計で1,000万円から2,000万円程度の手元資金が必要になります。
Q. 民事再生を申し立てると取引先に知られますか?
A. 裁判所への申立て後、保全処分や弁済禁止の通知が債権者に送付されるため、取引先に知られることは避けられません。申立て直後に主要取引先への説明を迅速に行い、取引継続の了解を得ることが実務上非常に重要です。
Q. 民事再生手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 申立てから再生計画認可まで通常6カ月から10カ月程度です。その後、再生計画に基づく弁済を10年程度かけて行うのが一般的です。手続き中も事業は継続できます。

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