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未収金の時効は何年?時効管理と回収を止めないための実務対応

未収金の消滅時効(民法166条・商法522条改正後の統一ルール)と時効の完成猶予・更新の方法を解説。督促・内容証明・訴訟など、中小企業が実務で使える時効管理の具体策をまとめました。

「そういえば、あの未収金はいつから放置していたか」――帳簿をめくって青ざめた経験のある経理担当者は少なくないでしょう。未収金には法律で定められた消滅時効があり、一定期間を過ぎると債務者から「もう払わなくていいはずだ」と主張される可能性があります。

本記事では、2020年の民法改正で変わった時効ルールの要点を整理したうえで、時効を止めるための具体的な手段と、日常業務に組み込める時効管理の方法を紹介します。回収をあきらめる前に、まずは時効のルールを正しく理解しておくことが重要です。

未収金の消滅時効とは

消滅時効とは、一定期間にわたり権利が行使されない場合に、その権利を消滅させる法律上の制度です。未収金のような金銭債権にも消滅時効は適用されます。

ただし、時効が完成しただけでは債権は消滅しません。債務者が「時効の援用」、つまり時効を主張する意思表示をして初めて、法的に債権が消滅します(民法第145条)。この点は実務上も重要なポイントです。

2020年民法改正で何が変わったか

改正民法で時効ルールが一本化された

改正前はバラバラだった時効期間(商事債権5年、民事債権10年、飲食店のツケ1年、医師の診療報酬3年など)が統一されました。改正後は、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方で時効が完成します(民法第166条第1項)。

中小企業の取引で発生する売掛金や未収金の多くは、請求書を発行した時点で「権利を行使できることを知っている」状態にあたります。そのため、実務上は支払期日から5年が時効完成の目安になると考えてよいでしょう。

起算点の考え方(主観的起算点と客観的起算点)

時効の起算点は、時効がいつからカウントされるかを決める重要な概念です。

主観的起算点(5年)は、債権者が「権利を行使できること」を知った時点です。通常の商取引では、請求書を送付した日や契約で定めた支払期日がこれにあたります。

客観的起算点(10年)は、債権者の認識にかかわらず、法律上「権利を行使できる状態」になった時点です。たとえば、相続によって債権を取得したが相続人がその存在を知らなかった場合などに意味を持ちます。

実務での注意点として、分割払いの場合は各回の支払期日ごとに時効が進行するという点があります。月額10万円の12回払いであれば、第1回目と第12回目では時効の完成時期が最大11ヶ月ずれることになります。家賃保証会社の代位弁済後の求償債権タクシー会社のチケット払い未収金のように、月次で大量に発生する少額債権は、個別の起算日管理が煩雑になりやすいため注意が必要です。

起算点の種類時効期間起算の基準具体例
主観的起算点5年権利行使できると知った時支払期日、請求書送付日
客観的起算点10年権利行使できる状態になった時債権発生日(知不知を問わない)

時効の完成猶予と更新の違い

2020年の民法改正では、従来の「時効の中断」「時効の停止」という概念が、「時効の更新」と「時効の完成猶予」に再編されました。債権回収の実務では、この2つの違いを正しく理解しておく必要があります。

完成猶予は時効のカウントダウンを一時停止する

完成猶予とは、一定の事由が生じた場合に、時効の完成を一定期間だけ先延ばしにする仕組みです。時効期間そのものがリセットされるわけではなく、あくまで「完成が遅れる」効果にとどまります。

たとえば、内容証明郵便による催告を行った場合、時効の完成が6ヶ月間猶予されます(民法第150条第1項)。

催告の繰り返しでは時効を止められない

催告による完成猶予は繰り返しても効果がありません(民法第150条第2項)。催告の6ヶ月間の猶予中に再び催告を行っても、追加の猶予は得られません。催告はあくまで「訴訟などの準備期間を確保する手段」であり、催告だけで時効を永遠に引き延ばすことはできません。

更新は時効期間をリセットする

時効の更新とは、一定の事由が生じた場合に、それまで進行していた時効期間がゼロにリセットされ、新たに進行を開始する仕組みです。完成猶予よりも強い効果を持ちます。

代表的な更新事由としては、確定判決等による権利の確定(民法第169条第1項)があり、その時点から新たに10年の時効が進行します。強制執行の終了(民法第169条第2項)も更新事由にあたります。

なかでも実務上きわめて使いやすいのが、権利の承認(民法第152条第1項)です。債務者が債務の存在を認める行為をした場合に時効がリセットされます。「支払います」と書面で認めたり、一部弁済(たとえ1,000円でも)を行ったりするだけで更新の効果が生じるため、訴訟に比べてコストも手間もかかりません。

主な猶予・更新事由の一覧

事由効果根拠条文備考
裁判上の請求(訴訟提起)猶予→判決確定で更新民法第147条判決確定時から10年の新時効が進行
支払督促猶予→確定で更新民法第147条異議が出ると通常訴訟に移行
催告(内容証明郵便等)6ヶ月の猶予民法第150条再度の催告では猶予されない
権利の承認(債務承認)更新民法第152条一部弁済・支払猶予の申入れも含む
協議を行う旨の合意最長1年の猶予民法第151条書面または電磁的記録が必要
強制執行・担保権実行猶予→終了で更新民法第148条取下げの場合は猶予のみ

実務で使える時効管理の方法

ここからは、中小企業の経理担当者が日常業務のなかで実践できる時効管理の具体策を紹介します。重要なのは、「時効が完成する前に手を打つ」という意識を組織的に持つことです。

内容証明郵便による催告

時効の完成が迫っている場合に、もっとも手軽に使えるのが内容証明郵便による催告です。送付するだけで6ヶ月間の完成猶予を得られるため、訴訟の準備時間を確保する「応急処置」として有効に機能します。

送付先は債務者の登記上の本店所在地とし、記載内容には債権の内容(発生日・金額・取引の根拠)と支払いを求める旨・期限を明記します。内容証明郵便の書き方については内容証明郵便による債権回収の実務も参考にしてください。電子内容証明(e内容証明)を利用すればオンラインで送付も可能です。

催告だけでは時効は更新されない

催告で得られるのは6ヶ月間の完成猶予のみです。猶予期間中に訴訟提起や債務承認の取得など、次のアクションに移ることが前提となります。猶予期間を過ぎても何もしなければ、時効はそのまま完成してしまいます。

債務承認書の取得

費用をかけずに時効を更新する方法

債務承認書の取得は、訴訟を起こさずに時効をリセットできる低コストな手段です。延滞が始まった初期段階で取得しておくのがベストタイミングです。債務承認書には、債務者の氏名・住所、債権の発生原因と金額、支払方法・支払期限、署名・押印・日付を記載します。

一部弁済も権利の承認にあたります。債務者に対して「全額は無理でも、まず一部だけでも支払ってほしい」と交渉し、少額でも入金を受けることで時効は更新されます。ただし、振込の場合は振込名義と債権との対応関係を記録しておくことが重要です。

支払督促・少額訴訟の活用

債務者が任意に支払わず、債務承認書への署名にも応じない場合は、裁判所を通じた法的手続きを検討します。

支払督促は、簡易裁判所に申し立てる手続きで、書類審査のみで発付されます。申立手数料は訴訟の半額で済み、裁判所に出頭する必要もないためコスト面で優れています。具体的な手続きの流れは裁判所を使った未収金回収の手続きで詳しく解説しています。

少額訴訟は、60万円以下の金銭請求に利用できる簡易な訴訟手続きです(民事訴訟法第368条)。原則として1回の期日で審理が終わるため、少額の未収金には向いている手段です。

時効管理台帳の運用

時効管理で最も重要なのは、「いつどの債権の時効が完成するか」を一覧で把握できる仕組みを持つことです。Excelやスプレッドシートで「時効管理台帳」を作成し、月次で確認する運用を検討してください。

項目内容
債務者名取引先の名称
債権発生日取引日または請求書発行日
支払期日契約上の支払期限
債権額元本金額
時効起算日支払期日の翌日
時効完成予定日起算日から5年後の日付
直近の猶予・更新事由催告、一部弁済、債務承認等
事由の実施日上記事由を行った年月日
次回アクション期限次に何をいつまでに行うか

この台帳を月初に確認し、「時効完成まで1年を切った債権」「6ヶ月を切った債権」をリストアップします。完成が近い債権から優先的にアクションを起こす体制を整えましょう。

時効が完成した債権の会計処理

貸倒損失として計上する場合の要件

時効が完成した債権は、回収の見込みがないものとして貸倒損失に計上する余地があります。税務上は損金算入の要件が厳格に定められており、安易に貸倒処理を行うと税務調査で否認されるリスクがあります。

時効完成の場合は、主に「事実上の貸倒れ」(法人税基本通達9-6-2)に該当するかどうかが論点になります。時効完成の事実だけでなく、債務者の支払い能力がないこと、回収努力を尽くしたことを示す記録を残しておくことが税務調査への備えとなります。

具体的な会計処理の手順は別記事で詳しく解説しています。

債権放棄通知の送付

貸倒損失を計上する際に実務上よく使われるのが、債権放棄通知書の送付です。内容証明郵便で「本債権を放棄します」と通知することで、債権の消滅を確定させます。税務調査では、貸倒損失の計上について「回収の可能性が本当にゼロだったのか」が問われるため、債権放棄通知の控えが有力な証拠書類になります。

債権放棄には税務上の副作用がある

債権を放棄すると債務者側に「債務免除益」が発生し、法人であれば課税対象になります。グループ会社間の取引など関係性がある場合は寄附金認定されるリスクもあるため、税理士への事前相談を推奨します。

税務申告での注意点

貸倒損失は、回収不能が確定した事業年度に計上するのが原則です。過去の事業年度に遡って計上することは原則として認められません。

消費税の貸倒れ控除も忘れずに

貸倒れが確定した場合、課税売上に係る消費税額について貸倒れに係る消費税の控除が適用されます(消費税法第39条)。売上計上時に預かった消費税を取り戻せる制度であり、適用漏れのないようにしましょう。

時効を意識した債権回収のスケジュール

発生から6ヶ月以内にやるべきこと

1

支払期日の翌日から1週間以内

電話またはメールで支払状況を確認。単なる事務処理の遅れや振込先の間違いのケースもある

2

1ヶ月経過で書面督促に切替え

分割払いの合意と債務承認書の取得を同時に検討する

3

3ヶ月経過で内容証明郵便を送付

支払期限を明記し、期限までに支払いがなければ法的手続きに移行する旨を記載する

1年以上延滞した場合の対応

1年以上の延滞は、自社の督促だけでは回収が難しい段階に入っていることを示しています。

1

債務者の現況を確認する

法人であれば登記簿謄本を取得し、本店移転や役員変更の有無を確認する

2

事業継続中の場合は法的手続きを検討

支払い能力がある場合は支払督促の申立てを検討する

3

事業停止の場合はコスト比較

回収コストと回収見込みを冷静に比較し、回収を続けるか損切りするかを判断する

3年から5年目の判断ポイント

時効完成が近づく3年目以降は、最終的な方針を決める時期です。

回収を続ける場合は、時効の完成猶予・更新の措置を確実に講じます。訴訟で確定判決を得れば、判決確定時から新たに10年の時効が進行するため、時間的な余裕が生まれます。

回収を断念する場合は、債権放棄通知書を内容証明郵便で送付し、貸倒損失として計上する手続きに入ります。

時効完成の6ヶ月前がタイムリミット

いずれの場合も、時効完成日の少なくとも6ヶ月前には方針を固めておく必要があります。6ヶ月を切ってからでは、催告による猶予を得ても十分な対応時間が確保できません。

回収の見込みが低い未収金については、サービサーへのバルク売却という方法もあります。とくにMVNO事業者の通信料滞納債権新電力の料金未収金のように、少額債権が数百件単位で滞留しているケースでは、個別の時効管理よりもバルク売却で一括処理する方が効率的です。

よくある質問

未収金の時効は何年ですか?

2020年4月の改正民法施行後は、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方です(民法第166条第1項)。改正前の商事債権の5年時効(旧商法522条)は廃止され、統一されました。

時効を止める方法はありますか?

あります。裁判上の請求(訴訟提起)で時効が更新されます。また、催告(内容証明郵便による督促)で6ヶ月間の完成猶予が得られます。債務者による一部弁済や債務承認書への署名も時効更新事由です。

時効が完成した未収金はどう処理しますか?

時効が完成しても、債務者が時効の援用(主張)をしない限り債権は消滅しません。ただし、回収可能性が極めて低いと判断される場合は、貸倒損失として損金算入できる可能性があります(法人税基本通達9-6-3)。

まとめ

滞留が長期化した不良債権は、決算前にサービサーへの売却で整理しておくと、財務指標への悪影響を抑えられます。買取とは何かや活用すべき場面は未収金買取の解説で整理しています。

この記事の要点

  • 改正民法で時効は原則5年に統一 — 中小企業の取引では支払期日から5年が時効完成の目安。短期消滅時効は廃止された
  • 完成猶予と更新を使い分ける — 催告(内容証明郵便)で6ヶ月の猶予を得つつ、その間に訴訟や支払督促で時効を更新するのが基本パターン。債務承認書の取得や一部弁済は低コストで有効な手段
  • 時効管理台帳を運用し計画的に行動する — 延滞発生の初期段階から段階的にアクションを取ることが、回収率の向上と時効リスクの低減を両立させる鍵

未収金の放置は、時効による権利喪失だけでなく、帳簿の不健全化や資金繰りへの影響など、複合的なリスクをもたらします。まずは自社の未回収債権の一覧を作成し、時効完成までの残期間を確認するところから始めてみてください。時効管理や回収方針について確認事項がある場合は、無料相談からご連絡ください。

よくある質問

Q. 未収金の時効は何年ですか?
A. 2020年4月の改正民法施行後は、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方です(民法第166条第1項)。改正前の商事債権の5年時効(旧商法522条)は廃止され、統一されました。
Q. 時効を止める方法はありますか?
A. あります。裁判上の請求(訴訟提起)で時効が更新されます。また、催告(内容証明郵便による督促)で6ヶ月間の完成猶予が得られます。債務者による一部弁済や債務承認書への署名も時効更新事由です。
Q. 時効が完成した未収金はどう処理しますか?
A. 時効が完成しても、債務者が時効の援用(主張)をしない限り債権は消滅しません。ただし、回収可能性が極めて低いと判断される場合は、貸倒損失として損金算入できる可能性があります(法人税基本通達9-6-3)。
Q. 時効の援用とは何ですか?
A. 時効の援用とは、債務者が『消滅時効が完成したので支払い義務はない』と主張する意思表示のことです(民法第145条)。時効期間が経過しても、債務者が援用しない限り債権は消滅しません。逆に言えば、時効完成後でも債務者が援用せずに一部弁済や債務承認をした場合、信義則上、その後の援用が認められないと判断される可能性があります。

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