財務改善ナビ
未収金処理

保証人請求の正しい手順

未収金処理 8分で読める

連帯保証人への請求方法と注意点|中小企業の債権回収実務

連帯保証人に対する未収金の請求手続きと法的な注意点を解説。2020年改正民法の保証契約ルール、催告の抗弁権・検索の抗弁権の不適用、極度額の設定義務など、実務で押さえるべきポイントを整理しました。

取引先が代金を支払わない場合、連帯保証人がいれば保証人に対して請求を行うことが選択肢に入ります。連帯保証は中小企業間の取引や金融機関からの借入れで広く使われている制度ですが、2020年の民法改正で保証契約に関するルールが大幅に変更されました。

本記事では、連帯保証人への請求の基本的な流れと法的根拠を整理したうえで、改正民法で新たに設けられた規制や、請求前に確認すべき実務上の注意点を解説します。

連帯保証と普通保証の違い

連帯保証とは、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証の形態です(民法第454条)。通常の保証(単純保証)と比べて、債権者にとって3つの大きな優位性があります。

催告の抗弁権がない

通常の保証人は「まず主債務者に請求してください」と主張できます(催告の抗弁権、民法第452条)。しかし連帯保証人にはこの権利がなく、債権者は主たる債務者に請求することなく、直接連帯保証人に支払いを求めることが可能です。

検索の抗弁権がない

通常の保証人は「主債務者に財産があるのだから、そちらから回収してください」と主張できます(検索の抗弁権、民法第453条)。連帯保証人にはこの権利もないため、主たる債務者に十分な資力があっても、連帯保証人への請求が認められます。

分別の利益がない

通常の保証人が複数いる場合、各保証人は債務を頭数で割った額のみを負担します(分別の利益)。連帯保証人にはこの利益がなく、複数の連帯保証人がいても、各保証人が債務の全額について支払い義務を負います。

実務上の意味

これらの違いにより、連帯保証は債権者にとって非常に強い回収手段になります。主債務者が支払わない場合に、交渉の手間をかけずに連帯保証人から全額を回収できるためです。中小企業間の取引で「保証人」を取る場合、ほぼ例外なく「連帯保証」が選択されています。

請求前に確認すべき3つのポイント

連帯保証人への請求に入る前に、保証契約の有効性を確認しておかないと、請求が無効になるリスクがあります。

保証契約が書面で締結されているか

保証契約は書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じません(民法第446条第2項・第3項)。口頭での「保証する」という約束は法的に無効です。契約書原本を確認し、連帯保証人本人の署名・押印があることを確認してください。

主たる債務が時効消滅していないか

主たる債務について消滅時効が完成している場合、連帯保証人は主たる債務の時効を援用して保証債務の履行を拒否できます(民法第457条第1項の反対解釈)。主債務の時効管理を怠ると、連帯保証人からの回収もできなくなります。

商取引の債権であれば、権利を行使できることを知った時から5年が消滅時効の基本です(民法第166条第1項第1号)。

2020年改正民法の新規制に該当しないか

2020年4月施行の改正民法で、保証契約にいくつかの規制が追加されました。これらの規制に違反していると保証契約自体が無効になるため、請求前の確認が欠かせません(詳しくは後述)。

連帯保証人への請求手順

1

2

3

4

5

6

請求書の送付と任意交渉

連帯保証人に対して、未払い債権の存在と保証契約に基づく支払い義務を記載した請求書を送付します。請求書には以下を明記してください。

  • 主たる債務の内容(契約日、契約番号、未払い金額)
  • 連帯保証契約の根拠(契約書の日付・条項)
  • 支払期限
  • 期限までに支払いがない場合の対応(法的措置を講じる旨)

この段階で任意の支払いに応じてもらえるケースもあります。一括払いが困難な場合は、分割払いの条件を提示するなど柔軟な対応が回収率を高めるポイントです。分割払い交渉の具体的な進め方は「分割払い交渉の進め方」を参照してください。

内容証明郵便による催告

任意の請求に応じない場合は、内容証明郵便で正式に催告します。内容証明郵便は法的な催告の証拠となり、消滅時効の完成猶予効果(6か月間)が生じます(民法第150条第1項)。

催告書には「支払いに応じない場合は法的措置を講じる」旨を記載するのが一般的です。この段階まで進むと、保証人も事態の深刻さを認識して交渉に応じやすくなります。

仮差押えの検討

連帯保証人が財産を処分・隠匿するおそれがある場合は、訴訟の前に仮差押え(民事保全法第20条)を申し立てることを検討します。仮差押えが認められれば、預金口座や不動産を暫定的に凍結でき、勝訴判決を得た後の強制執行を確実にできます。

仮差押えには担保金が必要

仮差押えの申立てには、請求額の10〜30%程度の担保金を法務局に供託する必要があります。仮差押えが不当であった場合に相手方に生じる損害を担保するためです。担保金は、本案訴訟で勝訴すれば返還されます。

法的手続き

交渉で解決しない場合は、裁判所の手続きに移行します。請求金額や相手方の対応に応じて、以下の手段を選択します。各手続きの詳細は「未収金回収の裁判手続き一覧」で比較しています。

  • 支払督促(民事訴訟法第382条) — 書類審査のみで迅速。相手が異議を申し立てると訴訟に移行
  • 少額訴訟(同法第368条) — 60万円以下の請求。原則1回の期日で結審
  • 通常訴訟 — 相手が全面的に争う場合。確定判決の既判力で確実な回収が可能

連帯保証人に対する訴訟は、主たる債務者に対する訴訟と別に提起することも、同時に提起することもできます。

強制執行

確定判決や仮執行宣言付き支払督促を取得したら、強制執行(差押え)に移ります。差押えの対象は預金口座、不動産、給与(手取りの4分の1まで、民事執行法第152条)、動産などです。

2020年改正民法による保証ルールの変更

個人根保証契約の極度額設定義務

極度額の定めがない個人根保証契約は無効

2020年4月施行の改正民法では、個人が保証人となる根保証契約について、極度額(保証の上限額)の定めが必須となりました(民法第465条の2第2項)。極度額の定めのない個人根保証契約は無効です。

根保証契約とは、「継続的取引から生じる一切の債務を保証する」というように、一定の範囲に属する不特定の債務を保証する契約です。改正前は貸金等に限定されていた規制が、売掛金や賃貸借契約など全ての個人根保証に拡大されました。

2020年4月より前に締結された根保証契約で極度額の定めがないものは、改正民法の施行前に締結されたものとして引き続き有効です。ただし、更新や変更を行った場合は改正民法が適用される可能性があるため注意が必要です。

事業用融資における保証意思確認

事業のために負担した貸金等債務について個人が保証人になる場合、保証契約の締結前1か月以内に、公正証書によって保証意思を表示しなければなりません(民法第465条の6第1項)。この手続きを経ていない保証契約は無効です。

ただし、以下の者は適用除外とされています(民法第465条の9)。

  • 主たる債務者が法人の場合 — その法人の理事・取締役・執行役
  • 主たる債務者が個人事業主の場合 — 共同事業者、事業に従事する配偶者
  • 株式の過半数を保有する者

情報提供義務

事業用の債務について個人に保証を依頼する場合、主たる債務者は保証人に対して以下の情報を提供する義務があります(民法第465条の10第1項)。

  • 自身の財産および収支の状況
  • 主たる債務以外の債務の額と履行状況
  • 担保として提供しているものがあればその内容

情報提供義務に違反し、債権者がその事実を知り得た場合は、保証人は保証契約を取り消すことができます。債権者の立場としては、主債務者が保証人に適切な情報提供を行ったことを書面で確認しておくことがリスク回避につながります。

主債務の履行状況に関する情報提供義務

保証人が債権者に対して主たる債務の履行状況について情報提供を求めた場合、債権者は遅滞なく回答しなければなりません(民法第458条の2)。この義務は法人保証人にも適用されます。

債権者は、保証人からの問い合わせに備えて、主債務の残額や延滞の有無を常に把握しておく体制が必要です。

連帯保証人が死亡した場合

連帯保証人が死亡した場合、保証債務は相続人に承継されます。相続人が複数いる場合は、法定相続分に応じて保証債務が分割承継されるのが原則です。

たとえば、保証債務が1,000万円で相続人が配偶者と子2人の場合、配偶者が500万円、子がそれぞれ250万円の保証債務を承継します。

ただし、根保証契約の場合は、保証人の死亡により「元本が確定」します(民法第465条の4第1項第3号)。確定した元本額が相続の対象となり、その後に発生した債務は相続人の保証の対象外です。

相続人が相続放棄(民法第938条、家庭裁判所への申述が必要)を行った場合は、保証債務を含む一切の相続財産を承継しません。相続放棄の期限は、相続の開始を知った時から3か月以内です(民法第915条第1項)。

債権者として保証契約を取る際の実務ポイント

連帯保証人への請求でトラブルを防ぐには、保証契約の締結時点で適切な対応をしておくことが重要です。

  • 書面で契約を締結し、連帯保証人本人の署名・押印を必ず取得する
  • 根保証の場合は極度額を明記する(改正民法対応)
  • 主債務者から保証人への情報提供が適切に行われたことを書面で確認する
  • 保証人の資力(収入、資産状況)をあらかじめ確認しておく
  • 保証契約書の原本を適切に保管する

債権保全の実務では、連帯保証以外の担保手段(物的担保、所有権留保など)についても解説しています。回収リスクに応じて複数の保全手段を組み合わせることが実務上は効果的です。

まとめ

任意の回収交渉が長期化した未収金は、未収債権の買取(売却)で早期に整理する手もあります。回収完了を待つよりキャッシュ化が早く、与信枠も実態に近づきます。

連帯保証人への請求 実務ポイント

  • 連帯保証人には催告の抗弁権も検索の抗弁権もなく、主債務者に請求せずに直接全額を請求できる
  • 請求前に保証契約の書面性・主債務の時効・改正民法の新規制への適合を必ず確認する
  • 仮差押えで財産の散逸を防ぎつつ、交渉→内容証明→法的手続きと段階的に進める
  • 2020年改正民法で極度額・保証意思確認・情報提供義務が追加され、保証契約の有効性チェックが従来より重要になった

保証契約の有効性や請求手順に不安がある場合は、早い段階で専門家に相談することが確実です。顧問税理士や弁護士への相談とあわせて、無料相談も確認してください。

よくある質問

Q. 連帯保証人と普通保証人の違いは何ですか?
A. 連帯保証人には催告の抗弁権(民法第452条)と検索の抗弁権(民法第453条)がありません。つまり、債権者は主たる債務者に請求せずに、いきなり連帯保証人に全額を請求することが法的に認められています。また、連帯保証人が複数いても、各保証人が全額の支払い義務を負います(分別の利益がない)。
Q. 2020年の民法改正で保証契約はどう変わりましたか?
A. 個人が根保証契約の保証人になる場合、極度額(保証の上限額)の定めが必要になりました(民法第465条の2)。極度額の定めのない個人根保証契約は無効です。また、事業用融資の保証人になる個人に対して、公正証書による保証意思の確認が必要になりました(民法第465条の6)。
Q. 連帯保証人が死亡した場合、保証債務はどうなりますか?
A. 連帯保証人の相続人が保証債務を承継します。ただし、相続人が複数いる場合は法定相続分に応じて分割承継されるのが原則です。相続人が相続放棄をした場合は保証債務を負いません。
Q. 連帯保証人の財産を事前に差し押さえることはできますか?
A. 仮差押え(民事保全法第20条)を利用すれば、訴訟前に連帯保証人の預金や不動産を仮に差し押さえることが可能です。保証人が財産を隠す・処分するおそれがある場合に有効な手段です。申立てには担保金(請求額の10〜30%程度)の供託が必要になります。

関連記事

未収金処理ガイドの新着記事

回収が止まった未収金を、売却対象として確認する

長期滞留している売掛金・未収金は、買取で整理できる場合があります。債権の種類、件数、滞留期間をもとに概算可否を確認します。

未収債権の買取可否を確認する