回収ゼロより分割で確実に
分割払い交渉の進め方|回収率を上げる合意書の作り方
未収金の分割払い交渉について、交渉の進め方・分割払い合意書の書き方・法的効力を高めるポイントを解説。中小企業の経営者・経理担当者向けの実務ガイド。分割払い合意書の必須記載項目、公正証書化のメリット、期限の利益喪失条項、和解条項の書き方、債務承認による時効更新の効果まで、合意成立後の管理まで含めて実務的に整理しました。
未収金の回収において、相手方が一括での支払いに応じられない場合、分割払いの交渉は現実的かつ有効な解決手段です。「全額は無理だが、分割なら支払える」という相手方に対して適切な分割条件を提示し、合意書を取り交わすことで、回収率を高めることができます。
分割払いに応じることは債権者にとって譲歩に感じられるかもしれませんが、回収不能になるよりも確実に回収できる手段を選ぶことが、実務上は最善の判断であることが多いです。
一方で、分割に応じた時点から回収は長期戦になります。合意書の条項の書き方ひとつで、支払いが止まったときに打てる手が変わります。
本記事では、分割に応じるかどうかの判断から、合意書の条項設計、合意を強制執行できる形にする方法、そして相手が倒産した場合の扱いまでを、実務の順番どおりに整理します。

分割に応じるか、一括で押すか
分割払いは「譲歩」ではなく、回収手段の選択です。判断の軸は、相手方に支払いの意思と原資があるかどうかにあります。
分割が有効に働くのは、売上は立っているが一時的に資金が詰まっている相手方です。この場合、期日を分けるだけで回収の確度が上がります。
反対に、支払いの意思がない相手や、事業自体が止まっている相手には効きません。分割合意を交わしても最初の1〜2回で止まり、その間に他の債権者が先に回収してしまいます。
支払い意思が見えない相手には、分割交渉ではなく裁判所を通じた法的手段を検討してください。
手段ごとの実費と、できること
分割合意そのものには費用がかかりません。ただし合意書だけでは、支払いが止まっても差押えはできません。差押えに進めるかどうかを分けるのは、合意の内容ではなく、その合意が「債務名義」の形になっているかどうかです。
債権100万円を回収する場合の、手段ごとの実費と性質を整理します。
| 手段 | 実費(債権100万円の例) | 相手方の同意 | 強制執行 |
|---|---|---|---|
| 分割払い合意書のみ | 0円 | 必要 | できない |
| 公正証書(執行認諾条項付き) | 手数料5,000円+正本・謄本の交付料など | 必要 | できる |
| 即決和解(訴え提起前の和解) | 申立手数料2,000円+郵便切手 | 必要 | できる |
| 支払督促 | 7,700円(書面申立て)/7,500円(電子申立て) | 不要 | 仮執行宣言を得ればできる(異議が出れば訴訟へ) |
| 訴訟 | 12,500円(書面申立て)/11,400円(電子申立て) | 不要 | 判決確定後にできる |
公正証書の手数料は公証人手数料令の別表、裁判所の手数料は民事訴訟費用等に関する法律の別表に基づく金額です。金額はいずれも債権額によって変わります。
裁判所に納める手数料は、令和8年5月21日に施行された改正民事訴訟法が適用される事件から、書面申立てと電子申立てで額が分かれました。古い解説記事の金額とは一致しないことがあるため、申立て前に裁判所の手数料額早見表で確認してください。
金額の大小より「止まったときに何ができるか」で選ぶ
実費の差は数千円から1万円程度です。判断を分けるのは金額ではなく、支払いが止まった瞬間に差押えへ進めるかどうかです。回収額が大きい取引先や、過去に約束を破った相手方では、合意と同時に債務名義まで取っておく価値があります。
分割払い交渉の基本方針
交渉に入る前の準備
分割払いの交渉に入る前に、3つの情報を整理しておきます。
債権の正確な把握です。元本、遅延損害金、発生日、支払期日などの基本情報を正確にまとめます。複数の未払いがある場合は、一覧表を作成してください。
相手方の支払能力の見極めです。相手方がどの程度の金額を月々支払えるかを推定します。法人であれば決算書や月商、個人であれば収入と生活費を考慮します。
相手方から自発的な申告がない場合は、「月々いくらであれば支払い可能ですか」と具体的に質問してください。
自社の最低ラインの設定です。分割回数の上限、月額最低額、遅延損害金の有無など、自社として譲歩できる範囲をあらかじめ決めておきます。交渉の場で場当たり的に判断するのは避けてください。
交渉の進め方
分割払いの交渉は、相手方に「支払う意思がある」ことを前提として行います。
第1ステップ(現状確認)では、相手方の支払い遅延の理由を聞き取ります。一時的な資金繰りの問題なのか、構造的な経営悪化なのかによって、対応方針が変わります。
第2ステップ(条件提示)では、自社から具体的な分割条件を提示します。「残額○○万円を、毎月○日に○万円ずつ、○回で完済していただく」という形で、金額・日付・回数を明確にします。
第3ステップ(条件調整)では、相手方から対案が出た場合に、自社の最低ラインの範囲内で調整します。分割回数を増やす場合は、遅延損害金の加算や連帯保証人の追加を条件として提示することでバランスをとります。
第4ステップ(合意書の締結)では、条件が合意に達したら速やかに書面化します。口頭での合意は証拠として弱いため、必ず合意書を作成し、双方が署名・押印してください。
交渉時の注意点
交渉では次の点に注意してください。
- 感情的にならず、ビジネスライクに進める
- 相手方を過度に追い詰めると、支払い意欲を失わせるリスクがある
- 安易に元本の減額に応じない(分割回数の調整で対応する)
- 交渉内容は日時・出席者・発言内容を記録に残す
分割払い合意書の書き方
必須記載事項
分割払い合意書には、次の項目を必ず記載してください。
当事者の表示です。債権者(自社)と債務者(相手方)の正式名称、所在地、代表者名を書きます。法人の場合は会社名と代表取締役名を併記します。
債務の確認です。未払い債務の発生原因(売買契約、業務委託契約等)、元本の金額、遅延損害金の有無と金額を明記します。「債務者は、債権者に対し、○○契約に基づく未払い代金として金○○万円の支払い義務があることを確認する」という形で記載します。
この条項は「債務の承認」として、消滅時効の更新効果があります(民法第152条第1項)。時効管理の詳細については「未収金の時効管理」で解説しています。
分割払い条件です。月々の支払額、支払日、支払方法(振込先)、回数を具体的に記載します。
期限の利益喪失条項です。「債務者が分割金の支払いを1回でも怠ったときは、期限の利益を喪失し、残額全額を直ちに支払う」旨の条項を指します。この条項がないと、相手方が1回分を滞納しても残額の一括請求ができず、分割スケジュール通りの請求しかできません。
当然喪失型と請求喪失型の違い
期限の利益喪失条項には2つの書き方があり、効果が違います。
当然喪失型は「支払いを怠ったときは、催告を要せず当然に期限の利益を失う」と書く形です。滞納した時点で残額全額が支払期限を迎えるため、催告を挟まずに残額の請求へ移れます。
請求喪失型は「債権者の請求により期限の利益を失う」と書く形です。こちらは通知が届いてから効力が生じるので、一手間かかります。
回収を優先するなら当然喪失型で書きます。一方で、振込忘れのような軽微な遅れでも一括請求の効力が生じるため、実務では「2回分の滞納」や「滞納額が月額を超えたとき」といった条件を付けて調整します。
ここで注意したいのは、期限の利益を失わせただけでは差押えはできないことです。強制執行には債務名義が要り、公正証書であっても執行文の付与と送達という手続きを踏みます。条項は「残額全額を今すぐ請求できる状態にする」ためのもので、執行そのものの根拠ではありません。
なお、条項がなくても、法律上当然に期限の利益を主張できなくなる場面が3つあります(民法第137条)。債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、担保を滅失・損傷・減少させたとき、担保を供する義務があるのにこれを供しないときです。条項はこの3つの場面を契約で広げるものだと理解しておくと、条件設定の判断がしやすくなります。
遅延損害金は何%まで書けるか
分割払い合意書で迷いやすいのが遅延損害金の利率です。ここは相手方が事業者か消費者かで扱いが分かれます。
法定利率は年3%です(民法第404条第2項)。3年ごとに見直される仕組みですが、法務省の告示により、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの期間も年3%で据え置かれています。
約定した利率が法定利率を超える場合は、約定した利率が優先します(民法第419条第1項ただし書)。取引先が事業者であれば、遅延損害金の利率に一律の上限を定めた規定はありません。
相手方が消費者の場合は上限があります。支払期日の翌日から年14.6%を超える部分は無効です(消費者契約法第9条第1項第2号)。取引先が個人であっても、事業として契約しているなら消費者契約には当たりません。
金銭債務の遅延損害金については、債権者が損害の発生を証明する必要はなく、相手方は不可抗力を理由に支払いを拒めません(民法第419条第2項・第3項)。合意書に利率を明記しておけば、回収の場面で争点になりにくくなります。
連帯保証人を付けるときの注意点
相手方が法人の場合、代表者個人を連帯保証人に加えると回収の確実性が高まります。ただし、保証に関する民法の規定は場面ごとに適用範囲が違うため、混同しないよう整理しておきます。
極度額の定めが必要なのは、個人が根保証人になる場合です(民法第465条の2)。継続的な取引から生じる不特定の債務をまとめて保証させるときは、極度額を定めないと保証契約そのものが無効になります。分割払い合意のように金額が確定した債務だけを保証させる場合は、この規定の対象ではありません。
保証意思宣明公正証書が必要なのは、事業のために負担した貸金等債務を個人が保証する場合です(民法第465条の6)。売掛金や請負代金の分割払い債務は貸金等債務ではないため、この手続きは要りません。
一方で、注意しておきたいのが情報提供義務です。事業のために負担する債務を個人に保証してもらうとき、主債務者は財産や収支の状況、他の債務の有無と履行状況などを保証人になろうとする者へ伝える義務があります(民法第465条の10第1項)。
これを怠ったり事実と違う説明をしたりして保証人が誤認した場合、債権者がその事情を知っていたか知ることができたときは、保証契約を取り消される可能性があります(同条第2項)。合意書には、保証人が必要な情報の提供を受けたうえで保証する旨の確認条項を入れておくと安全です。
法的効力を高める方法
通常の合意書(私署証書)でも法的効力はありますが、さらに効力を強化する方法があります。
確定日付の取得です。公証役場で確定日付を取得することで、合意書の作成日を公的に証明できます。手数料は1通700円です。
連帯保証人の追加です。法人の債務について代表者個人を連帯保証人とするか、第三者の連帯保証人を追加することで、回収の確実性が高まります。
そして最も効果が大きいのが、合意を債務名義にしておくことです。次の節で2つの方法を比較します。
合意書を債務名義にする2つの道
強制執行は「債務名義」がなければ行えません(民事執行法第22条)。分割払い合意を債務名義にする方法は、実務上2つあります。

公正証書(執行認諾条項付き)
公正証書に「債務者は、本証書に基づく金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する」という執行認諾条項を入れると、裁判を経ずに差押えができます(民事執行法第22条第5号)。
作成費用は目的の価額に応じて決まります。既に発生している債務の支払方法を定める債務弁済契約では、支払金額そのものが目的の価額になります(公証人手数料令第15条)。売買契約のように金額を2倍にする計算にはなりません。
| 目的の価額(債務額) | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超〜100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 49,000円 |
このほかに、証書の枚数に応じた加算があります。実際に差押えへ進む段階では、執行文の付与に2,000円、正本・謄本の送達に1,600円、送達証明に300円がかかります。正本・謄本の交付は紙1枚につき300円です。
つまり債権100万円なら、作成時に5,000円前後、差押えに進む時点で4,000円程度が追加でかかる計算になります。回収額に対して十分に小さい負担です。
即決和解(訴え提起前の和解)
もう一つが、簡易裁判所に和解を申し立てる方法です(民事訴訟法第275条)。訴訟を起こす前の段階で和解を成立させる手続きで、実務では即決和解と呼ばれます。
申立手数料は2,000円です(民事訴訟費用等に関する法律 別表第一の9の項)。成立すると和解調書が作成され、これが債務名義になります。
公正証書との違いは、対象にできる内容の幅です。執行証書として強制執行できるのは、金銭の一定額の支払いのほか、代替物や有価証券の一定数量の給付に限られます(民事執行法第22条第5号)。「支払いが滞ったら店舗を明け渡す」といった建物明渡しや特定物の引渡しは、この枠に入りません。
即決和解であれば、明渡しを含めた内容も和解調書として債務名義にできます。分割払いに担保的な取り決めを組み合わせたい場合は、こちらが選択肢になります。
| 比較軸 | 公正証書 | 即決和解 |
|---|---|---|
| 費用(債権100万円) | 5,000円程度+交付料 | 2,000円+郵便切手 |
| 対象にできる内容 | 金銭の支払い、代替物・有価証券の一定数量の給付 | 建物明渡しなども可能 |
| 出向く先 | 公証役場(代理人でも可) | 簡易裁判所 |
| 相手方の関与 | 嘱託への同意が必要 | 期日への出頭が必要 |
金銭の分割払いだけを取り決めるなら公正証書が扱いやすく、担保として明渡しなどを絡めるなら即決和解が向きます。どちらも相手方の協力が前提になるため、交渉がまとまった直後に手続きへ進むのが実務の要点です。
分割合意は時効をどう動かすか
分割払いの合意は、時効の面でも意味があります。債権は、権利を行使できると知った時から5年で時効消滅します(民法第166条第1項第1号)。
債務者が債務を承認すると、時効はそこから新たに進行します(民法第152条第1項)。合意書で債務の存在と金額を確認する条項は、この承認にあたります。分割払いの入金が続いている間は、その都度の一部弁済も承認として扱われます。
交渉が長引いて合意に至らない場合は、別の手当てが要ります。催告(内容証明郵便など)で時効の完成を止められるのは6か月間だけで、繰り返しても効果は延びません(民法第150条)。
協議を続けるなら、協議を行う旨の合意を書面で交わす方法があります。この場合は最長1年間、時効の完成が猶予されます(民法第151条第1項)。電磁的記録による合意も書面と同じ扱いです(同条第4項)。
時効管理の全体像は「未収金の時効管理」で整理しています。
分割払い合意後の管理
入金管理の仕組み化
分割払いの合意後は、毎月の入金を確実にモニタリングする必要があります。
- 会計ソフトまたは管理台帳に分割スケジュールを登録する
- 支払日の翌営業日に入金確認を行う
- 入金がない場合は3営業日以内に連絡する
分割回数が多い場合は管理の手間が増えます。口座振替やクレジットカードの定期課金などの自動化手段を活用すると、管理負荷を軽減できます。
支払い停止時の対応
分割払いが途中で止まった場合は、速やかに対応します。
即日から3日以内は、電話で入金状況を確認します。振込忘れなどの単純な理由であれば、この段階で解消します。
1週間を超えたら、書面で催告し、期限の利益喪失条項に基づき残額の一括請求を行う旨を通知します。
2週間を超えたら、公正証書がある場合は強制執行の手続きに着手します。公正証書がない場合は、合意書を証拠として訴訟(少額訴訟または通常訴訟)を提起し、債務名義の取得を目指します。訴訟前に内容証明郵便での催告を行うことも有効です。
分割払いが2回連続で遅れた場合は、相手方の支払能力が低下している可能性があります。残額の回収を優先し、追加の分割には安易に応じないでください。
相手が倒産したら、受け取った分割金はどうなるか
分割回収で見落とされやすいのが、相手方が破産した場合の扱いです。回収したはずの分割金を、後から返さなければならないことがあります。
破産手続では、特定の債権者だけが受けた弁済を、破産管財人が否認できる場合があります(破産法第162条)。相手方が支払不能になった後、または破産手続開始の申立てがあった後に受けた弁済で、債権者がその事実を知っていたときが対象です(同条第1項第1号)。
判断の分かれ目は、債権者が相手方の状態を知っていたかどうかです。支払いの停止があった後は、支払不能であったものと推定されます(同条第3項)。他の取引先への支払いが止まっているという情報を得ながら、自社だけ分割回収を続けた場合は、この推定が働きやすくなります。
分割払いは、その性質上、相手方の資金繰りが悪い局面で続いていることが多い手段です。相手方に信用不安の兆候が出たら、回収方法を見直す場面だと考えてください。
ただし、この局面で新たに担保を取ったり、あわてて回収を強めたりする行動そのものが否認の対象になり得ます。既存の担保や、すでに相殺できる状態にある買掛金があるかをまず確認し、新たな担保設定や相殺の可否は弁護士に確認したうえで判断してください。
倒産局面での具体的な対応は「取引先が倒産した場合の未収金対応」と「債務整理に入った取引先への対応」で解説しています。
分割合意した債権が財務に与える影響
分割払いは回収の確度を上げますが、財務の面では回収期間の長期化を意味します。1年を超える分割にすると、1年を超えて回収予定の部分は長期の債権として区分して管理することになり、その分だけ運転資本が固定されます。
売上として計上済みの債権であれば、その消費税は原則として申告・納税の対象になっています。分割合意をしても、この負担が消えるわけではありません。分割中に相手方が破綻して回収できなくなった場合の税務処理は「未収金の税務処理」で扱っています。
また、分割合意は債権の免除ではないため、合意した時点では貸倒れになりません。決算では、回収可能性に応じた貸倒引当金の計上を検討することになります。
分割回収が長期化すると、金額が同じでも手元資金は増えません。回収完了を待つ間に自社の資金繰りが厳しくなるようであれば、未収債権の買取(売却)で早期に現金化する選択肢もあります。回収を待つか現金化するかは、回収可能性と自社の資金需要を並べて判断してください。
出典
- e-Gov法令検索 民法(第137条・第150条・第151条・第152条・第166条・第404条・第419条・第465条の2・第465条の6・第465条の10・第695条)(2026-08-07 確認)
- e-Gov法令検索 破産法(第162条)(2026-08-07 確認)
- e-Gov法令検索 民事訴訟法(第275条)(2026-08-07 確認)
- e-Gov法令検索 民事執行法(第22条)(2026-08-07 確認)
- e-Gov法令検索 消費者契約法(第9条)(2026-08-07 確認)
- e-Gov法令検索 民事訴訟費用等に関する法律(別表第一)(2026-08-07 確認)
- 日本公証人連合会 12 手数料(2026-08-07 確認)
- 裁判所 手数料・手数料額早見表(2026-08-07 確認)
- 法務省 令和8年4月1日以降の法定利率について(2026-08-07 確認)
まとめ
分割払いへの対応は、譲歩ではなく回収手段の選択です。相手方に支払いの意思と原資があるなら、期日を分けることで回収の確度は上がります。
合意書では、期限の利益喪失条項の書き方と遅延損害金の利率が、支払いが止まったときの打ち手を左右します。金額が大きい取引先では、合意と同時に公正証書か即決和解で債務名義まで取っておくと、滞納した時点で差押えに進めます。
一方で、分割回収は相手方の資金繰りが悪い局面で続くことが多く、倒産時には受け取った分割金が否認される可能性もあります。信用不安の兆候が出たら、回収方法の切り替えを検討してください。
分割払い交渉の実務ポイント
- 交渉前に分割回数の上限・月額最低額・遅延損害金の扱いなど最低ラインを設定する
- 合意書には期限の利益喪失条項を必ず入れ、不履行時に残額全額を一括請求できるようにする
- 合意書は公正証書(執行認諾条項付き)か即決和解で債務名義にし、滞納時に差押えへ進める状態にする
- 遅延損害金の上限は相手方が消費者のときだけ年14.6%で、事業者間の取引には一律の上限がない
- 相手方の支払不能を知りながら分割回収を続けると、破産時に否認される可能性がある
分割払いの交渉や合意書の作り方について、自社だけで対応するのが難しいと感じたら、専門家への相談を検討してください。財務改善ナビでは、債権管理の体制づくりや資金繰りへの影響といった、財務面の一般的なご相談を無料相談で受け付けています。個別の債権についての法的な判断、相手方との交渉の代理、訴訟や強制執行の手続きは弁護士の業務ですので、弁護士にご相談ください。
回収が止まった未収金を、売却対象として確認する
長期滞留している売掛金・未収金は、買取で整理できる場合があります。債権の種類、件数、滞留期間をもとに概算可否を確認します。
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よくある質問
- Q. 分割払い合意書には法的効力がありますか?
- A. はい。債務の存在と支払方法を確認する合意として効力を持ちます。金額や責任の範囲に争いがあり、双方が譲歩して解決する内容であれば和解契約(民法第695条)にあたります。ただし、相手方が合意に反して支払いを怠っても、直ちに強制執行はできません。強制執行を可能にするには、合意書を公正証書(執行認諾条項付き)にするか、裁判上の和解・調停で合意を取り付ける必要があります。
- Q. 分割払いに応じると時効はどうなりますか?
- A. 債務者が分割払いに合意すること自体が「債務の承認」にあたり、消滅時効が更新(リセット)されます(民法第152条第1項)。合意書に債務の存在と金額を明記しておくことで、承認の事実を証拠として残すことができます。
- Q. 相手が分割払いの途中で支払いを止めた場合、どうすべきですか?
- A. 合意書に「期限の利益喪失条項」を入れておくことで、1回でも支払いを怠った場合に残額全額を一括請求できます。支払い停止から速やかに催告を行い、応じなければ公正証書の場合は直ちに強制執行、それ以外の場合は訴訟等で債務名義を取得して回収します。
- Q. 分割回数や期間はどの程度が適切ですか?
- A. 一般的には3~12回(3か月~1年)が目安です。分割期間が長くなるほど、途中で状況が変わる可能性が高まるため、可能な限り短期間での完済を目指してください。月額をいくらにするかは、相手方の月次の資金繰り、粗利、既存の借入返済、税金や社会保険料の支払いを踏まえて決めます。月商に対する比率だけで決めると、払えない金額を設定して早期に不履行になることがあります。
- Q. 分割払い合意書の遅延損害金は何%まで設定できますか?
- A. 相手方が事業者の場合、遅延損害金の利率に一律の上限を定めた規定はなく、約定した利率が法定利率(年3%)に優先します(民法第419条第1項)。ただし上限がないことと、いくらでも設定してよいことは別です。取引の実態からかけ離れた高率は、公序良俗違反として争われる余地があります。相手方が消費者の場合は、年14.6%を超える部分が無効になります(消費者契約法第9条第1項第2号)。取引先が個人であっても、事業として契約している場合は消費者契約に当たりません。
- Q. 公正証書と即決和解では、どちらを選ぶべきですか?
- A. 金銭の支払いだけを合意するなら、相手方と公証役場に出向くか代理人を立てれば作成できる公正証書が使いやすい方法です。執行証書として強制執行できるのは、金銭の一定額の支払いのほか代替物・有価証券の一定数量の給付までなので(民事執行法第22条第5号)、建物明渡しなどを合意に含めるなら、簡易裁判所に申し立てる即決和解(訴え提起前の和解・民事訴訟法第275条)を検討します。申立手数料は2,000円で、成立すると和解調書が債務名義になります。