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期末の未収金、翌期にどう引き継ぐ?

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未収金の年度またぎ仕訳|決算期をまたぐ処理

未収金が決算期をまたぐ場合の正しい仕訳処理を解説。発生主義に基づく収益計上、企業会計原則・法人税法第22条の根拠、期末決算整理仕訳、翌期の入金処理、貸倒れに転じた場合の対応まで、実務に沿った手順をまとめました。

決算期末に未回収のまま残った売上代金や貸付金の利息。「入金がないのだから、来期に計上すればよいのでは?」と考える経営者は少なくありません。しかし、その処理を誤ると税務調査で収益の繰延べを指摘され、追徴課税につながるおそれがあります。

未収金が決算期をまたぐケースは、ほぼすべての中小企業で発生します。本記事では、企業会計原則と法人税法の規定を根拠に、年度またぎの未収金に関する仕訳処理を期末・翌期・回収不能時の3段階に分けて整理します。

年度またぎで未収金が発生する場面

決算期末の時点で代金を受け取っていないケースは、大きく3つのパターンに分かれます。

1つ目は、本業以外の取引から生じる未収入金です。不動産や固定資産の売却代金、保険金の請求、貸付金の利息など、営業活動以外から生じた債権が該当します。未収入金の勘定科目の分類と売掛金との違いを正しく理解しておくことが、正確な仕訳の前提になります。たとえば3月決算法人が2月に事務所を売却し、代金の受取りが4月になる場合、3月末時点で未収入金として計上する必要があります。

2つ目は、本業の売上にかかわる売掛金です。商品の納品やサービスの提供が完了しているにもかかわらず、取引先の支払いサイトの関係で入金が翌期にずれ込むケースが代表的です。月末締め翌月末払いの取引先であれば、3月分の売上は4月末に入金されるため、決算日時点では売掛金として残ります。

3つ目は、期末に発生した返還インセンティブや割戻しに対応する債権です。年間取引量に応じたリベートが翌期に精算される場合、期末時点で合理的に見積もれる金額を未収入金として計上します。

いずれのパターンでも共通するのは、「入金の有無にかかわらず、経済的事実が発生した期に収益を認識する」という発生主義の原則です。

企業会計原則 第二 損益計算書原則 一A

すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。いわゆる発生主義の原則であり、現金の受渡し時期ではなく、経済的事実の発生時期を基準とする考え方です。

発生主義と現金主義の違いが仕訳に与える影響

年度またぎの仕訳で誤りが多い根本原因は、発生主義と現金主義の混同にあります。両者の違いを理解しておくことが正確な処理の前提です。

発生主義では、役務の提供が完了した時点、または資産の引渡しが行われた時点で収益を計上します。入金があったかどうかは問いません。一方、現金主義では、実際に現金を受け取った時点で収益を認識します。家計簿と同じ考え方です。

法人税法第22条第2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、収益の額を益金の額に算入すると定めています。さらに法人税法第22条の2では、資産の販売等に係る収益の額は「引渡しの日の属する事業年度」の益金に算入すると規定しています。つまり、法人税の申告でも発生主義が原則です。

現金主義で処理してしまうと、期末に未収となっている収益が翌期に計上され、当期の所得が過少になります。これは収益の繰延べと見なされ、税務調査での否認リスクが高まります。過少申告加算税(原則10%、50万円超部分は15%)や延滞税が課される可能性もあるため、中小企業であっても発生主義による処理を徹底してください。

現金主義が認められる例外

青色申告を行う個人事業主のうち、前々年分の事業所得と不動産所得の合計が300万円以下の場合に限り、税務署長の承認を受けて現金主義による所得計算が認められます(所得税法第67条)。法人にはこの特例は適用されません。

発生主義と現金主義の比較

項目発生主義現金主義
収益の認識時点役務提供完了・資産引渡し時入金時
法人税法上の扱い原則(法人税法第22条の2)法人には不適用
メリット期間損益が正確に把握できる処理が簡便
デメリット未収金の管理が必要期間損益にズレが生じる
年度またぎへの影響当期に収益を正しく計上入金が翌期なら翌期に計上(誤り)

期末決算整理仕訳の具体的な手順

決算期末における未収金の仕訳処理を、ステップごとに確認します。

1

未回収債権の洗い出し

売掛金台帳や補助元帳から、決算日時点で入金されていない債権をリストアップします。売掛金だけでなく、貸付金の利息や保険金など本業以外の未収項目も忘れず確認してください。

2

計上漏れの確認と追加仕訳

期中に発生したにもかかわらず計上されていない未収金がないか確認します。特に期末月に発生した取引は計上が漏れやすいため、契約書や請求書の日付と照合します。

3

長期未収金への振替判断

支払期日から1年以上経過した未収金は、流動資産から固定資産(投資その他の資産)の長期未収入金に振り替えます。流動比率に影響するため、決算整理仕訳で処理してください。

4

貸倒引当金の見積もりと設定

回収に懸念のある未収金については、個別に貸倒引当金を設定します。中小法人は法定繰入率による一括評価も適用できます。

5

翌期への繰越確認

決算整理仕訳の結果、BSに計上される未収入金・売掛金の残高が補助元帳の明細と一致するか確認します。翌期首の処理(洗替法の場合は引当金の戻入れ)も準備します。

期末仕訳の例

3月決算法人が、3月15日にコンサルティングサービスを提供し、請求書を発行した。代金50万円の支払期日は4月30日。3月末時点で未入金。

期末(3月31日)の仕訳:

借方金額貸方金額
売掛金500,000円売上高500,000円

この仕訳により、サービス提供が完了した3月の収益として売上が計上されます。代金が翌期の4月に入金されても、収益の認識は当期3月です。

もうひとつ、本業以外の未収金の例です。3月25日に保有する社用車を80万円で売却し、引渡しも完了。代金は4月15日に振込予定。車両の帳簿価額は50万円。

期末(3月31日)の仕訳:

借方金額貸方金額
未収入金800,000円車両運搬具500,000円
固定資産売却益300,000円

資産の引渡しが3月中に完了しているため、売却益30万円は当期の益金に算入します。入金が4月であっても当期の決算に反映する点がポイントです。

翌期の入金処理と二重計上の防止

翌期に入金があった際の仕訳は単純ですが、実務では二重計上の誤りが発生しやすい場面です。

前期末に売掛金50万円を計上済みのケースで、翌期4月30日に入金された場合:

借方金額貸方金額
普通預金500,000円売掛金500,000円

これは売掛金の消し込みです。翌期の売上として「借方:普通預金/貸方:売上高」と仕訳してしまうと、前期に計上した収益と合わせて二重計上になります。会計ソフトで売上伝票から入金処理を行う場合は、新たな売上伝票を起こすのではなく、入金消込機能を使用してください。

二重計上が起きやすいパターン

経理担当者が交代した直後や、期首に大量の入金がある時期に発生しやすい誤りです。前期末の未収金リストを翌期首に経理部門内で共有し、消込対象であることを明示しておくことで防止できます。

未収金が一部のみ回収された場合

取引先から50万円のうち30万円だけ入金され、残り20万円は翌月に支払うと通知があった場合:

借方金額貸方金額
普通預金300,000円売掛金300,000円

残額20万円は売掛金として残し、入金時に再度消し込みます。分割入金が発生した場合は補助元帳の残高と入金額の照合を取引先ごとに行い、消込漏れを防いでください。

未収金の分割払い対応については別記事で詳しく解説しています。

年度をまたいで回収不能になった場合の処理

前期に計上した未収金が、翌期以降に回収の見込みがなくなるケースも珍しくありません。取引先の倒産、長期の支払い遅延、連絡途絶などが原因です。

回収不能が確定した場合は、貸倒損失として費用計上します。ただし、法人税法上の損金算入が認められるには、法人税基本通達9-6-1から9-6-3のいずれかの要件を満たす必要があります。

区分通達主な要件
法律上の貸倒れ9-6-1会社更生法・民事再生法の認可決定、特別清算の認可等により債権が切り捨てられた場合
事実上の貸倒れ9-6-2債務者の資産状況等から全額回収不能であることが明らかな場合
形式上の貸倒れ9-6-3継続的取引先の売掛債権について、取引停止後1年以上経過した場合(備忘価額1円を残して損金算入)

年度をまたいだ場合に特に注意すべきは、貸倒損失を計上する事業年度の判定です。法律上の貸倒れは、法的整理の決定があった事業年度に計上します。事実上の貸倒れは、回収不能が明らかになった事業年度です。形式上の貸倒れは、取引停止後1年が経過した事業年度以降に計上できます。

いずれの類型でも、回収不能に至った経緯を証明する書類(内容証明郵便の控え、信用調査報告書、破産手続開始決定の通知書など)を保存しておくことが重要です。税務調査では、貸倒損失の計上根拠と時期の妥当性が問われます。

回収見込みが低くなった未収金は、サービサー(債権回収会社)への売却という選択肢もあります。帳簿から不良債権を外しつつ、額面の一部でも現金化できる方法です。詳しくは未収金買取の仕組みと活用場面をご確認ください。

貸倒損失の仕訳例

前期に計上した売掛金100万円について、取引先が破産手続開始決定を受け、配当見込みがゼロと通知された場合(法律上の貸倒れ):

借方金額貸方金額
貸倒損失1,000,000円売掛金1,000,000円

貸倒引当金を設定済みであれば、まず引当金を取り崩し、不足分を貸倒損失として計上します。

借方金額貸方金額
貸倒引当金500,000円売掛金1,000,000円
貸倒損失500,000円

未収金の貸倒れに関連する会計処理の全体像は未収金の会計処理まとめで解説しています。

期末処理でよくある誤りと対策

年度またぎの未収金に関して、実務で発生しやすい誤りを整理します。

1つ目は、収益の計上時期の誤りです。入金がないことを理由に、期末の未収金を翌期の売上として計上するケースが該当します。前述のとおり、法人税法第22条の2は引渡基準を原則としており、入金時期は収益の認識に影響しません。税務調査における期ずれ売上計上で否認される典型的なパターンです。

2つ目は、未収金と未払金の混同です。未収金(未収入金)は「受け取る権利」であり資産科目、未払金は「支払う義務」であり負債科目です。決算整理で両者を取り違えると、BSの資産・負債が反対に計上されます。勘定科目の借方・貸方を確認してから仕訳を起こしてください。

3つ目は、長期未収金への振替漏れです。支払期日から1年以上経過した未収金を流動資産に計上したままにすると、流動比率が実態より高く見えます。金融機関の融資審査では流動比率が重視されるため、実態と乖離した数値は信用力の判断を誤らせる原因になります。

4つ目は、貸倒引当金の計上漏れまたは過大計上です。回収に懸念がある未収金に対して引当金を設定しないと、BS上の資産が過大評価されます。一方、根拠なく過大な引当金を設定すると、税務上の損金算入限度額を超えた部分は否認されます。

5つ目は、消費税の処理誤りです。未収金を計上する際の消費税の課税売上計上時期は、原則として資産の譲渡等の時期(発生時)です。入金時に消費税を計上すると、課税期間がずれてしまいます。

年度またぎ仕訳の実務チェックリスト

  • 期末の未回収債権を網羅的にリストアップし、計上漏れがないか確認する
  • 収益は発生主義で計上し、入金がなくても当期の収益に含める(法人税法第22条の2)
  • 翌期の入金は売掛金・未収入金の消込処理で行い、売上の二重計上を防ぐ
  • 支払期日から1年超の未収金は長期未収入金に振り替え、BSの流動・固定区分を正しく保つ
  • 回収不能が確定した債権は、法人税基本通達9-6-1〜3の要件を確認したうえで貸倒損失を計上する
  • 処理根拠となる契約書・請求書・督促記録・信用調査報告書を保存しておく

年度またぎの未収金は、発生主義の原則に従って処理すれば複雑ではありません。期末に計上し、翌期に消し込み、回収不能なら貸倒損失に計上する。この3つのステップを正確に実行できれば、税務調査で期ずれを指摘されるリスクは大幅に低減します。

自社の未収金に回収困難なものが含まれている場合は、貸倒損失の処理方法未収金買取の活用もあわせて検討してください。期末決算の前に未収金の状態を棚卸しすることで、BSの健全性を維持しながら、税務上のリスクも適切にコントロールできます。

よくある質問

Q. 未収金の計上は入金時ではなく発生時が正しいですか?
A. はい。企業会計原則と法人税法第22条の2に基づき、役務提供完了または資産引渡しの時点で収益を計上します。入金の有無は計上時期に影響しません。
Q. 年度またぎの未収金を翌期に入金処理する仕訳は?
A. 翌期に入金されたら「借方:普通預金/貸方:未収入金」で消し込みます。前期に収益計上済みのため、翌期に売上を二重計上しないよう注意してください。
Q. 現金主義で処理すると税務上どんな問題がありますか?
A. 決算期末の未収金を計上しないと、収益の繰延べとして税務調査で否認される可能性があります。追徴課税や過少申告加算税の対象になり得ます。
Q. 年度をまたいだ未収金が回収不能になった場合はどうしますか?
A. 法人税基本通達9-6-1から9-6-3の要件を満たせば、貸倒損失として損金算入できます。回収不能の事実を証明する書類の保存が必要です。

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