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借金が残っても廃業はできる

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廃業したら借入金はどうなる?返済が残る場合の対処法を法人・個人事業主別に解説

廃業後に借入金が残る場合の対処法を法人・個人事業主別に解説。日本政策金融公庫・信用保証協会付き融資・プロパー融資の扱いの違い、経営者保証ガイドラインの活用、分割返済の交渉方法を整理します。

廃業を考えているが、借入金が残っているため踏み切れない——。中小企業の経営者から多く寄せられる相談のひとつです。

結論から言えば、借入金の完済は廃業の条件ではありません。法人であれば清算手続きの中で債務を処理する仕組みがあり、個人事業主であっても返済条件の変更や債務整理の手段が用意されています。

ただし、対処の方法は法人と個人事業主で大きく異なります。融資の種類(プロパー融資か、信用保証協会付きか、日本政策金融公庫か)によっても、廃業後の返済の流れが変わってきます。

本記事では、廃業後に借入金が残るケースを前提に、法人・個人事業主それぞれの対処法を融資の種類別に解説します。

法人が廃業する場合の借入金の扱い

通常清算のケース——資産で弁済できる場合

法人の資産(現金・預金・売掛金・不動産等)で借入金を含むすべての債務を弁済できる場合は、通常清算の手続きで処理できます。清算人が資産を換価し、債権者に弁済した後、残余財産があれば株主に分配します。

通常清算が完了すれば法人は消滅し、法人の債務も消滅します。ただし、経営者が連帯保証人になっている場合の保証債務は別問題です(後述)。清算手続きの全体像は会社清算の手続きと流れで解説しています。

債務超過のケース——資産で弁済しきれない場合

法人の資産で債務を全額弁済できない(債務超過の)場合、通常清算はできません。この場合の選択肢は3つあります。

1つ目は特別清算です。裁判所の監督のもとで債権者との協定(協定型)または個別の和解(和解型)によって債務を処理します。債権者の3分の2以上の同意が必要で、費用は予納金を含め20万〜50万円程度です。

2つ目は破産手続きです。裁判所が選任した破産管財人が資産を換価し、法定の優先順位に従って配当します。予納金は法人の場合50万〜数百万円(東京地裁の場合、少額管財で20万円程度のケースもあります)。

3つ目は特定調停スキーム(廃業支援型)です。裁判所の特定調停と経営者保証ガイドラインを組み合わせて、法人の債務と経営者の保証債務を一体で整理します。破産と比較して費用が低廉で、経営者の信用情報への影響も限定的です。

連帯保証がある場合の経営者個人への影響

中小企業の金融機関からの借入は、経営者個人が連帯保証人になっているのが一般的です。法人が清算・破産しても、連帯保証人の返済義務は消滅しません。

法人の清算後、金融機関は連帯保証人である経営者個人に対して残債の一括返済を求めることができます。この問題への対処法は廃業時の負債と個人保証の処理で詳しく解説しています。

経営者保証ガイドラインを活用すれば、華美でない自宅を残したまま保証債務を整理できる場合があります。破産を選択する前に必ず検討すべき制度です。

個人事業主が廃業する場合の借入金の扱い

個人事業主の場合、法人と異なり「法人格の消滅による債務の消滅」という仕組みがありません。事業用の借入金であっても、契約上の債務者は個人ですので、廃業届を税務署に提出しても借入金の返済義務はそのまま残ります。

返済を続けられる場合

廃業後に再就職や別事業で収入を得られる見込みがあれば、借入金の返済を継続できます。ただし、廃業により収入が減少する場合は、金融機関に返済条件の変更(返済額の減額、返済期間の延長)を早めに相談してください。

金融機関は、返済が滞る前の段階で相談を受けた方が柔軟に対応できます。延滞が発生してからでは交渉の選択肢が狭まります。

返済が困難な場合の3つの選択肢

廃業後に借入金を返済する見込みが立たない場合、以下の3つの債務整理手続きがあります。

任意整理は、弁護士を通じて金融機関と個別に交渉し、利息のカットや返済スケジュールの見直しを合意する方法です。裁判所を通さないため手続きが比較的簡便で、費用も低廉です。ただし、元本の大幅な減額は難しいケースが多い点は理解しておく必要があります。

個人再生は、裁判所に申し立てて債務を5分の1〜10分の1程度に圧縮し、3年(最長5年)で返済する方法です。住宅ローン特則を利用すれば自宅を残すことが可能です。安定した収入があることが要件になります。

自己破産は、裁判所に免責を認めてもらい、借入金の返済義務を消滅させる方法です。原則として99万円を超える財産は換価処分の対象になりますが、返済の見込みがない場合は生活の再建に向けた最終手段になります。

融資の種類別——廃業後の返済の流れ

プロパー融資(信用保証なし)

金融機関が直接貸し付けているプロパー融資の場合、法人が清算すると金融機関は連帯保証人(経営者)に請求します。担保(不動産等)がある場合は担保の処分が先行し、残債について保証人に請求が来ます。

信用保証協会付き融資

信用保証協会の保証付き融資の場合、以下の流れで処理されます。

法人が返済不能になると、金融機関は信用保証協会に代位弁済を請求します。保証協会が金融機関に弁済すると、債権は保証協会に移ります(求償権の取得)。保証協会は経営者個人(連帯保証人)に対して求償権を行使します。

保証協会との返済交渉では、経営者の収入・資産状況に応じた分割返済が認められるケースが少なくありません。月々の返済額は収入に応じて柔軟に設定されることが多く、月1万円程度の少額返済で合意に至る例もあります。

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫の融資は、連帯保証人がいる場合は保証人への請求が行われます。無担保・無保証人の融資制度(新創業融資制度等)であっても、法人が消滅すれば回収不能として処理されるわけではなく、法人の清算手続きの中で弁済が行われます。

公庫は返済条件の変更(リスケジュール)に比較的柔軟に対応する傾向があります。返済が厳しくなった段階で早めに担当支店に連絡することが重要です。

廃業前にリスケジュールを検討する

廃業を決断する前に、暫定リスケとプレ再生計画による返済条件の見直しで事業継続が可能にならないか検討してください。返済負担の軽減だけで資金繰りが改善する場合は、廃業以外の選択肢が見えてきます。

廃業前にやっておくべきこと

借入金が残る状態で廃業する場合、以下の3点を事前に整理しておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。

1点目は、借入金の全体像の把握です。金融機関名、借入残高、金利、返済期日、担保の有無、連帯保証人の有無を一覧表にまとめます。信用保証協会付きかプロパーかの区別も重要です。

2点目は、返済原資の見通しです。法人の資産をすべて換価した場合にいくら弁済できるか、経営者個人の資産はどの程度あるかを試算します。この情報が、清算(通常清算 or 特別清算 or 破産)の選択と、保証債務の処理方針を決める基礎になります。

3点目は、専門家への早期相談です。弁護士、税理士、中小企業活性化協議会など、廃業に伴う債務整理に対応できる専門家に早い段階で相談してください。借入金の残高や返済の見通しに応じて、最適な手続き(経営者保証ガイドライン、特定調停、破産等)を提案してもらえます。相談先の選び方は廃業手続きガイドを参照してください。なお、廃業に際しては社会保険の脱退届出(届出期限5日以内)も早期に対応が必要です。

まとめ

この記事のポイント

  • 借入金の完済は廃業の条件ではない。法人は清算手続き、個人事業主は債務整理で対処できる
  • 法人の清算で債務超過の場合、特別清算・破産・特定調停スキームの3つの選択肢がある
  • 連帯保証がある場合、法人が消滅しても保証債務は残る。経営者保証ガイドラインの活用が重要
  • 信用保証協会付き融資は代位弁済後に保証協会との分割返済交渉が可能。月1万円程度の例もある
  • 廃業前に借入金の全体像を把握し、専門家に早期相談することが、最善の結果につながる

廃業時の借入金の処理や専門家への相談をご希望の場合は、無料相談からお問い合わせください。

よくある質問

Q. 廃業すると借入金はどうなりますか?
A. 法人の場合、清算手続きで資産を換価し、その範囲で債務を弁済します。資産で返済しきれない場合は特別清算や破産手続きが必要です。個人事業主の場合は事業用の借入金も個人の債務ですので、廃業後もそのまま返済義務が残ります。
Q. 借入金が残っていても廃業できますか?
A. はい。借入金の完済は廃業の要件ではありません。法人の場合は清算手続きの中で債務を処理します。個人事業主の場合は廃業届を出しても借入金は残りますが、金融機関と返済条件の変更(リスケジュール)を交渉することは可能です。
Q. 日本政策金融公庫の融資は廃業するとどうなりますか?
A. 公庫融資は廃業しても返済義務が消滅しません。法人の場合は代表者の連帯保証があれば個人に請求が来ます。返済が困難な場合は公庫の担当支店に相談し、返済条件の変更や繰上げ返済計画の見直しを依頼できます。新型コロナ特別貸付など無担保・無保証の融資も、法人が清算すると代位弁済の対象となる場合があります。
Q. 信用保証協会付き融資の場合はどうなりますか?
A. 借入先の金融機関が信用保証協会に代位弁済を請求し、保証協会が金融機関に弁済します。その後、保証協会から法人の連帯保証人である経営者個人に対して求償権が行使されます。保証協会との分割返済交渉は可能で、月1万円程度の少額返済が認められるケースもあります。
Q. 個人事業主が廃業後に借入金を返せない場合はどうすればよいですか?
A. 任意整理(金融機関との個別交渉で利息カットや分割返済を合意する方法)、個人再生(裁判所の認可を得て債務を圧縮し3〜5年で返済する方法)、自己破産(裁判所に免責を認めてもらい債務を消滅させる方法)の3つが選択肢です。いずれも弁護士への相談が出発点になります。

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