最後の義理を果たす
廃業時の取引先への挨拶・通知文テンプレート|タイミングと伝え方
廃業を取引先に伝える挨拶状・通知文の文例(会社・個人事業主・閉店・事業譲渡・メール)と送る時期、書き方の基本を解説。株式会社・合同会社の場合に挨拶状とは区別して確認すべき債権者への催告、解散後の支払いの制限、インボイス登録の失効日まで整理します。
廃業を決めたあと、長く付き合ってきた取引先にどう伝えるかで手が止まる経営者は少なくありません。挨拶状の文面だけでなく、誰に先に伝えるか、代金の精算をどう書くかも決める必要があります。
この記事では、そのまま使える文例と送る時期に加えて、株式会社・合同会社の場合に挨拶状とは区別して確認すべき法定の通知や、解散後の支払いの制限までを順番に整理します。
廃業を伝える前に整理する3つのこと
取引先への連絡は、挨拶状を1通送れば終わりではありません。やることは次の3つに分かれます。
| 区分 | 内容 | 主な相手 |
|---|---|---|
| 挨拶状より前に済ませること | 重要な取引先への口頭の連絡、最終受注日・精算の締め日の決定、金融機関への相談 | 金融機関・主要な仕入先・継続取引の顧客・従業員 |
| 挨拶状に書くこと | 廃業のお知らせ、お礼とお詫び、最終取引日、問い合わせ先 | すべての取引先 |
| 挨拶状とは区別して確認する法定の通知 | 株式会社・合同会社の場合の知れている債権者への催告(会社法499条・660条)、従業員への解雇予告(労働基準法20条) | 債権者にあたる取引先・従業員 |
3つ目は、礼儀として出す挨拶状とは性格が違います。株式会社・合同会社を解散する場合、仕入先など債権者にあたる取引先には、法律で定められた催告が必要です。この記事の挨拶状の文例は、その催告の要件を満たしていません。
会社と個人事業主で違うところ
株式会社が解散すると、清算株式会社は遅滞なく、債権者に一定の期間内に債権を申し出るよう官報で公告し、知れている債権者には各別に催告しなければなりません(会社法499条1項)。期間は2か月を下ることができず、合同会社にも同じ規定があります(同法660条1項)。合名会社・合資会社は清算の方法が異なるため、この記事の会社向けの説明は株式会社と合同会社を前提にしています。
個人事業主にはこの手続がありません。取引先への連絡は慣行と契約上の対応になり、未払いの代金は契約どおりに支払います。
伝える時期の目安
法律で時期が決まっているものと、取引先への配慮として決めるものを分けて考えます。
| 相手 | 時期の目安 | 決まり方 |
|---|---|---|
| 金融機関(借入れがある場合) | 廃業を決めたらできるだけ早く | 目安。返済や保証の扱いを相談する時間が要る |
| 主要な仕入先・外注先 | 廃業日の2〜3か月前 | 目安。先方の生産・仕入計画に影響する |
| 継続取引の顧客 | 廃業日の2〜3か月前 | 目安。代わりの取引先を探す時間が要る |
| その他の取引先 | 廃業日の1か月前までに届くように | 目安。挨拶状の一般的なマナー |
| 従業員(解雇する場合) | 原則として解雇日の30日前まで | 法定。予告が30日に足りない場合は、足りない日数分の平均賃金を支払う(労働基準法20条1項・2項) |
| 知れている債権者(株式会社・合同会社の場合) | 解散後遅滞なく | 法定。2か月以上の申出期間を定めて各別に催告する(会社法499条1項・660条1項) |
郵送の挨拶状は、印刷と封入に数日、配達に数日かかります。届けたい日から逆算して準備を始めてください。
「廃業日」と「最終取引日」は分けて書く
挨拶状には廃業日だけでなく、最終受注日・最終納品日・代金の精算の締め日を書いておくと、取引先が混乱しません。会社の場合、解散の日と実際に営業を終える日がずれるときは、文例に「令和○年○月○日に解散し、以後は清算の手続に入ります」の一文を加えて、両方の日付がわかるようにしてください。
口頭と書面の使い分け
継続して取引している相手には、書面を送る前に電話か訪問で伝えます。「手紙で初めて知った」と受け取られると、それまでの関係に傷がつくことがあります。
書面は、伝えた内容を正式に残すためのものです。毎月発注がある仕入先や定期契約のある顧客には、口頭で伝えてから書面を送る順番にします。
挨拶状の基本構成と書き方
廃業の挨拶状は、一般的な挨拶状と同じ流れで書きます。
| 順番 | 要素 | 例 |
|---|---|---|
| 1 | 頭語 | 拝啓/謹啓 |
| 2 | 時候の挨拶・安否の挨拶 | 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます |
| 3 | 日頃のお礼 | 平素は格別のご厚誼を賜り厚く御礼申し上げます |
| 4 | 廃業の報告と廃業日 | 令和○年○月○日をもちまして廃業いたすこととなりました |
| 5 | お礼とお詫び | 長年のご愛顧への感謝と、ご迷惑をおかけすることへのお詫び |
| 6 | 今後の取引についての案内 | 最終受注日・最終納品日・精算の締め日・問い合わせ先 |
| 7 | 結びの挨拶 | 貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます |
| 8 | 結語・日付・差出人 | 敬具(謹啓なら謹白)、年月、社名・代表者名・連絡先 |
廃業の理由は「諸般の事情により」「一身上の都合により」で十分です。財務の状況や経営者の健康状態を詳しく書くと、かえって先方に気を遣わせます。
形式は、はがきでも封書でもかまいません。改まった挨拶状は縦書きが正式とされ、句読点を打たない慣例もありますが、取引の案内を細かく書く場合は横書きのA4文書を同封するほうが読みやすくなります。
お詫びの一文は入れるか
廃業によって取引先は発注先や仕入先を探し直すことになるので、迷惑をかけることへのお詫びを一文入れるのが一般的です。ただし、謝りすぎると、経営が行き詰まったのではないかと先方に余計な心配をさせます。
お詫びは「ご迷惑をおかけいたしますことを深くお詫び申し上げます」のように一文にとどめ、長年の取引へのお礼を中心に書きます。未払いの代金がある相手には、お詫びの言葉を重ねるよりも、支払いの予定をはっきり書くほうが誠実に伝わります。
送付先リストと宛名の書き方
挨拶状を送る前に取引先の一覧を作り、相手ごとに「口頭で伝える」「挨拶状を送る」「催告書も送る」のどれにあたるかを書き込んでおきます。会計ソフトの取引先台帳、請求書や発注書の控え、名刺の管理簿から拾うと漏れが減ります。
宛名は、会社や部署に宛てるときは「御中」、個人に宛てるときは「様」を使い、両方を重ねないようにします。担当者が分かる取引先は「○○株式会社 ○○部 ○○様」と個人名まで書くと、社内で回されずに本人に届きます。
継続して取引している相手とは、取引基本契約に「解約するときは○か月前までに書面で通知する」といった条項を定めていることがあります。挨拶状を出す前に契約書を確認し、定められた方法と期間で解約の通知を出してください。
そのまま使える文例
○の部分を自社の内容に差し替えて使ってください。
会社(法人)の廃業
拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます
平素は格別のご厚誼を賜り厚く御礼申し上げます
さて 弊社は諸般の事情により 令和○年○月○日をもちまして
事業を終了し 廃業いたすこととなりました
創業以来 長きにわたり賜りましたご支援に心より感謝申し上げますとともに
皆様にご迷惑をおかけいたしますことを深くお詫び申し上げます
なお ご注文は令和○年○月○日まで 納品は令和○年○月○日まで
お受けいたします 代金の精算につきましては別紙にてご案内いたします
本件に関するお問い合わせは 令和○年○月○日まで下記にて承ります
末筆ながら 貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます
略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます
敬具
令和○年○月
株式会社〇〇〇〇
代表取締役 ○○ ○○
〒○○○-○○○○ (住所)
TEL:○○○-○○○-○○○○
個人事業主の廃業
拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます
平素は格別のお引き立てをいただき誠にありがとうございます
さて 私こと○○は 一身上の都合により
令和○年○月○日をもちまして○○業を廃業いたすこととなりました
開業以来 皆様に支えていただきましたことに深く感謝申し上げます
ご迷惑をおかけいたしますことを心よりお詫び申し上げます
なお ご依頼は令和○年○月○日までお受けいたします
廃業後のお問い合わせは下記の連絡先で令和○年○月○日まで承ります
末筆ながら 皆様のご健勝とご発展をお祈り申し上げます
敬具
令和○年○月
○○(屋号) ○○ ○○
TEL:○○○-○○○-○○○○
店舗の閉店(お客様向け)
拝啓 日頃より○○をご利用いただき誠にありがとうございます
このたび 当店は令和○年○月○日をもちまして
閉店させていただくこととなりました
○年間にわたりご愛顧いただきましたこと 心より御礼申し上げます
ポイントカードのご利用は令和○年○月○日までとなります
回数券の未使用分につきましては 別紙のとおり払い戻しをいたします
ご予約・お預かり品につきましては 店頭またはお電話にてご相談ください
皆様の今後のご多幸をお祈り申し上げます
敬具
令和○年○月
○○(店舗名)
TEL:○○○-○○○-○○○○
事業を引き継ぐ相手がいる場合
事業の一部を他社が引き継ぐ場合は、会社の文例の「なお」の段落の後に次の文を加えます。
また 弊社の○○業務につきましては 令和○年○月○日より
△△株式会社(担当:▲▲様)が引き続きお受けいたします
移行につきましては 同社の担当者より改めてご連絡を差し上げます
引継ぎ先の社名や担当者を書くときは、事前に引継ぎ先の了承を得ておきます。了承のないまま載せると、引継ぎ先との間で問題になることがあります。
メールで送る場合
書面に加えてメールでも知らせる場合や、取引の少ない相手にメールだけで知らせる場合の文例です。
【件名】
【重要】弊社廃業のお知らせ(令和○年○月○日)
【本文】
○○株式会社
○○部 ○○様
いつも大変お世話になっております。
○○株式会社の○○でございます。
弊社は諸般の事情により、令和○年○月○日をもちまして
廃業することとなりました。
長年にわたるご支援に深く感謝申し上げますとともに、
ご迷惑をおかけいたしますことを心よりお詫び申し上げます。
ご注文は令和○年○月○日まで承ります。
代金の精算とお問い合わせは下記までご連絡ください。
─────────────────────────────
○○株式会社 代表 ○○ ○○
メール:○○@○○.co.jp
TEL:000-0000-0000
(対応期間:令和○年○月○日まで)
─────────────────────────────
件名に「廃業」と日付を入れておくと、先方がほかのメールに埋もれさせずに済みます。長く取引してきた相手には、メールだけで済ませず電話でも伝えてください。
通知文に入れておくと取引先が困らない項目
取引先が知りたいのは、お礼の言葉よりも「いつまで取引できて、代金はどうなるか」です。挨拶状の本文か別紙に、次の項目を入れておきます。
| 項目 | 取引先が困ること |
|---|---|
| 最終受注日・最終納品日 | 発注の打ち切りと代わりの取引先の手配 |
| 代金の精算の締め日と支払日 | 売掛金の回収予定 |
| 前受金・預かり品の扱い | 返金や返却の方法 |
| インボイスの登録が失効する日と最後の請求書の発行日 | 登録の有効期間と、最後の請求がいつ届くかの確認 |
| 問い合わせ先と対応期限 | 廃業後の連絡先 |
インボイスは見落としやすい項目です。適格請求書発行事業者が事業を廃止して事業廃止届出書を提出すると、登録は事業を廃止した日の翌日に効力を失います(消費税法57条の2第10項2号)。届出を出さずにいても登録がそのまま続くとは限らず、事業を廃止したと認められると税務署長が登録を取り消すことがあります(同条6項)。
会社の場合、営業を終えた日や解散した日が、そのまま消費税の上で事業を廃止した日になるとは限りません。清算中も資産の売却などの課税取引が続くことがあるため、失効日は顧問税理士と確認してから別紙に書いてください。
ただし、登録していた期間に行った課税取引については、課税事業者である取引先から求められれば、失効した後でも適格請求書を交付しなければなりません(交付義務が免除される取引を除く。消費税基本通達1-8-8)。失効日は請求書を発行できる期限ではありません。通知文には登録の失効日と最後の請求書の発行日を分けて書き、廃業後に請求書の再発行を求められたときの連絡先も残しておきます。
挨拶状の文例で「別紙にてご案内」とした精算の内容は、次のような形でまとめます。
別紙 お取引の精算について
1 最終受注日 令和○年○月○日
2 最終納品日 令和○年○月○日
3 精算の締め日 令和○年○月○日
4 お支払日 令和○年○月○日(締め日までの納品分)
5 インボイス 登録の失効日 令和○年○月○日
最後の請求書の発行日 令和○年○月○日
6 お問い合わせ先 担当 ○○ TEL:○○○-○○○-○○○○
受付期限 令和○年○月○日まで
相手先ごとの伝え方
金融機関
借入れがある場合、金融機関への連絡は他の取引先とは性格が違います。返済の見通しや、代表者の個人保証の扱いを相談する必要があるためです。
挨拶状を送る前に、担当者に面談を申し込んで廃業の意向を伝えてください。廃業後の借入金の処理は時間がかかりやすいので、早めに相談を始めるほど選べる方法が残ります。
仕入先・外注先
継続して発注している仕入先や外注先には、挨拶状とあわせて次の点をはっきり伝えます。
- 最終発注日と最終納品の受け入れ日
- 未払いの買掛金の支払日
- 作業途中の発注をどう扱うか
株式会社・合同会社の場合、支払いの時期が解散の前か後かで扱いが変わります。解散する前は、会社法500条・661条による弁済の制限は適用されません。
解散した後は、債権を申し出る期間(2か月以上)の間は原則として債務を弁済できません(会社法500条1項・661条1項)。少額の債権など他の債権者を害するおそれがないものは、裁判所の許可を得れば期間内でも支払えます(500条2項・661条2項)。
この制限があっても、支払期日に払えなかったことによる責任は免れません(500条1項・661条1項の後段)。申出期間は支払いを待ってもらえる猶予ではありません。支払期日がこの期間にかかる買掛金は、解散前に払うかどうかを先に決めておきます。
なお、資金が足りず全員に払えない状態で一部の取引先だけに払うと、後に破産手続になったときに、その支払いが否認されて取り戻されることがあります(破産法162条)。個人事業主も同じです。この場合は支払う前に弁護士へ相談してください。
会社を解散する場合は、解散日を決める前に、どの支払いを解散前に済ませるかを顧問税理士や司法書士と確認してください。
顧客
顧客への連絡で大切なのは、サービスが途切れる期間を作らないことです。継続して利用している顧客ほど、廃業後にどこへ連絡すればよいかを気にします。
引継ぎ先を紹介できる場合は、社名と連絡先を通知文に書きます。紹介できない場合でも、前受金の返金方法やお預かり品の返却期限を書いておくと、顧客が手続きに迷いません。
有償で販売した回数券やプリペイドカードは、無料のポイントとは扱いが違います。資金決済法の前払式支払手段発行者(自社の店だけで使える券なら、未使用残高が一定額を超えて届出をした事業者)が前払式支払手段の発行の業務を廃止する場合は(事業譲渡などで発行の業務を引き継ぐ場合を除く)、公告と保有者への情報提供を行い、60日以上の申出期間を設けて払い戻す手続が必要です(資金決済法20条1項・2項)。発行から6か月以内に限り使える券など、同法の適用が除外されるものもあります(同法4条)。
発行者にあたらない場合も、販売したときの約束を確認して、未使用分の払い戻しの方法・申出の期間・窓口を別紙で案内してください。
顧客名簿などの個人データは、利用する必要がなくなったら遅滞なく消去するよう努めることが、個人情報保護法で求められています(22条)。帳簿書類など法令で保存期間が決まっている資料は、その期間は保存します。いつ、どのように消去するかを決めておき、問い合わせに答えられるようにしてください。
従業員
従業員を解雇する場合は、原則として少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります(労働基準法20条1項)。予告の日数は、平均賃金を支払った日数分だけ短くできます(同条2項)。
法律は予告を書面で行うことまでは求めていませんが、後の行き違いを防ぐため、解雇日・解雇の理由・退職金の有無と支払時期を書面にして渡します。退職する従業員から解雇の理由などの証明書を求められたら、遅滞なく交付しなければなりません(同法22条)。
退職した従業員から請求があった場合、賃金は7日以内に支払う必要があります(同法23条1項)。金額に争いがある場合も、異議のない部分は7日以内に支払います(同条2項)。退職金の扱いや離職票の手続きは廃業時の従業員の退職金と解雇予告で詳しく解説しています。
株式会社・合同会社の場合:挨拶状とは区別して行う債権者への催告
株式会社・合同会社を解散すると、清算人は遅滞なく、債権者に2か月以上の期間内に債権を申し出るよう官報に公告します。あわせて、帳簿などで把握している債権者には、同じ内容を各別に催告しなければなりません(会社法499条1項・660条1項)。
公告には、期間内に申し出ないと清算から除かれる旨を書く必要があります(同法499条2項・660条2項)。この記事の挨拶状の文例だけでは、法定の催告を満たしません。知れている債権者には、申出の期間を示して各別に催告してください。除斥の旨の付記が法律で求められているのは官報の公告のほうで、知れている債権者は期間内に申し出なかっただけでは清算から除かれません(同法503条1項・665条1項)。挨拶状と別の文書にすること自体は法律上の義務ではありませんが、分けて送ると、それぞれの目的が取引先に伝わりやすくなります。
実務では、挨拶状を先に出して関係者に廃業を知らせ、解散後に法律上の催告書を別に送る流れがわかりやすくなります。官報公告の申込み方や費用は解散公告(官報公告)の手続きで解説しています。
廃業の通知でよくある失敗
すべての取引先に同じメールを一斉に送る
宛名のない一斉送信メールだけで済ませると、長く取引してきた相手には配慮のない終わり方として記憶されます。取引の少ない相手にはメールでもかまいませんが、主要な取引先には個別に連絡してください。
廃業日の直前に知らせる
1週間前の連絡では、取引先が代わりの仕入先や外注先を用意できません。知らせる時期が遅いこと自体が、相手にとっての損害になり得ます。
精算の順序を決めないまま解散する
株式会社・合同会社の場合、解散した後は債権を申し出る期間中の支払いが原則としてできなくなります。廃業を決めた時点で未払いの買掛金・前受金・預かり金の一覧を作り、解散前に払うものと清算の中で払うものを分けておくと、取引先への説明がぶれません。
廃業手続き全体との関係
取引先への連絡は、廃業手続きの全体の流れの中で、解散の登記や税務署への届出と並行して進めます。税務署に出す書類と期限は廃業届の書き方と提出先で整理しています。
廃業を決める前に、事業の引継ぎも検討する
事業の一部を他社に譲る、M&Aで売却するといった選択肢は、取引先に廃業を知らせた後では取りにくくなります。挨拶状を出す前に、専門家に相談する時間を取ってください。
まとめ
この記事の要点
- 取引先への連絡は「挨拶状より前に済ませること」「挨拶状に書くこと」「挨拶状とは区別して確認する法定の通知」の3つに分けて進める
- 継続して取引している相手には、口頭で伝えてから挨拶状を送る。挨拶状には最終受注日・精算の締め日・問い合わせ先を書く
- 株式会社・合同会社を解散する場合は、知れている債権者に各別の催告が必要で(会社法499条・660条)、解散後の申出期間中は原則として支払いができない。支払いが遅れた責任は免れない(同法500条・661条)
- インボイスの登録は、事業廃止届出書を出すと事業を廃止した日の翌日に失効する。登録期間中の課税取引については、課税事業者である取引先から求められれば、交付義務が免除される取引を除き失効後も適格請求書を交付する。失効日と最後の請求書の発行日を分けて伝える
- 従業員には原則30日前の解雇予告が必要で、足りない日数分は解雇予告手当を支払う(労働基準法20条)
出典
- 会社法(e-Gov法令検索)(499条 債権者に対する公告等、500条 債務の弁済の制限、503条 債権者の除斥、660条 清算持分会社の債権者に対する公告等、661条 清算持分会社の債務の弁済の制限、665条 清算持分会社の債権者の除斥)
- 労働基準法(e-Gov法令検索)(20条 解雇の予告、22条 退職時等の証明、23条 金品の返還)
- 消費税法(e-Gov法令検索)(57条の2第6項 登録の取消し、第10項 適格請求書発行事業者の登録の失効)
- 消費税法基本通達 第8節 適格請求書発行事業者の義務(国税庁)(1-8-8 適格請求書発行事業者でなくなった場合の適格請求書の交付)
- 破産法(e-Gov法令検索)(162条 特定の債権者に対する担保の供与等の否認)
- 商品券(プリペイドカード)の払戻しについて(金融庁)(資金決済法20条1項の払戻手続)
- 資金決済に関する法律(e-Gov法令検索)(4条 適用除外、20条 保有者に対する前払式支払手段の払戻し)
- 個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)(22条 データ内容の正確性の確保等)
廃業の通知は、長く付き合ってきた取引先との最後のやり取りです。精算の順序を決めてから挨拶状を出すと、先方にも自社にも無理のない終わり方にできます。
廃業に向けた財務の整理や清算の進め方についてご相談がある場合は、無料相談からご連絡ください。
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よくある質問
- Q. 廃業の挨拶状はいつ送ればよいですか?
- A. 法律で決まった時期はありません。取引先が発注や代わりの取引先の手配を見直せるよう、廃業日の1〜3か月前に届くようにするのが目安です。継続して取引している相手には、書面を送る前に電話や訪問で伝えておきます。株式会社・合同会社を解散する場合の債権者への催告は、挨拶状の送付とは区別して、解散後遅滞なく行う法律上の手続です(会社法499条1項・660条1項)。
- Q. 廃業の挨拶状には何を書けばよいですか?
- A. 頭語と時候の挨拶、これまでのお礼、廃業する旨と廃業日、迷惑をかけることへのお詫び、結びの挨拶と結語が基本の構成です。取引先向けには、最終受注日・最終納品日・代金の精算の締め日・問い合わせ先と対応期限も書いておくと、先方が困りません。廃業の理由は「諸般の事情により」など簡潔にとどめます。
- Q. 取引先への買掛金は廃業前に支払うべきですか?
- A. 株式会社・合同会社は、解散した後、債権を申し出る期間(2か月以上)の間は原則として債務を弁済できません(会社法500条1項・661条1項)。この間も支払いの遅れによる責任は免れないため、支払期日が申出期間にかかる買掛金は解散前の扱いを決めておきます。個人事業主にはこの会社法上の制限はありません。ただし資金が足りず全員に払えない状態で一部の取引先だけに払うと、後の破産手続で問題になることがあるため、その場合は支払う前に弁護士へ相談してください。
- Q. インボイスの登録番号はいつまで使えますか?
- A. 適格請求書発行事業者が事業を廃止して事業廃止届出書を提出した場合、登録は事業を廃止した日の翌日に効力を失います(消費税法57条の2第10項2号)。登録していた期間の課税取引については、課税事業者である取引先から求められれば、失効した後でも適格請求書を交付する必要があります(交付義務が免除される取引を除く。消費税基本通達1-8-8)。事業廃止届出書には提出の義務があり、出さずにいても登録がそのまま続くとは限りません。通知文には登録の失効日と、最後の請求書をいつ発行するかを書いておくと、取引先が経理処理に迷いません。
- Q. 廃業後に取引先から連絡が来た場合、どう対応すればよいですか?
- A. 廃業後も一定期間は問い合わせを受けられる体制を残しておきます。転送先の電話番号やメールアドレスと、対応できる期限を通知文に書いておくと、先方が連絡先に迷いません。