借入金を資本に変える再生手法
DDS(デットデットスワップ)とは|中小企業の活用法・メリット・DESとの違いを解説
DDS(デットデットスワップ)の仕組みと中小企業での活用法を解説。既存借入金を資本性劣後ローンに転換して債務超過を解消する手法で、金融検査マニュアルでの自己資本みなし、リスケとの併用、DESとの違いを整理します。
債務超過に陥った中小企業が、借入金を「劣後ローン(資本性借入金)」に切り替えることで財務を改善する手法があります。DDS(デットデットスワップ)と呼ばれるこの手法は、事業再生の現場で広く使われています。
DDSの最大の特徴は、借入金が帳簿上は残りつつも、金融検査上は「自己資本」とみなされる点にあります。これにより実質的な債務超過が解消され、金融機関からの追加融資が可能になるケースが生まれます。
本記事では、DDSの仕組み、中小企業での活用法、DESとの違い、実行の手順と注意点を解説します。
DDSの仕組み
劣後ローンへの転換とは
DDSは、既存の借入金(シニアローン)を、返済順位の低い劣後ローン(メザニンローン)に切り替える手法です。
借入金の額自体は変わりません。変わるのは返済の優先順位です。劣後ローンは、会社が倒産した場合に他の一般債権者への弁済が終わった後に返済される「劣後債権」となります。この性質により、金融機関の資産査定では「自己資本」とみなされます。
具体例として、借入金1億円のうち3,000万円を劣後ローンに転換した場合、BSの見かけ上は借入金1億円のままですが、金融検査上は借入金7,000万円+自己資本3,000万円として扱われます。債務超過が3,000万円の会社であれば、実質的に債務超過が解消されることになります。
金融検査マニュアルでの位置づけ
金融庁の金融検査マニュアル(現在は廃止されていますが、考え方は引き継がれています)では、十分な資本的性質が認められる借入金を「資本性借入金」として自己資本にみなすことが認められています。
資本性借入金として認められるための条件は、償還条件(5年超の長期据置)、金利設定(業績連動型等)、劣後性(法的破綻時に他の債権に劣後すること)の3つです。
DDSとDESの違い
DDSと混同されやすい手法にDES(デットエクイティスワップ)があります。両者の違いを整理します。
| 比較項目 | DDS(デットデットスワップ) | DES(デットエクイティスワップ) |
|---|---|---|
| 転換先 | 劣後ローン(借入金) | 株式(資本金) |
| 債務の消滅 | しない(条件変更) | する(株式に転換) |
| BS上の変化 | 借入金の内訳が変わる | 借入金が減り資本金が増える |
| 金融機関の立場 | 債権者のまま | 株主になる |
| 経営権への影響 | なし | 議決権が移る可能性あり |
| 税務上の影響 | 原則なし | 債務免除益が発生する場合あり |
中小企業の事業再生では、DDSの方が使いやすいケースが多くなります。DESでは金融機関が株主になるため、中小企業のオーナー経営者にとっては経営権の希薄化が問題になります。DDSであれば金融機関は債権者のままであり、経営権に影響しません。
中小企業での活用場面
債務超過の解消
DDSの最も典型的な活用場面は、債務超過の解消です。債務超過が続くと金融機関からの融資が受けられず、資金繰りが悪化するという悪循環に陥ります。DDSで借入金の一部を資本性借入金に転換すれば、実質的な債務超過を解消し、新規融資の道を開くことができます。
リスケジュールとの併用
暫定リスケとプレ再生計画と組み合わせてDDSを実施するケースも増えています。リスケで目先の返済負担を軽減しつつ、DDSで財務構造を改善し、経営改善計画の実行に集中できる環境を作ります。
経営改善計画の信頼性向上
経営改善計画の実効性を高める手段としてもDDSは有効です。計画に「DDSによる財務改善」が盛り込まれていると、金融機関は計画の実現可能性を高く評価する傾向があります。
DDSだけでは再生できない
DDSはあくまで財務構造の改善手法であり、本業の収益力が改善しなければ根本的な解決にはなりません。DDSと同時に、売上の回復策やコスト削減策を含む経営改善計画を策定・実行することが必須です。
DDS実行の手順
DDSの実行には金融機関との合意が必要です。一般的な手順は以下のとおりです。
1. 現状分析と経営改善計画の策定
まず、自社の財務状況を正確に把握し、事業デューデリジェンスを実施します。そのうえで、DDSを含む経営改善計画を策定します。計画には、DDSの対象金額、転換後の返済条件(据置期間・金利)、本業の改善施策を盛り込みます。
2. 中小企業活性化協議会への相談
中小企業活性化協議会(各都道府県に設置)に相談し、支援を依頼します。協議会は金融機関との調整を仲介し、経営改善計画の策定を支援してくれます。協議会を通じて実施する場合、計画策定費用の補助(2/3、上限200万円)も利用できます。
3. 金融機関との交渉・合意
協議会の仲介のもと、メイン銀行をはじめとする取引金融機関と交渉します。DDSの対象金額、据置期間、金利条件、元金返済のスケジュールについて合意を取り付けます。複数の金融機関から借り入れている場合は、全行の同意が原則として必要です。
4. 契約変更と実行
合意が成立したら、既存の金銭消費貸借契約を変更する形でDDSを実行します。劣後特約(法的破綻時に他の債権に劣後する旨の特約)を付した新たな契約を締結します。
DDSの条件設定——実務上のポイント
DDSの条件設定で注意すべき点を整理します。
据置期間は5年以上が一般的です。金融検査上、資本性借入金として認められるには5年超の据置が求められます。実務では10年〜15年に設定されるケースが多くなります。
金利は、業績連動型(黒字の場合は2〜4%、赤字の場合は0.5%程度)か、固定の低金利(1%前後)で設定されることが多いです。
据置期間終了後の取扱いも重要な交渉ポイントです。期限到来時に一括返済を求められると資金繰りが再び悪化するため、分割返済や期間延長の条件を事前に協議しておくことが望ましいです。
まとめ
この記事のポイント
- DDSは借入金を劣後ローン(資本性借入金)に転換する手法。債務額は変わらないが、金融検査上は自己資本とみなされる
- DESと異なり金融機関が株主にならないため、中小企業の経営権に影響しない
- 活用場面は債務超過の解消、リスケとの併用、経営改善計画の実効性向上
- 中小企業活性化協議会の支援を受ければ、金融機関との調整がスムーズに進む。計画策定費用の補助(2/3)もある
- DDSだけでは再生できない。本業の収益改善を含む経営改善計画の策定・実行が前提
DDSの活用や事業再生について専門家への相談をご希望の場合は、無料相談からお問い合わせください。
よくある質問
- Q. DDSとは何ですか?
- A. DDS(デットデットスワップ)は、既存の借入金(デット)を返済順位の低い劣後ローン(別のデット)に切り替える金融手法です。劣後ローンは金融検査上「資本」とみなされるため、実質的に債務超過の解消やBSの改善が可能になります。借入金自体は消滅しませんが、返済順位が下がることで資金繰りが改善します。
- Q. DDSとDESの違いは何ですか?
- A. DDS(デットデットスワップ)は借入金を劣後ローンに変更する手法で、債務は残りますが返済順位が下がります。DES(デットエクイティスワップ)は借入金を株式に転換する手法で、債務が消滅し資本金が増加します。DDSは金融機関が株主にならないため、経営権への影響がない点が中小企業にとっての利点です。
- Q. DDSを使うと返済はどうなりますか?
- A. 劣後ローンに転換された部分は、通常の借入金より返済順位が下がります。一般的には元金の返済が5〜15年程度据え置かれ、その間は金利のみの支払いとなります。金利は1〜4%程度で設定されることが多く、業績連動型の金利条件が付くこともあります。
- Q. DDSのデメリットはありますか?
- A. 金利負担が続く点(元金据置期間中も金利は支払う必要がある)、すべての金融機関が同意しないと実行が難しい点、期限到来時に一括返済が求められる可能性がある点がデメリットです。また、DDSだけでは根本的な収益改善にはならないため、経営改善計画と併せて実行することが前提です。
- Q. DDSは中小企業でも使えますか?
- A. 使えます。中小企業活性化協議会(旧・中小企業再生支援協議会)の支援のもとでDDSを実施するケースが増えています。協議会が金融機関との調整を仲介してくれるため、中小企業単独で交渉するよりもスムーズに進みます。経営改善計画の策定とセットで検討してください。